目次
📍 クイックナビゲーション
羊水検査や絨毛検査で採った赤ちゃんの細胞を使って、妊娠中に親子鑑定(DNA鑑定)をすることはできます。ただし日本産科婦人科学会は、羊水穿刺などで出生前親子鑑定を行うのは「法的措置の場合」に限るとしています。ミネルバクリニックでは、この見解に合わせて、羊水・絨毛での親子鑑定をすべて法的鑑定として行います。確定検査(染色体の検査)と同じ1回の採取で受けられ、その場合の追加は父親候補の分の66,000円(税込)です。この記事では、鑑定のしくみ、受けられる時期と費用、流産のリスク、母体血で行う出生前親子鑑定(NIPP)との選び方を、臨床遺伝専門医が説明します。
Q. 羊水検査・絨毛検査で親子鑑定(DNA鑑定)はできますか?
A. できます。赤ちゃんの細胞そのもののSTR(DNAの短い繰り返し配列)を、お母さんと父親候補のSTRと比べて親子関係を調べます。当院では日本産科婦人科学会の見解に合わせて法的鑑定としてのみ行い、鑑定を受ける全員に来院していただきます。親子関係を確かめることだけが目的なら、流産のリスクのない母体血の出生前親子鑑定(NIPP)を先に考えてください。
- ➤受けられる時期 → 絨毛検査は妊娠11〜13週、羊水検査は妊娠16週から。検査は基本的に日曜日(月曜日が祝日の場合は月曜日)
- ➤費用 → 単独なら羊水286,000円/絨毛330,000円、確定検査と同時なら確定検査の料金+66,000円(税込・遺伝カウンセリング料は別)
- ➤流産のリスク → 処置に関連する流産は羊水で約0.30%、絨毛で約0.20%と報告されています
- ➤結果 → 1週間以内(最速2日)。報告書は調停・裁判などに提出できる形式で作成します

⏱️ 30秒でわかる要約
🧬 Q. 羊水検査・絨毛検査で親子鑑定はできる?
できます。羊水や絨毛から得た赤ちゃんの細胞のSTRを、お母さんと父親候補のSTRと比べます。母体血に混ざったDNAではなく、赤ちゃんの細胞そのものを調べる方法です。
⚖️ Q. なぜ法的鑑定だけなの?
日本産科婦人科学会の見解(令和5年6月24日改定)が、「法的措置の場合を除き」出生前親子鑑定を行ってはならないとしているためです。当院では全員に来院いただき、写真付きの身分証で本人確認をして、院内で立ち会って検体を採ります。
💴 Q. いつ・いくらで受けられる?
絨毛は妊娠11〜13週、羊水は妊娠16週から。単独なら羊水286,000円/絨毛330,000円。確定検査と同時なら、同じ1回の採取で、確定検査の料金に父親候補の分66,000円を足すだけです(税込・遺伝カウンセリング料30分22,000円は別)。
🤰 Q. 流産のリスクは?NIPPとどちらがいい?
