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フェージング解析とは、ある人がもつ遺伝子の変化(バリアント)が、父由来・母由来のどちらの染色体に並んでいるかを読み解き、その並び(ハプロタイプ)を再構築する手法です。着床前診断のひとつであるPGT-M(単一遺伝子疾患を対象とした検査)では、このフェージングを用いた連鎖解析が、ごくわずかな細胞から検査するときに避けられない「読み間違い」を防ぎ、診断の正確さを支える土台になっています。
Q. フェージング解析とは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. 遺伝子の変化が「どちらの染色体に乗っているか」を確定し、その染色体全体の目印(マーカー)の並びを追跡する手法です。変化そのものを1点だけ調べるのではなく、周囲の複数の目印ごと追いかけることで、微量検査につきものの読み間違い(誤診)を防ぎます。着床前診断(PGT-M)の正確さを支える中核技術です。
- ➤なぜ必要か → わずか数個の細胞からの検査で起こる「アレル・ドロップアウト(ADO)」を回避するため
- ➤仕組み → 変化の周囲にある複数のマーカー(SNP・STR)の並びでハプロタイプを再構築する
- ➤技術の進化 → 家系ごとのSTR法から、ゲノム全体を一度に見るキャリオマッピングへ
- ➤最新技術 → ロングリード・シーケンスで、新生突然変異でも患者本人だけで解析可能に
- ➤臨床での位置づけ → 遺伝カウンセリングと、妊娠後の出生前診断による最終確認が前提
1. フェージング解析とは:遺伝子の「並び方」を読む技術
私たちは同じ染色体を父から1本、母から1本、合わせて2本ずつ持っています。ある遺伝子に変化があるとき、その変化が「父由来の染色体」に乗っているのか「母由来の染色体」に乗っているのかという情報は、見た目の塩基配列だけでは分かりません。フェージング解析(位相決定)とは、複数の遺伝的な目印を手がかりに、どの変化とどの目印が同じ染色体に並んでいるかを確定し、その染色体まるごとの設計図(ハプロタイプ)を組み立て直す作業のことです。
💡 用語解説:フェージング(位相決定・Phasing)
2本ある染色体のうち、ある変化や目印が「同じ1本の上に並んでいるか(シス配置)」「別々の染色体にあるか(トランス配置)」を見分けることをフェージングといいます。これによって、父由来・母由来それぞれの染色体の中身(ハプロタイプ)が再構築できます。「どの染色体に変化が乗っているか」が分かると、その染色体が子へ受け継がれたかどうかを目印の並びから追跡できるのです。
この技術がもっとも重要な役割を果たすのが、着床前診断のなかでも単一遺伝子疾患を対象とするPGT-Mです。体外受精で得られた胚から数個の細胞を採り、重い遺伝性疾患の原因となる変化が次の世代へ受け継がれていないかを調べます。ここでフェージングは、「変化そのものを直接さがす」やり方の弱点を補い、診断の信頼性を一段引き上げる役割を担います。つまりフェージング解析は、純粋な基礎科学の話ではなく、どの胚を子宮に戻すかという、ご家族の現実的な選択に直接つながる臨床の技術なのです。
PGT-Mの診断は、その結果の重みから、遺伝カウンセリングとセットで進められます。検査の前にはご夫婦や、すでに診断のついたご家族のDNAを使った準備(プレワークアップ)が行われ、その設計を担うのが臨床遺伝専門医と遺伝学の専門家です。この記事では、フェージングの仕組みを一般の方にも分かるようにかみくだきつつ、最新のゲノム解析がこの分野をどう変えつつあるかまで、ていねいに解説していきます。
2. なぜ必要なのか:微量DNAと「アレル・ドロップアウト」
PGT-Mの最大の難しさは、検査に使えるDNAが圧倒的に少ないことです。現在は受精から5〜6日目の胚盤胞から、将来胎盤になる部分(栄養外胚葉)の細胞を5〜10個ほど採取します。胎児になる部分を傷つけずに済む優れた方法ですが、それでも得られるDNAはごく微量です。そのため、解析の前に全ゲノム増幅(WGA)でDNAをコピーして増やす必要があります。
