目次
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ホモ接合(ホモ接合体)とは、ある遺伝子の2つのアレル(対立遺伝子)が同じである状態、またはその状態の人や個体のことです。AとaというアレルがあればAAやaaがホモ接合で、Aaはヘテロ接合です。英語では homozygous(ホモザイガス)と言い、両方の親から同じアレルを受け継いだことを表します[1]。潜性(劣性)の病気は、病気の原因になる変化を両方のアレルにもつと発症します。この記事では、ホモ接合の意味をわかりやすく整理したうえで、ヘテロ接合・ヘミ接合・複合ヘテロ接合との違い、いとこ婚との関係、遺伝子検査で「ホモ接合」と出たときの読み方まで解説します。
⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. ホモ接合(ホモ接合体)とは?
ある遺伝子について、両親から受け継いだ2つのアレルが同じ状態(AA・aa)のことです。その状態の人や個体をホモ接合体と呼びます。
🧬 Q. ヘテロ接合との違いは?
2つのアレルが違う状態(Aa)がヘテロ接合です。男性のX染色体の遺伝子のように1つしかないアレルの状態はヘミ接合と呼び、どちらとも区別します。
🧬 Q. ホモ接合だと病気になりますか?
ホモ接合そのものは病気ではありません。潜性(劣性)の病気は、病気の原因になる変化を両方のアレルにもつ(ホモ接合か複合ヘテロ接合)と発症します。
🧬 Q. 子どもがホモ接合になる確率は?
両親がともに同じ遺伝子の保因者(ヘテロ接合)なら、子どもが変化を両方受け継ぐ確率は妊娠ごとに4分の1です。家族に患者さんがいなくても起こります。
- ➤ホモ接合 → 2つのアレルが同じ(AA・aa)。ホモ接合体はその状態の人や個体
- ➤ヘテロ接合・ヘミ接合・複合ヘテロ接合 → 比較表で違いを整理
- ➤潜性(劣性)の病気 → 両方のアレルに変化があると発症。両親が保因者なら妊娠ごとに4分の1
- ➤遺伝子検査の「ホモ接合」 → 欠失や片親性ダイソミーが関わっていることがある

1. ホモ接合(ホモ接合体)とは?わかりやすく解説
ホモ接合とは、ある遺伝子座にある2つのアレル(対立遺伝子)が同じである状態のことです。米国国立ヒトゲノム研究所(NHGRI)の用語集でも、homozygous は両方の生物学的な親から同じ型(アレル)を受け継いだ状態と説明されています[1]。
ヒトは父親と母親から1組ずつ染色体を受け継ぐため、22対の常染色体にある遺伝子は、ふつう2つずつもっています。染色体上で遺伝子が置かれている場所を遺伝子座といい、同じ遺伝子座にある塩基配列の違う型をアレル(対立遺伝子)といいます。ホモ接合かどうかは、この「同じ場所にある2つの型」を比べて決まります。
「ホモ(homo)」はギリシャ語で「同じ」を表す言葉で、「ヘテロ(hetero)」は「異なる」を表します。「ホモ」という言葉そのものの意味や使い方は「ホモ」の用語解説にまとめています。このページでは、遺伝学の「ホモ接合」に絞って説明します。
AA・aaの例で見るホモ接合
2つのアレルを記号で書いたとき、AAやaaのように同じ文字が並ぶのがホモ接合、Aaのように違う文字が並ぶのがヘテロ接合です。遺伝の説明では、顕性(優性)のアレルを大文字、潜性(劣性)のアレルを小文字で書く習慣があります。
大切なのは、ホモかヘテロかは「遺伝子ごと」に決まるという点です。1人の人の中で、ある遺伝子はホモ接合、別の遺伝子はヘテロ接合ということが当たり前に起こります。「あの人はホモ接合体だ」という言い方は、特定の遺伝子(またはある変化)について述べているときにだけ意味をもちます。