処置に関連する流産は羊水で約0.30%、絨毛で約0.20%と報告されています。親子関係を確かめるだけなら、採血だけの出生前親子鑑定(NIPP)が先の選択肢です。羊水・絨毛は、確定検査を受ける方や、赤ちゃんの細胞そのもので法的鑑定をしたい方の選択肢です。
1. 羊水検査・絨毛検査での親子鑑定とは:赤ちゃんの細胞そのものを調べる方法
羊水検査・絨毛検査での親子鑑定は、確定検査と同じ方法で採った赤ちゃんの細胞からDNAを取り出し、お母さん・父親候補のDNAと比べて親子関係を調べる方法です。妊娠中にできる親子鑑定(出生前親子鑑定、妊娠中のDNA鑑定)には、お母さんの採血だけで行う方法と、羊水や絨毛を採って行う方法があります。このページでは後者を扱います。
羊水検査は、お母さんのお腹から細い針を子宮の中に刺し、赤ちゃんを包んでいる羊水を少量採る検査です。絨毛検査は、将来胎盤になる絨毛という組織を少量採る検査です。どちらも、羊水や絨毛に含まれる胎児・胎盤由来の細胞を使って、赤ちゃんの染色体や遺伝子を調べる「確定検査」として行われてきました[1]。
日本産科婦人科学会の見解では、羊水検査は原則として妊娠15週以降に経腹的に、絨毛検査は妊娠10週以降14週までが標準的な実施時期とされ、妊娠10週未満の絨毛検査は安全性が確認されていないため行うべきではないとされています[1]。当院ではこの範囲の中で、絨毛検査を妊娠11〜13週、羊水検査を妊娠16週から行っています。
調べるのはSTR(マイクロサテライト)
親子鑑定で比べるのは、DNAの中にある「短い配列の繰り返し」の回数です。この繰り返しをSTR(マイクロサテライト)と呼びます。たとえば「GATA」という4文字が何回続くかは人によって違い、11回の人もいれば14回の人もいます。親子鑑定で使うSTRは、病気の有無を調べるためではなく、人と人を見分けるための目印として使われます。
人は同じ番号の染色体を2本ずつ持っていて、1本はお母さんから、もう1本はお父さんから受け継ぎます。このため、ひとつのSTRの場所には「2つの回数」があり、それぞれを対立遺伝子(アレル)と呼びます。赤ちゃんの2つのアレルのうち、お母さんと一致しないほうが「父親由来のアレル」です。この父親由来のアレルを父親候補が持っているかどうかを、多くのSTRの場所でひとつずつ確かめていきます。
ひとつの場所だけで一致しても、同じ回数を持つ人は大勢いるので決め手にはなりません。たくさんの場所を組み合わせると、偶然すべて一致する可能性がとても小さくなります。国際法医遺伝学会(ISFG)の親子鑑定の統計についての勧告では、結果の重みを尤度比(父権指数、PI)で計算することとされ、その例として「PI=200、事前確率50%と仮定して父権肯定確率99.5%」という書き方が示されています[2]。同じ勧告は、事前確率を何%と置いたかを数字と一緒に示すことも求めています。
💡 用語解説:父権指数(PI)と父権肯定確率
父権指数(PI)は、「父親候補が本当の父親である」と考えたときに今回のDNAの型が見られる確からしさが、「血縁のない別の男性が父親である」と考えたときの何倍かを表す数字です。父権肯定確率(W)は、このPIに「検査前にどのくらいありそうだったか(事前確率)」を組み合わせて計算します。事前確率を変えるとWも変わるため、報告書では前提とした事前確率とあわせて読む必要があります[2]。
母体血(NIPP)との違い
母体血の出生前親子鑑定(NIPP)は、お母さんの血液に混ざっているDNAの断片から赤ちゃんの型を読み取る方法で、羊水・絨毛は赤ちゃんの細胞そのものを調べる方法です。NIPTと同じように、お母さんの血漿の中には赤ちゃん由来のセルフリーDNA(細胞の外に浮かんでいるDNAの断片)が混ざっています[1]。NIPPはこれをお母さん自身のDNAと見分けながら解析するので、採血だけで済み、流産のリスクはありません。
一方、羊水・絨毛での鑑定は、採った細胞のDNAが基本的に赤ちゃんのものなので、調べる材料がより直接的です。その代わり、子宮に針を刺す処置が必要になり、わずかながら流産のリスクがあります(第5章)。どちらが優れているというより、「確定検査を受けるかどうか」「どの時期か」「法的な手続きに使うか」で選ぶものです。選び方は第6章でまとめます。
2. 当院が法的鑑定としてだけ行う理由:日本産科婦人科学会の見解
羊水・絨毛での親子鑑定を当院が法的鑑定としてだけ行うのは、日本産科婦人科学会の見解が、法的措置以外の出生前親子鑑定を認めていないためです。「私的鑑定(個人で事実を知るための鑑定)を羊水でしてほしい」というご希望には、当院ではお応えしていません。
見解の原文と、侵襲を伴う検査についての定め
日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査に関する見解」(令和5年6月24日改定)は、項目9「出生前親子鑑定について」で、次のように定めています[1]。
📜 見解の項目9(原文)
法的措置の場合を除き,出生前親子鑑定など医療目的ではない遺伝子解析・遺伝学的検査を行ってはならない.