💡 用語解説:全ゲノム増幅(WGA)
ごく少数の細胞に含まれるわずかなDNAを、解析に十分な量までコピーして増やす技術の総称です。代表的な方法に多重置換増幅(MDA)やPicoPLEXがあります。長い断片を均一に増やせるなど性能は向上していますが、コピーの過程で「片方だけ増えにくい」といった偏りが完全になくなるわけではありません。この偏りが、次に説明するアレル・ドロップアウトの原因になります。
このコピーの過程で起こる最大のトラブルが、アレル・ドロップアウト(ADO)です。これは、本来2種類あるはずのアレル(父由来と母由来の遺伝子のコピー)のうち、片方がうまく増えず、検出できなくなってしまう現象です。その結果、本当はヘテロ接合(2種類のアレルを持つ状態)なのに、見かけ上はホモ接合(同じアレルが2つ)のように見えてしまいます。
💡 用語解説:アレル・ドロップアウト(ADO)
増幅の途中で2つのアレルの片方が検出できなくなる現象です。変化を直接1点だけ調べていると、ADOは見えない形で誤った結論につながります。たとえば変異アレルだけが消えれば「正常」と読み違え、正常アレルだけが消えれば「変異だらけ」と読み違えてしまいます。PGT-Mで誤診(偽陽性・偽陰性)が起きる、もっとも重大な原因です。
変化を直接さがす方法(直接変異検査)だけに頼ると、ADOは深刻な結果を招きます。常染色体顕性(優性)遺伝の病気で変異側が消えれば、罹患している胚を「正常」と誤って移植してしまう(偽陰性)おそれがあります。逆に、常染色体潜性(劣性)遺伝の保因胚で正常側が消えれば、本来は移植できたはずの胚を「病気」と誤って捨ててしまう(偽陽性)ことになります。どちらもご家族にとって取り返しのつかない結果です。
💡 用語解説:ミスセンス変異
DNAの塩基が1つ置き換わることで、設計図が指定するアミノ酸が別の種類に変わってしまうタイプの変化です。タンパク質の形や働きに影響することがあります。PGT-Mで追跡する原因変化には、このミスセンス変異をはじめ、塩基が抜ける・入る変化、大きな欠失や反復配列の異常など、さまざまな種類があります。種類によって直接さがしやすいものと、さがしにくいものがあります。
さらに、ゲノムには物理的にコピーしにくい場所があります。脆弱X症候群の原因となるFMR1遺伝子のように長い反復配列がある領域や、極端にGCに富む領域は増幅が困難です。また常染色体顕性多発性嚢胞腎(ADPKD)の原因遺伝子PKD1のように、ゲノム上にそっくりな「偽遺伝子」が複数あると、増えたDNAが本物か偽物か区別できません。こうした事情から、変化を直接さがす検査だけを単独で使うことは国際的に戒められています。この弱点を根本から補うのが、次に説明するフェージング(連鎖解析)です。
3. 連鎖解析の仕組み:複数の目印で「地図」を作る
フェージングを使った連鎖解析の発想はシンプルです。原因となる変化そのものを1点だけ狙うのではなく、その変化のすぐ近くにある複数の目印(マーカー)を、変化と一緒に追いかけるのです。近くにある目印は、世代を超えても変化と一緒に受け継がれやすい性質があります。だから目印の並びを見れば、「どの親のどの染色体が胚に伝わったか」を間接的に言い当てられます。
💡 用語解説:SNPとSTR(目印になる多型)
SNP(一塩基多型)は、たった1か所の塩基が人によって違う、最もありふれた個人差です。STR(短い縦列反復)は、短い配列が何回くり返されるかが人によって違うタイプの個人差です。どちらも「人によって違う」ため、父由来・母由来の染色体を見分ける目印として使えます。連鎖解析では、この目印が標的の上流・下流にいくつあるかが、解析の精度を左右します。
💡 用語解説:ハプロタイプとハプロブロック
ハプロタイプとは、同じ1本の染色体に並んでいる目印(アレル)の組み合わせのことです。互いに近い目印どうしは、世代を超えてもバラバラになりにくく、ひとつのまとまり(ハプロブロック)として受け継がれます。PGT-Mの準備段階では、病気の原因変化を含む「高リスク・ハプロタイプ」と、正常な「低リスク・ハプロタイプ」の目印の並びをあらかじめ決めておきます。
