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「原因不明の骨の痛みが何年も続く」「歩くのがつらくなり、車椅子をすすめられた」「骨粗しょう症の薬を飲んでもよくならない」——こうした経験の背景に、体のどこかにひそむ数センチの小さな腫瘍が隠れていることがあります。腫瘍性骨軟化症(Tumor-Induced Osteomalacia:TIO)は、その小さな腫瘍がFGF23(線維芽細胞増殖因子23)というホルモンを出しすぎることで、血液中のリンが不足し、骨がやわらかくなってしまう、後天性のまれな病気です。
TIOは症状が非特異的なため、リウマチや椎間板ヘルニア、骨粗しょう症などと間違われ、正しい診断まで平均で数年かかることが知られています[2]。けれども、原因の腫瘍さえ見つけて取り除ければ、多くの場合は劇的に回復します。近年は腫瘍をさがし出す核医学検査(68Ga-DOTATATE PET/CT)や、FGF23を直接抑える抗体医薬(ブロスマブ)の登場で、診断と治療は大きく前進しました。
- ➤ TIOがどんな病気で、なぜ「原因不明の骨の痛み」から始まるのか
- ➤ FGF23の出しすぎが、腎臓と骨にどう作用して骨軟化症を起こすのか
- ➤ 原因のFN1-FGFR1融合遺伝子と、「TIOは遺伝するのか」という疑問への答え
- ➤ 小さな腫瘍を見つけ出す核医学検査(68Ga-DOTATATE PET/CT)の考え方
- ➤ 手術・ブロスマブ・分子標的薬という、いまある治療の選択肢
🦴Q. 腫瘍性骨軟化症(TIO)とはどんな病気ですか?
体のどこかにできた小さな腫瘍がFGF23というホルモンを過剰に分泌し、そのはたらきで尿からリンが失われ、血中リンが不足して骨がやわらかくなる(骨軟化症)、後天性のまれな病気です。原因の腫瘍を完全に取り除ければ、多くの場合、根治が期待できます。
🩺Q. なぜ診断が難しいのですか?
原因の腫瘍は平均で直径2〜3cmと小さく、全身どこにでもできるため見つけにくく、症状も骨粗しょう症などと似ています。診断までに数年かかることもまれではありません[2]。
🌸Q. 遺伝しますか?治療法はありますか?
原因の遺伝子変化は腫瘍のなかだけで起こる後天的なもので、親から子へ遺伝しません。治療の基本は腫瘍の手術で、切除できない場合は抗FGF23抗体ブロスマブなどが用いられます[12]。
腫瘍性骨軟化症(TIO)とは——小さな腫瘍がホルモンで骨をむしばむ病気
「発がん性骨軟化症」とも呼ばれる腫瘍随伴症候群
腫瘍性骨軟化症(TIO)は、「腫瘍原性骨軟化症(oncogenic osteomalacia)」とも呼ばれ、多くは間葉系(かんようけい)の小さな腫瘍がFGF23(線維芽細胞増殖因子23)というホルモンを過剰に分泌することで起こる、まれで重い腫瘍随伴症候群です[1]。腫瘍随伴症候群とは、腫瘍そのものの大きさや広がりではなく、腫瘍が出す物質(ここではホルモン)によって全身に症状が出る状態を指します。
FGF23は、本来は骨のなかの細胞(骨細胞・骨芽細胞)がつくり、血液中のリンの量を一定に保つためのホルモンです。腎臓にはたらきかけて、余分なリンを尿へ捨てる量を調整しています。ところがTIOでは、腫瘍がこのホルモンを大量に出しすぎるため、必要なリンまで尿に捨てられてしまいます。FGF23の詳しいはたらきは別ページでも解説しています。
歴史をふり返ると、低リン血症と骨軟化症の関連を示す症例は1947年に初めて報告され、その後1959年に特定の腫瘍と骨軟化症の因果関係が示されました。原因物質であるFGF23が同定され、分子レベルで全体像が見えはじめたのは2001年のことです[3]。比較的新しく理解が進んだ病気だといえます。
どれくらいまれで、なぜ見逃されやすいのか
TIOの正確な頻度は長らく不明でしたが、デンマークの全国的な疫学調査では、年間発症率は10万人あたり0.13人未満、有病率は10万人あたり0.70人以下と推定されています[4]。2024年の系統的レビューでは、2023年末までの文献から769報・1,979例が集積されており、世界的にもきわめてまれな病気であることが分かります[5]。
