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NIPTの偽陽性の原因:胎児の性別の不一致|羊水検査・超音波と食い違う理由

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。臨床遺伝専門医として遺伝医療に携わっています。

NIPTの性別判定は、母体の血液の中にY染色体に由来するDNAがあるかどうかで「男の子」か「女の子」かを推定するものです。ところが、NIPTの結果と、超音波で見える外性器、羊水検査などで調べた染色体(核型)の性別が食い違うことがあります。この「性別の不一致」は、1,500〜2,000妊娠に1件ほどの頻度で報告されており、原因は検体の取り違え、胎盤のモザイク、バニシングツイン、母体の移植や輸血の既往、そして赤ちゃん自身の性分化疾患まで幅があります。このページでは、3つの結果の食い違い方を4つのパターンに分け、それぞれの原因と確かめ方を整理します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約13分
🧬 SRY・性分化疾患・羊水検査の核型
★ 臨床遺伝専門医監修

Q. 羊水検査とNIPTで赤ちゃんの性別が違ったのはなぜですか?

A. NIPTは胎盤から出たDNAを、羊水検査は胎児側の細胞を調べるため、両者がずれる原因がいくつかあります。検体の取り違えや胎盤のモザイク、バニシングツイン、移植・輸血の既往のほか、赤ちゃん自身の性分化疾患(DSD)でも食い違いが起こります。どれに当たるかは、超音波の所見と核型を突き合わせて判断します。

  • ➤性別判定の仕組み → 方式に応じてY染色体由来の配列やX・Y染色体の情報を調べる
  • ➤4つのパターン → NIPT・超音波・核型のどれがずれたかで原因が絞れる
  • ➤羊水検査の性別 → 46,XX/46,XYの意味と、外性器と一致しない場合
  • ➤確かめ方 → 超音波の再評価、核型・FISH、遺伝子検査、出生後の評価

⏱️ 30秒でわかる要約

🧬 Q. NIPTの性別が外れる原因は?

NIPTで測るDNAは胎盤から出ています。胎盤だけのモザイク、消えた双子(バニシングツイン)、男性からの移植・輸血などがあると、赤ちゃん本人と違う性別の結果が出ることがあります。

🔬 Q. 羊水検査の性別は確実?

羊水検査は胎児側の細胞の染色体を見るので、染色体の性(46,XX/46,XY)についてはNIPTより確実です。ただし、染色体の性と外性器の性が一致しない性分化疾患もあります。

🩺 Q. 不一致が分かったら?

検体の取り違えを除外したうえで、超音波の再評価と羊水検査の核型を突き合わせます。必要に応じて遺伝子検査を行い、出生後は専門チームで評価します。

妊婦と女性医師、NIPTの仕組み・検査の種類・結果の読み方を紹介するNIPTの教科書の画像

1. NIPTはどうやって赤ちゃんの性別を判定しているか

NIPTの性別判定は、母体の血液のcfDNAの中に、Y染色体に由来する配列があるかどうか、どれだけあるかを測ることで行われます。通常、母親の染色体は46,XXでY染色体を持たないので、Y染色体の配列が見つかれば、胎盤(多くの場合は赤ちゃんと同じ染色体)がY染色体を持っていると推定できます。

Y染色体の配列(SRY・DYS14)を数える仕組み

PCRを用いた胎児の性別判定でよく使われるのは、Y染色体のSRY遺伝子と、Y染色体に多数のコピーがあるDYS14という配列です。SRYは、胎児の未分化な性腺を精巣へ向かわせるスイッチの役割をもつ遺伝子で、ヒトの性決定の中心にあります。DYS14はコピー数が多いため、少ない胎児由来DNAでも検出しやすいという利点があります。定量PCR(qPCR)でこれらを測る方法のほか、次世代シークエンサーでゲノム全体を読むNIPTでは、Y染色体に当てはまる断片の数からY染色体の有無を判定します。性染色体の量を測る原理は性染色体の異数性の測定原理で詳しく説明しています。

ここで大切なのは、NIPTが調べているのは「Y染色体由来の配列やX・Y染色体の情報」であって、赤ちゃんの外性器の形や性腺の働きではないということです。Y染色体があっても、SRYが働かなかったり、男性ホルモンが作られなかったり受け取れなかったりすれば、外性器は女性型になります。反対に、Y染色体がなくても、SRYを含むY染色体の断片がX染色体に移っていれば、外性器は男性型になります。性別の不一致を理解する出発点は、この「染色体の性」と「外性器の性」の違いです。

