みなさま、こんにちわ。
最近あった症例ですが。
NIPTなのですが、妊娠中に乳癌があり、セカンドオピニオンも兼ねるってパターン。
実はわたし、がんの専門医(がん薬物療法専門医。全国に1000人くらいですね。難関専門医なのでなかなか増えません。。。)でもあるのです。
認可外でNIPTやっているので、そっちで有名になってしまい。がんの専門医であることが忘れられているっぽいですが。
本人的には、がんの専門医であることも、遺伝子の専門医(臨床遺伝専門医)であることも、内科の総合的な専門医(総合内科専門医)であることも、大事にしております。
なので、守備範囲が大変広くて維持するのに大変ですが!
NIPTの診療に来た人がいきなりセカンドオピニオンになったとしても、別に追加料金を頂いたりはしておりません。
で。大変びっくりすることに、Her2陽性、ホルモン陽性でステージIIAの患者さんに対して
結構ちゃんとした病院(厚生労働省が運営している地域医療支援病院ですねえ。。。)の外科で
『全身麻酔は危ないから局所麻酔で乳房全摘』という治療方針を立てられてしまったらしいんです。
(◎_◎;)
乳房切除術は全身麻酔で12週から行えます?予定手術でも。予定手術でない症例に関しては
乳癌ではそんなことないでしょうが、たとえば胆嚢炎でどうしても開腹手術とかになる場合は
仕方なく必要に応じて勘案して行うことになります。
器官形成期(赤ちゃんの臓器ができる時期)は妊娠7週ごろまでなので。
乳癌の場合、予定手術で基本的に一刻を争うということはありませんので
妊娠12週以降の第2三半期に行いますが。
こちらに英語のサイトがありますのでご覧ください。
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6128597/
ちなみに、こちらは昔私が書いたもの。
minerva-clinic.or.jp/wp-content/uploads/2019/08/3acb744d18b0098cd22000e30ebfda8f.pdf
大体、局所麻酔に一般的に使用されるリドカイン自体、妊婦に対する安全性は確立していません。
そして、何より問題なことは、「キシロカイン(一般名リドカイン)中毒」があることです。
乳房全摘するような手術で、局所麻酔だけで痛みを取ろうとすると、過量投与になってリドカイン中毒の危険性が高まるので
全身麻酔よりそっちのほうが断然危険だと思いますけど。。。。。
いやー。
医者って自由だな。。。
患者さんが知識がないと思って、めちゃくちゃな治療方針立てて、めちゃくちゃだとわからないので
本人は結構自信をもってそういう治療方針を立てているわけであるので
馬耳東風、暖簾に腕押し、柳に風、糠に釘。
でも、こんなことしたら患者さん死ぬよ?!
死んでも 手術にリスクはつきものです って言うのかな?!
くわばらくわばら。
これだって、患者さんのほうは何も知らないわけだから、そういう最悪のシナリオが現実となったとしても
先生は頑張ってくれたけど運が悪かったんだね、、となってしまう。
専門職の無知は罪である。
アメリカでは、医療過誤の調査が行われ、たしか死因の3位が医療過誤じゃなかったかな?
日本も変わらない状況だと思いますけどね。
せめて、大事な決断をする前に、セカンドオピニオンを受けてほしいな、と思います。
彼女には、全身麻酔で普通に全摘してくれるところに転院していただきました。ずっと相談には乗ります!