この希少性と、症状が特定の病気らしくない(非特異的な)ことが重なって、発症から確定診断までに数年を要することが多いのが実情です[5]。その間、リウマチ性疾患、椎間板ヘルニア、脊椎関節炎、あるいは原発性骨粗しょう症などと誤診されやすく、その結果、不可逆的な骨の変形や、生活の質(QOL)の大きな低下を招いてしまうことがあります[3]。血清リン濃度は一般的な健康診断の項目に入っていないことが多く、これも見逃しの一因になっています[4]。
原因不明の骨の痛み・筋力低下・くり返す骨折があるとき、一度「血清リン濃度」を測ってみることが、TIOに気づく最初の入り口になります。リンが低ければ、その原因をさらに調べていく価値があります[1]。
なぜ骨が弱るのか——FGF23が腎臓と骨に及ぼす作用
TIOの中心にあるのは、腫瘍によるFGF23の自律的な出しすぎです。正常なFGF23は、腎臓の近位尿細管(きんいにょうさいかん)という場所で、α-クロトーという補助タンパク質の助けを借りて受容体(FGFR1)に結合し、リンのバランスをとるシグナル伝達を担っています[1]。

腫瘍性骨軟化症(TIO)の病態メカニズム。原因腫瘍であるリン酸尿性間葉系腫瘍(PMT)の細胞では、FN1-FGFR1融合などによるFGFR1シグナルの異常活性化と自己分泌・傍分泌ループが、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)の大量産生・放出に関与すると考えられている。血流に乗ったFGF23は腎臓の近位尿細管でFGFR1/α-Klotho複合体に結合し、リン酸を再吸収する輸送体(NaPi-2a/2c)と活性型ビタミンDを作る1α-水酸化酵素の働きを抑制する。その結果、尿中へのリン喪失(リン酸尿)が進み、血中リンが不足して骨の石灰化障害(骨軟化症)が生じる。
このシグナルが過剰になると、腎臓では2つのことが同時に起こります。第一に、尿からリンを回収する輸送体(NaPi-2a/2c)のはたらきが強く抑えられ、リンが尿にどんどん捨てられます(リン酸尿)。第二に、ビタミンDを活性型に変える酵素(1α-水酸化酵素)が抑えられ、活性型ビタミンDが減って、腸からのリン・カルシウムの吸収も落ちます[3]。こうして慢性的に血中リンが不足すると、骨をつくる材料(類骨)がうまく石灰化できず、成人では骨軟化症、成長期の子どもではくる病になります[1]。
原因の腫瘍「PMT」と、その中で起こる遺伝子の変化
TIOを起こす腫瘍の大部分は、リン酸尿性間葉系腫瘍(Phosphaturic Mesenchymal Tumor:PMT)という特有のタイプです[5]。PMTは2013年に世界保健機関(WHO)の骨・軟部腫瘍分類で正式な腫瘍として認められました。近年の遺伝子解析により、このPMTがなぜFGF23を出しすぎるのか、そのしくみが分かってきました。
最も重要な発見が、多くのPMTで見つかるFN1-FGFR1という融合遺伝子です。ある研究では、PMTの約42%にFN1-FGFR1融合、約6%に別のFN1-FGF1融合が見つかりました[6]。融合遺伝子とは、本来別々の2つの遺伝子が染色体の再構成によってつながったものです。FN1-FGFR1融合では、FN1側の強い発現制御やタンパク質同士を会合させる性質に加え、FGFR1のリガンド結合部位・膜貫通部位・チロシンキナーゼ領域が保たれることで、FGFR1シグナルが異常に活性化しやすくなると考えられています[7]。
さらに、FN1-FGFR1融合タンパク質はFGFが結合する細胞外領域を保っているため、腫瘍で高発現するFGF23やFGF1などがFGFR1シグナルを刺激し、腫瘍形成やFGF23過剰産生を支える自己分泌・傍分泌ループが生じる可能性が提唱されています[6]。ただし、この機序はなお完全には確定していません。近年は、FN1-FGFR1やFN1-FGF1を持たないPMTから、NIPBL-BEND2という新しい融合遺伝子も報告され、PMTの遺伝的な多様性が明らかになってきました[8]。
症状と誤診——「小さくて隠れた腫瘍」が診断を遅らせる