同じ見解は、羊水穿刺や絨毛採取のように体に針を刺す(侵襲を伴う)検査について、行う場面を表1にまとめています。表1には、妊婦さんかパートナーが染色体の変化を持っている場合、染色体異常のある赤ちゃんを妊娠・出産したことがある場合、妊婦さんが高年齢の場合、重い遺伝性の病気の保因者である場合、胎児が重い病気にかかっている可能性がある場合などが並んでいます[1]。そのうえで項目9が、医療目的ではない出生前親子鑑定について「法的措置の場合」だけを例外にしています。
当院の羊水・絨毛での親子鑑定は、この「法的措置」にあたる鑑定としてのみ行います。確定検査(染色体の検査)を受ける方が同じ採取で親子鑑定を加える場合も、親子鑑定の部分は法的鑑定の手順で行います。
法的鑑定で行うこと
法的鑑定とは、「検体が確かにその人のものである」ことを、採取から解析まで記録で示せるようにした鑑定です。調停や裁判では、DNAの型が一致したかどうかだけでなく、「調べた検体が本当に本人のものか」が問題になります。そのため当院では次のことを行います。
⚖️ 当院の法的鑑定で行うこと
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| 来院 | お母さん・父親候補を含め、鑑定を受ける全員に来院していただきます |
| 本人確認 | 写真付きの身分証明書で、一人ひとりの本人確認をします |
| 検体の採取 | 羊水・絨毛は院内で採取し、父親候補の口腔粘膜(頬の内側の細胞)も院内で立ち会って採取します |
| 受け渡しの記録 | 採取から解析まで、検体の受け渡しを記録します(検体のすり替えがないことを示すため) |
| 使わない検体 | 爪・毛髪・耳垢などの特殊な検体は、誰のものかを証明できないため使いません |
※羊水・絨毛での親子鑑定には私的鑑定の扱いがないため、特殊な検体での鑑定もありません。
報告書について
鑑定の報告書は、調停・裁判などに提出できる形式で作成します。ただし、提出された鑑定をどのように扱うかを決めるのは裁判所です。当院がお約束できるのは、本人確認・採取・受け渡しの手順を守り、その記録を残したうえで報告書を作ることまでです。法的な手続きの進め方は、弁護士にご相談ください(第8章)。
🩺 院長コラム【なぜ見解を守るのか】
羊水や絨毛を採る検査は、針を子宮に刺す医療行為です。流産のリスクは小さくなりましたが、ゼロではありません。学会の見解が出生前親子鑑定を「法的措置の場合」に限っているのは、医療目的ではない知りたさのために、赤ちゃんに及ぶかもしれないリスクを重ねるべきではない、という考え方からだと受け止めています。
当院では、親子関係を確かめることだけが目的なら、まず採血だけで済む母体血の鑑定を考えていただきたいと考えています。そのうえで、確定検査を受ける方や、法的な手続きのために赤ちゃんの細胞そのもので鑑定をしたい方には、手順を守って法的鑑定としてお引き受けしています。
3. 受けられる時期と検査日
羊水・絨毛での親子鑑定は、絨毛検査なら妊娠11〜13週、羊水検査なら妊娠16週から受けられます。検査は院内で、基本的に日曜日に行います(月曜日が祝日の場合は、その月曜日に行います)。お仕事のある方も予定を立てやすい日程です。
📅 羊水検査と絨毛検査の時期・特徴
| 項目 | 絨毛検査 | 羊水検査 |
|---|---|---|
| 当院で受けられる時期 | 妊娠11〜13週 | 妊娠16週から |
| 学会見解での標準的な時期 | 妊娠10週以降14週まで | 原則として妊娠15週以降 |
| 採るもの | 将来胎盤になる絨毛の組織 | 赤ちゃんを包む羊水(中に浮かぶ赤ちゃんの細胞) |
| 検査日 | 基本的に日曜日(月曜日が祝日の場合は月曜日) | |
| 親子鑑定の結果 | 1週間以内(最速2日) | |
