InstagramInstagram

C9orf72遺伝子とは|ALSと前頭側頭型認知症(FTD)の最多の遺伝的原因を遺伝専門医が解説

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

C9orf72遺伝子は、ALS(筋萎縮性側索硬化症)と前頭側頭型認知症(FTD)という2つの神経の病気の、欧米で最も多い遺伝的原因です。この遺伝子のイントロンにある「GGGGCC」という6文字のくり返しが異常に増えることで発症します。日本人ではまれですが、この遺伝子を理解することは、「くり返し配列が増えすぎる」という新しいタイプの遺伝子の病気の仕組み全体を理解することにつながります。本記事では、C9orf72が神経と免疫という2つの舞台で果たす役割と、日本人での頻度・遺伝の考え方・最新の治療開発までを、遺伝専門医がやさしく解説します。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 ALS・FTD・反復配列・オートファジー
臨床遺伝専門医監修

Q. C9orf72遺伝子とは何をする遺伝子ですか?まず結論だけ知りたいです

A. C9orf72は、細胞の中の「お掃除システム」(オートファジー・リソソーム)と免疫の調整に関わるタンパク質の設計図です。この遺伝子のイントロンにあるGGGGCCという6文字のくり返しが異常に増えると、ALS(筋萎縮性側索硬化症)とFTD(前頭側頭型認知症)の最も多い遺伝的原因になります。ただし日本人ではまれで、反復が伸びていても必ず発症するわけではありません。

  • ALS・FTDとの関係 → 欧米では家族性ALSの約4割・孤発性ALSの約7%の原因。日本人では孤発性ALSの約0.4%とまれ
  • 変化の正体 → イントロン1のGGGGCC反復が数百〜数千回に伸びる(正常は多くが30回未満)
  • 神経を壊す3つの仕組み → 機能喪失・RNA毒性・DPR毒性が並行して働く
  • 意外な一面 → 免疫細胞(ミクログリア)で炎症の暴走(STING経路)を抑えるブレーキ役でもある
  • 遺伝と検査の要点 → 常染色体顕性(優性)遺伝。反復の測定には特別な解析(RP-PCR)が必要で、陽性でも必ず発症するとは限らない

🧬 C9orf72遺伝子の基本情報

項目 内容
遺伝子名 C9orf72(Chromosome 9 open reading frame 72)/別名 C9ORF72
タンパク質 C9orf72タンパク質(長鎖アイソフォームは481アミノ酸)。SMCR8・WDR41と結合してCSW複合体をつくる
染色体上の位置 9番染色体の短腕(9p21.2
主なはたらき SMCR8・WDR41とCSW複合体をつくり、低分子GTPアーゼ(ARF・Rab)のGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)として、オートファジー・リソソーム機能・小胞輸送を調整する。骨髄球系の免疫細胞では過剰な炎症を抑える
主な発現部位 中枢神経系(ニューロン・ミクログリア)/骨髄球系細胞(マクロファージ・樹状細胞)で高く発現
生殖細胞系列変異と関連疾患 イントロン1のGGGGCC(G4C2)ヘキサヌクレオチド反復配列が数百〜数千回に伸長 → 筋萎縮性側索硬化症(ALS)・前頭側頭型認知症(FTD)=FTDALS1。常染色体顕性(優性)遺伝で、不完全・加齢依存的な浸透を示す
検査上の注意 反復の伸長はふつうのシークエンスでは測れず、リピートプライムPCR(RP-PCR)などの特別な解析が必要。日本人ではまれで、欧米の頻度をそのまま当てはめられない

各項目の根拠と詳しい解説は、本文の該当セクションをご覧ください。

💡 なぜ「C9orf72」という不思議な名前なの? ―― orfだけ小文字なのにも理由がある

C9orf72という名前を初めて見ると、「何を意味する暗号なんだろう?」と思うかもしれません。実はこの名前は、この遺伝子の働きを表しているのではありません。C9orf72は「chromosome 9 open reading frame 72」に由来する名前で、C9は「9番染色体」、orfは「open reading frame(オープンリーディングフレーム)」、72はこの命名系列で付けられた番号を表します。

オープンリーディングフレーム(ORF)とは、DNA配列のなかでタンパク質をつくる可能性のある「読み枠」のことです。C9orf72が命名された当時は、そこにタンパク質をコードすると考えられる領域があることは分かっていても、その遺伝子産物が何をしているのか十分には分かっていませんでした。このような機能不明の遺伝子に対して、HGNCでは「染色体番号+orf+番号」という形式の名前が用いられてきました。つまりC9orf72は、もともとは「9番染色体上のORFに付けられた72という番号」という、いわば整理番号のような名前だったのです。

では、なぜ「ORF」ではなく「orf」と小文字なのでしょうか? これにもちゃんと理由があります。HGNCの命名ガイドラインでは、アルファベットの「o(オー)」と数字の「0(ゼロ)」を見間違えないようにするため、このタイプの遺伝子シンボルでは「orf」を小文字にすると説明されています。したがって「C9ORF72」ではなく「C9orf72」という一見変わった大文字・小文字の組み合わせには、読み間違いを防ぐための実用的な理由があったのです。

