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エビデンスレベルとは?推奨グレードとの関係は?

エビデンスレベルとは?推奨グレードとの関係は?

エビデンス

エビデンスに基づく医療(EBM)とは、その名が示すとおり、エビデンスを見つけ出し、そのエビデンスを用いて臨床判断を行うことです。

EBMの基礎となるのは、エビデンスを階層的に分類するシステムです。この階層は、エビデンスのレベルとして知られています。医師は、臨床上の疑問に答えるために、最高レベルのエビデンスを見つけることが奨励されています。

エビデンスレベル(エビデンスの階層と呼ばれることもある)は、デザインの方法論的な質、妥当性、および患者さんの治療への適用性に基づいて研究に割り当てられます。これらの判断により、”推奨のグレード(または強さ)”が決定されます。

エビデンスレベルの歴史的背景

エビデンスレベルは、1979年にカナダの定期健康診断タスクフォースが発表した報告書に記載されたものです。

この報告書の目的は、定期健康診断に関する勧告を作成し、その勧告を医学文献の証拠に基づいて行うことでした。エビデンスを考慮して、勧告の等級付けを行ったのです。

例えば、ある症状を定期健康診断の対象とするという勧告を支持する十分な証拠がある場合には、グレードAの勧告が与えられました。

エビデンスのレベルは、1989年にSackettが抗血栓薬のエビデンスのレベルに関する論文でさらに説明し、拡大しました。

いずれのシステムも、ランダム化比較試験RCT)を最高レベルに、ケースシリーズや専門家の意見を最低レベルに位置づけています。これらの階層は、バイアスの可能性に基づいて研究をランク付けしている。RCTが最も高いレベルに置かれているのは、偏りがないように設計されており、系統的な誤りのリスクが少ないためです。

例えば、この種の研究では、被験者を2つ以上の治療群に無作為に割り当てることで、結果に偏りをもたらす可能性のある交絡因子も無作為に排除しています。ケースシリーズや専門家の意見は、著者の経験や意見に偏っていることが多く、交絡因子のコントロールができません。

ランダム化比較試験(RCT)とは

ランダム化比較試験randomized control trial(無作為化対照試験)とは、被験者を2つのグループのいずれかに無作為に割り当てる試験です。一方(実験群)には試験対象の介入策を、もう一方(比較群または対照群)には代替(従来)の治療を行います。

ケースシリーズとは

通常、全員が同じ介入を受けている一連の個人について、介入の前と後に観察が行われるが、対照群がありません。例えば、2つの異なる方法で治療が可能なある病気の患者を連続して20人対象とした研究がこれにあたります。

交絡因子とは?

因果関係を調査する研究において、交絡変数とは、想定される原因と想定される結果の両方に影響を与える測定されていない第三の変数のことを交絡因子と言います。研究結果の妥当性を確保するためには、交絡変数の可能性を考慮し、研究デザインにおいてそれらを考慮することが重要です。

メディエーターやモデレーターを研究に取り入れることで、2つの変数間の単純な関係を研究するだけでなく、現実世界の全体像を把握することができます。これらの変数は、変数間の複雑な相関関係や因果関係を研究する際に考慮すべき重要なものです。

メディエーターとは

メディエイターとは、2つの変数の間を取り持つものをいいます。
例えば、睡眠の質(独立変数)は、覚醒度という媒介変数を介して、学業成績(従属変数)に影響を与えることができます。媒介関係では、独立変数から媒介者へ、そして媒介者から従属変数へと矢印を描くことができます。

モデレーターとは

一方、モデレーターとは、2つの変数間の関係に作用し、その方向性や強さを変えるものです。例えば、精神的な健康状態は、睡眠の質と学業成績の関係を双方調整することがあります。

エビデンスレベルの5つの段階とは?

レベルI

実験研究、無作為化比較試験(randomized control trial; RCT)のシステマティックレビューメタアナリシスの有無にかかわらず

レベルII

準実験的研究(Quasi-experimental Study)
RCTと準実験を組み合わせたもの、または準実験のみのシステマティックレビュー、メタ分析あり、またはなし

レベルIII

非実験的研究
RCT、準実験的研究、非実験的研究、または非実験的研究のみを組み合わせたシステマティックレビューで、メタアナリシスの有無は問わない。
定性的研究またはシステマティックレビュー、メタ分析の有無にかかわらず

レベルIV

科学的根拠に基づく、権威ある機関および/または国内で認知された専門家委員会/コンセンサスパネルの意見。
以下を含む。

  • – 臨床実践ガイドライン
  • – コンセンサスパネル

レベルV

経験的および非研究的証拠に基づくもの。
以下を含む。

  • – 文献調査
  • – 品質向上、プログラムまたは財務評価
  • – 症例報告
  • – 経験的証拠に基づく、全国的に認められた専門家の意見

患者さんの治療選択肢として提示するエビデンスレベルは?