また、ホモ接合は「病気の状態」を指す言葉ではありません。多くの遺伝子では、ふつうに働く同じアレルを2つもつホモ接合のほうが、むしろよくある状態です。病気と関係するのは、病気の原因になる変化(病的バリアント)を両方のアレルにもつ場合で、これは第4章で詳しく説明します。
「ホモ接合」「ホモ接合体」「ホモ接合性」「ホモ接合型」の違い
ホモ接合は状態、ホモ接合体はその状態の人や個体、ホモ接合性はホモ接合であること(性質)を指します。英語ではそれぞれ homozygous(形容詞)、homozygote(名詞)、homozygosity(名詞)に当たります。日本語の文献では、ホモ接合と同じ意味で「ホモ接合型」「ホモ型」「ホモ」と書かれることもあります。
📘 ホモ接合に関係する言葉の使い分け
| 日本語 | 英語 | 意味・使い方 |
|---|---|---|
| ホモ接合 | homozygous | 2つのアレルが同じ状態。「この遺伝子についてホモ接合である」 |
| ホモ接合体 | homozygote | ホモ接合の状態にある人・個体。「ホモ接合体の患者さん」 |
| ホモ接合性 | homozygosity | ホモ接合であること。「ホモ接合性の領域(ROH)」 |
| ホモ接合型・ホモ型 | homozygous type | ホモ接合と同じ意味で使われる言い方 |
※病名では「家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)」のように、ホモ接合体という言い方が使われます。
顕性ホモ・潜性(劣性)ホモとは?
顕性(優性)のアレルを2つもつAAを顕性ホモ(優性ホモ)、潜性(劣性)のアレルを2つもつaaを潜性ホモ(劣性ホモ)と呼びます。潜性のアレルの性質は、もう片方に顕性のアレルがあると表に出にくく、2つとも潜性のアレルになったときに表現型として現れます。
「優性・劣性」という言葉は、アレルの性質が表に出やすいかどうかを表すもので、優れている・劣っているという意味ではありません。日本遺伝学会は2017年に、価値判断を含む語感を避けるため「優性」を「顕性」、「劣性」を「潜性」と言い換える用語の改訂を示しました[5]。とくに医療の場では「劣性」という言葉が患者さんやご家族にマイナスの印象を与えることが問題にされてきたため、このサイトでは「潜性(劣性)」と書いています。
なぜ潜性のアレルは片方だけだと表に出にくいのか、という分子のしくみは、優性・劣性(顕性・潜性)の分子メカニズムで詳しく解説しています。多くの場合、ふつうに働くアレルが1つあれば、必要な量のタンパク質や酵素の働きをまかなえるためです。
💡 用語解説:遺伝子座とアレル
遺伝子座(いでんしざ)は、染色体の上で遺伝子が置かれている「住所」のようなものです。アレル(対立遺伝子)は、同じ住所にある遺伝子の、塩基配列が少し違う「型」のことです。ヒトは同じ住所の遺伝子を父親由来と母親由来で2つもつので、その2つの型が同じならホモ接合、違えばヘテロ接合になります。
2. ホモ接合とヘテロ接合・ヘミ接合・複合ヘテロ接合の違い(比較表)
2つのアレルが同じならホモ接合、違えばヘテロ接合、アレルが1つしかなければヘミ接合です。病気の原因になる変化が2つのアレルに1つずつあり、その2つが違う変化である場合は、複合ヘテロ接合と呼んで区別します。
🧬 ホモ接合・ヘテロ接合・ヘミ接合・複合ヘテロ接合の違い
| 状態 | アレルの組み合わせ | 例 | 潜性(劣性)の病気での意味 |
|---|---|---|---|
| ホモ接合(homozygous) | 2つが同じ | AA、aa/同じ病的バリアントを2つ | 病的バリアントのホモ接合なら発症につながる |
| ヘテロ接合(heterozygous) | 2つが違う | Aa/病的バリアントを1つ | 通常は発症しない保因者 |