※学会見解の時期は日本産科婦人科学会「出生前に行われる遺伝学的検査に関する見解」[1]による。
早い時期に結果を知りたい方には絨毛検査、妊娠中期に入っている方には羊水検査が選択肢になります。ただ、どちらにするかは親子鑑定の都合だけで決めるものではありません。確定検査も受ける場合は、調べたい染色体・遺伝子の検査に合った方法を選びます。絨毛検査ではまれに、染色体の変化が胎盤だけにあって赤ちゃんにはない「胎盤限局性モザイク」が見つかり、羊水検査を追加することがあるためです[1]。
確定検査の結果は、主要な検査項目が3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどで出ます。親子鑑定の結果は1週間以内(最速2日)です。速く出すための特急料金はいただいていません。
4. 費用:単独で受ける場合と、確定検査と同時に受ける場合
羊水・絨毛での親子鑑定の費用は、単独で受けると羊水286,000円、絨毛330,000円です(税込)。確定検査(染色体の検査)と同時に受ける場合は、確定検査の料金に父親候補の分66,000円を足すだけです。いずれも遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)は別にかかります。
💴 単独で受ける場合の費用(税込)
| 内訳 | 羊水で受ける場合 | 絨毛で受ける場合 |
|---|---|---|
| 採取料 | 88,000円 | 132,000円 |
| 母体細胞混入検査(MCC) | 132,000円 | 132,000円 |
| 父親候補の分 | 66,000円 | 66,000円 |
| 合計 | 286,000円 | 330,000円 |
※遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)は別です。遺伝カウンセリング料は基本的におひとりずつかかり、同じ診療枠で、かつ同時に検査を受ける場合だけ一人分をサービスしています(検査を受けないご相談だけの場合は人数分かかります)。法的鑑定のための追加料金はありません。
確定検査と同時なら66,000円を足すだけ:その仕組み
確定検査と同時なら追加が66,000円で済むのは、確定検査の中で、赤ちゃんとお母さんのSTRをもともと調べているからです。この点は、ほかではあまり説明されていないので、少していねいに書きます。
羊水や絨毛を採るときには、お母さんの組織や細胞がわずかに混ざることがあります[3]。お母さんの細胞が混ざったまま赤ちゃんの染色体や遺伝子を調べると、お母さんの結果を赤ちゃんの結果と取り違えるおそれがあります。そのため、すべての出生前の検体で母体細胞混入(MCC)の検査をするべきだとされ、その方法としてSTRを使った定量蛍光PCR(QF-PCR)が使われています[3]。
MCCの検査では、お母さんの血液と赤ちゃんの検体の両方でSTRの型を調べ、赤ちゃんの検体にお母さんだけが持つ型が混ざっていないかを確かめます。つまり、確定検査を受けた時点で、赤ちゃんとお母さんのSTRの型はすでにそろっています。ここに父親候補の口腔粘膜から調べたSTRの型を加え、赤ちゃんの父親由来のアレルと照らし合わせるのが、当院の羊水・絨毛での親子鑑定です。採取は1回で、同じ穿刺で採った検体を確定検査と親子鑑定の両方に使います。
🧬 STRの比べ方(説明のための例・数値は架空)
| STRの場所 | お母さん | 赤ちゃん(羊水・絨毛) | 父親候補 | 読み方 |
|---|---|---|---|---|
| 場所A | 12・15 | 15・17 | 11・17 | 父親由来の17を父親候補が持っている |
| 場所B | 8・10 | 8・9 | 9・9 | 父親由来の9を父親候補が持っている |
| 場所C | 20・22 | 22・24 | 19・21 | 24を父親候補が持っていない(不一致) |
