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「あの夜、電話に出ていなかったら…」3つの新しい命と、私を泣かせた和菓子。|医師と患者の絆

「あの夜、電話に出ていなかったら…」3つの新しい命と、私を泣かせた和菓子。
仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

こんにちは、ミネルバクリニック院長の仲田です。

医師にとって、患者さんはみな平等に大切な存在です。
ですが、長い医師人生の中には、どうしても忘れられない、「強烈に記憶に残る患者さん」という方がいらっしゃいます。

今日は、私を泣かせた、ある一人の女性のお話をさせてください。

医師が直接電話に出ていたころのこと

本題に入る前に少しだけ、当院の電話事情についてお話しします。
実は以前、ミネルバクリニックでは、医師である私たちが直接電話に出ていた時期がありました。

医師が直接電話に出るクリニックなんて、珍しいですよね。
でも、当時はその「距離の近さ」ゆえに、大変なこともありました。

  • 📞 営業電話や嫌がらせ電話の対応
  • 📞 夜の10時にかかってきて、2時間近く切ってくれない電話…

そんな経験もあり、その後しばらくはコールセンターに電話対応をお願いしていました。
2026年4月からは、ふたたびクリニックのスタッフがお電話を受けています。

しかし、まだ私が電話に出ていたあの頃。一本の忘れられない電話がかかってきたのです。

震える声と、絶望の淵で

受話器の向こうから聞こえてきたのは、今にも泣き出しそうな、か細い女性の声でした。

「……NIPTを受けて、陽性だったんです」

彼女は別の施設でNIPTを受け、陽性判定を受けました。
どうしていいかわからないまま、必死に羊水検査ができる場所を探し、確定診断を受け……
泣く泣く、赤ちゃんを諦める(中絶する)という選択をされていました。

💡 陽性で不安な方へ
NIPT陽性後のフローや確率については、こちらの記事で詳しく解説しています。
▶ NIPT陽性・判定保留と言われたら?確率の真実と次にすべき行動

「次は大丈夫なんでしょうか……次も同じことになるんじゃないかと、不安でたまらないんです」

電話口で震える彼女に、私は臨床遺伝専門医として、そして一人の人間として、精一杯の言葉をかけました。

「大丈夫。染色体の数の変化の多くは、誰のせいでもなく偶然起こるものです。
次の妊娠で同じことが起こる確率は、決して高くありません。
次の妊娠のときも、一緒に考えていきましょうね」

私の言葉を聞いて、彼女は電話口で泣き崩れました。
「ありがとう、ありがとう」と、何度も繰り返しながら。

💡 専門医によるサポート
ミネルバクリニックでは、専門医が患者様に寄り添い、正確な情報提供と心理的サポートを行います。
▶ NIPTと遺伝カウンセリング – 臨床遺伝専門医が担う役割

3つの命と、和菓子の重み

その後、その方はなんと3回妊娠され、3回ともミネルバクリニックに来てくださいました。

そして3回目のご来院の時。「もうこれで最後だから」と思われたのでしょう。
和菓子を持ってきてくださったのです。
そこで彼女が語ってくれたお話に、私は胸がいっぱいになりました。

あの夜の電話がなかったら、怖くて子どもを持つことをあきらめていたかもしれない。
お子さんを授かるまでにはご苦労もあったけれど、あの夜の言葉を支えに頑張れた――。
彼女はそう話してくれました。

その言葉を聞いた瞬間、私はハッとしました。

あの日、あの夜、私が電話に出ていなかったら。
今、この世に存在している「3人の新しい命」は、生まれてこなかったかもしれない。

そう思うと、患者さん以上に、私のほうが感動してしまいました。
頂戴した和菓子はずっしりと重く、そこには命の重みと、彼女の人生の苦悩と喜びが詰まっているように感じました。

まとめ:人と人は支え合っている

医師は患者さんを支える存在です。
でも同時に、私たち医師もまた、患者さんの言葉や生きる姿勢に支えられ、勇気をもらっています。

人と人は支え合って生きていく。
医師と患者さんもまた、そうした温かい関係でありたい。
12年目を迎える今、改めてそう強く心に刻みました。

NIPTで不安な思いをされている方、ほかの施設で結果を受け取り、どうしていいかわからずにいる方。
一人で抱え込まず、ぜひ私たちにご相談ください。