染色体分析法2:高精度染色体解析
高精度染色体解析
典型的な中期分裂像として示される400~550バンドの解像度の標準的なG分染法による核型分析では、ゲノムのすべての箇所の5~10Mb(Mは100万 bは塩基)以上の欠失や重複を検出することができます。
検出したい大きさと適切な検査方法については以下をご覧ください。
バンドパターンがあまり特異的でないゲノム領域ではこの解像度のG分染法では見えにくくなります。染色体解析の感度を高めるためには、体細胞分裂の早期(前期あるいは前中期)のまだあまり凝縮していない段階の染色体を染色する高精度分染法(前中期分染法prometaphase bandingともいいます)を用いることができます。
高精度分染法は、染色体の微細な構造異常が疑われる場合に特に有用な染色法です。
分裂前中期染色体の染色では、ハプロイドセットあたり850以上のバンドが現れます。
しかし、この染色方法は現在ではほほマイクロアレイにとってかわられています。
図はX染色体の3つの異なる解像度のバンドパターンを比較したもので、左から順に分裂注記、分裂前中期、分裂前期における模式図と顕微鏡写真になります。まだあまり凝縮していない、より長い染色体を得ることによって診断の正確さが増します。
1980年代初頭に高精度分染法が開発されたことで2~3Mb程度の大きさの微細なゲノムの欠失や重複により引き起こされる、いわゆる微細欠失症候群(microdeletion syndrome)がいくつも発見されることになりました。
しかし、この方法は大変な労力がかかり、かつ熟練を要するため、全ゲノム解析を目的とする日常検査には向いていないのと、近年ではマイクロアレイができるようになり、その検査学的重要度は低くなり、歴史的役割を終えたといってもよいでしょう。
しかし、この染色方法のおかげで、それまでわからなかった微細欠失症候群の診断が可能となったことは、当時は非常に画期的だったのです。
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