※お母さんと赤ちゃんの型は、MCCの検査でもともと調べている部分です。親子鑑定で新しく加わるのは父親候補の型です。実際の鑑定では、たくさんの場所を調べて総合して判断します。
上の例の場所Cのように、1か所だけ型が合わないことがあります。STRは親から子に伝わるときに、まれに繰り返しの回数が変わる変化(突然変異)が起こるためです。ISFGの勧告は、型の不一致が見つかったときには突然変異の可能性を必ず計算に入れることとし、一般的なDNAの目印での突然変異率を0.005〜1%程度としています[2]。「1か所合わない=父親ではない」と単純には判断せず、何か所が合わないか、合わない幅がどのくらいかを含めて統計的に評価します。
料金に含まれるもの
親子鑑定の料金には、院内での羊水・絨毛の採取(単独で受ける場合)、母体細胞混入の検査(単独で受ける場合)、父親候補の検体の院内での採取と解析、写真付き身分証による本人確認、検体の受け渡しの記録、報告書の作成が含まれます。法的鑑定のための追加料金はありません。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングの中でご説明します。
遺伝カウンセリング料は30分22,000円(税込)で、鑑定の料金とは別です。たとえば、お母さんと父親候補が同じ診療枠で来院し、同時に検査(お母さんは羊水・絨毛の採取、父親候補は口腔粘膜の採取)を受ける場合は、一人分をサービスしています。
5. 流産のリスク:数字で知っておくこと
羊水検査・絨毛検査は、針を子宮に刺す処置なので、わずかながら流産のリスクがあります。2019年に発表されたシステマティックレビューとメタ解析では、検査を受けなかった妊婦さんと比べた「処置に関連する流産」の上乗せは、羊水検査で0.30%(95%信頼区間0.11〜0.49%)、絨毛検査で0.20%(95%信頼区間−0.12〜0.52%)と報告されています[4]。
0.30%は、1,000回の羊水検査で約3回、0.20%は1,000回の絨毛検査で約2回にあたります(論文の値を当院で言い換えたもの)。この研究は、これまで妊婦さんに伝えられてきた数字よりも処置に関連するリスクは低い、と結論しています[4]。ただし、この数字は複数の研究をまとめた平均で、対象の妊婦さんの背景(もともとの流産のしやすさなど)も研究ごとに違います。お一人おひとりの確率をそのまま表すものではありません。
💡 用語解説:95%信頼区間
95%信頼区間とは、研究で得られた数字が、本当はどのくらいの幅の中にありそうかを示すものです。絨毛検査の「−0.12〜0.52%」のように下限がマイナスになっているのは、この研究のデータからは「検査を受けなかった人より流産が増えた」とはっきりとは言い切れない、という意味です。ゼロではないものの小さい、と受け止めるのが妥当です。
確定検査を受ける方にとっては、親子鑑定を加えても針を刺す回数は増えません。同じ1回の採取で両方を調べるからです。反対に、親子関係を確かめることだけが目的の方にとっては、このリスクを「親子鑑定のためだけに」受けることになります。この違いが、次の章の選び方の出発点です。
6. NIPP・羊水/絨毛・出生後:どれを選ぶか
親子関係を確かめることだけが目的なら、まず流産のリスクのない母体血の出生前親子鑑定(NIPP)を考えてください。NIPPは妊娠6週から受けられ(結果を出すためには妊娠8週以降をおすすめしています)、お母さんの採血と父親候補の口腔粘膜で行います。私的鑑定と法的鑑定のどちらも選べます。
羊水・絨毛を選ぶ場面
羊水・絨毛での親子鑑定が選択肢になるのは、主に次の2つの場面です。ひとつは、赤ちゃんの染色体や遺伝子を調べる確定検査をもともと受ける予定がある場合です。NIPTで陽性が出た、超音波検査で気になる所見があった、といった理由で確定検査を受けるなら、同じ採取で父親候補の分を加えるだけで親子鑑定もできます。もうひとつは、法的な手続きのために、赤ちゃんの細胞そのものを使って鑑定をしておきたい場合です。