その後、2011年にC9orf72のGGGGCC反復配列の異常伸長がALS・FTDの重要な遺伝的原因であることが明らかになり、さらにC9orf72タンパク質がSMCR8などと複合体を形成して細胞内で働くことも分かってきました。現在、HGNCでの正式な遺伝子名は「C9orf72-SMCR8 complex subunit」と機能を反映した名称になっていますが、遺伝子シンボルそのものはC9orf72のままです。機能がほとんど分からなかった時代の「整理番号」が、ALS・FTD研究を代表する有名な遺伝子名として現在まで残っているわけです。

1. C9orf72とALS・FTD ─ 欧米で最も多い原因、でも日本人ではまれ

C9orf72の反復伸長は、欧米ではALS・FTDの最も多い遺伝的原因ですが、日本人ではまれです。「欧米で最多だから日本でも最多」ではない、という点が、この遺伝子を理解するうえでの出発点になります。

C9orf72が病気と結びついていることは、2011年に2つの研究グループ(RentonらとDeJesus-Hernandezら)がほぼ同時に報告して明らかになりました[1]。それまで機能もよく分かっていなかったこの遺伝子が、一躍ALS(筋萎縮性側索硬化症)とFTD(前頭側頭型認知症)に共通する最大の遺伝的原因として注目されることになりました。ALSは手足やのど・呼吸の筋肉を動かす運動ニューロンが少しずつ失われていく病気、FTDは人格の変化や言葉の障害が前面に出る認知症の一群で、この2つは同じ家系のなかで一緒に、あるいは前後して現れることが知られています。

頻度には集団による大きな差があります。欧米系の集団を対象にした大規模な調査では、家族性ALSの約39%、孤発性ALSの約7%にこの反復伸長が見つかり、家族性FTDでも約25%を占めていました[2]。フィンランドなど一部の集団ではさらに高く、家族性ALSの半数近くに達します。一方で、日本人を含む東アジアの集団では頻度が桁違いに低いことが分かっています。日本人のALS患者563例を調べた研究では、反復伸長は孤発性ALSのわずか0.4%(552例中2例)にとどまり、家族性ALSでは見つかりませんでした[3]。ただし紀伊半島南部のALS多発地域のように、日本のなかでも例外的に頻度が高い集団も報告されています。アジアで頻度が低いことは、複数の総説でも一致して指摘されています[4]

💡 用語解説:ALSとFTDはひとつづきの病気

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、体を動かす運動ニューロンが変性して、手足やのど・呼吸の筋肉が徐々に動かなくなる病気です。一方FTD(前頭側頭型認知症)は、脳の前の方(前頭葉・側頭葉)が萎縮して、性格の変化・衝動的な行動・言葉の障害が目立つ認知症です。以前は別の病気と考えられていましたが、C9orf72の発見によって、この2つが同じ遺伝子・同じ仕組みでつながった「ひとつづきの病気(ALS-FTDスペクトラム)」だと理解されるようになりました。

この頻度の違いは、ご本人やご家族にとって大切な意味を持ちます。欧米の情報をそのまま読むと「日本でもよくある原因」と受け取ってしまいがちですが、日本人でこの反復伸長が原因である割合はごく限られています。ですから、日本でALSやFTDの遺伝的な背景を考えるときには、C9orf72だけでなく、日本人に多いSOD1などの遺伝子も含めて評価することが重要になります。C9orf72が原因となる疾患の全体像はFTDALS1(前頭側頭型認知症±筋萎縮性側索硬化症1型)のページで、認知症としての側面は前頭側頭型認知症(FTD)のページで詳しく扱っています。

2. GGGGCC反復配列の異常伸長 ─ 「くり返しが増えすぎる」変化

この病気の正体は、遺伝子の設計図の文字が「書き換わる」のではなく、「GGGGCC」という6文字のくり返しが数百〜数千回にまで増えすぎることです。増えた回数が多い人ほど、若くして発症しやすい傾向があります。

くり返しの場所は、タンパク質を直接コードしない「イントロン1」と呼ばれる領域、正確には代替的な最初のエクソン(1aと1b)のあいだにあります。健康な人ではこのくり返しの数は少なく、多くの場合30回程度までで、それ以下であれば遺伝子の働きに悪い影響を与えないと考えられています[4]。ところがALSやFTDを発症する人では、この反復が数百回から、多い場合には数千回にまで異常に伸びています[2]。ふつうの遺伝子検査(塩基配列を読むシークエンス)は、こうした極端に長いくり返しを正確に数えるのが苦手なため、専用の解析方法が必要になります(第8章で解説します)。

GGGGCC反復の数 ── 正常から病的まで

正常
数回〜30回未満
多くの人は2回ほど。働きに影響しない
中間(グレーゾーン)
おおむね数十回
意味づけが難しく、慎重な解釈が必要
病的な伸長
数百〜数千回
ALS・FTDの発症と結びつく

同じ人でも組織や世代によって反復数が変わる(不安定な)ことがあり、これが検査や解釈を難しくします。

くり返しが伸びて病気を起こすという仕組みは、ハンチントン病や筋強直性ジストロフィーなどのリピート伸長病(トリプレットリピート病)と共通しています。ただしC9orf72は3文字ではなく6文字のくり返しである点が特徴です。ご本人・ご家族にとって大切なのは、これは「文字の打ち間違い」ではなく「同じフレーズが増えすぎた」タイプの変化だという理解です。この違いが、次章以降で説明する独特な毒性の仕組みにつながっていきます。