性別判定の精度と、医学的な性別判定に求められる水準

母体の血液を使った胎児の性別判定の精度については、2010年3月までの文献検索で得られた90件の研究をまとめた2012年のメタ解析で、平均感度96.6%、平均特異度98.9%と報告されています[1]。メタアナリシスの対象は主にPCRによる性別判定で、現在の次世代シークエンサーを用いたNIPTの精度を直接表す値ではありません。妊娠のごく初期の検査も含まれており、胎児由来のDNAが少ない時期ほど、Y染色体の配列を見逃して「女の子」と判定する誤りが起こりやすくなります。胎児分画の考え方は胎児ゲノム率(胎児分画)で解説しています。

性別判定が医学的な意味をもつのは、たとえば母親がX連鎖遺伝の病気の保因者で、男の子で発症リスクが高い場合です。X連鎖劣性疾患でも女の子が発症することがあるため、疾患と家族の遺伝情報に応じた判断が必要です。こうした場合の性別判定は、単一遺伝子疾患を調べる非侵襲的出生前診断(NIPD)の一部として行われ、結果によって侵襲的な検査を受けるかどうかが決まるため、感度・特異度ともに高い精度が求められ、とくに男児を女児と判定する偽陰性を避けることが重要です。そのため、Y染色体の配列が見つからなかった場合に「胎児由来のDNAが十分にあったか」を別の方法で確かめるなど、より厳密な判定手順が組まれます。単一遺伝子疾患の出生前検査については単一遺伝子疾患の出生前診断をご覧ください。

NIPTではY染色体の有無に加えて、性染色体の本数の異常(性染色体異数性)を報告する検査もあります。こちらは性別判定よりも結果の当たり方が低く、2025年のレビューに示された陽性的中率は、47,XXYで74%、47,XYYで74.5%、47,XXXで54%、45,X(ターナー症候群)で29.5%でした[2]。とくに45,Xの陽性的中率が低いのは、胎盤だけに45,Xの細胞がある場合や、母親自身の細胞の一部でX染色体が失われている場合が多いためです。性別の判定と性染色体の数の判定は、同じY・X染色体の信号を使いながらも、確からしさが大きく異なることを知っておく必要があります。

💡 用語解説:性分化疾患(DSD)

性分化疾患(disorders/differences of sex development:DSD)は、染色体の性、性腺(精巣・卵巣)の性、外性器などの解剖学的な性が、典型的な組み合わせにならない状態の総称です。染色体の性と外性器の形が一致しない場合があるため、NIPTや羊水検査の性別と超音波の所見が食い違う原因になります。総論は表現型の性がかわってしまう性分化疾患で解説しています。

2. 性別の不一致とは:NIPT・超音波・核型の3つを突き合わせる

性別の不一致とは、NIPTが示す性別と、超音波で見える外性器、羊水検査などで調べた染色体(核型)の性別が一致しない状態です。3つのうちどれがずれているかで、原因をかなり絞り込めます。2025年のレビューでは、NIPTの性別と超音波または出生時の外性器が食い違う頻度は、少なくとも1,500〜2,000妊娠に1件と報告されています[2]。同レビューでは、赤ちゃん自身の性分化疾患によるものはおよそ1割と推定されていますが、この割合は対象集団や不一致の把握方法で変わり、全症例に一律には当てはまりません。検査の過程や胎盤、母体側の要因も原因になります[2]。

どのパターンでも、最初に確かめるべきなのは検体の取り違えや記載の誤りがないかです。検査の手順上の誤りは、生物学的な原因よりも先に除外する必要があります[3]。そのうえで、次の表のように3つの結果の組み合わせから原因を考えます。

🔍 性別の不一致の4つのパターンと主な原因

パターン 核型(羊水など) 超音波の外性器 NIPT 主な原因
1 男(46,XY) 男 女(Yなし) 低い胎児分画、胎盤のモザイク、女児のバニシングツイン(理論上)
2 女(46,XX) 男 女 XX男性(SRYの転座)、先天性副腎過形成、アンドロゲン産生腫瘍、外からのアンドロゲン
3 女(46,XX) 女 男(Y検出) 胎盤のモザイク、男児のバニシングツイン、男性からの移植・最近の輸血
4 男(46,XY) 女 男 アンドロゲン不応症、男性ホルモン合成の障害、SRYの変異、Smith-Lemli-Opitz症候群

