全ゲノムシーケンス
全ゲノムシーケンスとは?
東京でNIPT他の遺伝子検査を提供しているミネルバクリニックです。NIPTなどの遺伝子検査や遺伝性疾患を理解するためには、基礎的なヒトゲノムや染色体の構造についての理解が必要となってきます。このページでは、一つ一つの塩基配列を決定するゲノム解析方法とその応用場面についてお伝えします。
染色体解析やマイクロアレイ解析と同じ全ゲノムを対象にした解析で、染色体・ゲノム疾患を検出する最高の解像度をもつ臨床検査は、患者の1つ一つの塩基配列をすべて決定する全ゲノム解析を行うことです。
全ゲノム配列決定whole genom sequence WGSの効率が向上し、その費用が低下してきたので、臨床現場で患者試料の塩基配列を決定することが検討される場面が増加してきています。
WGSの原理
塩基配列を決定するにあたり、リンパ球などから取り出したゲノムを制限酵素で切断して増幅するわけなので、通常得られる塩基配列の長さは50-500bpで、lつの遺伝子と比べても短いものです。
しかし、ヒトのゲノムの任意の部分の数と構成は、そのゲノムから得られるDNA塩基配列に反映されるので、特定の染色体の全体あるいは一部から得られる塩基配列が極端に多かったり少なかったりするようなゲノムでは、その染色体に数的または構造的な異常があることが多くなります。
1つの染色体全体の数的異常を検出するためには通常ゲノムの塩基配列を完全に決定する必要はなく、むしろ注目したい染色体上の限られた数の塩碁配列からでもこれらの塩基配列が期待された数だけ検出される、または多かったり少なかったりするのかによって明らかにすることができます。
全ゲノム配列決定法を用いたゲノムコピー数異常と染色体構造異常の同定方法。ここには模式的に示していますが、実際には異数性異常や染色体構造異常を診断するときは、統計的に十分な裏付けを得るために, 数百万のシークエンスリードを解析し、参照ゲノムの相当箇所にアライメントする。
A:患者ゲノムのシークエンスリードを3つの個別の染色体の参照配列にアライメントした模式図です。赤色で示した染色体の配列が他の染色体より多く検出された、ということを模式的に示していて、患者はこの染色体の異数性異常と判断されます。
B:患者ゲノムからのシークエンスリードを2つの染色体の参照配列にアライメントした結果から、いくつかのリードに両方の染色体からの隣接した配列が含まれている、ということを模式的にあらわしています。患者ゲノムの青色と橙色で示した染色体の破線箇所で切断が生じて再構成された転座があることを示しています。
この方法は、胎児の染色体不均衡を確認する出生前診断にも応用されています。
しかしながら、ゲノム中のDNAに増加も減少もない、ゲノムの均衡型構造異常を検出するためにはより完全にゲノム配列を決定する必要があります。
転座の場合には、ヒトゲノム参照配列と完全に合致する配列ではなく、参照配列中には通常は隣接していない2つの異なる領域とから来て融合したと思われる稀な配列が見られることとなります。
この検査方法はある種のがんを起こすことがわかっている特定の遺伝子の同定や、いろいろな先天異常の患児における通常は別々の染色体上にある配列が転座により隣り合っているような遺伝子の同定に用いられ、診断根拠を提供しています。
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