目次
📍 クイックナビゲーション
「体幹(胴体)が短く、身長が伸びにくい」「歩き方が左右に揺れる」「幼児期は元気に歩けていたのに、10歳ごろから股関節や膝がこわばって歩きづらくなってきた」——こうした特徴を示す、非常にまれな骨の遺伝性疾患があります。Smith-McCort(スミス・マッコート)異形成症2型(SMC2)は、RAB33Bという遺伝子の変化によって、骨の成長と形づくりがうまくいかなくなる常染色体潜性(劣性)遺伝の骨系統疾患です。知的発達は正常に保たれる一方で、骨格の変形はゆっくり進んでいきます。
SMC2は、細胞の中にある「ゴルジ体」というタンパク質の仕分け工場が正しく働かなくなることで起こる「ゴルジ体病」の一つです。よく似た病気に、同じ骨の所見を示すSMC1型やDyggve-Melchior-Clausen(DMC)症候群があり、これらとの見分け方も含めて、原因・症状・診断・遺伝の仕組み、そして周術期(手術前後)に特に注意すべき点までを整理します。
- ➤ SMC2がどんな病気で、SMC1型・DMC症候群とどう違うのか
- ➤ 原因となるRAB33B遺伝子と「ゴルジ体病」という考え方
- ➤ 破骨細胞が「増えているのに働かない」という不思議な現象
- ➤ 「10歳ごろ」を境に歩行が難しくなる自然経過
- ➤ 手術・麻酔で命に関わる「環軸椎(頸椎)の不安定性」への備え
🧬Q. SMC2とはどんな病気ですか?
RAB33B遺伝子の両方のコピーに変化が起きて発症する、まれな骨系統疾患です。体幹が短いタイプの低身長・樽状の胸・特徴的な骨盤のX線所見を示しますが、知的発達は正常に保たれます。
🩺Q. どうして骨が変形するのですか?
細胞の中の「ゴルジ体」というタンパク質の仕分け工場が乱れ、骨の材料タンパク質の分泌・糖鎖修飾(糖の飾りつけ)が正しく行われなくなるためと考えられています。骨を壊す破骨細胞の動きも障害されます。
🌸Q. 遺伝しますか?治療はありますか?
常染色体潜性遺伝で、ご両親がともに保因者の場合、お子さんに伝わる確率は妊娠ごとに25%です。根本的な治療法はまだなく、変形や合併症に対する整形外科的なケアと、手術時の慎重な麻酔管理が中心になります。
SMC2とは——「知能は保たれる」体幹短縮性の骨系統疾患
1958年に報告された、まれな骨の病気
Smith-McCort異形成症(Smith-McCort dysplasia、以下SMC)は、1958年にSmithとMcCortによって初めて報告された、非常にまれな骨系統疾患(骨や軟骨の成長・形づくりに関わる遺伝性疾患)です。体幹(胴体)が短いタイプの低身長、樽(たる)のように張り出した胸郭、そして骨盤や背骨の特徴的なX線所見を主な目印とします。遺伝形式は常染色体潜性(劣性)遺伝で、両親から受け継いだ2つの遺伝子コピーの両方に変化があると発症します。
骨系統疾患を体系的に整理した国際分類「Nosology(骨系統疾患国際分類)」は、原因遺伝子の解明が進むたびに改訂されてきました。2023年の第11版では、771の疾患が552の遺伝子と結びつけて整理され、病名と原因遺伝子を対にして呼ぶ「ダイアディック命名法」が採用されています[9]。SMC2も、この「疾患と遺伝子を対で理解する」流れのなかに位置づけられる病気です。
DMC症候群・SMC1型・SMC2型の関係
SMCは長いあいだ、Dyggve-Melchior-Clausen(DMC)症候群という病気と、骨の所見が非常によく似ていることで知られてきました。DMC症候群は、重い骨格異常に加えて小頭症(頭が小さい)と中等度から重度の知的障害を伴います。これに対してSMCは、骨の所見はDMCとほぼ同じでありながら、知的発達は正常に保たれ、小頭症も原則みられないという違いがあります[8]。
研究が進むと、DMC症候群と古典的なSMC(現在のSMC1型)は、ともに18番染色体にあるDYM遺伝子(ダイメクリンというゴルジ体タンパク質の設計図)の変化が原因となるアレル疾患(同じ遺伝子の変化から生じる別の病気)であることが明らかになりました[10]。それに先立つ連鎖解析では、SMCとDMCの原因遺伝子座が18番染色体長腕(18q12)に共通して存在することが示されていました[7]。ところが、SMCの特徴を示しながらDYM遺伝子には病的変異が見つからない家系があり、「別の原因遺伝子があるはずだ(遺伝的異質性)」と考えられていました。その後の連鎖解析とエクソーム解析により、4番染色体(4q31.1)にあるRAB33B遺伝子の両アレル変異が、SMCのもう一つの原因として特定されました[11]。これによって起こるものが、「Smith-McCort異形成症2型(SMC2、OMIM 615222)」です。SMC2は、脊椎・骨端・骨幹端に異常が及ぶ脊椎骨端骨幹端異形成症(SEMD)の一つに位置づけられる、まれな常染色体潜性疾患です[1]。