3. タンパク質とお掃除機能 ─ CSW複合体とオートファジー・リソソーム

C9orf72タンパク質は単独では働かず、SMCR8・WDR41という2つの相棒と組んで「CSW複合体」をつくり、細胞のお掃除システム(オートファジー・リソソーム)を調整します。この掃除の力が落ちることが、後で出てくる毒性の土台になります。

C9orf72遺伝子は、いくつかのタイプのタンパク質をつくりますが、そのうち481個のアミノ酸からなる長いタイプが、細胞内でSMCR8・WDR41と強く結びついて安定した複合体を形成します。最新の構造解析(クライオ電子顕微鏡)によって、この複合体は3種類のタンパク質が2個ずつ集まった「2:2:2」の構造をとり、SMCR8が真ん中でC9orf72とWDR41をつなぐ形になっていることが分かりました[5]。さらに、この複合体は低分子GTPアーゼ(ARFやRabと呼ばれる、細胞内の物流を切り替えるスイッチ分子)に対するGTPアーゼ活性化タンパク質(GAP)として働き、SMCR8にある147番目のアルギニンがその中心的な役割を担うことも明らかになりました[5][6]

こうしたスイッチの調整を通じて、CSW複合体はオートファジーの始動や、リソソームへの物質の運搬に関わっています。細胞が飢餓状態になると、この複合体はオートファジーを進める装置の一部と手をつなぎ、掃除のスピードを上げます。リソソームに複合体を導く役目は、相棒のWDR41が担っています。オートファジーとリソソームは、細胞の中にたまった老廃物や異常タンパク質を分解して片づける仕組みですから、その調整役であるC9orf72が減ると、片づけが滞りやすくなるわけです。ご本人・ご家族にとっては、C9orf72が細胞の「掃除の司令塔」であり、その低下が次章で見る毒性のたまりやすさの土台になる、という順序を押さえておくと、この病気の全体像が追いやすくなります。

C9orf72が支える「細胞のお掃除」

C9orf72+SMCR8+WDR41
CSW複合体をつくる
スイッチ分子を調整
GAPとして働く
オートファジー・リソソーム
老廃物を分解・片づけ

C9orf72が減ると、この片づけラインが弱まり、毒性のあるタンパク質がたまりやすくなります。

💡 用語解説:オートファジーとリソソーム

オートファジーは、細胞が自分の中の不要なものを包み込んで運び、分解して再利用する「自食作用」の仕組みです。運ばれた不要物を実際に溶かして分解する袋がリソソームです。神経細胞は入れ替わりにくく長く生きる細胞なので、たまったゴミを片づけ続ける力がとくに重要です。C9orf72はこの片づけの調整役なので、その働きが落ちると神経細胞にとって不利になります。

4. 神経を壊す3つの仕組み ─ 機能喪失・RNA毒性・DPR毒性

反復の伸長は、1つの仕組みではなく3つの仕組みを同時に走らせて神経を傷つけると考えられています。①タンパク質が減る「機能喪失」、②異常なRNAがたまる「RNA毒性」、③異常な短いタンパク質がたまる「DPR毒性」の3つです。

まず①機能喪失です。反復が異常に長くなると、その部分にメチル化などの変化が起き、C9orf72遺伝子そのものが読み取られにくくなります。その結果、正常なC9orf72タンパク質が減り、第3章で見たオートファジー・リソソームによる片づけの力が落ちます[7]。これは、あとの2つの毒がたまりやすくなる「土台」をつくります。

次に②RNA毒性です。長い反復を含んだRNAは、細胞の中で分解されにくく、Gクアドルプレックスと呼ばれる特殊な立体構造をとって集まり、核や細胞質に「RNAフォーカス」という塊をつくります。この塊は、細胞が正常に働くために必要な多くのRNA結合タンパク質をスポンジのように吸い寄せて閉じ込めてしまい、RNAの処理や、核と細胞質のあいだの物流が乱れます[7]

そしておそらく最も直接的なのが③DPR毒性です。ふつうタンパク質の合成には「開始の合図(開始コドン)」が必要ですが、伸びた反復のRNAは、その合図がなくても無理やり読み取られるRAN翻訳という特殊な仕組みでタンパク質に変換されます。しかも、DNAの両方の向き(センス鎖・アンチセンス鎖)から読み取られ、5種類のジペプチドリピートタンパク質(DPR:poly-GA・poly-GP・poly-GR・poly-PA・poly-PR)ができます[7]。とくにアルギニンを多く含む2種類(poly-GRとpoly-PR)は毒性が強く、神経細胞の中で物を運ぶ軸索輸送を妨げるなどして、細胞に大きなダメージを与えます[7]

1つの反復伸長から、3つの毒性が生まれる

C9orf72
GGGGCC反復の伸長
① 機能喪失
お掃除の力が落ちる
② RNA毒性
RNAフォーカスがたまる
③ DPR毒性
有害な短いタンパク質
運動ニューロン・
神経細胞の変性