※検体の取り違えは、すべてのパターンの前に除外します。超音波の外性器の見間違いも除外します。パターン1・3はNIPT側のずれ、パターン2・4は赤ちゃん自身の性分化疾患などが中心になります。

表を見ると分かるように、NIPTだけが他の2つと違う場合(パターン1・3)は、NIPTが胎盤や母体のDNAを測っていることによるずれが中心です。一方、核型とNIPTは一致しているのに外性器が違う場合(パターン2・4)は、赤ちゃん自身の性分化の問題を考えます。この区別は、次に何を調べるかを決めるうえで役に立ちます。

3. パターン1:核型と超音波は男の子、NIPTは女の子

赤ちゃんはY染色体を持っているのに、NIPTでY染色体の配列が検出されなかった状態です。NIPTの偽陰性にあたります。

胎児分画が低い

もっとも単純な原因は、母体の血液の中の胎児由来のDNA(胎児分画)が少なすぎて、Y染色体の配列を検出できなかった場合です。検査の時期が早すぎる、母体の体重が多いなどの理由で胎児分画が下がると、男の子でも「Yなし」と判定されることがあります[2]。最近のNIPTの多くは胎児分画を測り、不十分なら判定を保留しますが、方式によってはこの誤りが残ります。

胎盤の46,XX/46,XYや45,X/46,XYのモザイク

NIPTで胎児側の情報として評価するDNAは、主に胎盤の栄養膜、特に合胞体栄養膜から母体血中に放出されます。胎盤に46,XX/46,XYのキメリズム(異なる受精卵に由来する細胞の混在)があり46,XXの細胞が多い場合や、45,X/46,XYのモザイクでY染色体を失った45,Xの細胞が多い場合には、胎児が46,XYでも、NIPTで検出されるY染色体の配列はわずかになります。胎盤と胎児で染色体が食い違う仕組みは胎盤限局性モザイクで解説しています。45,X/46,XYのモザイクが胎児にもある場合は、性腺や外性器の発達にも影響するため、出生後の評価が必要になります。45,X/46,XYのモザイクでは、外性器が男性型から女性型までさまざまな形をとり、Y染色体を含む未熟な性腺には将来、腫瘍ができるリスクがあることも知られています。そのため、NIPTで「Yが少ない」「Yなし」と出たのに超音波や核型で男の子と分かった場合は、単なる検査の誤りと決めつけず、性染色体のモザイクがないかを羊水検査で確かめることに意味があります。

女の子のバニシングツイン(理論上)

双子の一方が妊娠初期に亡くなったバニシングツインでは、亡くなった側の胎盤からもしばらくDNAが出続けます。理論上は、亡くなった女の子の胎盤から大量のDNAが出ると、生きている男の子のY染色体の信号が薄まる可能性がありますが、この方向の誤りが実際に報告されることは多くありません。

4. パターン2:核型とNIPTは女の子、超音波で男性の外性器

通常の核型分析では46,XXで、NIPTでも女児と推定されているのに、外性器が男性型に見える状態です。SRYを含む小さなY染色体由来の断片がある場合や、SRYによらない性分化の変化を考えます。

XX男性:SRYを含むY染色体の断片がX染色体に移った状態

46,XX精巣性の性分化疾患(いわゆるXX男性)は、男性の外見をもつ人のおよそ2万人に1人にみられ、その約8割はSRY遺伝子がX染色体の上に乗っています[4]。これは、父親の精子ができる減数分裂のときに、X染色体とY染色体の間で異常な交換が起こり、SRYを含むY染色体の端の部分がX染色体に移ったことによります[4]。染色体を顕微鏡で見る通常の核型分析では46,XXに見えますが、SRYが働くため精巣ができ、外性器は男性型になります。

移ったY染色体の断片はごく小さいため、NIPTでも「Yなし」と判定されることがあります。2025年のレビューでも、小さなY染色体の断片を含む構造の変化(SRY陽性の46,XX男性など)は、NIPTでY染色体を検出できない原因として挙げられています[2]。このため、外性器が男性型で核型が46,XXの場合には、SRYを狙ったFISHや遺伝子の検査でSRYの有無を確かめます。

先天性副腎過形成と、外から入るアンドロゲン

46,XXの女の子でも、胎児期に男性ホルモン(アンドロゲン)に強くさらされると、外性器が男性化します。代表的なのは先天性副腎過形成(CAH)で、代表的な21-水酸化酵素欠損症などでは、副腎でステロイドホルモンを作る酵素の働きが弱いために、アンドロゲンが過剰に作られます。すべての病型でアンドロゲンが過剰になるわけではありません。このほか、母親のアンドロゲンを作る腫瘍や、妊娠中に母親が使った男性ホルモン作用のある薬なども、女の子の外性器の男性化の原因になります。これらの場合、赤ちゃんの卵巣と子宮は正常に作られています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「当たり」「外れ」で語れない性別】

