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出生前診断NIPT|日本産婦人科学会から厚労・医師会への陳情の噂

NIPT 出生前診断 日本麻酔科学会 産婦人科医療

噂

みなさま、こんにちは。

日本産科婦人科学会は以前から、「NIPTを含む出生前診断を産婦人科医以外がやったときにペナルティを設けてもらいたい」と言い、国会議員に陳情したり、厚生労働省に陳情したり、日本医師会に陳情したりしているという噂を耳にします。伝聞であることに注意してみてください。

今日は、この件に関する問題を述べてみたいと思います。

それでは、順番に見ていきましょう。

1.日本産科婦人科学会が厚生労働省こども家庭局母子保健課に医系技官を出している問題

監督官庁たる厚生労働省が担当部署に日産婦所属の医師を医系技官として受け入れているのは非常に問題だと思っています。

たとえば、3年ほど前の技官は当時の産婦人科学会理事長が産婦人科教授を務めていた大阪大学医学部産婦人科学教室から受け入れました。日産婦は行政を思い通りに動かすために医系技官を派遣で送り込んでいると非難されても仕方ない構図でしょう。そのあとは、慈恵医大だったと思います。いずれにせよ、母子保健課なのに日産婦だけからって言うのがおかしいですね。小児科はどうなってるんでしょうか?前は全然関係ない診療科の医系技官がいたこともあったように記憶していますが。最近は日産婦のシマと化していますというのが私の印象です。

たとえば監督官庁である金融庁に銀行から人材を出向させるようなものじゃないのかなと疑問です。監督官庁に監督される銀行から金融庁に出向するってありなんでしょうか?
もっとわかりやすい表現をすると、反社の方々が警視庁に出向するってありなんでしょうか?構図としては同じですよね。

監督権限を発揮するためにも専門知識が必要だ、と厚生労働省こども家庭局母子保健課はいうかもしれませんが、それって金融庁も警視庁もどこもかしこも同じではないでしょうか。

2.日本医師会が医師の標榜診療科を制限しない自由標榜制を死守すると言い続けている点

日本は世界的にも稀な自由標榜の国です。1人の医師に対して2つの診療科までを標榜することができます。標榜とはその医療機関に何科があると公示することを言います。

日本においてこの自由標榜が制限されている診療科が一つだけあります。それは、麻酔科です。

出生前診断をたとえば「日本医学会の施設認定を受けているところに限定する」もしくは、「日本医学会の施設認定を受けているところ以外が行った場合はペナルティを設けてもらいたい」という考えは、この「自由標榜」に反することとなります。

3.「認定された人以外は検査を提供してはならない」とした場合の整合性が取れない

たとえば産科麻酔は今、産婦人科と麻酔科の間でずっとホットな問題となっていますが、日産婦の論理を通すならば、産科麻酔は麻酔科がかける、と言う事となりますが、産婦人科の周産期の医師たちはそれで大丈夫なのでしょうか。

産婦人科が無痛分娩を行って、妊婦さんが死亡した事例が後を絶たず。

神戸の事例大阪の事例などネットではたくさん記事が見られます。

この点、厚生労働省では母子保健課がこの問題を扱っていると、日産婦からの技官のせいか母子の対策がなかなか進まない、と言う理由で、数年前から妊婦の救急搬送問題や麻酔の問題に関しては、医政局地域医療計画課が扱うように変更となりました。

ちなみに、麻酔科標榜医は医政局総務課管轄です。

そして、厚生労働省としては基本的には麻酔は麻酔科がかける安全な仕組みにしたいと考えているようなのですが、ここにきて抵抗しているのが現場の周産期の開業医たちです。無痛分娩をできる麻酔科医の確保ができない、自分たちで麻酔をやらせろ、という声が産婦人科医からは非常に強い。

その上さらに、日本産科麻酔学会という麻酔科と産婦人科で作っている学会があるのですが、そちらでは「麻酔は麻酔科にやらせろ、麻酔科医以外にやらせるな」という強硬な意見も関東北部の医師たちを筆頭にあり、数年来、周産期の産婦人科医たちともめています。

日産婦は、出生前診断を自分たちの息のかかった医師たち以外にやらせないようにしたい、という目論見でしょうが、果たしてそれはロジックとして危険ではないのでしょうか。

このロジックが通るならば、健診のMRI,CTも放射線科以外がとるな、という話になるでしょう。

健診のスクリーニングテストで引っかかった(異常が疑われた)場合に、専門家のところに精査に行く、という流れが内科領域にはあるにもかかわらず、「妊婦のことは日産婦に」というのはあわないのではないでしょうか。

補足すると、実はNIPTは海外ではNIPSです。非侵襲的出生前スクリーニングが正式名称です。CDCのページにある通り、NIPTと呼ばれる方が少ないのですが、日産婦はこの検査をスクリーニングと呼ばれることに抵抗があったようで、スクリーニングをテストと言い換えました。これを主導したのは当時の聖路加にいたY医師だと聞いています。スクリーニングならばどこでやろうが文句を言えないので、検査と言い換えて自分たちの枠組みだけでできるようにしたかった、と言う事なのではないかと思っています。わたしが学生の頃、透析を泌尿器科がするのか腎臓内科がするのかでシマ争いしていましたが、今、そんなことをする泌尿器科はいません。自分たちは透析のためのシャントを作る(メスを握る)という外科医の本分で勝負しています。どうして産婦人科は自分たちの本分のところで勝負せず、姑息にもスクリーニングを検査と言い換えて日本に導入したのでしょうか?そして、NIPTはスクリーニング検査ではないという態度を取り続けています。