3つの経路は別々ではなく、互いに影響し合って悪循環をつくります。

💡 用語解説:DPRとTDP-43

DPR(ジペプチドリピートタンパク質)は、伸びた反復から異常につくられる短いタンパク質で、細胞の中で固まって毒性を示します。C9orf72のALS・FTDでは、脳の組織を調べると、このDPRの塊(p62というタンパク質で染まる封入体)が特徴的に見られます。

もう一つ重要なのがTDP-43というタンパク質です。ALSやFTDの多くでは、本来は核にあるべきTDP-43が細胞質に移動してたまってしまう「TDP-43プロテイノパチー」が共通の特徴で、C9orf72の病気もこの仲間に入ります。DPRの塊とTDP-43の異常が重なって見られる点が、C9orf72の病理の特徴です。

ご本人・ご家族にとって、この「3つの仕組み」という理解は、なぜ治療開発が難しいのかを納得する助けになります。1か所を止めれば解決する単純な病気ではなく、複数の経路が同時に働いているため、後の第9章で見るように、1つの標的だけを狙う治療では十分でないことが分かってきています。

5. 免疫システムでの役割 ─ ミクログリアとSTING

C9orf72には、神経だけでなく免疫の一面があります。この遺伝子は免疫細胞で炎症の暴走を抑えるブレーキ役でもあり、その働きが落ちることが、ALSやFTDに自己免疫の病気が合併しやすい理由や、周りの細胞が神経変性を後押しする仕組みを説明します。

この意外な一面は、C9orf72遺伝子を働かないようにしたノックアウトマウスの研究で明らかになりました。ヒトでC9orf72がALS/FTDを起こすことから、研究者は当初「マウスでも運動ニューロンが失われるだろう」と予想していました。ところが実際には、このマウスは正常な寿命を持ち、神経変性を起こさなかったのです[8]。その代わりに現れたのが、脾臓の腫れ(脾腫)やリンパ節の腫れといった免疫の異常でした。C9orf72は骨髄球系の免疫細胞(マクロファージやミクログリア)でとくに高く発現しており、これらの細胞の機能異常が全身の炎症を引き起こしていたのです。

別のグループのマウスでは、この免疫の異常がさらにはっきりしていました。血液中に免疫細胞が増え、全身性エリテマトーデス(SLE)に特徴的な自己抗体が現れ、腎臓の障害まで生じるという、自己免疫疾患そのもののような状態を示したのです[9]。C9orf72を失うと致死的な自己免疫を発症するという報告もあります[10]

なぜこうなるのか、その分子的な理由も分かってきました。C9orf72が減ると、細胞内でオートファジーが妨げられ、炎症を引き起こすSTINGというタンパク質の分解が滞ります。STINgがたまり続けると、細胞は外からの刺激に対して過剰に強い炎症反応(I型インターフェロン応答)を起こしてしまいます[11]。実際、C9orf72が減ったマウスは多発性硬化症のモデルとなる実験的自己免疫性脳脊髄炎に対して異常に感受性が高く、ヒトのC9orf72患者の血液や脳でも同じインターフェロンの高まりが確認されています[11]。この炎症は骨髄球系の細胞に依存しており、C9orf72を欠くマクロファージやミクログリアはCD80という活性化の目印を強く出すようになります[12]

💡 用語解説:ミクログリアとSTING

ミクログリアは、脳の中にいる免疫細胞(掃除屋・見張り役)です。ふだんは老廃物を片づけたり異常を見つけたりしていますが、暴走すると炎症を通じて神経細胞を傷つける側に回ります。STINGは、細胞の中に異物のDNAなどを感知したときに炎症のスイッチを入れるタンパク質です。C9orf72はこのスイッチが入りっぱなしにならないよう調整しており、C9orf72が減るとブレーキが効かなくなって炎症が続いてしまいます。

これらの知見は、ご本人・ご家族にとっても示唆に富みます。ALSやFTDの患者さんで自己免疫の病気の合併が多いという以前からの観察が、C9orf72の免疫での働きから説明できるようになりました。さらに病気の進行は、神経細胞がRNAやDPRの毒で傷つくのと同時に、周りのミクログリアがC9orf72の低下で炎症を起こし、両者が悪循環をつくることで加速すると考えられています。この「炎症が病気を後押しする」という視点は、第9章で見る免疫を標的にした新しい治療の考え方につながっています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「原因遺伝子が1つ」でも、体で起きていることは1つではありません】

C9orf72という1つの遺伝子の名前を聞くと、体の中で1つのことだけが起きているように感じられるかもしれません。けれど実際には、神経細胞の中で毒がたまる一方で、周りの免疫細胞では炎症のブレーキが外れる、という複数の出来事が同時に進んでいます。1つの遺伝子が、神経と免疫という一見別々の舞台で働いているという事実は、私にとっても医学のおもしろさと難しさを同時に感じさせるところです。

こうした複雑さを知ると不安になる方もいらっしゃいますが、私はむしろ逆だと考えています。仕組みが多面的に分かってきたからこそ、後の章で触れるように治療の切り口も増えてきました。分かっていることと、まだ分かっていないことの輪郭を正確にお伝えすることが、臨床遺伝専門医としての私の役割だと思っています。