私たちは同じ遺伝子について、父由来と母由来の1コピーずつ、通常2コピー持っています。この一つひとつをアレル(対立遺伝子)と呼びます。「両アレル変異」とは、2つのコピーの両方に変化があることを指し、常染色体潜性遺伝の病気が発症する条件です。また「アレル疾患」とは、同じ遺伝子の違うタイプの変化から、重さや症状の異なる複数の病気が生じることをいいます(DYM遺伝子から、知能が保たれるSMC1と知的障害を伴うDMCが生じるのが好例です)。
原因遺伝子RAB33Bと「ゴルジ体病」
Rab33bは細胞の「物流を切り替えるスイッチ」
SMC2の原因遺伝子RAB33Bは、Rab33bという小さなタンパク質の設計図です。Rab33bは、細胞内輸送を担う低分子量GTP結合タンパク質(スモールGTPアーゼ)の巨大なファミリーに属し、細胞の中でモノ(タンパク質など)を運ぶ小さな袋「小胞」の輸送・行き先の決定・膜どうしの融合を細かく制御する「分子スイッチ」として働きます(Rab(ラブ)GTPアーゼの仲間です)。このスイッチは、オフ(GDP結合型)とオン(GTP結合型)の間を行き来し、オンのときにさまざまな相手役(エフェクター)タンパク質を呼び寄せて、物流の流れを時間的・空間的に整えます[5]。
Rab33bは主にゴルジ体、とくに中間ゴルジ網と呼ばれる区画に集まっています。そのアミノ酸配列の中には、GTPと結合してこれを分解する働きを担うGTP結合ドメインがあり、この部分の構造が保たれていることが、スイッチとしての機能に欠かせません。SMC2で見つかっているミスセンス変異の多くは、まさにこの「スイッチの心臓部」にあたる高度に保存された領域に生じ、スイッチの切り替え能力とタンパク質の安定性の両方を損ないます[2]。
ミスセンス変異:設計図の1文字が変わり、タンパク質のアミノ酸が1つ別のものに置き換わる変化です。タンパク質は作られますが、働きが弱ったり、壊れやすくなったりします。
ナンセンス変異:設計図の途中に「ここで終わり」という誤った停止合図が入り、タンパク質が途中までしか作られなくなる変化です。多くは働きを失います。
SMC2の患者さんでは、これまでに複数のRAB33B変異が報告されています。ある近親婚の家系では、GTP結合に重要な部分のアミノ酸が置き換わるミスセンス変異(p.Lys46Gln)が見つかり、この変化はタンパク質を不安定にして細胞内のRAB33Bタンパク質の量を大きく減らすことがわかっています[2]。トルコからの5家系7名を対象とした研究では、4つの新しいナンセンス変異(p.Gln85Ter, p.Cys48Ter, p.Arg94Ter, p.Gln134Ter)が同定されました[1]。さらに別の報告では、ホモ接合性のp.Arg71Terやp.Phe122Ser、複合ヘテロ接合性のフレームシフト変異とp.Gln164Terなども確認されており、変異の種類は少しずつ広がっています[3]。これらの病的変異は、Rab33bタンパク質の不安定化・細胞内局在異常などを介して、Rab33bの機能低下につながると考えられています。2026年の培養細胞研究でも、検討された複数の疾患関連Rab33b変異体で不安定化とゴルジ体への局在障害が確認されています[12]。
SMC1もSMC2も「ゴルジ体病」
Rab33bは、細胞の中のゴルジ体(ゴルジ装置)という場所に集まっています。ゴルジ体は、作られたタンパク質に仕上げの加工をほどこして正しい行き先へ送り出す「細胞内の物流センター」です。SMC1型の原因ダイメクリンも、SMC2型の原因Rab33bも、ともにこのゴルジ体で働くタンパク質です。つまりSMC1とSMC2は、原因遺伝子は違っても、「ゴルジ体を介した物流の障害が骨づくりを妨げる」という同じ土俵の上にある病気であり、まとめて「ゴルジ体病」という新しい疾患概念を形づくっています[2]。
病態のしくみ——3つの機能障害と破骨細胞のパラドックス