他院でNIPTを受けて陽性になった方の確定検査(絨毛検査・羊水検査)も、当院でお引き受けしています。その際に親子鑑定を加えることもできます。
生まれてからでよい場合
妊娠中に結果がなくてもよい場合は、生まれてから赤ちゃんの口腔粘膜で調べる出生後の親子鑑定があります。採取は綿棒で頬の内側をこするだけで、法的鑑定まで含めて165,000円(税込・遺伝カウンセリング料は別)です。
🔍 親子鑑定の方法の比べ方(当院の場合)
| 項目 | 母体血(NIPP) | 絨毛 | 羊水 | 出生後 |
|---|---|---|---|---|
| 時期 | 妊娠6週から(8週以降をおすすめ) | 妊娠11〜13週 | 妊娠16週から | 生まれてから |
| 赤ちゃん側の検体 | お母さんの血液に混ざったDNA | 絨毛 | 羊水の中の細胞 | 口腔粘膜 |
| 流産のリスク | なし(採血のみ) | あり(約0.20%) | あり(約0.30%) | なし |
| 料金(税込) | 200,000円(法的鑑定は+33,000円) | 330,000円/確定検査と同時なら+66,000円 | 286,000円/確定検査と同時なら+66,000円 | 165,000円(法的鑑定込み) |
| 私的・法的 | どちらも可 | 法的鑑定のみ | 法的鑑定のみ | 法的鑑定込み |
※いずれも遺伝カウンセリング料(30分22,000円・税込)は別です。結果はどの方法も1週間以内(最速2日)。流産のリスクの数字は処置に関連する上乗せの報告値[4]です。
赤ちゃんの染色体についても知りたい方は、まず採血だけで受けられるNIPTがあります。当院のNIPTは、ダウン症候群などの染色体の数の変化に加え、プランによって微小欠失や一部の単一遺伝子の病気まで調べられます。NIPTで陽性になった場合は、確定検査まで院内で受けられ、そのときに親子鑑定を加えることもできます。
7. 受けるまでの流れ
ご予約から結果の説明まで、すべて院内で行います。検体を自宅で採って郵送する、といった方法はありません。法的鑑定として、採取の場面に立ち会うことが必要だからです。
まず、遺伝カウンセリングを予約してください。遺伝カウンセリングでは、臨床遺伝専門医が、羊水・絨毛で鑑定する理由や確定検査を受けるかどうか、時期、流産のリスク、母体血のNIPPや出生後の鑑定との違いを確認します。そのうえで、受けると決めた方は採取の日を決めます。
採取の日には、お母さんと父親候補の全員に来院していただき、写真付きの身分証明書で本人確認をします。お母さんは院内で羊水または絨毛を採取し、父親候補は口腔粘膜(綿棒で頬の内側をこすって細胞を採ります)を院内で採取します。採取から解析まで、検体の受け渡しを記録します。
結果は1週間以内(最速2日)に出ます。結果は、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングの中でご説明し、報告書をお渡しします。
診療はすべて自費診療です。院内での過ごし方やプライバシーへの配慮は、次の章でまとめます。
8. 結果が出たあとにできること
結果が出たあとは、臨床遺伝専門医が結果の意味をご説明し、その後の妊娠や手続きについてのご相談をお受けします。親子鑑定の結果は、ご家族のこれからに関わることが多いため、数字だけを渡して終わりにはしていません。
結果の説明と、その後の妊娠についての相談
報告書には、調べたSTRの場所ごとの型と、父権指数(PI)・父権肯定確率などの数字が記載されます。父権肯定確率は前提とした事前確率によって変わる数字なので、どの前提で計算したかを含めてご説明します[2]。確定検査も同時に受けた方には、染色体の検査の結果もあわせてご説明します。