6. どんな症状が出るのか ─ ALS・FTD・その中間、そして非定型

C9orf72の反復伸長は、ALS単独・FTD単独・その両方(ALS-FTD)と、幅広い形で現れます。同じ家系のなかでも、人によって出方が違うことがあります。

ALSとして現れる場合は、手指の使いにくさや手足の筋力低下から始まり、進行すると全身の筋肉、そして飲み込みや呼吸の筋肉まで影響が及びます。FTDとして現れる場合は、性格や行動の変化(無関心・衝動的な行動)や言葉の障害(失語)が前面に出て、前頭葉・側頭葉が萎縮します。C9orf72の特徴として、ALSの患者さんでも認知機能の変化を伴うことが、反復伸長のない場合より多いことが知られています。影響は運動野だけでなく、皮質下組織・小脳・視床枕(ししょうちん)といった広い脳領域にも及びます。

さらに、典型的なALS・FTD以外の非定型的な現れ方も報告されています。若年発症のアルツハイマー病に似た経過、孤立したパーキンソニズム、幻覚・妄想などの精神症状で始まる例などがあり、臨床的なスペクトラム(幅)はとても広いことが分かっています[4]。この幅広さは、初診の段階で別の病気と診断されることもあるという意味で、注意が必要な点です。発症年齢は多くが50〜64歳ですが、20代から90代までと個人差が大きいことも報告されています[4]

現れ方 主な特徴
ALS(筋萎縮性側索硬化症) 運動ニューロンの変性による進行性の筋力低下・筋萎縮。飲み込みや呼吸の筋肉にも影響が及ぶ。
FTD(前頭側頭型認知症) 性格・行動の変化(無関心・衝動性)や言葉の障害(失語)。前頭葉・側頭葉の萎縮。
ALS-FTD(両方の合併) 運動と認知の両方の症状が同じ人に現れる。C9orf72では認知機能の変化を伴う割合が高い。
非定型的な現れ方 若年発症のアルツハイマー病に似た経過、パーキンソニズム、幻覚・妄想などの精神症状で始まる例。

ご本人・ご家族にとって大切なのは、同じ遺伝子でも家系のなかで現れ方が一定でないという点です。ある人はALS、別の人はFTD、また別の人は精神症状、ということが起こり得ます。だからこそ、ご家族に神経・精神の病気がいた場合には、その情報を整理して医師に伝えることが、正しい評価の助けになります。認知症としての側面は前頭側頭型認知症(FTD)のページで、FTDのもう一つの主要な原因遺伝子についてはMAPT遺伝子(タウ)のページで扱っています。若年発症のアルツハイマー病に似た経過については早発アルツハイマー病もあわせてご覧ください。

7. 浸透率と発症年齢 ─ 陽性でも必ず発症するわけではない

C9orf72の反復伸長を受け継いでも、必ず発症するとは限りません。発症する割合は年齢とともに増える(加齢依存的で不完全な浸透を示す)ため、「陽性=発症が確定」ではない、という点がとても重要です。

この点を象徴するのが、日本人の研究で報告された76歳になっても症状のない反復伸長の保因者の例です[3]。反復が伸びていても、高齢まで発症しない人が実際に存在するのです。C9orf72の反復伸長は常染色体顕性(優性)遺伝のパターンをとり、親が保因者であれば、子どもに伝わる確率は1回の妊娠あたり2分の1(50%)と計算されます。ただし、伝わったからといって必ず発症するわけではなく、この「伝わる確率」と「発症する確率」は別のものだという理解が欠かせません。

💡 用語解説:浸透率と常染色体顕性(優性)遺伝

浸透率とは、ある変化を持つ人のうち、実際に症状が出る人の割合のことです。浸透率が100%でなければ、変化を持っていても発症しない人がいます。C9orf72は加齢依存的で不完全な浸透を示し、年齢が上がるほど発症する割合が増えます。

常染色体顕性(優性)遺伝は、対になった遺伝子のうち片方に変化があれば形質が現れうる遺伝の仕方で、親から子へ2分の1の確率で伝わります。C9orf72はこのパターンですが、上で述べたとおり浸透が不完全なため、伝わっても必ず発症するわけではありません。

世代を経るごとに発症年齢が早まる「表現促進(アンティシペーション)」の可能性も議論されていますが、反復数の測定や解釈が難しいこともあり、なお研究が続いている段階です。ご本人・ご家族にとって、この「不完全な浸透」という性質は、症状のない血縁者が検査を受けるかどうか(発症前診断)を考えるうえで決定的に重要です。結果が「陽性」であっても、いつ発症するか、あるいは発症しないかは今の医学では正確に予測できません。だからこそ、検査の前に十分な話し合いが必要になります。この点は次の第8章で詳しく扱います。

8. 遺伝子検査と遺伝カウンセリング ─ RP-PCRと発症前診断

C9orf72の反復は、ふつうの塩基配列を読む検査では測れないため、リピートプライムPCR(RP-PCR)などの特別な解析が必要です。とくに症状のない血縁者が受ける発症前診断は、臨床遺伝専門医との十分な話し合いのうえで、慎重に進めます。