TIOの発症はゆるやかで、はじめは下肢を中心とする漠然とした筋骨格系の痛み、持続する疲労感、太ももや肩まわりなど体の中心に近い筋肉の力が入りにくくなる筋力低下(ミオパチー)としてあらわれます[3]。これは、細胞外のリンが不足すると、細胞のエネルギー(ATP)がうまくつくれなくなることが一因と考えられています。
病気が進むと、立ち上がりや歩行が困難になり、車椅子や杖が必要になることもあります。中国の144例の後ろ向き解析では、症状の頻度は骨痛(99%)、歩行困難(93%)、骨折(80%)、身長の低下(69%)、筋力低下(65%)の順に多かったと報告されています[12]。骨の石灰化不全のため、大腿骨頸部・肋骨・脊椎などに病的骨折や、X線で帯状に見える偽骨折(Looser帯)が生じます[1]。
図1:TIOの症状と、間違われやすい病気
🦵 主な症状
- 全身の骨の痛み・筋力低下
- くり返す病的骨折・偽骨折
- 歩行困難・身長が縮む
⚠️ 間違われやすい病気
- 骨粗しょう症
- リウマチ・脊椎関節炎
- 椎間板ヘルニア
🔑 気づきの手がかり
- 血清リンが低い
- 骨型ALPが高い
- 通常の治療で改善しない
※「治りにくい骨の症状+低リン血症」の組み合わせが、TIOを疑うきっかけになります。
診断を難しくしている最大の理由は、原因のPMTが非常に小さく(平均で直径2〜3cm程度)、ゆっくり増える良性腫瘍が多いため、診察で触れて分かることがまれだからです[1]。腫瘍は頭のてっぺんから足先まで、軟部組織にも骨にもできます。メタ解析では、腫瘍の場所は下肢が約60%、頭部・顔面が約24%で、体幹や上肢がこれに続きました[9]。全身どこにでも「隠れる」性質が、診断の遅れにつながっています。
遺伝との関係——「TIOは遺伝するのか」と、似た遺伝性疾患との違い
結論:TIOは親から子へ「遺伝しない」
遺伝診療の観点で、TIOについて最も大切なポイントをはじめにお伝えします。TIOの原因であるFN1-FGFR1などの融合遺伝子は、腫瘍の細胞のなかだけで後天的に生じる「体細胞(たいさいぼう)の変化」であり、精子や卵子に受け継がれる変化ではありません。そのため、TIOそのものが親から子へ遺伝することは、原則としてありません。この「腫瘍のなかだけの変化」と「生殖細胞に伝わる変化」の違いは、体細胞変異と生殖細胞系列変異のちがいとして整理できます。
TIOの融合遺伝子は腫瘍組織を使った検査(RNAシーケンスやRT-PCR、FISHなど)で調べるもので、いわゆるFISH法などの手法が用いられます。血液を採って生まれつきの遺伝子(生殖細胞系列)を調べる検査とは、目的も対象も別のものです。PMTの融合遺伝子を調べる場合は、この腫瘍側の検査を行います。
見分けるべき「遺伝性の低リン血症」——XLHなど
一方で、同じようにFGF23が関わる低リン血症でも、生まれつきの遺伝子変化で起こる遺伝性の病気があり、TIOと見分ける必要があります[1]。代表が、X連鎖性低リン血症(XLH/ビタミンD抵抗性くる病)で、PHEX遺伝子の変化が原因です。とくに小児で発症したFGF23性の低リン血症性くる病では、まずXLHを念頭に置くことが多く、実際、小児のTIOがXLHと誤診され、後の画像検査でPMTが見つかった例も複数報告されています[3]。ほかにも常染色体顕性・潜性の遺伝性くる病、ビタミンD依存性くる病Ⅰ型、骨の石灰化に関わる低ホスファターゼ症などが鑑別に挙がります。
小児での見分けは、とくに慎重さが求められます。TIOの多くは20歳以上の成人に発症しますが、まれに小児でも起こり、その場合は成長軟骨板が閉じる前に発症するため、下肢の強い彎曲や成長の遅れといったくる病の症状が前面に出ます。一方、小児の遺伝性低リン血症で最も多いのはXLHで、家族歴がなくても新たな遺伝子変化によるXLHのことがあります。臨床像だけでは両者を区別しにくく、遺伝子検査でXLHが否定されたあとに、画像検査で初めてPMTが見つかる——という診断の難しさが報告されています[3]。
つまり、低リン血症性の骨軟化症・くる病を見たとき、「後天性で遺伝しないTIO」なのか、「生まれつきで遺伝しうる遺伝性疾患」なのかを見分けることが、その後の見通し(お子さんへの伝わり方や、家族の検査の考え方)を左右します。ここは、遺伝子検査の結果をどう読むか、家族にどう説明するかを含めて、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングが役に立つ場面です。
