キナーゼ(カイネース) kinase
キナーゼとは、他の分子にリン酸基(PO43-)を付加する酵素のことである。キナーゼには数多くの種類があり、ヒトゲノムには少なくとも500のキナーゼをコードする遺伝子が存在する。これらの酵素がリン酸基の付加(リン酸化)を行う対象には、タンパク質、脂質、核酸などがある。
キナーゼ酵素は、細胞質内で行われる解糖(グルコースの代謝)において、複数のリン酸化反応に関与している。
タンパク質を標的とする場合、キナーゼはアミノ酸のセリン、スレオニン、チロシンをリン酸化することができる。キナーゼとホスファターゼの拮抗作用によるタンパク質の可逆的なリン酸化は、標的タンパク質のリン酸化状態と非リン酸化状態が異なる活性を持つことから、細胞シグナル伝達の重要な要素となっている。
キナーゼによる脂質分子のリン酸化は、細胞内の膜の分子組成を制御する上で重要であり、異なる膜の物理的・化学的特性を規定するのに役立っている。炭水化物に似た構造の化合物であるイノシトールは、キナーゼによってリン酸化され、多様な種類のホスホイノシトールおよびホスホイノシチド脂質が作られる。そして、これらの分子はセカンドメッセンジャーとして機能し、細胞内にシグナル情報を伝達する。
この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号