なぜ特別な検査が要るのかというと、数百〜数千回にもなる長いくり返しは、通常のシークエンスやパネル検査では正確に数えられず、見落とされてしまうことがあるからです。そこで反復の有無をとらえるRP-PCRや、長さを見積もるサザンブロットといった方法が用いられます。当院で扱うALS遺伝子検査NGSパネルでも、日本人に多いSOD1などと並んでC9ORF72が対象に含まれ、この反復伸長はrepeat-primed PCRという専用の解析で評価されます。ALS遺伝子検査をめぐる日本の制度上の位置づけについては「SOD1以外のALS遺伝子検査は研究段階」と言われた方へのコラムでも解説しています。

検査には大きく2つの場面があります。1つは、すでに症状のある方の原因を調べる診断目的の検査。もう1つは、症状のない血縁者が将来の発症リスクを調べる発症前診断です。第7章で述べたとおり、C9orf72は不完全な浸透を示すため、発症前診断で「陽性」と分かっても、いつ発症するか、あるいは発症しないかを正確に予測することはできません。結果が就労・保険・家族関係・心理面に及ぼす影響も小さくありません。そのため発症前診断は、検査を受けるかどうかを含めて、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングのなかで、時間をかけて検討することが標準的です。

遺伝カウンセリングで話し合う内容は、検査で何が分かり何が分からないのか、結果がご本人やご家族にどのような意味を持つのか、そして結果を受けてどのような選択肢があるのか、といった点です。受けるかどうかを決めるのはご本人であり、私たちは中立の立場で判断材料を整理する役割を担います。遺伝子検査全般の考え方は遺伝子検査とはのページ、専門医の役割は臨床遺伝専門医とはのページでも紹介しています。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「知る」ことと「決める」ことは別だと考えています】

発症前診断は、結果を知ってもすぐに治療につながるわけではない場合、受けるかどうかそのものが大きな問いになります。C9orf72のように浸透が不完全な遺伝子では、「陽性」という結果を受け取っても、それがいつ・どんな形で・そもそも本当に発症につながるのかまでは分かりません。だからこそ私は、検査を勧めることも止めることもせず、まず情報の輪郭を正確にお渡しすることを大切に考えています。

結果を知りたい理由も、知りたくない理由も、どちらもその人にとって正当なものです。ご家族計画のために知っておきたい方もいれば、日々を穏やかに過ごすために今は知らないでいたいという方もいます。中立の立場で判断材料を整理し、ご本人が納得して選べるように伴走することが、臨床遺伝専門医としての私の役割だと思っています。

9. 治療開発の現在地 ─ 第一世代ASOの教訓と次世代の多角戦略

治療開発は、毒性のあるRNAを直接消そうとした第一世代のアンチセンス薬(ASO)が期待どおりの効果を示せず、その教訓から、下流の複数の標的を狙う多角的なアプローチへと大きく方向転換しています。

最初に大きな試みとなったのが、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)のBIIB078でした。これは反復を含む有害なRNAを狙って分解する薬で、C9orf72関連ALSの患者106名を対象に、髄腔内へ5mgから90mgまで投与する第1相試験が行われました。しかし結果は厳しいもので、臨床的な効果は認められず、最も高い90mgの群ではむしろ悪化の傾向がみられ、神経のダメージの指標であるNfL(神経フィラメント軽鎖)はむしろ上昇しました。この結果を受けて開発は中止されています[13]。別の会社のASOであるWVE-004も、同様に髄液NfLの上昇がみられ、2023年に開発が中止されたと報告されています。

これらの失敗は、大切な教訓を残しました。第4章で見たように、C9orf72では「タンパク質が減る機能喪失」も病態の一部です。RNAを狙うつもりでC9orf72そのものまで無差別に抑えてしまうと、かえって片づけの力や免疫のブレーキが弱まり、状況を悪化させかねません。C9orf72に特化した治療の臨床試験は歴史的にごく限られており[14]、この経験を踏まえて、次世代の開発は「複数の切り口」を同時に探る方向に進んでいます。

その一つが、DPRの産生そのものを抑える発想です。糖尿病薬のメトホルミンは、RAN翻訳を担うPKRという経路を抑えてDPRを減らすことがモデル動物で示され、C9orf72関連ALSの患者を対象にした臨床試験(24週間のオープンラベル試験)が進められています[15]。また、大規模な遺伝データから薬を探す研究では、既存のアルコール依存症治療薬アカンプロサートが候補として同定され、患者由来の運動ニューロンで神経保護作用を示し、その効果は標準治療薬リルゾールと同等と報告されました[16]

第5章で見た免疫の視点を活かした治療も登場しています。制御性T細胞(Treg)を増やして炎症を抑えるCOYA 302(低用量IL-2とCTLA-4 Igの組み合わせ)は、ALSを対象とした第2相試験が始まっています[17]。さらに、C9orf72に限らず幅広いALSに使える可能性のある薬として、軸索変性に関わるカルパイン2を標的にしたASOのAMX0114(第1相のLUMINA試験)[18]や、細胞の掃除機能を高めてTDP-43などの毒性タンパク質を除去するPIKFYVEを標的にしたAS-202の開発[19]も進んでいます。

アプローチ 狙い 現状
第一世代ASO(BIIB078・WVE-004) 有害なRNAを直接分解する 効果が示せず開発中止。機能喪失への配慮という教訓を残した
メトホルミン/アカンプロサート DPRの産生を抑える/神経を保護する(薬の転用) 臨床試験・前臨床の段階
COYA 302(免疫調整) 制御性T細胞を増やし炎症を抑える ALS対象の第2相試験
AMX0114/AS-202(下流の細胞死・掃除) 軸索変性を抑える/掃除機能を高めて毒性タンパク質を除去 第1相試験・開発段階