診断と腫瘍さがし——血液検査から核医学画像まで
まず血液・尿検査で「FGF23の病気」かを見きわめる
診断は、詳しい問診と血清リン濃度の測定という基本の検査から始まります[1]。TIOの典型的な検査所見は、①重度の低リン血症、②腎臓からのリンの漏れ(尿細管でのリン再吸収の低下:低TmP/GFR)、③活性型ビタミンDが低いか、不適切に正常、④骨型アルカリホスファターゼ(ALP)の上昇、⑤初期はカルシウムと副甲状腺ホルモン(PTH)は正常、という組み合わせです[1]。これらが確認され、リンが腎臓から漏れていることが分かれば、血中FGF23濃度の測定が、FGF23が関わる病気(TIOを含む)を見分ける重要な手がかりになります。
図2:TIO診断のステップワイズ(段階的)アプローチ
① 血液・尿
低リン血症・低TmP/GFR・ALP上昇を確認
② FGF23
血中FGF23が高い/不適切に正常
③ 機能画像
68Ga-DOTATATE PET/CTで腫瘍をさがす
④ 確認・治療
MRI/CTで絞り込み、手術で切除
※全身を映す機能画像で候補を見つけ、部位を解剖学的画像で確認してから治療へ進みます。
後で述べる抗FGF23抗体ブロスマブを使っている患者さんでは、FGF23測定値の解釈に注意が必要です。検査法によっては分析上の干渉で見かけ上低く測定されることがあり、一方で治療後には循環中FGF23濃度そのものが大きく上昇し、研究では治療前の500倍を超える中央値の上昇も報告されています[10]。したがって、ブロスマブ治療歴がある患者の手術前後や再発評価では、使用したFGF23測定系を確認し、血清リン・TmP/GFR・ALPなどの推移と合わせて総合的に判断することが重要です[11]。
小さな腫瘍をさがす主役——68Ga-DOTATATE PET/CT
生化学的にTIOと分かったら、治すためには原因の腫瘍を完全に取り除くことが唯一の方法です。しかしPMTは小さく、全身どこにでも隠れているため、腫瘍の場所を突き止めることが最大の関門になります。現在は、全身を映す機能画像から始め、疑わしい部位をMRIや高精細CTで絞り込む「段階的アプローチ」がすすめられています[1]。
その主役が、68Ga-DOTATATE PET/CTです。多くのPMTは、細胞表面にソマトスタチン受容体(とくにSSTR2A)を多く持つため、それを標的にした核医学検査でよく写ります。346人を対象とした14研究のメタ解析では、68Ga-DOTA-SST PET/CTの感度は90%で、従来の18F-FDG PET/CTの67%を有意に上回りました[9]。ただし、治りかけの骨折部位や、良性腫瘍・副甲状腺腺腫などもDOTATATEを取り込むことがあり、偽陽性の原因になる点には注意が必要です[9]。
高度な画像でも腫瘍が特定できないとき、あるいは複数の集積があってどれが真の腫瘍か絞れないときは、選択的静脈サンプリング(SVS)という方法があります。カテーテルを使って全身の各所からFGF23を測り、濃度が急に高くなる場所を探すことで、その付近に腫瘍があることを突き止めます[1]。侵襲はありますが、診断が難しい例での最終的な位置決めに役立ちます。
切り取った腫瘍を「病理」で確かめる
手術で取り除いた腫瘍を顕微鏡で調べる病理診断は、TIO診断の最終的な裏づけになります。PMTの典型像は、粘液軟骨様の豊かな間質のなかに、形のそろったおとなしい紡錘形〜星状の細胞が増えるもので、「泥状の石灰化(grungy calcification)」と呼ばれる独特の沈着や、鹿の角のような血管網がよく見られます[3]。ただし見た目は多彩で、他の骨・軟部腫瘍と紛らわしいことも少なくありません。そのため、免疫染色(SSTR2Aなど)や、腫瘍がFGF23を活発につくっていることを直接示す検査(FGF23のin situハイブリダイゼーションなど)を組み合わせて確認します[3]。