| 複合ヘテロ接合(compound heterozygous) | 2つとも病的だが、変化が違う | a1とa2 | 両方のアレルに病的バリアントがあり、発症につながる |
| ヘミ接合(hemizygous) | 1つしかない | 男性のX染色体の遺伝子 | X連鎖潜性の病気は1つの変化で発症しうる |
※アレルの組み合わせによる分類です。実際に症状が出るかどうかは、病気ごとの浸透率や個人差も関わります。
この表で注意したいのは、「ホモかヘテロか」と「顕性か潜性か」は別の物差しだということです。ホモ・ヘテロは2つのアレルが同じか違うかという「組み合わせ」の話で、顕性・潜性はそのアレルの性質が表に出やすいかどうかという「現れ方」の話です。顕性のアレルの性質はAAでもAaでも現れるため、見た目や検査値だけではAAとAaを区別できないことがあります。反対に、潜性のアレルの性質が表に出ているなら、その遺伝子はaaのホモ接合(またはそれに相当する組み合わせ)だと考えられます。遺伝子検査が役に立つのは、この「見ただけでは分からない組み合わせ」を直接読み取れるからです。
ヘテロ接合との違いは?
ヘテロ接合は、2つのアレルが違う状態(Aa)です。潜性(劣性)の病気では、病的バリアントをヘテロ接合でもつ人は、ふつう症状がない保因者です。米国国立医学図書館の解説でも、常染色体潜性の病気では両方の遺伝子のコピーに変化があり、両親はそれぞれ変化を1つずつもつ保因者で、通常は症状がないと説明されています[2]。
ヘテロ接合の意味や「ヘテロ」という言葉の使い方は、ヘテロ接合(ヘテロ接合体)とはで詳しく扱っています。ここでは、ホモ接合とヘテロ接合の違いが「2つのアレルが同じか違うか」の1点だということを押さえておけば十分です。
複合ヘテロ接合はホモ接合ではない?
複合ヘテロ接合は、同じ遺伝子の2つのアレルに「違う」病的バリアントが1つずつある状態で、用語としてはホモ接合とは別のものです。ただし、潜性(劣性)の病気では、どちらも両方のアレルに病的バリアントがあり、遺伝子の産物の働きが十分に保たれなくなることで発症につながるという共通点があります。
たとえば鎌状赤血球症では、βグロビンをつくるHBB遺伝子の2つのコピーがともにヘモグロビンSの変化をもつ状態(HbSS)が鎌状赤血球貧血で、これは同じ変化のホモ接合です。一方、片方がヘモグロビンS、もう片方が別の変化(ヘモグロビンCやβサラセミアの変化)の組み合わせでも、同じグループの病気になります[8]。後者は複合ヘテロ接合の例です。
血のつながりのない両親から生まれた子どもでは、同じ遺伝子でも父親由来と母親由来で違う病的バリアントを受け継ぐことが多く、子どもが複合ヘテロ接合になることもあります。詳しくは複合ヘテロ接合とはをご覧ください。
ヘミ接合とホモ接合の違いは?
ヘミ接合は、アレルがもともと1つしかない状態で、「2つが同じ」ホモ接合とは別の言葉です。代表例は男性のX染色体の遺伝子です。男性はX染色体を1本しかもたないため、X染色体上の遺伝子はヘミ接合になります。
X連鎖潜性の病気では、男性はヘミ接合のため1つの変化で発症しうるのに対し、女性は2本のX染色体をもつため、ヘテロ接合の保因者になることが多いという違いが生まれます[2]。詳しくはヘミ接合(ヘミ接合体)とはとX連鎖遺伝とはで解説しています。
3. ホモ接合はどうやってできる?両親から同じアレルを受け継ぐ確率
子どもは父親と母親からアレルを1つずつ受け継ぐので、両親が同じアレルを1つずつ渡したときにホモ接合になります。精子と卵子がつくられるとき、2つのアレルは分かれて片方だけが入り、受精で再び2つがそろいます。これがメンデルの分離の法則で、ホモ接合が生まれるしくみの土台です。
両親がともにヘテロ接合(保因者)のとき、子どもがホモ接合になる確率は?