医師はこれを 患者に還元するエビデンスレベル と表現しますが。患者さんに治療選択肢として提示するものは基本的にはエビデンスレベルⅡ以上の物です。

推奨グレード

臨床的疑問clinical questionごとにエビデンスを世界中から集め、リスクとベネフィット(利益と害)のバランスなどを細かく検討して、CQ一つ一つについて、その医療介入(治療、検査など)を推奨する強さについてわかりやすく分類したものを推奨グレードと言います。推奨グレードは以下の通りとなっています。

  • A 行うよう強く勧められる
  • B 行うよう勧められる
  • C 行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない
  • D 行わないよう勧められる

推奨グレードとエビデンスの関係とは?

エビデンスレベルが高いければ高いほど、推奨できる強さも強くなります。

しかし、推奨グレードとエビデンスレベルは一対一対応するわけではありません。

エビデンスレベルは、上記で見た通り、RCTかケースコントロールスタディか、全国的に認められた専門家の意見か、など研究のデザイン(枠組み)から決まるものなのです。

しかし、推奨グレードは、アウトカム(治療や検査などの医学介入により得られた結果)が適切か、測定方法が適切か(交絡因子を排除できているか)、効果の大きさ、効果と有害事象のバランスがとれているか、医療介入(治療)対象者が適切に選択されているか、などを総合的に勘案して決定していきます。

要するに、エビデンスレベルの高いものが1つがあれば信頼できる、とはならないのです。例えば、COVID-19に対するイベルメクチンでは最も高いエビデンスレベルを誇るメタアナリシスで研究不正があり、プレプリントの段階で論文撤回に至っています。

詳細はこちらをご覧ください。

同じようなデザインのスタディが2つ以上あれば初めて信頼できるようになります。

したがって、1個しかないエビデンスでグレードもついていないのに、患者をその方法で治療するような医者は、「エビデンスベースドメディシン(EBM)」という教育を一切受けていないのだと思料されます

上記の記事に出てきた長尾和宏医師は1989年卒なようでので、1979年に出てきたエビデンスレベルという言葉は知らないのかもしれませんが。「専門医」を持っていると大抵は学会活動の中でこうした教育も受けて知識が更新されていきますので、国民の皆さまは医師の質を見分ける一つの方法として専門医を持っているかどうかを確認なさってください。長尾和宏医師は非専門医(医師免許しかもっていない)かもしれません。探しましたが保有している専門医資格が見つかりませんでいた。

エビデンスレベルが低い治療方法は選択してはいけないの?

エビデンスレベルの低い治療方法には、推奨グレードC(行うことを考慮してもよいが十分な科学的根拠がない)、推奨グレードD(行わないよう勧められる)という推奨グレードしかつかないことは上記から明らかでしょう。

しかし。臨床試験をすること自体が許容されない場面もあります。
たとえば、肺がんはタバコとの関係がすでに明らかになっていますが、実際にどれくらいの発生率なのかを明らかにするため、被験者を4つの群に分けてA群にはタバコを1日20本吸わせる、B軍では1日40本吸わせる、C軍では1日60本吸わせる、D軍ではタバコフリーで今から20年間観察し、肺がんの発生率をプロスペクティブにみる。この臨床試験は成り立つでしょうか?答えはNoです。すでに肺がんとの関係が明かなのにそれをわざわざ行って肺がんという重大な結果を引き起こす臨床研究は、実施すること自体が1964年に採択されたヘルシンキ宣言(人間を対象とする医学研究の倫理的原則)に違反することとなり、倫理審査委員会を通過しない、つまり実施自体が出来ません。

患者の状態が重篤になればなるほど、「意思確認」たきちんととれているかというインフォームドコンセントとなり、臨床試験をすること自体が困難となります。

しかし、エビデンスレベルの低い治療方法を臨床現場で選択することはできないわけではありません。

エビデンスレベルの低いものは保険診療で賄うことは出来ないのですが、適応外処方の手続きをきちんとすれば使用可能です。

ただし、これには通常の医療機関であれば、「倫理審査委員会」を「こういう状態の患者さんにこの薬を適応外処方したい」という申請をして、それに適合する状態ならば使用可能にする、という院内手続きが必要となります。

今回、イベルメクチンのCOVID-19に対する効果に医師免許をかけるとおっしゃった長尾和宏医師は、こうした手続きをみたしているのでしょうか?

逆に、倫理審査委員会の手続きを経ずに行った適応外処方は、今頃はまともな学会であれば発表すらできなくなっています。

長尾和宏医師は、このあたりの手続きがどうなっていたのか、どういう状態のどういう年齢の患者さんにイベルメクチンを投与して一人の死亡例も出なかったのかを明らかにすべきでしょう。そこに虚偽があれば、誇大な広告と見做されて医道審議会の対象となり、ほんとうに医師免許が停止される恐れがあるでしょう。

学術研究の何たるかや、患者を治療するのに何が必要かとか、長尾和宏さんに理解がどれくらいあるのかが分からないのですが、十中八九学会発表にすらたえられないものではないかと想像しています。

この記事の著者:仲田洋美医師 がん薬物療法専門医臨床遺伝専門医総合内科専門医

 

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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