💡 用語解説:ASOとNfL

ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)は、狙った遺伝子のRNAにくっついてその働きを抑える核酸医薬の一種です。NfL(神経フィラメント軽鎖)は、神経細胞が傷ついたときに血液や髄液に漏れ出す物質で、神経のダメージの目安(バイオマーカー)として使われます。治療でNfLが下がれば良い方向、上がれば神経の傷が増えている可能性を示すため、臨床試験で重視されています。

ご本人・ご家族にとって大切なのは、「まだ確立した治療薬はないが、複数の方向から開発が続いている」という現在地を正確に知っておくことです。ここで紹介した薬は多くが臨床試験や前臨床の段階であり、効果や安全性が確定したものではありません。過度な期待も、過度な諦めも避けて、確かな情報に基づいて見通しを持つことが、次の一歩を選ぶ助けになります。

10. よくある誤解

C9orf72については、情報が欧米中心であることや、ニュースで断片的に伝わることから、いくつかの誤解が生まれがちです。ご本人・ご家族が判断を誤らないために、代表的なものを整理します。

誤解①「C9orf72は日本人にも多い原因だ」

欧米では最も多い遺伝的原因ですが、日本人では孤発性ALSの約0.4%とまれです。欧米の頻度をそのまま日本に当てはめることはできません。日本ではSOD1など別の遺伝子も含めて評価することが大切です。

誤解②「反復が伸びていれば必ず発症する」

C9orf72は不完全な浸透を示します。76歳でも症状のない保因者が報告されており、反復が伸びていても発症するかどうか・いつ発症するかは、今の医学では正確に予測できません。

誤解③「もう治療薬がある」

第一世代のASOは効果を示せず開発が中止されました。メトホルミンや免疫調整薬などの次世代の候補は、いずれも臨床試験や前臨床の段階で、確立した治療薬はまだありません。

誤解④「ふつうの遺伝子検査で分かる」

長い反復は通常のシークエンスでは見落とされることがあり、RP-PCRなどの専用の解析が必要です。「陰性」と言われても、その検査が反復伸長を評価できる方法だったかを確認することが大切です。

🧭 このページを読んだあなたへ

この記事にたどり着かれた方は、たとえば「ご家族にALSやFTDと診断された方がいて遺伝の可能性を知りたい」「ご自身の検査で反復伸長を指摘された」「血縁者として発症前診断を考えている」といった状況かもしれません。次に確認しておくとよい観点を、C9orf72に即して挙げておきます。

よくある質問(FAQ)

Q1. C9orf72遺伝子とは何をする遺伝子ですか?

C9orf72は9番染色体の短腕(9p21.2)にある遺伝子で、SMCR8・WDR41というタンパク質と結びついてCSW複合体をつくります。この複合体は、細胞のお掃除システムであるオートファジーやリソソームの働きを調整し、免疫細胞では過剰な炎症を抑えるブレーキとしても働きます。イントロンにあるGGGGCCという6文字のくり返しが異常に増えると、ALS(筋萎縮性側索硬化症)とFTD(前頭側頭型認知症)の原因になります。

Q2. C9orf72の変異は日本人にも多いのですか?

いいえ、日本人ではまれです。欧米では家族性ALSの約4割・孤発性ALSの約7%を占める最も多い遺伝的原因ですが、日本人のALS患者563例を調べた研究では、反復伸長は孤発性ALSの約0.4%にとどまり、家族性ALSでは見つかりませんでした。紀伊半島南部のように例外的に頻度が高い集団もありますが、全体としては欧米より桁違いに低いため、欧米の頻度をそのまま日本に当てはめることはできません。

Q3. C9orf72の反復が伸びていると、必ずALSやFTDになりますか?

必ずしも発症するわけではありません。C9orf72は加齢とともに発症する割合が増える「不完全な浸透」を示し、日本人の研究では76歳になっても症状のない保因者が報告されています。反復が伸びていても、いつ発症するか、あるいは発症しないかを、今の医学で正確に予測することはできません。この不確実さがあるため、症状のない方の発症前診断は慎重に検討する必要があります。

Q4. C9orf72の検査は血液で分かりますか?どのように調べますか?

C9orf72の反復伸長は血液から調べられますが、数百〜数千回にもなる長いくり返しは、通常の塩基配列を読む検査では正確に数えられず見落とされることがあります。そのため、リピートプライムPCR(RP-PCR)という専用の解析や、長さを見積もるサザンブロットといった特別な方法が用いられます。当院のALS遺伝子検査NGSパネルでもC9ORF72が対象に含まれ、この反復はrepeat-primed PCRで評価されます。

Q5. C9orf72の反復伸長は子どもに遺伝しますか?

C9orf72の反復伸長は常染色体顕性(優性)遺伝のパターンをとり、親が保因者であれば子どもに伝わる確率は1回の妊娠あたり2分の1(50%)と計算されます。ただし、伝わったからといって必ず発症するわけではありません。C9orf72は浸透が不完全なため、「伝わる確率」と「発症する確率」は別のものだという理解が大切です。ご家族の状況に応じた考え方は、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで整理できます。

Q6. ALSとFTDはどう違うのですか?同じ人に両方出ますか?