両親がともに同じ病的バリアントをヘテロ接合(Aa)でもつ場合、子どもがaaのホモ接合になる確率は妊娠ごとに4分の1(25%)です。一方、両親が同じ遺伝子の違う病的バリアントをそれぞれもつ場合も、子どもが両方を受け継ぐ確率は25%ですが、その状態はホモ接合ではなく複合ヘテロ接合です。米国国立医学図書館の解説では、両親がともに同じ変化をもつ場合、妊娠ごとに25%で変化を2つもつ子、50%で保因者の子、25%で変化をもたない子が生まれると説明されています[3]。
👪 両親がともにヘテロ接合(Aa)のときの子どものアレルの組み合わせ(妊娠ごと)
| 母から\父から | A | a |
|---|---|---|
| A | AA(ホモ接合・変化なし) | Aa(ヘテロ接合・保因者) |
| a | Aa(ヘテロ接合・保因者) | aa(ホモ接合・潜性の病気の場合は発症) |
※aaが4分の1、Aaが4分の2、AAが4分の1です。これは妊娠ごとの確率で、1人目がaaだったから次はAAになる、という意味ではありません[3]。
ここで押さえておきたいのは、保因者のヘテロ接合の人には通常症状がないため、家族に同じ病気の人が1人もいなくても、両親が保因者どうしということが起こる点です。潜性遺伝のしくみと子どもへの伝わり方は、劣性遺伝(潜性遺伝)とはや常染色体潜性遺伝とはでも詳しく解説しています。
いとこ婚でホモ接合が増えるのはなぜ?
いとこ同士は共通の祖父母から同じアレルを受け継いでいることがあるため、その子どもは同じアレルを両方の親から受け取り、ホモ接合になる機会が増えます。いとこ(遺伝学では第三度近親に当たります)は平均して遺伝子の8分の1(12.5%)を共有し、その子どもは平均して遺伝子座の16分の1(6.25%)で共通祖先由来のアレルのホモ接合になると見積もられています[6]。
米国遺伝カウンセラー学会(NSGC)の作業部会が2002年にまとめた推奨では、いとこ婚の子どもが重い先天異常などをもつリスクは、一般の集団の基礎リスクに上乗せされる分として、およそ1.7〜2.8%と見積もられています[6]。つまり、リスクは上がるものの、大部分の子どもは問題なく生まれるという見方です。同じ推奨は、血縁のあるカップルにも、その民族集団で勧められている検査をほかのカップルと同じように行うことを基本とし、詳しい家族歴の聴き取りを重視しています[6]。
このように、共通の祖先から同じアレルが受け継がれてできたホモ接合を、専門的には「自己接合(オートザイゴシティ)」や「祖先を同じくする(IBD:identical by descent)」と呼び、偶然同じ型が並んだホモ接合と区別することがあります[6][7]。後で説明するホモ接合領域(ROH)は、このIBDのしるしとして遺伝子検査で見えてくるものです。
🩺 院長コラム【「いとこ婚だから」と決めつけないために】
いとこ婚の子どもでホモ接合が増えるのは確かですが、上乗せされるリスクは数%と見積もられています。数字の大きさを知ったうえで、家族歴を丁寧に確かめることが大切だと考えています。
もう一つ大切なのは、血のつながりのない両親でも、同じ遺伝子の保因者どうしであれば4分の1の確率は同じだということです。保因者であることは本人に症状がないため気づきにくく、「うちは血縁がないから関係ない」とは言い切れません。
4. 遺伝・医療とのつながり:ホモ接合と病気・遺伝子検査
ホモ接合は、潜性(劣性)の病気の発症、顕性(優性)の病気の重症型、薬の副作用の起こりやすさ、遺伝子検査の結果の読み方など、医療のさまざまな場面に関わります。この章では、ほかの解説ではあまり扱われない「医療の現場でホモ接合がどう問題になるか」を具体的に見ていきます。
潜性(劣性)の病気はなぜ両方のアレルの変化で起こる?