結果をふまえて、妊娠を続けるかどうかを含め、これからの妊娠についてのご相談をお受けします。なお、当院では分娩・人工妊娠中絶は行っていません。妊婦健診や分娩は、かかりつけの産婦人科で続けていただくことになります。
法的手続きに使う場合
出生前に父親を法的に確定させる手続きとして、民法783条1項は「父は、胎内に在る子でも、認知することができる。この場合においては、母の承諾を得なければならない。」と定めています(胎児認知)[5]。生まれてから父子関係を争う手続きとしては、嫡出否認の制度があります。2024年4月1日以後に生まれた子については、民法の改正により、夫だけでなく子と母にも否認権が認められ、子と母は子の出生の時から3年以内に訴えを起こせます。訴えを起こすには、まず家庭裁判所に調停を申し立てる必要があります(2026年10月時点)[6]。
どの手続きをとるか、鑑定書をいつ・どのように提出するかは、ご事情によって異なります。具体的な進め方は弁護士にご相談ください。当院の報告書は、調停・裁判などに提出できる形式で作成します。
🩺 院長コラム【数字の前提まで説明するということ】
親子鑑定の報告書に並ぶ父権肯定確率の数字は、それだけを見ると絶対の答えのように見えます。けれども父権肯定確率は、事前確率という前提を置いて計算した値で、前提が変われば数字も変わります。1か所の不一致が突然変異なのか、本当に父親ではないのかも、統計で評価して判断するものです。
臨床遺伝専門医として、こうした数字の成り立ちまで説明したうえで結果をお渡しすることが大切だと考えています。結果がご家族のこれからを左右するからこそ、報告書の数字を正しく読めるようにすることまでが鑑定の一部だと考えています。
9. プライバシーへの配慮
当院は全室個室で、90分の受診枠をほかの患者さんと重ならないように取っているため、院内でほかの患者さんと会うことはありません。親子鑑定は、人に知られたくない事情を抱えて受ける方が多い検査です。予約から結果の説明まで、臨床遺伝専門医がひとつの部屋で対応します。
一方で、羊水・絨毛での親子鑑定は法的鑑定としてのみ行うため、鑑定を受ける全員の同意と来院が前提です。父親候補に知らせずに受けることはできません。父親候補の来院が難しい場合は、母体血の出生前親子鑑定(NIPP)で私的鑑定として受けられるかどうかを、遺伝カウンセリングでご案内します。
10. 院長コラム:侵襲を伴う検査をどう考えるか
羊水検査・絨毛検査は、赤ちゃんの染色体や遺伝子を「推定」ではなく「確かめる」ための検査です。その価値は大きい一方で、針を刺すことによるリスクもあります。親子鑑定をこの検査で行うかどうかは、その価値とリスクをどう比べるかの問題だと考えています。
🩺 院長コラム【検査の目的をはっきりさせてから選ぶ】
確定検査を受ける方にとっては、親子鑑定を加えても、針を刺す回数も、赤ちゃんに及ぶリスクも増えません。お母さんと赤ちゃんのSTRはもともと調べているので、父親候補の分を足すだけです。一方、親子関係を確かめることだけが目的の方には、採血だけで済む方法があります。同じ「妊娠中の親子鑑定」でも、目的によって適した方法は違うと考えています。
当院では、確定検査の採取から解析、結果の説明まで、臨床遺伝専門医のもとで院内で行っています。検査の目的をはっきりさせ、その目的に合った方法を選んでいただくことを大切にしています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 羊水検査や絨毛検査で親子鑑定(DNA鑑定)はできますか?
できます。羊水や絨毛から得た赤ちゃんの細胞のSTR(DNAの短い繰り返し配列)を、お母さんと父親候補のSTRと比べて親子関係を調べます。当院では日本産科婦人科学会の見解に合わせて、法的鑑定としてのみ行います。
Q2. なぜ羊水・絨毛では私的鑑定ができないのですか?