PMTの大部分は良性でゆっくり育ちますが、ごく一部に転移する能力を持つ悪性のPMTが存在します[5]。悪性例では細胞密度の増加、核異型、分裂像の増加などがみられることがありますが、組織像だけで将来の再発・転移を完全に予測することは困難です。まれに、FGF23を出さず血中リンが正常なのにPMTと同じ組織像を示す「非リン酸尿性バリアント」もあり、診断に苦労することがあります。だからこそ、見た目が良性でも、増殖の勢いを慎重に評価しておくことが大切です。
治療——手術による根治と、切除できないときの選択肢
根治の基本は「腫瘍の完全切除」
TIOの唯一の根治的治療は、FGF23を出している腫瘍を完全に取り除く手術です。PMTは周囲にしみ込むように育つ傾向があるため、取り残しがあると再発します。したがって、単なる掻爬(そうは)や辺縁切除ではなく、十分な安全域をとった広範切除が基本です[1]。手術が成功して腫瘍が完全に取れると、intact FGF23は通常24時間以内に速やかに低下し、血清リンも多くは術後5日以内に正常化します[2]。
長く石灰化が障害されていた骨は、腫瘍が取れると急速に再石灰化を始め、カルシウムなどのミネラルを取り込みます。この過程で、術後に低カルシウム血症、低リン血症、低マグネシウム血症や二次性副甲状腺機能亢進を伴うハングリーボーン症候群が起こることがあります[2][16]。必要に応じてカルシウムとビタミンDを補充し、骨軟化症や骨代謝指標の回復には長期間を要することがあります。
切除できないとき——ブロスマブという転機
腫瘍の場所が分からない、解剖学的に切除できない、あるいは再発・転移した場合には、内科的治療に移ります。従来は、経口リン製剤(1日数回に分けて服用)と活性型ビタミンD製剤の補充が標準でした。これは血清リンをある程度改善し、骨の痛みを和らげますが、FGF23の出しすぎという根本を解決するものではありません[12]。大量のリン製剤は下痢や腹痛などの消化器症状を起こしやすく、服薬の負担も大きくなります。さらに長期になると、高カルシウム尿症・腎石灰化・二次性/三次性の副甲状腺機能亢進症といった合併症のリスクがあり、こまめな血液・尿の検査と細かな用量調整が求められます[12]。
この状況を大きく変えたのが、FGF23を直接ねらう抗FGF23モノクローナル抗体ブロスマブです。ブロスマブは血中のFGF23に結合してそのはたらきを中和し、腎臓でのリン再吸収と活性型ビタミンD産生を生理的なレベルへ戻します[12]。切除できないTIOを対象とした第2相試験では、ブロスマブによって血清リンが持続的に改善し、骨生検で調べた骨軟化症の指標(類骨の量や石灰化の遅れ)も改善し、骨折・偽骨折の治癒や、痛み・身体機能の改善も報告されました[13]。日本・韓国の患者を対象とした試験でも、リンの正常化や6分間歩行の改善が示されています[14]。現在、ブロスマブは切除不能なTIOに対する有力な薬物療法として位置づけられています。
分子標的薬・放射線・核医学治療という広がり
ブロスマブ以外にも、FGFRを阻害する分子標的薬インフィグラチニブ(BGJ398)がTIOに試されています。少人数の試験では、FGF23の低下・リンの上昇・腫瘍活動の抑制がみられ、FGFRシグナルがPMTの成り立ちに関わることが裏づけられました。ただし目の副作用などがあり、主要評価項目を満たさず早期に終了したことから、現時点では生命を脅かす転移性PMTなどに限って検討される位置づけです[15]。
このほか、頭蓋底や脊椎近くなど手術が難しい部位のPMTには、体幹部定位放射線治療(SBRT)などの高精度放射線治療が用いられることがあります。また、SSTR2Aを強く持つPMTに対して、放射性核種を結合させたソマトスタチンアナログ(177Lu-DOTATATEなど)で腫瘍を内側から狙うペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)への期待も高まっています。ただし、これらは長期の完全寛解を示すエビデンスがまだ限られ、手術や他の治療が難しい場合のサルベージ療法という位置づけです[1]。
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よくある質問(FAQ)
参考文献
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