この方法の最大の利点は、ADOにとても強い(頑健)ことです。仮に標的の変化や、ある1つの目印で増幅がうまくいかなくても、周囲に置いた複数の目印が読めていれば、ハプロブロック全体の並びから「どの染色体が伝わったか」を正しく組み立て直せます。1か所が欠けても全体像が崩れない、いわば「冗長性のある地図」を持っているわけです。
さらに連鎖解析は、外部のDNA混入(コンタミネーション)の検出にも有効です。母親由来の細胞や、術者・環境のDNAが紛れ込むと、目印の並びがメンデル遺伝の法則からはっきり外れます。複数の目印を見ているからこそ、その「ありえない並び」を異常として即座に検知でき、誤診を未然に防げるのです。下の図は、同じ「ヘテロ接合」の細胞でも、読み方によって結論が分かれる様子を表しています。
図1:ADO(アレル・ドロップアウト)と連鎖解析による保護
同じ「ヘテロ接合」の細胞でも、読み方しだいで結論が変わります
正常アレル(A)と変異アレル(a)を1つずつ持つ
▼ 全ゲノム増幅(WGA)の途中で、片方のアレルが増えないことがある=ADO
変異アレル(a)が消える → 「正常(AA)」と読み違える
偽陰性(見落とし)のリスク
周囲の複数マーカーの並びで判定 → 1つ欠けても全体から再構築
正確な診断につながる
4. 検査技術の進化:STRからキャリオマッピングへ
フェージングを支える技術は、この20年で大きく変わりました。長らく標準だったのは、STR(短い縦列反復)を目印に使う方法です。1つの目印で多くの情報が得られる利点がある一方、家系や疾患ごとに専用の検査を一から開発する必要があり、数か月の準備期間がかかりました。さらに、2塩基くり返しのSTRでは「スタッター」と呼ばれる偽の信号が出やすく、判定を難しくする弱点もありました。
💡 用語解説:キャリオマッピング(Karyomapping)
2010年に登場した手法で、個別の目印を1つずつ調べるのではなく、マイクロアレイという技術を使ってゲノム全体に分布する約30万か所のSNPの型を一度に読み取ります。標的の上流・下流それぞれ2メガベース(200万塩基)ほどの範囲に十分な数の情報価値のあるSNPを見つけられるため、疾患や家系ごとの専用設計が不要になりました。準備期間は数か月から数週間へ大幅に短縮されています。
キャリオマッピングの実績は確かです。報告によれば、9,020症例・1,017種類の疾患(912の遺伝子)に適用され、独立して検証できた約73%(4,120の変異)において誤診は1件も検出されていません。既知のHBB(ヘモグロビンβ)変異の検証でも、従来法と約97%という高い一致率が示されています。一から専用検査を作らずに、あらゆる単一遺伝子疾患へ同じ土台で対応できる点が、この方法を世界的な標準へ押し上げました。
もうひとつの強みが、染色体の本数異常を調べる検査(PGT-A)を同時に行えることです。SNPの信号の強さやバランスから、染色体の異数性(トリソミーやモノソミー)、部分的な欠失・重複、片親性ダイソミー(UPD)まで見渡せます。遺伝子の変化を持たず、かつ染色体の本数も正常な、本当に移植に適した胚を選べるのです。
一方で留意点もあります。ゲノム全体を見る手法のため、検査の目的とは別に、予期しない血縁関係や父性の不一致、意義のはっきりしないコピー数の違い、性染色体の所見など、副次的な情報が見つかることがあります。だからこそ、検査の前後に十分な遺伝カウンセリングで「何が分かりうるか」を共有しておくことが欠かせません。
5. 直接法と連鎖解析の「二重確認」という原則
連鎖解析は強力ですが、単独では弱点もあります。最大のリスクが、染色体が混ざり合う相同組換え(乗換え)です。
💡 用語解説:相同組換え(乗換え・クロスオーバー)
卵子や精子が作られる減数分裂のとき、父由来と母由来の染色体が一部を交換し合う現象です。これによって遺伝の多様性が生まれます。ただしPGT-Mの連鎖解析では、もし目印と原因変化のあいだで乗換えが起きると、目印の並びは正常に見えても実際の変化は別の染色体へ移っている、という食い違いが生じ、誤診につながりえます。