NIPTの性別判定は「男の子か女の子か」を当てる検査のように扱われがちです。けれども、遺伝医学の目で見ると、性は「染色体の性」「性腺の性」「外性器の性」という何層かの積み重ねでできています。NIPTが見ているのは、そのうちの一番下の層、しかも胎盤のものにすぎません。

性別の不一致を「検査が外れた」だけで片づけず、原因を評価する必要があります。検査の誤りであれば確かめ直せば済みますが、性分化疾患のサインであれば、生まれる前から出生後の評価に備えることができます。食い違いは、立ち止まって確かめるための大切な手がかりです。

5. パターン3:超音波と核型は女の子、NIPTでY染色体を検出

赤ちゃんは46,XXの女の子なのに、母体の血液からY染色体の配列が見つかった状態です。NIPTの性別の偽陽性にあたり、「Y染色体はどこから来たのか」を考えます。

胎盤の46,XY/46,XXモザイクと、男の子のバニシングツイン

胎盤に46,XX/46,XYのキメリズムがあり、一部に46,XYの細胞がある場合、そこから出たDNAでNIPTはY染色体を検出します。また、双子の一方が男の子で妊娠初期に亡くなったバニシングツインでは、亡くなった男の子の胎盤からのDNAがしばらく血液中に残り、生きている女の子の検査で「男の子」と判定されることがあります[2][3]。妊娠初期の超音波で胎嚢が2つあったかどうかは、結果を解釈するうえで重要な情報です。仕組みの詳細はNIPTの偽陽性の原因:バニシングツインで扱います。

男性からの臓器移植・骨髄移植と、最近の輸血

母親が過去に男性から臓器移植や骨髄移植(造血幹細胞移植)を受けている場合、母親の体の中には男性由来の細胞が生き続けていて、そのDNAが血液中に出てきます[2]。男性由来の血液成分の最近の輸血も、含まれる白血球やDNA、輸血からの期間によっては影響する可能性があります。赤血球自体には核がなく、移植と同じように必ず長期間Y染色体のDNAが検出されるわけではありません[3]。別の人に由来する少数の細胞が体の中に共存している状態をマイクロキメリズムと呼びます。ただし、造血幹細胞移植後にドナー由来の細胞が大部分を占める場合は、単なるマイクロキメリズムとは区別します。移植や輸血の既往は、NIPTを受ける前に必ず申告しておくべき情報です。母体側の要因全体はNIPTの偽陽性の原因:母体側の要因で解説します。

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6. パターン4:核型は男の子、NIPTでもY染色体、超音波で女性の外性器

染色体は46,XYでNIPTもY染色体を正しく検出しているのに、外性器が女性型に見える状態です。46,XYの赤ちゃんで、男性化に必要な仕組みのどこかが働いていないことを考えます。

46,XYの胎児が男性の外性器をもつまでには、①SRYが働いて精巣ができる、②精巣が男性ホルモン(テストステロン)を作る、③テストステロンがより強いジヒドロテストステロンに変換される、④体の細胞がアンドロゲン受容体でそれを受け取る、という段階が必要です。どの段階が働かなくても、外性器は女性型または中間的な形になります。

SRY精巣ができる
▶
テストステロン精巣で合成
▶
DHT5α還元酵素で変換
▶
受容体男性型の外性器

段階ごとの代表的な原因は次のとおりです。①ではSRYなどの性腺形成に関わる遺伝子の病的変化によって精巣の形成が障害され、46,XYでも女性型になるSwyer症候群があります。②では、テストステロンを作る酵素(17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素3型など)の欠損があります。コレステロールの合成が障害されるスミス・レムリ・オピッツ症候群でも、ステロイドホルモンの材料が不足し、46,XYの男の子の外性器が十分に男性化しないことがあります。③では5α還元酵素の欠損、④ではアンドロゲン不応症候群があり、完全型ではテストステロンは十分にあっても体がそれを受け取れないため、外見は女性型になります[2]。