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は運動ニューロンが変性して筋力が低下する病気、FTD(前頭側頭型認知症)は前頭葉・側頭葉の萎縮で性格の変化や言葉の障害が出る認知症です。以前は別の病気とされていましたが、C9orf72の発見によって、この2つが同じ遺伝子・同じ仕組みでつながった「ひとつづきの病気」だと分かりました。同じ人に両方が現れる(ALS-FTD)ことも、同じ家系のなかで人によって違う形で現れることもあります。

Q7. C9orf72関連のALS・FTDに治療法はありますか?

現時点で、C9orf72に特化した確立した治療薬はありません。有害なRNAを分解する第一世代のアンチセンス薬(BIIB078など)は臨床的な効果を示せず開発が中止されましたが、その教訓から、DPRの産生を抑える薬、免疫の炎症を抑える薬、下流の細胞死や掃除機能を標的にする薬など、複数の方向から次世代の開発が進んでいます。これらは臨床試験や前臨床の段階であり、効果や安全性が確定したものではありません。

Q8. C9orf72を含む遺伝子検査はどこで受けられますか?

当院では、C9ORF72を含むALS遺伝子検査NGSパネルを扱っており、この反復伸長はrepeat-primed PCRで評価されます。検査を受けるかどうか、また症状のない血縁者が発症前診断を受けるかどうかは、結果の意味やご家族への影響を踏まえて慎重に検討すべき事柄です。当院では臨床遺伝専門医が検査の前後で遺伝カウンセリングを行い、中立の立場で判断材料を整理します。まずはご相談ください。

🏥 ALS・FTD・認知症の遺伝子診断のご相談

C9orf72をはじめとするALS・前頭側頭型認知症の
遺伝子検査と遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにご相談ください。

参考文献

  • [1] A hexanucleotide repeat expansion in C9ORF72 is the cause of chromosome 9p21-linked ALS-FTD. Neuron. 2011. [Neuron]
  • [2] Frequency of the C9orf72 hexanucleotide repeat expansion in patients with amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal dementia: a cross-sectional study. Lancet Neurol. 2012. [PMC3322422]
  • [3] Analysis of C9orf72 repeat expansion in 563 Japanese patients with amyotrophic lateral sclerosis. Neurobiol Aging. 2012. [PubMed 22727276]
  • [4] C9orf72 Frontotemporal Dementia and/or Amyotrophic Lateral Sclerosis. GeneReviews. [GeneReviews NBK268647]
  • [5] Cryo-EM structure of C9ORF72-SMCR8-WDR41 reveals the role as a GAP for Rab8a and Rab11a. Proc Natl Acad Sci U S A. 2020. [PNAS]
  • [6] Structural basis for the ARF GAP activity and specificity of the C9orf72 complex. Nat Commun. 2021. [Nat Commun]
  • [7] Disease Mechanisms and Therapeutic Approaches in C9orf72 ALS-FTD. [PMC8229688]
  • [8] C9orf72 is required for proper macrophage and microglial function in mice. Science. 2016. [Science]
  • [9] C9orf72 ablation causes immune dysregulation characterized by leukocyte expansion, autoantibody production, and glomerulonephropathy in mice. Sci Rep. 2016. [Sci Rep]
  • [10] Loss-of-function mutations in the C9ORF72 mouse ortholog cause fatal autoimmune disease. Sci Transl Med. 2016. [Sci Transl Med]
  • [11] C9orf72 in myeloid cells suppresses STING-induced inflammation. Nature. 2020. [Nature]
  • [12] Myeloid and lymphoid expression of C9orf72 regulates IL-17A signaling in mice. Sci Transl Med. [Sci Transl Med]
  • [13] Safety, tolerability, and pharmacokinetics of antisense oligonucleotide BIIB078 in adults with C9orf72-associated amyotrophic lateral sclerosis: a phase 1, randomised, double blinded, placebo-controlled, multiple ascending dose study. Lancet Neurol. 2024. [PubMed 39059407]
  • [14] Therapeutic strategies for C9orf72 amyotrophic lateral sclerosis and frontotemporal dementia. [PMC8678157]
  • [15] Safety and Tolerability of Metformin in Subjects With C9orf72 Amyotrophic Lateral Sclerosis Over 24 Weeks(NCT04220021). [NCT04220021]
  • [16] Mechanism-free repurposing of drugs for C9orf72-related ALS/FTD using large-scale genomic data. Cell Genomics. 2024. [Cell Genomics]
  • [17] Study of COYA 302 for the Treatment of ALS(ALSTARS Trial/NCT07161999). ClinicalTrials.gov. [NCT07161999]
  • [18] Amylyx Pharmaceuticals Announces First Participant Dosed in Phase 1 LUMINA Trial of AMX0114(calpain-2 ASO/NCT06665165). Amylyx Pharmaceuticals. [Amylyx / NCT06665165]
  • [19] Manufacturing of AS-202, an Antisense Oligonucleotide(PIKFYVE)for a Phase 1/2 Clinical Trial for Amyotrophic Lateral Sclerosis. CIRM. [CIRM]

関連記事

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移