このリスクを抑えるため、目印は標的の上流と下流の両側に置いて「はさみ込む」ように配置します。両側の目印がどちらも同じ連鎖関係を保っていれば、その間の狭い範囲で都合よく二重に乗換えが起こる確率は極めて低く、診断の確かさは大きく高まります。目印が標的から離れすぎていると、乗換えのリスクが上がるため、距離の設計はとても重要です。
そこで国際的な標準とされているのが、「直接変異検査」と「フェージング(連鎖解析)」を両方行い、結果が完全に一致した胚だけを移植適格とする二重確認です。ヨーロッパ生殖医学会(ESHRE)の指針も、可能なかぎりこの組み合わせを強く推奨しています。両者が食い違ったとき(たとえば連鎖解析は正常を示すのに直接検査では変異が出る、など)は、ADO・乗換え・混入のいずれかを疑い、その胚の移植は保留または除外します。
ただし例外として、直接検査を伴わない「連鎖解析のみ」が認められる場面もあります。発症前診断を望まないハンチントン病などでの除外テスト、特定の免疫型の一致だけを見るHLAタイピング、増幅が物理的に難しい領域、そしてPKD1のように偽遺伝子があって直接検査の設計が困難な場合などです。どの方針を選ぶかは、疾患の性質とご家族の意思をふまえ、慎重に決められます。
6. 「発端者がいない」という壁:新生突然変異の難しさ
従来のフェージングには、構造的な弱点がありました。「どのハプロタイプに原因変化が乗っているか」を決めるには、ご夫婦のDNAに加えて、遺伝的な状態が分かっている家族(参照サンプル)のDNAがほぼ必須だったのです。典型的には、すでに診断のついたお子さんや、保因者である親の親(祖父母)が参照に使われます。
💡 用語解説:新生突然変異(de novo変異)
親から受け継いだものではなく、患者本人で新しく生じた変化のことです。常染色体顕性(優性)やX連鎖の病気でよく見られます。この場合、親には同じ変化がないため、親のDNAを調べても「患者のどちらの染色体に変化が乗っているか」を決められません。第一子を望む場合は、診断のついたお子さんという参照サンプルも存在しません。
新生突然変異だけでなく、親が存命でも遺伝情報の開示を伴うため協力が得にくい、物理的な距離や死別でDNAが得られない、といった事情も少なくありません。近親婚の家系では、両親で共通する領域が広がりすぎ、必要な情報価値のあるSNPが減ってしまう問題もあります。X連鎖の病気では、男性は変化を1つ持つだけで発症するヘミ接合という事情も、解析設計に影響します。
こうした難しいケースには、従来いくつかの回避策がとられてきましたが、いずれも負担や不確実さが残りました。男性患者では多数の単一精子から連鎖を直接確認する方法、女性患者では卵子の極体を分析する方法、あるいは体外受精でできた胚の一部を直接検査し、確実に変化を持つと判明した胚を後から「発端者」として使う方法などです。最後の方法は確率に左右され、たとえば8個の胚が得られても、罹患胚が1つも含まれない(フェージングが成立しない)確率が約10%あります。患者は、解析が成立しないかもしれないリスクを抱えたまま、身体的負担の大きい採卵に踏み出さねばなりませんでした。
7. 最新技術:ロングリード・シーケンスによる直接ハプロタイピング
親族のサンプルに頼らず、患者本人のDNAだけから連鎖の位相を決める「直接ハプロタイピング」は、この分野の大きな目標でした。これを実現しつつあるのが、最新のゲノム解析技術です。まず登場したのが、長いDNA分子に共通のバーコードを付けて読み解くリンクドリード法(HLRS)です。末梢血から高分子量のDNAを抽出し、厳しい品質基準を満たしたうえで解析することで、発端者なしにハプロタイプを確定できるようになりました。
💡 用語解説:ロングリード・シーケンス(LRS)
