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絨毛検査でわかること|先天性疾患一覧と特徴、メリット・デメリットを紹介

絨毛検査でわかること|先天性疾患一覧と特徴、メリット・デメリットを紹介

妊娠12週の胎児の超音波写真
出生前診断の確定的検査である絨毛検査ではどのような疾患がわかるか知っていますか?検査を受ける前に、検査についての正しい知識を持っておきたいですよね。絨毛検査では、さまざまな先天性疾患の有無がわかりますが、流産のリスクがあるなどデメリットもあります。今回は、絨毛検査でわかる先天性疾患とその特徴、検査のメリット・デメリットを解説していきます。

絨毛検査でわかること

ポイント
絨毛検査は出生前診断の確定的検査の一つです。母体から胎盤の一部である絨毛細胞を採取し、胎児の疾患の有無を判別する検査です。絨毛細胞には、多くの胎児の細胞が含まれているため、高い感度で胎児の状態を調べることができます。

絨毛検査では、下記の先天性疾患の有無がわかります。
ダウン症候群21トリソミー
エドワーズ症候群18トリソミー
パトー症候群13トリソミー
ターナー症候群モノソミーX)
トリプルエックス症候群トリソミーX
クラインフェルター症候群

これらの他、二分脊椎無脳症などの開放性神経管奇形、筋ジストロフィーなどの遺伝性の病気も判別できます。では、上記で挙げた6つの先天性疾患について詳細を見ていきましょう。

ダウン症候群(21トリソミー)

ダウン症候群は、通常2本である21番染色体が3本ある先天性疾患です。約700人に1人の割合で発生します。
ダウン症候群は、精子卵子が作られる際に、染色体が分離しないことが原因とされていますが、なぜ分離しないのかその詳細はまだわかっていません。

ダウン症候群の乳児に見られる症状には、下記のようなものがあります。
・ 心臓や消化器の異常
・ 筋肉の緊張の低下

出生時には、身体的特徴は見られませんが、小児期になると下記のような特徴が見られます。
・ 頭が小さい
・ 顔が扁平
・ 目がつり上がっている
・ 鼻が低い
・ 舌が大きい
・ 筋肉の緊張が低いため、口が開いたままになる
・ 耳が小さく円形であり、頭部の低い位置に付いている

ダウン症候群の人の知能指数は、平均よりも低く、IQは約50です。また、小児期には注意欠如・多動症のような行動がよく見られるのも特徴です。

ダウン症候群に対する根治的な治療法はないため、対症療法となります。心臓や消化器の先天的な異常に対しては、手術などの外科的な治療が行われます。
また、知能面の発育の遅れに対しては、個々に合った教育プログラムが必要となります。

ダウン症候群の小児を育てるに当たっては、積極的にコミュニケーションを取ることを心がけ、その子の成長を見守ることが大切です。

ダウン症候群の予後は一般的に良好で、ほとんどのダウン症候群の小児が成人します。平均寿命は、50代後半と言われています。

エドワーズ症候群(18トリソミー)

エドワーズ症候群(18トリソミー)とは、通常2本ある18番染色体が3本ある先天性疾患です。約7,000~8,000人に1人の割合で発生します。
エドワーズ症候群は、受精卵が形成される際に、精子や卵子が持つ染色体を減らす工程における失敗などが原因とされています。

エドワーズ症候群の赤ちゃんは、妊娠中の胎動が弱く、羊水過多のため、お腹にいた週数に対して小さな赤ちゃんが生まれます。

エドワーズ症候群の小児には下記のような症状が見られます。
・ 顎が小さい
・ 耳の位置が低く、通常とは形が異なる
・ 拳をグーで握りしめている
・ 指が重なり合っている
・ 足や足首が内側に向いている(内反足)
・ 先天的な心疾患や悪性腫瘍がある
・ 重度の発達障害がある

エドワーズ症候群に対しての根治的な治療はありません。心疾患などの内臓の奇形に対しては、出生後すぐに外科的な治療をする必要があります。発達障害に対しては、その子の症状に合わせた適切な養育や薬物治療を行います。

多くの複雑な疾患をかかえるエドワーズ症候群の小児は、いつ異変が起きるかわからないため、常に医療機関と連携しながら、育てていく必要があります。

エドワーズ症候群は、胎児の段階での流産や死産の可能性も高く、産まれたとしてもすぐに亡くなってしまう場合などが多く、予後は決して良くありません。

パトー症候群(13トリソミー)

パトー症候群(13トリソミー)とは、通常2本ある13番染色体が3本ある先天性疾患です。約10,000人に1人の割合で発生します。
パトー症候群は、精子と卵子の受精の段階において、染色体がうまく分離しないことが原因の一つとされています。