潜性(劣性)の病気の多くは、ふつうに働くアレルが1つ残っていれば必要な働きをまかなえるため、両方のアレルに病的バリアントがあって働きが十分に保たれなくなったときに発症します。米国国立医学図書館は、常染色体潜性の病気を、各細胞で遺伝子の両方のコピーに変化がある状態と説明しています[2]。
両方のアレルに病的バリアントがある組み合わせには、同じ病的バリアントのホモ接合と、違う病的バリアントの複合ヘテロ接合の2つがあります。病院の遺伝子検査の報告書では、どちらなのかが「homozygous」「compound heterozygous」と書き分けられます。鎌状赤血球症のHbSS(ホモ接合)とHbSC(複合ヘテロ接合)の例のように[8]、同じ病気でも組み合わせによって症状の出方が違うことがあり、この区別は医学的にも意味があります。なお、病的バリアントの中には働きを完全に失わせるものだけでなく、働きが一部残るものもあり、同じホモ接合でも症状の重さが違う理由の一つになります。
ただし、ホモ接合でも症状の重さには個人差があり、同じ遺伝子型の人がみな同じ経過をたどるわけではありません。遺伝子型と症状の関係は浸透率や遺伝子型と表現型の相関として研究されています。
顕性(優性)の病気でホモ接合になるとどうなる?家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)
顕性(優性)の病気でも、病的バリアントを両方のアレルにもつホモ接合体では、ヘテロ接合体より重い病型になることがあります。その代表が家族性高コレステロール血症(FH)です。「ホモ接合体」で検索すると、この病気の情報が多く出てくるのはこのためです。
難病情報センターによると、家族性高コレステロール血症(ホモ接合体)は指定難病79で、LDL受容体の遺伝子などの両方のコピー(父親由来と母親由来)に病気の原因となる変化がある状態です。ホモ接合体の患者さんはLDLコレステロールが370mg/dL以上になるとされ、両親がともにヘテロ接合体の場合、子どもが両方の変化を受け継ぐ確率は妊娠ごとに4分の1です[9]。ただし、370mg/dLという値は、厚生労働省の診断基準では遺伝子解析をしない場合に「重い高コレステロール血症」と判断する目安の一つとして挙げられているもので、LDL代謝に関わる遺伝子の解析やLDL受容体の働きの測定でホモ接合体と確かめられれば、確実例(Definite)と診断されます[13]。患者数は、かつては約100万人に1人(日本で約120人)とされていましたが、ヘテロ接合体が約300人に1人とする最近の遺伝学的な研究から、日本では約340人と推定されています[9]。
ヘテロ接合体のFHは比較的よくある病気で、両親がともにヘテロ接合体ということも珍しくありません。家族性高コレステロール血症の全体像は家族性高コレステロール血症(FH)総論、遺伝子で確かめる方法は家族性高コレステロール血症の遺伝子検査で解説しています。
薬の副作用とホモ接合:APOE ε4とアルツハイマー病の抗体薬
同じアレルを2つもつか1つもつかで、薬の副作用の起こりやすさが変わる例もあります。アルツハイマー病の抗アミロイドβ抗体薬レカネマブでは、APOE遺伝子のε4アレルを2つもつホモ接合の人で、ARIA(アミロイド関連画像異常)が起こりやすいことが分かっています。