日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査に関する見解」(令和5年6月24日改定)が、法的措置の場合を除き、出生前親子鑑定など医療目的ではない遺伝子解析・遺伝学的検査を行ってはならないとしているためです。当院ではこれに合わせ、羊水・絨毛での親子鑑定はすべて法的鑑定として行い、特殊な検体は使いません。
Q3. 流産のリスクはどのくらいですか?
2019年のメタ解析では、検査を受けなかった妊婦さんと比べた処置に関連する流産の上乗せは、羊水検査で0.30%、絨毛検査で0.20%と報告されています。複数の研究をまとめた平均の値で、お一人おひとりの確率をそのまま表すものではありません。親子関係を確かめるだけなら、流産のリスクのない母体血の出生前親子鑑定(NIPP)を先に考えてください。
Q4. 確定検査と一緒に受けられますか?
受けられます。採取は1回で、同じ穿刺で採った検体を確定検査と親子鑑定の両方に使います。確定検査ではお母さんの細胞の混入を調べるために赤ちゃんとお母さんのSTRをもともと調べているので、追加の費用は父親候補の分の66,000円(税込)です。遺伝カウンセリング料は別です。
Q5. 父親候補も来院が必要ですか?
必要です。法的鑑定として、鑑定を受ける全員に来院していただき、写真付きの身分証明書で本人確認をして、院内で立ち会って検体を採取します。父親候補の検体は口腔粘膜(綿棒で頬の内側をこすって採る細胞)です。
Q6. 結果はいつわかりますか?
親子鑑定の結果は1週間以内(最速2日)です。特急料金はありません。確定検査の結果は、主要な検査項目が3日以内、マイクロアレイ検査は2週間ほどです。結果は臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングの中でご説明します。
Q7. NIPPと羊水・絨毛、どちらを選べばよいですか?
親子関係を確かめることだけが目的なら、採血だけで流産のリスクのないNIPP(妊娠6週から、8週以降をおすすめ)を先に考えてください。確定検査をもともと受ける予定がある方や、法的な手続きのために赤ちゃんの細胞そのもので鑑定をしたい方には、羊水・絨毛での鑑定が選択肢になります。
Q8. 鑑定の結果は裁判で使えますか?
報告書は、調停・裁判などに提出できる形式で作成します。提出された鑑定をどのように扱うかは裁判所が決めます。どの手続きをとるか、いつ提出するかは、弁護士にご相談ください。
🏥 羊水・絨毛での出生前親子鑑定をお考えの方へ
ミネルバクリニックでは、羊水検査・絨毛検査での親子鑑定を、日本産科婦人科学会の見解に合わせて法的鑑定としてのみ行っています。確定検査と同じ1回の採取で受けられ、その場合の追加は父親候補の分66,000円(税込)です。本人確認から採取、結果の説明まで、臨床遺伝専門医のもとで院内で行います。
まだ方法を決めていない方は、採血だけで受けられる母体血の出生前親子鑑定(NIPP)と、確定検査(羊水・絨毛)で調べられることを先にご覧ください。
参考文献
- [1] 日本産科婦人科学会. 出生前に行われる遺伝学的検査に関する見解(令和5年6月24日改定). 日本産科婦人科学会雑誌. 2023;75(8):726-730. [日本産科婦人科学会雑誌 PDF]
- [2] Gjertson DW, Brenner CH, Baur MP, et al. ISFG: Recommendations on biostatistics in paternity testing. Forensic Sci Int Genet. 2007;1(3):223-231. doi:10.1016/j.fsigen.2007.06.006 [ISFG PDF]
- [3] Buchovecky CM, Nahum O, Levy B. Assessment of Maternal Cell Contamination in Prenatal Samples by Quantitative Fluorescent PCR (QF-PCR). In: Levy B, ed. Prenatal Diagnosis. Methods in Molecular Biology, vol 1885. Humana Press; 2019:117-127. doi:10.1007/978-1-4939-8889-1_8 [Springer]
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