パトー症候群の小児においては、下記のような症状が見られます。
・ 体格が小さい
・ 成長や発達が通常の小児と比較して遅い
口唇裂口蓋裂
・ 約80%に重度の心疾患がある
・ 男児:停留精巣(精巣が正常な位置にない)
・ 女児:子宮の形が異常である
・ 重度の知的障害
・ 中枢神経系や呼吸器系の合併症
・ 小頭症
・ 難聴

パトー症候群に対する根治的な治療法はなく、現れている症状を緩和する支持療法が中心です。症状によっては人工呼吸器の使用や酸素投与、薬物療法などを行うこともあります。

パトー症候群の小児を育てる上では、医療面・心理面・福祉面などの多面的なサポートが必要となります。

パトー症候群の小児の約8割は症状が重度であるため、生後約1ヶ月以内に死亡してしまうことが多く、1年以上生存できる可能性は約10%と言われています。1年以上生存できた場合でも、多くの疾患を抱えていることが多く、予後は良くありません。

ターナー症候群(モノソミーX)

ターナー症候群(モノソミーX)とは、女児において2本あるX染色体のうち1本が部分的もしくは完全に欠失した状態で生まれてくる先天性疾患です。約2,500人に1人の割合で発生します。
ターナー症候群は、受精卵が形成される際に、精子や卵子が持つ染色体を減らす工程における失敗などが原因とされています。

ターナー症候群の小児においては、下記のような症状が見られます。
・ 低身長
二次性徴が現れない
・ 首から肩にかけての皮膚にたるみがある

また、知的障害を伴うケースもあります。生まれつきの合併症として約20%の女児に心臓や大血管に異常があります。

成人期には、下記のような合併症が見られることもあります。
・ 肥満
・ 糖尿病
・ 骨粗しょう症

ターナー症候群に対する根治的な治療法はなく、出現している症状に対する対症療法となります。低身長に対しては成長ホルモン治療を行います。また、二次性徴が発来しないことに対してはホルモン補充療法を行います。心臓などに異常がある場合、手術を行うこともあります。
知的障害がある場合は、言語療法や感覚統合療法などの療育を早期から行う必要があります。

ターナー症候群の女児を育てる上では、疾患があるからと言って特別扱いするのではなく、普通に接することが大切です。

ターナー症候群は、骨密度などの適切な管理ができていれば、長期的な予後は良好です。

トリプルエックス症候群(トリソミーX)

トリプルエックス症候群(トリソミーX)とは、女児において通常2本であるX染色体が3本存在して生まれる先天性疾患です。約1,000人に1人の割合で発生します。
トリプルエックス症候群は、受精卵が形成される際に、精子や卵子が持つ染色体を減らす工程における失敗が原因とされています。

トリプルエックス症候群において、身体的な特徴が現れることはまれですが、下記のような症状が見られる場合もあります。
・ 高身長
・ 小指が曲がっている
・ 足が平らである
・ 学習障害
・ 発育、感情発達の遅延
・ 音声、表現言語の遅延

トリプルエックス症候群の根治的な治療法はなく、さまざまな体験がさせることが大切です。その子の個性に合わせた体験が、心身の状態や思春期の状態を大きく左右します。
言語の遅延が見られる場合には、言語療法などのトレーニングが必要となります。
感情発達の遅延などが見られる場合には、多くの人とコミュニケーションを図る機会を設け、家族や友人とともに、感情表現を豊かにする芸術などに触れることが重要でしょう。

トリプルエックス症候群の女児を育てる上では、障害を周囲が理解し、温かいサポートをすることが大切です。

トリプルエックス症候群の女児の予後は良好で、小児期に疾患が悪化するリスクは低いです。また、成人してからもリスクが増加する可能性はありません。

クラインフェルター症候群

クラインフェルター症候群とは、男児において見られる性染色体異常です。通常の男児では性染色体はXYですが、クラインフェルター症候群の男児では、X染色体がXXYなど1本多い状態で生まれます。クラインフェルター症候群は最も頻度が高い性染色体異常で、約500人に1人の割合で発生します。
クラインフェルター症候群は、加齢による卵子の老化などが発症の原因とされています。

クラインフェルター症候群は、乳幼児期には目立つ症状がないのが一般的です。
思春期になると、下記のような症状が現れます。
・ 二次性徴が起こらない
・ 背が高い
・ 手足が長い
・ 睾丸のサイズが小さい
・ 乳房が膨らむ
また、知能障害がある場合もあります。

