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染色体がトリソミーになったり部分的に欠けたり増えたりで何故赤ちゃんに障害が出るの?
この記事の著者 仲田洋美(総合内科専門医、がん薬物療法専門医、臨床遺伝専門医)
新型出生前診断とは、「母体から採血し、その血液を検査することにより胎児の染色体異常を調べる検査」のことをいいます。新型出生前診断という名称自体は日本での通称名であり、母体血清マーカ―テストなどの従来の血液による出生前診断と比較して感度、特異度からみる検査自体の精度がきわめて高い為、従来の出生前診断と区別してこのように呼ばれています。正式には非侵襲的出生前検査といいます。
このページでは赤ちゃんの先天異常の一つである染色体の異常でどうして障害が出るのか?【染色体がトリソミーになったり部分的に欠けたり増えたりで何故赤ちゃんに障害が出るの?】についての説明を掘り下げてしたいと思います。
人の遺伝情報はDNAにつまっています。
DNAが折りたたまれて作っているのが染色体です。
ヒトのDNAは1本鎖で30億塩基あるのですが,このうち遺伝子といわれるタンパクに翻訳されて機能する部分は実にたった1.5%です。
染色体にはそうした遺伝子が密にある部分と,そうでない部分があります。
また,同じような特徴(繰り返し配列とか)をもつゲノム領域はクラスター(集合体)を形成しやすくなっています。
このため,どこが欠けるかどこが増えるか,何番目の染色体が増えるのか,で全く違う表現型(目に見える症状)をとるのが染色体の異常です。
ゲノムの塩基配列や構造上の特徴はゲノムの機能上の特徴に影響を及ぼします
染色体内には,遺伝子含有量が高い領域と低い領域があり,染色体どうしを比べたときにも,遺伝子の豊富な染色体とそうでない染色体があります。
この図を見ると,第21,18,13番染色体は遺伝子が少ないですよね?
ですので,ほかの遺伝子がたくさんある染色体が増えるのと違って,この3つの染色体は1本増えてトリソミーになっても流産死産は多いですが,なんとか一定数は生まれて来れる,ということです。
ゲノム構造の異常が個体の表現型に及ぼす影響
ゲノム構造の異常(染色体が全体的に1本増えたとか,部分的に欠けたとか増えたとか)が臨床へ及ほす影響は,その異常が発生した個々の遺伝子や配列がどのような特徴をもっているかによるため,同じ規模の異常(たとえば300万塩基対3Mbの欠失)であっても,遺伝子が豊富な染色体や染色体領域で生じたものは遺伝子の乏しい領域で生じたものに比べて臨床的により重篤となる傾向にあります。このように,大きさだけでは何も判断できません。
その部位にどういう遺伝子があって、それが増えたりなくなったり配列が変化したりすることでどういう症状が現れるのか?ということが分かっているものが、単一遺伝子疾患では5000種類くらい、微細欠失症候群、各トリソミー、くらいです。
遺伝子が増えると、表現型に影響がある理由として、そこからできるタンパクが増えることなどが想定されていますが、実際のところ、同じトリソミー21でも重症度に幅があり、それが何に起因しているのかということはまだわかっていません。