このパターンは、NIPTの性別判定がなければ出生時、あるいは思春期まで気づかれないことがある状態を、妊娠中に見つけるきっかけになります。どの段階の問題かによって、出生後の評価や治療の方針が変わります。たとえば完全型のアンドロゲン不応症候群では、お腹の中や鼠径部に精巣があり、鼠径ヘルニアの手術のときに初めて見つかることもあります。妊娠中に核型と外性器の食い違いが分かっていれば、出生後に性腺の位置やホルモンの評価を計画的に進めることができます。

パターン2の先天性副腎過形成も同じで、重い型では生後早い時期に塩分を失う副腎不全(塩類喪失)を起こすことがあります。46,XXで外性器が男性化していると妊娠中に分かっていれば、出生直後から副腎の働きを確かめる準備ができます。性別の不一致の評価が、赤ちゃんの安全につながる場面があるということです。

7. 羊水検査で分かる性別と、結果の見方

羊水検査では、羊水中の胎児由来の細胞を培養して染色体を調べるため、染色体の性(46,XXか46,XYか)をNIPTより確実に知ることができます。胎児側の細胞を直接調べるため、NIPTでみられる胎盤限局性モザイク、バニシングツイン、母体の移植・輸血によるcfDNAの影響を基本的に避けられます。ただし、母体細胞の混入や低頻度・組織限定のモザイクなど、検査自体の限界はあります。羊水検査の内容は羊水検査・絨毛検査で紹介しています。

46,XX/46,XYの読み方

羊水検査の結果は、核型として「46,XX」「46,XY」のように書かれます。最初の数字は染色体の総数、その後ろが性染色体の組み合わせで、46,XXは女性型、46,XYは男性型の染色体の構成です。性染色体の数が違えば、47,XXY(クラインフェルター症候群)や45,X(ターナー症候群)のように書かれ、2種類の細胞が混ざっていれば「45,X/46,XY」のように斜線で区切って表します。結果が出るまでの日数は羊水検査の結果はいつわかる?をご覧ください。

迅速検査(FISH・QF-PCR)でも性染色体は分かる

核型分析の結果が出る前に、FISHやQF-PCRといった迅速検査で、13・18・21番と性染色体の数を先に調べることがあります。これらでも、使用するプローブやマーカーが対応する範囲でX・Y染色体のコピー数を推定できますが、調べているのは特定の部位の数だけで、SRYを含む小さなY染色体の断片がX染色体に移っているかどうかは、SRYを対象とするFISHプローブやPCR検査を組み合わせない限り、通常の迅速検査だけでは判断できません。迅速検査の仕組みは羊水検査の迅速検査(FISH・QF-PCR)で解説しています。

「染色体の性」と「外性器の性」は一致しないことがある

ここまで見てきたように、羊水検査で46,XXや46,XYと分かっても、それは染色体の性であって、外性器の形を保証するものではありません。パターン2・4のように、核型と超音波の所見が食い違う場合は、性分化疾患の可能性を考えて、さらに詳しい評価に進みます。

8. 性別の不一致が見つかったときの確かめ方

性別の不一致が見つかったら、①検体の取り違えの除外、②病歴の確認、③超音波の再評価、④羊水検査による核型の確認、⑤必要に応じた遺伝子検査、⑥出生後の専門的な評価、を状況に応じて進めます。2025年のレビューでも、妊娠中はNIPTの再検査、超音波の詳しい見直し、移植・双胎・アンドロゲン曝露の病歴の確認、希望があれば羊水検査による核型と染色体マイクロアレイを行い、出生後は小児内分泌・泌尿器・遺伝の専門家による多職種チームで評価することが勧められています[2]。

🩺 性別の不一致を確かめる手順

段階 確かめること 分かること
病歴 移植・輸血、双胎の有無、男性ホルモン作用のある薬 パターン3・2の母体側・外因の原因
超音波 外性器の再評価、妊娠初期の胎嚢の数 見間違いの除外、バニシングツインの手がかり
羊水検査 核型、迅速検査、必要に応じてマイクロアレイ 染色体の性、性染色体のモザイクや構造の変化
遺伝子検査 SRYのFISH、性分化疾患の遺伝子パネル XX男性、SRY変異、アンドロゲン不応症など
出生後 外性器・性腺・ホルモンの評価 性分化疾患の診断と治療方針

※Witchel 2025[2]、López Soto 2020[3]をもとに作成。

性分化疾患が疑われる場合の遺伝子検査には、性分化疾患(DSD)遺伝子検査パネルのように、関連する多くの遺伝子をまとめて調べる方法があります。妊娠中に原因まで確定できないことも多いため、出生後の評価につなぐことが前提になります。

性別の不一致では、検査結果の意味と追加評価の必要性を家族に説明することが重要です。2025年のレビューは、家族がNIPTの性別予測を赤ちゃんの性別の確定的な判定として受け止めがちであることを指摘し、検査前の説明で限界を伝えることの重要性を強調しています[2]。ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医がNIPTの結果を説明し、確定検査として羊水検査・絨毛検査まで院内で行える体制を整えています。

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よくある質問(FAQ)

Q1. 羊水検査で分かる性別は確実ですか?