クラインフェルター症候群に対する根治的な治療はなく、治療は発症している症状に対する対症療法となります。二次性徴が発来しないことに対しては、思春期から生涯にわたるテストステロン補充療法を行います。また、言語能力の遅延に対しては、小児期から言語療法を行います。

クラインフェルター症候群の男児において、知能障害がある場合などには、日常生活に困らないよう専門的なトレーニングを受けさせるとともに、家族が正しい知識を持って、子どもを受容することが大切です。

クラインフェルター症候群の予後は良好で、平均寿命も健康な男性と変わりありません。ただし、乳がんや骨粗しょう症などの合併症が起こりやすいことに注意が必要です。

絨毛検査を受ける割合

減少
確定的検査(羊水検査と絨毛検査)を受ける人は、2014年の22,800人をピークに減少傾向にあります。これは、2013年から実施された新型出生前診断NIPT)の影響だと考えられます。

2016年には確定的検査を受ける人は20,550人となり、2014年から10%減少していることがわかります。

絨毛検査は、親が遺伝する疾患を持っている場合や高齢出産の場合、過去に染色体異常の子どもを産んだことがある場合に受ける人が多いです。これらに該当し、検査を希望する人が絨毛検査を受検します。また、該当しない場合でも、検査の意義と内容を正しく理解した上で、希望する人は受けることができます。

絨毛検査のメリット

メリット
絨毛検査には、下記のようなメリットがあります。
● 早い段階で判断ができる
● 心の準備ができる
● 安全な出産や養育の計画が立てられる

同じ確定的検査が妊娠15週から受けられるのに対し、絨毛検査は妊娠10~13週に受けることができます。そのため、早い段階で胎児の疾患の有無について知ることができます。

妊娠初期に検査できるため、胎児に疾患が見つかった場合、早期から心の準備をすることができます。もし、胎児に疾患があるとわかった場合、さまざまな葛藤があるでしょう。子どもの将来についての不安などをパートナーとゆっくりと話し合う時間が持てます。

胎児に疾患が見つかった場合には、安全な出産ができる専門病院を探したり、養育の計画について専門家のアドバイスを受けたりすることもできるでしょう。

絨毛検査のデメリット

デメリット
絨毛検査のデメリットには、下記のようなものがあります。
● 「染色体モザイク」などにより判断できないことがある
● 流産のリスクがある
● 倫理的な問題がある
● 金銭的負担が大きい

「染色体モザイク」という正常な染色体と異常な染色体の両方が混在している場合、絨毛検査では正確な結果が出ない場合があります。このような場合は、改めて羊水検査を受ける必要があります。

また、絨毛検査には流産のリスクがあります。羊水検査の流産リスクが約0.3%であるのに対し、絨毛検査のリスクは約1%とやや高いです。

また、「命の選別」という倫理的問題もあります。絨毛検査の本来の目的は、胎児の状態を知り、安全な分娩などにつなげることです。しかし、胎児の疾患の有無を知り、「産むか産まないか」の選択の判断材料とする人もいるのが現状です。
胎児の障害を理由とする中絶を認めても良いのかという問題は、非常に難しい問題であり、今なお明確な基準は示されていません。

絨毛検査の相場は、医療機関によって異なりますが、約10~20万円です。絨毛検査は保険適用外であるため、全額自己負担です。また、通常新型出生前診断(NIPT)などの非確定的検査を経て、絨毛検査が実施されるため、検査総額は約30~40万円となり、金銭的負担は大きいです。

絨毛検査と羊水検査、どちらがいい?

絨毛検査は妊娠10~13週に実施できるのに対し、羊水検査は妊娠15週以降からの実施となります。そのため、非確定的検査の結果が陽性になった場合、絨毛検査の方がより早く診断結果を知ることができます。

また、絨毛検査におけるダウン症候群(21トリソミー)の検査精度は100%であるため、より迅速かつ確実に胎児がダウン症候群であるかどうかを確認することができます。

また、羊水内に含まれている胎児の細胞より、絨毛細胞に含まれている胎児の細胞の方が多いため、遺伝子検査においてより正確性を求めている人に絨毛検査は向いていると言えます。

ただし、絨毛検査は羊水検査より手技が難しい検査であるため、実施できる医療機関が限られていることに注意が必要です。

まとめ

染色体異常などのさまざまな先天性疾患の有無がわかる絨毛検査。妊娠初期に検査が受けられるため、早い段階から安全な出産への準備ができます。しかし、検査には流産のリスクもあり、保険適用外であるため、金銭的負担も大きいです。まずは、絨毛検査を受ける上でのメリットやデメリットをしっかり理解した上で、受検を検討しましょう。

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この記事の筆者:仲田洋美(医師)

プロフィールはこちら

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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