国は、日産婦にだけこんな横暴を許すのであれば、無痛分娩は特に健常そのものの妊婦さんが対象となりますので、「さっきまで元気だった人が麻酔のせいで亡くなる」事故を防止するために、産科麻酔も麻酔科医以外にやらせるべきではない、ということも明白でしょう。

日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会の関係

どの学会にも学会と医会はありますが、医会は開業医の集まり、つまり、アカデミックな雰囲気は低いという傾向にあります。日本のアカデミアの中で、医会のほうが学会より強いのが、眼科整形外科と産婦人科です。

産婦人科医会は戦後に中絶医師の集まりとして発足しました。白い巨塔のドラマで財前五郎さんの義父が産婦人科開業医で、札束で教授選を乗り切る資力を財前さんにもたらした人でしたね。中絶のことを「どぶさらい」と表現していました。日本においては「おんなこども」という言葉が昔からあり、おんなと子どもは地位が低い、大事にされてこなかったというのも事実でしょう。

産婦人科のこうしたやり方について、不満を持っている妊婦さんたちも大勢いるからこそ、認定施設ではなく無認可施設で出生前検査を受ける妊婦さんたちが増えているようなのですが、彼らが問題視しているのは、「無認可施設で受ける」こと、つまり、「認定施設で受けないこと」、すなわち、「自分たちの仲間が儲からないこと」なのではないでしょうか。この問題を反社の「シマ争い」と思って眺めると非常によくわかります。

要は、妊婦さんたちや女性たちが何を求めているかではなく、「自分たち」が決めた「これがよい」という枠組みからはみ出すと「脅す」んです。妊婦さんたちは、NIPTを無認可施設で受けたいと言ったら、「陽性になっても羊水検査してあげないよ」と脅されます。

東京の東の方にある大学病院では、NIPTを成育医療センターにのみ紹介していて、どうしてあんな遠くに行かないといけなかったのかわからない、と文句を言っていた人もいます。結局は、患者さんや妊婦さんたちのことではなく、自分たちの島をいかに守るかしか考えてなさそうですよね。

では、日産婦はどうしてここまで女性たちを馬鹿にするような態度を取れるのか。戦後の中絶医療の始まりに原因がありそうです。

戦後、大陸からの引揚船が到着するのが九州北部の博多などでした。女性たちはソ連兵から性的虐待を受け、妊娠したり性病にかかったりしていた。このため、国においては厚生省引き上げ援護局が二日市保養所という医療施設を作りました。

ところが、1907年から現在まで、日本には堕胎罪があります。1948年までは優生保護法もなく、単純に違法だった堕胎ですが、国が命令して強制的かつ麻酔医の不足から麻酔もなしに行うことが恒常的に行われた。

いわば、国が主導して医師たちに違法行為である堕胎を強制的にさせた、という暗い歴史があります。

それゆえか、旧優生保護法時代から、人工妊娠中絶の資格(現在は母体保護法指定医)を産婦人科医たちに付与するも懲罰するのもすべて最初から都道府県医師会に権限があります。これがどういう過程で決まったのかについて、厚生労働省にも記録がありません。そのほかにも麻酔科標榜医、精神保健指定医という国の制度による医師の資格があるのですが、麻酔科標榜医と精神保健指定医は厚生労働省の中に管轄する部署があり、規定通りの研修をしているかなどを国が審査して、精神保健指定医に関しては国が研修会も行っていて、5年に一度更新が必要となっています。

ところが。母体保護法に関しては審査するのも免許を付与するのも取り消すのも都道府県医師会です。

普通は各都道府県医師会で異ならないようにするのでしょうが、産婦人科はそういう普通の感性が低いのか、自分たちの島のことは自分たちで決めるという考えが強いのか、驚いたのが荻野目慶子さん(荻野目洋子さんの姉)の夫が突然、東京都医師会から母体保護法指定医を停止されたという報道がなされたことでした。中期中絶は入院設備のある所で行う事、とある日東京都医師会が決め、それに従わなかった荻野目さんの夫が処分された、と言う事なのですが。荻野目さんの夫は新宿で24時間患者さんを受け入れていて、当時の東京都の実に8割近い中絶患者さんたちが集まったようで、これに不満を持った医師たちが東京都医師会を突き上げたという構図なのでしょうか。他県では中期中絶でも日帰りで行えるところもあるため、東京都医師会の独自ルールでしょう。

こうしてみると、患者サービスを徹底したら足を引っ張られるという構図があるようですね。

厚生労働省が日産婦の言う事に弱いのは、戦後の混乱期に違法な中絶をさせたという負い目があるからでしょうか。日本の女性たちは戦後77年たってこんな状況でよろしいのでしょうか。

まとめ

いずれにせよ、日産婦については落胆することが多かったですが、ここまで利権主義なのだとは思わなかったので本当にびっくりしました。医学生の皆さん、臨床研修医の皆さんは、産科に進む場合には、こうした日産婦のアカデミアとしての態度がおかしいこともご存知の上でお決めになるべきでしょう。

わたしとしては、女性が真に自立して、自らの意思で自己決定できるリプロダクティブライツがきちんと認められる世の中になり、もっと女性目線で医療が行われるようになってほしいと切実に感じます。

安全とか専門とかいうキーワードを掲げて島を守るに終始するのであれば、日産婦は産科麻酔を手放すべきでしょう。

かくいうわたしは、一卵性双生児を妊娠し、35週で辛いから帝王切開してほしいと言ったのですが、主治医が正期産にこだわった結果、36週6日で一人心音が聞こえなくなり、緊急帝王切開となりました。あのとき私の意見を聞き入れてくれていたら、今でも無事に双子として生まれてきたのだと思います。本当に悔やまれてなりません。産婦人科の横暴に終わりを告げてほしい。

すべての女性たちにもっと自由に決定するより良い未来をと切実に願っています。

この記事の著者:仲田洋美(医師)

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