染色体分析法4:マイクロアレイ

マイクロアレイとは?

東京でNIPT他の遺伝子検査を提供しているミネルバクリニックです。NIPTなどの遺伝子検査や遺伝性疾患を理解するためには、基礎的なヒトゲノムや染色体の構造についての理解が必要となってきます。このページでは、FISH法よりさらに小さなプローブを用いたマイクロアレイを用いたゲノム解析方法とその限界についてお伝えします。

今日に至っても最も臨床応用されている第一線の診断用検査といえばG分染核型分析ではあるのですが、近年、ターゲット領域へのFISH解析のコンセプトを全ゲノムの検査に広げてコピー数の不均衡を高精度に検出するゲノムワイドなマイクロアレイ染色体検査に補完(異常があったときにマイクロアレイでさらに詳しく検査するということ)されたり、取って代わられたりしてきています。

塩基対の数と検出方法

この図は、ゲノム解析の解像度と使用する検査方法の関係を示したものです。
G分染法では400~500バンドレベルの日常精度で5~15Mb (Mは100万)、850の高精度分染法でも1~3Mbです。これに対してFISHは10K~10Mbの大きさのものを検出するのに適しています。
マイクロアレイはさらに小さな1Kb~を分析することが可能です。

染色体マイクロアレイ技術では1つのプローブが示す場所を細胞内や染色体上で確認する代わりにオーバーラップさせたり規則的な間隔をあけたりしてゲノム全体に対応させたDNA断片を顕微鏡スライド上に配置したアレイを用いて1度の解析で全ゲノムを対象にコピー数についての検索を行うことが可能です。

比較ゲノムハイプリダイゼーション

マイクロアレイ法の1つのアプローチである比較ゲノムハイプリダイゼーション(comparativegenome hybridization :CGH)法は、対照のゲノムと患者から得たゲノムの2種類をマイクロアレイに同時にハイブリダイズし、相対的なコピー数の増加や減少をゲノムワイドに検出する方法です。
どちらかのゲノムの配列が過剰にあるということは、患者ゲノムを対照と比較したときに、それらの配列の増加あるいは減少があることを示しています。

マイクロアレイ染色体検査の模式図です。
A:比較ゲノムハイプリダイゼーション(CGH)に基づくアレイ解析の概略図。
患者ゲノムを緑色対照参照ゲノムを赤色蛍光色素でそれぞれ標識したものを混合して選択したプラットフォームのアレイ上に播種します。アレイ上のプローブDNAにハイブリダイズさせる。相対的蛍光強度を測定し、患者ゲノムと参照ゲノムが等量であれば黄色、患者ゲノムが増加(gain)していれば緑色減少(loss)していれば赤色に検出される。

B:Aの結果の出カイメージ。黄色に検出されたlog2比0付近のプロットが連続している領域は、患者のその領域のゲノムコピー数がリファレンスと等量(すなわち2コピー)であることを示しています。
緑色に検出されたプロットが連続している領域はコピー数増加を赤色に検出されたプロットが連続している領域はコピー数減少を示しています。
C : MECP2遺伝子を含むXq28バンド内の約800kbの重複を示しています。 Rett症候群患者のCGHアレイの結果例。蛍光比のlogRをX染色体の全長に沿って描画した。各点はアレイ上の個々のプローブにおける比を示している。患者ゲノムではMECP2遺伝子とその周りの領域に対応する配列が増加していて、その比(ゲノムコピー数)が増加している(緑色の矢印).増加した領域は緑色で示されている。

SNPアレイを用いる方法

SNPアレイにはゲノム全体にあるさまざまな一塩基多型の2つのアレルに対応する配列が含まれる。この方法では、ゲノム中の異なる領域のアレルの相対的な量と強度が得られ、特定の染色体や染色体領域が適当な量だけ存在しているかどうかを示す。
染色体異常が疑われる場合の日常的な臨床検査では、アレイのプローブ間隔がヒトゲノムのユニーク領域全体で250kb程度の精度である。つまり、大きなものをおおざっぱに検出するのであるからプローブも大きくていいということです。
責任領域がわかっている成長障害や先天異常など、特に臨床的関心のある領域についてはより高密度のプローブを使って、より高い精度(く25-50kb)で実施する必要があるのですが、小さい断片に対応することも可能です。

マイクロアレイの限界

1.この検出方法は、あるDNA配列の相対的コピー数を測定しているにすぎないため、それらが転座したり再構成したりしているかどうかは検出できません。したがって、マイクロアレイで疑われた染色体やゲノムの異常を、核型分析や分裂像のFISH解析によって確認し、異常の性質と家系での再発率を確定することが必要となります。

2.高解像度のゲノム解析は、臨床的意義が明らかになっていないコピー数のわずかな違いなどのバリアントの存在を明らかにしてしまうことです。
これらの多くは無害なコピー数バリアント(copynumber variant : CNV)なのですが、診断に関して、何が正常な染色体構成で、何が病気の原因となるバリアントなのかという評価方法の確立が重要なり、課題となっています。

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この記事の筆者

1995年医師免許取得。血液・呼吸器・感染症内科を経て、臓器別・疾患別の縦割りの医療の在り方に疑問を感じ、人を人として”全人的”に診療したいという思いを強くし、臓器を網羅した横断的専門医となり、2010年にがん薬物療法専門医取得(2019年現在全国1200人程度)。臓器を網羅すると遺伝性がんへの対策が必要と気づき、2011年に臨床遺伝専門医取得(2019年現在全国1000人程度)。遺伝相談はセンシティブな分野にもかかわらず、昼間の短い時間しか対応できない大病院のありかたに疑問を感じて、もっと必要な人がハードルを感じずに診療を受けられるようにしたいと2014年12月に開業。以来、全国から大学病院でも難しい内容の対応を求める人々を受け入れ、よろづお悩み相談所として多くの人々の様々な”家族(計画)の問題”を改善に導く。

著書に”女性のがんの本当の話”(ワニブックス)、”遺伝するがん・しないがん”(法研)がある。
少ない専門家で、正直で嘘のない言葉選びから週刊誌等の取材も多く、医療系の特集に時折コメントが掲載。(週刊現代、週刊ポスト、週刊新潮など)。
テレビ出演も時々あり、小林真央さんの病状を市川海老蔵さんが初めて記者会見した日、フジテレビの午後4時台のニュース番組に生出演して解説。その他TBS, AbemaTVなど出演。

一人一人の事情に合わせた個別対応をするべく、しっかり時間を取って本当のニーズは何かを聞き取りすることを大切にしている。短い時間でもお互いが出会ったことが相手の人生に大きな意味があるような医師患者関係の構築を理想として日々精進。

患者さんが抱えている問題を解決するにはどうしたらよいのかを考えて医師歴8年目に法学部に学士入学した程度に”凝り性”。女医が少なかった時代に3人の母親として難関専門医を3つ取得して社会進出を続けた経験から、女性のライフスタイルを医学以外の部分でも支援したいと願っている。
いろんな人生経験から心に響く言葉を投げかけるため、”会うと元気になる”ということで有名。飼いネコ3匹。

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