米国の専門家による適正使用の推奨(2023年)がまとめた臨床試験の結果では、レカネマブを使った人のうち、脳のむくみを示すARIA-Eが見られた割合は、ε4をもたない人で5.4%、ε4のヘテロ接合の人で10.9%、ε4のホモ接合の人で32.6%でした[10]。この推奨は、治療を考えている人に、同意のうえで治療前にAPOE遺伝子型を調べることを勧めています[10]。
この例は、ホモ接合が「病気そのもの」だけでなく、治療の選び方や安全管理にも関わることを示しています。APOE遺伝子についてはAPOE遺伝子とはをご覧ください。
遺伝子検査で「ホモ接合」と出たら:本当にホモ接合か確かめる
遺伝子検査で病的バリアントが「ホモ接合」と報告されたときは、なぜその結果になったのかを確かめることが大切です。もう片方のアレルが欠けている(欠失)ために変化が1つしか読めず、見かけ上ホモ接合に見えることがあります。一方、片方の親から同じ染色体を2本受け継ぐ片親性ダイソミー(UPD)のうち、同じ親の同じ染色体(領域)が2コピーになるアイソダイソミーでは、病的バリアントが実際にホモ接合になります。UPDには、同じ親の相同染色体を2本とも受け継ぐヘテロダイソミーもあり、すべてのUPDでホモ接合が生じるわけではありません。
腎臓の潜性(劣性)の病気の患者さんを調べた研究では、「ホモ接合」と考えられた変化の中に、もう片方のアレルを含む大きな欠失や、部分的な片親性ダイソミーによるものが含まれていました。著者らは、両親のDNAで変化の受け継がれ方を確かめる必要があるとしています[12]。
片親性ダイソミーでは、片方の親だけが保因者でも子どもが潜性(劣性)の病気になることがあります。米国臨床遺伝・ゲノム学会(ACMG)の文書は、片親性ダイソミーが原因と分かった最初のメンデル遺伝病として、保因者の母親だけから病的バリアントを2つ受け継いだ嚢胞性線維症の子どもの例を挙げ、親の由来を判断するには両親の検体を調べる必要があるとしています[11]。
⚠️ ホモ接合の結果を受け取ったら
「ホモ接合」という結果は、次の妊娠での再発の確率や、ご家族の保因者の調べ方を左右します。本当のホモ接合なら両親はともに保因者と考えますが、欠失や片親性ダイソミーによるものなら考え方が変わります。結果の読み方は、検査を受けた医療機関で臨床遺伝専門医などから説明を受けて確かめることが基本です。
ホモ接合領域(ROH)とは?
ホモ接合領域(ROH)とは、染色体の上で、ホモ接合の遺伝子座が長く連続して並んでいる領域のことです。SNPマイクロアレイや全ゲノム解析では、こうした長いホモ接合の領域が見つかることがあります。ACMGの基準文書は、ROHが複数の染色体に散らばっている場合は両親の血縁を示唆しうること、いとこ婚の子どもでは平均してゲノムの6.25%(16分の1)がIBDになることを示しています[7]。
一方、ROHが1本の染色体にだけ集中している場合は、アイソダイソミーを含む片親性ダイソミーの手がかりになります[11]。ただし、ROHだけで片親性ダイソミーと確定することはできず、両親の検体を使った解析などが必要になります[11]。また、ヘテロダイソミーだけの片親性ダイソミーでは、ROHとして見えないことがあります。ROHは、潜性(劣性)の病気の原因遺伝子を探す手がかりにもなります。ROHと、がんの組織で見られるヘテロ接合性の消失(LOH)の関係は、LOH・ROHとはで詳しく解説しています。
🩺 院長コラム【「ホモ接合」の一語で結論を出さない】
遺伝子検査の報告書に「homozygous」と書かれていると、それだけで両親が保因者だと受け取られがちです。けれども、欠失で見かけ上そう見えることや、片親性ダイソミーで片方の親だけからホモ接合になっていることもあるため、両親の検査で確かめるかどうかで、ご家族への説明が大きく変わると考えています。