羊水検査は胎児側の細胞の染色体を調べるため、46,XXか46,XYかという染色体の性については、NIPTより確実です。ただし、染色体の性と外性器の形が一致しない性分化疾患もあるため、超音波の所見と食い違う場合はさらに詳しい評価が必要です。

Q2. NIPTと羊水検査で性別が違ったら、どちらを信じればよいですか?

染色体の性については、胎盤を通さずに調べる羊水検査の結果を優先します。NIPTが違う結果を示した原因として、検体の取り違え、胎盤のモザイク、バニシングツイン、母体の移植・輸血の既往などを確認します。

Q3. Y染色体があれば必ず男の子になりますか?

必ずではありません。SRY遺伝子の変異、男性ホルモンを作る酵素の欠損、アンドロゲン不応症候群などでは、46,XYでも外性器が女性型または中間的な形になります。反対に、SRYを含むY染色体の断片がX染色体に移ったXX男性では、46,XXでも男性型になります。

Q4. 移植や輸血を受けたことがあると、NIPTの性別に影響しますか?

男性から臓器移植や骨髄移植を受けた場合、ドナー由来のDNAにより、胎児が46,XXでもNIPTでY染色体が検出されることがあります。最近の輸血の影響は血液成分や経過時間で異なります。移植や輸血の既往は、NIPTを受ける前に申告してください。

Q5. NIPTの性別判定が外れることはどのくらいありますか?

NIPTの性別と超音波または出生時の外性器が食い違う頻度は、少なくとも1,500〜2,000妊娠に1件と報告されています。2025年のレビューは性分化疾患による割合をおよそ1割と推定していますが、頻度や原因の割合は対象集団・検査方式・報告方法で異なります。性別の不一致がすべてNIPTの誤判定を意味するわけではありません。

まとめ

NIPTの性別判定は、方式に応じて母体血中のY染色体由来の配列やX・Y染色体の情報を調べ、主に胎盤由来のDNAから染色体の性を推定するものです[1]。NIPT・超音波・核型の性別の食い違いは1,500〜2,000妊娠に1件ほど報告されており、その多くは検体の取り違え、胎盤のモザイク、バニシングツイン、母体の移植・輸血などによるものです[2][3]。

NIPTだけが食い違う場合はNIPT側のずれを、核型とNIPTが一致して外性器だけが違う場合は、XX男性や先天性副腎過形成、アンドロゲン不応症候群などの性分化疾患を考えます[2][4]。羊水検査の核型は染色体の性について確実な情報を与えますが、外性器の性とは一致しないことがあるため、不一致が見つかったら超音波の再評価、核型、遺伝子検査、出生後の専門的な評価へと段階的に確かめていきます。

🧬 NIPTの結果を染色体の仕組みから理解したい方へ

ミネルバクリニックでは、常駐する臨床遺伝専門医が、NIPTで何が分かり何が分からないのか、当院で受ける検査の結果と必要な追加検査についてご説明しています。陽性の場合の羊水検査・絨毛検査も院内で行っています。

参考文献

  • [1] Wright CF, Wei Y, Higgins JPT, Sagoo GS. Non-invasive prenatal diagnostic test accuracy for fetal sex using cell-free DNA a review and meta-analysis. BMC Res Notes. 2012;5:476. [DOI 10.1186/1756-0500-5-476]
  • [2] Witchel SF, Rajkovic A, Yatsenko SA. Discrepancies between sex prediction and fetal sex after prenatal noninvasive cell-free DNA screening. J Endocr Soc. 2025;9(2):bvaf007. [DOI 10.1210/jendso/bvaf007]
  • [3] López Soto Á, Bueno González M, Urbano Reyes I, et al. Fetal sex discordance. Taiwan J Obstet Gynecol. 2020;59(5):652-655. [DOI 10.1016/j.tjog.2020.07.004]
  • [4] MedlinePlus Genetics. 46,XX testicular difference of sex development. U.S. National Library of Medicine; 2022. [MedlinePlus Genetics]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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