従来の解析がDNAを細かく砕いて読むのに対し、ロングリード・シーケンス(PacBioやOxford Nanoporeなど)は、1万塩基から数百万塩基にもおよぶ長い分子を、途切れずに1本のまま読み取る技術です。これにより、原因変化とその周囲の目印が「物理的に同じ1本の上にある」状態を直接観測できます。つまり、わざわざ家族と比べなくても、本人のDNAだけで並びが分かるのです。
ロングリード・シーケンスの臨床的な意義は大きく、Clair3やWhatsHapといった解析ツールと組み合わせることで、次のような場面で力を発揮します。新生突然変異をもつ女性患者など、単一精子タイピングが使えず親族の協力も得られない難しいケースでも、本人のDNAだけで自己完結的にハプロタイプを組み立てられるようになりました。
さらに、長い読み取りは複雑な領域にも強みを発揮します。偽遺伝子のせいで増幅・解析が難しかったPKD1のような領域でも、ロングリードは偽遺伝子をまたいで正確な位置情報を保ったまま読み進められます。大きな欠失や挿入をもつ家系では、切断点をまたぐ読み取りによって正確なハプロタイプを構築し、染色体構造異常を対象とするPGT-SRと統合した解析も報告されています。下の図は、家族の検体を必要とした従来法と、患者本人だけで完結するロングリード法の違いを示したものです。
図2:フェージング確立までの流れ
従来法は家族の検体が必要でしたが、ロングリード法は患者本人だけで完結します
カップルのDNA + 親族・診断済みのお子さんのDNA(必須)
どの染色体に変化が乗るかを決定(フェーズ再構築)
胚を検査
患者本人のDNAのみ(家族の検体は不要)
1本の長い読み取りで、変化と目印を同時に観測(直接ハプロタイピング)
胚を検査
8. 遺伝カウンセリングと出生前の最終確認
どれほど解析技術が進んでも、PGT-Mは「健康なお子さんを100%約束する魔法」ではありません。だからこそ、検査の前後に行う遺伝カウンセリングが、技術と同じくらい大切になります。カウンセリングでは、検査の範囲と限界、そしてプロセス全体のリスクについて、適切な期待が持てるよう一緒に整理していきます。
具体的には、そもそも十分な数の胚が育たず、移植できる胚が1つも得られないことがあること、生検の失敗や胚内のモザイク現象によって、確定的な判定が下せない(診断不能)場合があることを、あらかじめ共有します。また、PGT-Mを希望される方は必ずしも不妊ではありませんが、軽度の妊娠しにくさ(サブファーティリティ)を抱える場合、そうでない方と比べて胚移植あたりの臨床妊娠率が約48%、生児獲得率が約42%低いというデータも報告されています。体外受精全体の見通しを立てるうえで、こうした数字を率直に共有することが重要です。
そして忘れてはならないのが、妊娠が成立したあとの出生前診断による最終確認です。胚盤胞で調べるのは将来胎盤になる部分の細胞であり、実際に赤ちゃんになる部分と完全に一致しないことがあります。そのため国際的な標準では、PGT-Mのあとに妊娠した場合でも、絨毛検査(CVS)や羊水検査(妊娠16週ごろ)などで結果を確定させることが強く推奨されています。PGT-Mは、あくまでリスクを劇的に下げる検査であって、最終的な診断確定そのものではないのです。
医師の役割は、特定の検査をすすめたり、安心を保証したり、不安をあおったりすることではありません。正確な情報を中立に提供し、最終的な選択はご家族に委ねる——この姿勢を貫くことが、フェージングのような高度な技術を扱う現場でこそ、いっそう大切になります。最新のゲノム技術が示すことと、その限界やリスクの両方を、ご家族の言葉に翻訳して伝える遺伝カウンセリングの機能は、これからますます中心的な役割を担っていくでしょう。
よくある質問(FAQ)
🏥 着床前診断・遺伝カウンセリングについて
PGT-Mや遺伝性疾患に関するご相談は、
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにお気軽にお問い合わせください。
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参考文献
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