ホモ接合という言葉は教科書では単純ですが、臨床では「なぜその見え方になったのか」まで考えて初めて意味をもちます。次の妊娠やきょうだいの検査を考えるときほど、この確認が大切だと考えています。
生まれる前に分かる:両親の保因者検査
子どもが潜性(劣性)の病気の原因を両方のアレルに受け継ぐかどうかは、両親が同じ遺伝子の保因者かどうかで決まり、両親がともに保因者なら妊娠ごとに4分の1です。家族に患者さんがいなくても起こります[3]。X連鎖潜性の病気では、母親がヘテロ接合の保因者で父親が発症していない場合、男の子が病的バリアントを受け継ぐ確率は2分の1で、男女の生まれる確率をそれぞれ2分の1とすると、妊娠全体で発症する男の子が生まれる確率は4分の1です[4]。
両親が保因者かどうかは、妊娠の前や妊娠中に、両親の遺伝子を調べる保因者検査(キャリアスクリーニング)で確かめられます。当院の拡大版保因者検査は、女性787遺伝子と男性714遺伝子、女性1009遺伝子と男性911遺伝子の4つです(787と714、1009と911がそれぞれ対)。女性1009遺伝子は女性787遺伝子の遺伝子をすべて含み、男性版は女性版からX連鎖の遺伝子を除いたものです。
この記事に出てきた遺伝子では、HBB(鎌状赤血球症・βサラセミア)が女性787遺伝子・女性1009遺伝子の一覧に含まれ、男性の714遺伝子・911遺伝子にも含まれます。ほかにもCFTR(嚢胞性線維症)、SMN1(脊髄性筋萎縮症)、PAH(フェニルケトン尿症)、GJB2(難聴)などが含まれ、X連鎖のDMD(デュシェンヌ型・ベッカー型筋ジストロフィー)は女性版に含まれます。4つの検査はいずれもオンライン診療で受けられ、唾液や頬の粘膜の検体でも受けられます。当院の遺伝子検査・NIPT・遺伝カウンセリングは自費診療です。
当院でNIPT(新型出生前診断)を受けるご夫婦は、NIPTと同じ日の採血でファミリーセーフティ プラスとして保因者検査を受けることもできます(ファミリーセーフティ プラスは単独では受けられません)。保因者検査の考え方は保因者スクリーニング検査とはにまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. ホモ接合体とは、簡単に言うと何ですか?
ある遺伝子について、両親から受け継いだ2つのアレル(対立遺伝子)が同じ人や個体のことです。AとaというアレルがあればAAやaaがホモ接合体で、Aaはヘテロ接合体です。ホモかヘテロかは遺伝子ごとに決まるので、同じ人でも遺伝子によってホモ接合だったりヘテロ接合だったりします。
Q2. ホモ接合だと必ず病気になりますか?
なりません。ヒトの遺伝子の多くは、ふつうに働くアレルを2つもつホモ接合の状態です。病気に関係するのは、病気の原因になるバリアント(病的バリアント)を両方のアレルにもつ場合で、潜性(劣性)の病気ではこの状態で発症します。さらに、同じ病的バリアントをホモ接合でもっていても、症状の出方や重さには個人差があります。
Q3. ヘテロ接合体とホモ接合体の違いは何ですか?
2つのアレルが同じならホモ接合体(AA・aa)、違えばヘテロ接合体(Aa)です。潜性(劣性)の病気では、病的バリアントをヘテロ接合でもつ人は通常は発症しない保因者で、ホモ接合(または複合ヘテロ接合)になると発症します。
Q4. 劣性ホモ接合体(潜性ホモ)とは何ですか?
潜性(劣性)のアレルを2つもつホモ接合体(aaなど)のことです。潜性のアレルの性質は、もう片方に顕性(優性)のアレルがあると表に出にくく、2つとも潜性のアレルのときに現れます。2017年に日本遺伝学会が「劣性」を「潜性」と言い換える用語の改訂を示しており、「劣っている」という意味はありません。
Q5. 複合ヘテロ接合はホモ接合と同じ扱いですか?
用語としては別ですが、潜性(劣性)の病気の考え方では同じように扱います。複合ヘテロ接合は、同じ遺伝子の2つのアレルに「違う」病的バリアントが1つずつある状態です。どちらも両方のアレルに病的バリアントがあり、遺伝子の産物の働きが十分に保たれなくなるため、発症につながることがあります。
Q6. いとこ同士の子どもがホモ接合になりやすいのはなぜですか?
いとこ同士は平均して遺伝子の8分の1を共有しているため、共通の祖先から受け継いだ同じアレルを子どもが両方の親から受け取ることがあるからです。いとこ婚の子どもでは、平均してゲノムの16分の1が両親の共通祖先に由来する同じアレルのホモ接合になると見積もられています。
Q7. ホモ接合体は英語で何と言いますか?
ホモ接合体はhomozygote(ホモザイゴート)、「ホモ接合の」という形容詞はhomozygous(ホモザイガス)、ホモ接合性(ホモ接合である状態)はhomozygosityです。ヘテロ接合はheterozygous、ヘミ接合はhemizygousと言います。
まとめ
ホモ接合(ホモ接合体)とは、ある遺伝子の2つのアレルが同じ状態(AA・aa)、またはその状態の人や個体のことです[1]。2つが違えばヘテロ接合、1つしかなければヘミ接合で、違う病的バリアントが1つずつある状態は複合ヘテロ接合と呼びます。ホモ接合そのものは病気ではなく、病気の原因になる変化を両方のアレルにもったときに、潜性(劣性)の病気が発症します[2]。
両親がともに保因者なら、子どもが変化を両方受け継ぐ確率は妊娠ごとに4分の1で[3]、いとこ婚ではその機会が増えます[6]。遺伝子検査で「ホモ接合」と出たときは、欠失や片親性ダイソミーが関わっていることもあるため、両親の検査で確かめることがあります[11][12]。
🧬 両親が同じ遺伝子の保因者かどうかを調べたい方へ
潜性(劣性)の病気は、両親がともに保因者のとき、妊娠ごとに4分の1の確率で起こります。当院の拡大版保因者検査(女性787遺伝子・男性714遺伝子/女性1009遺伝子・男性911遺伝子)は、オンライン診療と唾液・頬の粘膜の検体でも受けられ、結果は臨床遺伝専門医が説明します。検査を受けるかを考える前に、検査で何が分かるかを先に知りたい方は、保因者スクリーニング検査とはをご覧ください。
参考文献
- [1] homozygous. Talking Glossary of Genomic and Genetic Terms. National Human Genome Research Institute. [NHGRI]
- [2] What are the different ways a genetic condition can be inherited? MedlinePlus Genetics. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [3] Autosomal recessive. MedlinePlus Medical Encyclopedia. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [4] X-linked recessive. MedlinePlus Medical Encyclopedia. National Library of Medicine. [MedlinePlus]
- [5] 日本遺伝学会. 遺伝学用語改訂について. 2017年9月11日. [日本遺伝学会]
- [6] Bennett RL, Motulsky AG, Bittles A, et al. Genetic counseling and screening of consanguineous couples and their offspring: recommendations of the National Society of Genetic Counselors. J Genet Couns. 2002;11(2):97-119. [DOI 10.1023/A:1014593404915]
- [7] Rehder CW, David KL, Hirsch B, et al. American College of Medical Genetics and Genomics: standards and guidelines for documenting suspected consanguinity as an incidental finding of genomic testing. Genet Med. 2013;15(2):150-152. [DOI 10.1038/gim.2012.169]
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