RAB33Bが働きを失うと、なぜ骨だけに特徴的な変形が起こるのでしょうか。近年の研究では、①小胞輸送とゴルジ体の乱れ、②オートファジー(自食作用)と細胞の接着・運動の障害、③糖鎖修飾(糖の飾りつけ)の異常という、3つのしくみから理解が進んでいます[2]。
図1:RAB33B機能喪失が骨づくりを妨げる3つの経路
① 小胞輸送・ゴルジ体
物流センターの流れが滞り、骨や軟骨の細胞が材料タンパク質をうまく分泌できなくなる。
② オートファジー・接着
細胞の掃除機能と、地面に張りつく力・動く力が低下。破骨細胞の運動性が失われる。
③ 糖鎖修飾
タンパク質への糖の飾りつけが乱れ、骨の石灰化や材料としての性質が変わる。
① 物流センターの停滞
Rab33bは、もう一つのRabタンパク質「Rab6」と協力して、ゴルジ体の内側での逆向きの輸送やゴルジ体の形の維持に欠かせない役割を担っています[5]。Rab33bの量を人工的に減らした培養細胞では、ゴルジ体まわりの小胞の数が増えて停滞していることが観察されています。軟骨細胞や骨をつくる骨芽細胞は、コラーゲンなどの材料を大量に分泌して骨格を組み立てているため、この物流の停滞は骨づくりの異常に直結します[2]。
② オートファジーと「動けない破骨細胞」
Rab33bは、オートファジー(細胞が自分の中身を分解してリサイクルするしくみ)にも関わります。飢餓などのストレス下で、Rab33bはGTPと結合した状態でATG16Lというタンパク質と直接結びつきます。ATG16Lは、分解用の膜(隔離膜)が正しい場所で作られるために必須の因子で、Rab33bはこれを分解の現場へ呼び寄せることで、オートファゴソーム(分解用の袋)の形成を助けます[4]。Rab33bの働きが失われると、この袋づくりが妨げられます。
加えてRab33bは、ゴルジ体を通った後の細胞膜への輸送にも関わり、細胞が地面に張りつく「接着斑(フォーカル・アドヒージョン)」へ、接着に必要な部品(β1インテグリンなど)を届ける働きにも関与すると報告されています[2]。オートファジーは細胞が動くときに足場となる構造を作り替えるために、インテグリンの輸送は新しい接着をつくるために、それぞれ必要です。つまりRab33bが失われると、細胞が「くっつく・動く」という基本動作を二重に障害されることになり、とくに骨を壊す破骨細胞のダイナミックな運動性が根本から奪われると考えられています[2]。
③ 糖鎖修飾の乱れと骨の材料
タンパク質がゴルジ体を通るとき、糖鎖修飾(グリコシル化:タンパク質に糖の飾りをつける加工)という大切な仕上げが行われます。RAB33B変異マウスの骨芽細胞や肝臓の解析では、特定の糖に結合する目印(レクチン)の染まり方に明らかな異常がみられ、O結合型糖鎖修飾が障害されていることが示されました[2]。一方でマンノースに結合する目印の染色は正常で、ゴルジ体の中でも特定の糖鎖経路だけが選択的に妨げられていることがわかっています[2]。実際、変異マウスの大腿骨の力学試験では、野生型からヘテロ、ホモへと変異のコピー数が増えるにつれて、骨の材料としての性質(降伏荷重など)が段階的に変化していきました。細胞外基質のタンパク質や、オステオカルシンのような非コラーゲン性タンパク質の糖鎖修飾は、骨の石灰化や強度を決めるうえで欠かせません。その飾りつけが乱れることが、SMC2の骨の変形につながっていると考えられます[2]。
興味深いことに、このマウスモデルでは、症状が雄にのみ現れ、雌には現れないという顕著な性差も観察されています。またマウスはヒトの病気の一部の特徴を再現したにとどまっており、ホルモン環境や骨代謝の性差が病気の現れ方に関わっている可能性が示唆されています[2]。こうした知見は、SMC2の病態がまだ完全には解明されておらず、今後の研究が必要な段階にあることも示しています。
症状と経過——「10歳ごろ」を境に変わる歩行
初期の身体的な特徴
SMC2は、生まれてすぐには目立たないことが多く、成長とともに骨格の特徴が現れてくる進行性の経過をたどります。多くは生後およそ1歳半〜4歳ごろに気づかれます。最も目立つのは、体幹(胴体)が相対的に短い低身長です。ほかに、樽状の胸郭、鳩胸、短い首、左右に揺れる歩き方(動揺性歩行)、腰の反りが強い(過度の腰椎前弯)、背骨の側弯・後弯、X脚(外反膝)、短い指(短指症)、関節のこわばりなどが観察されます[1]。
一方、DMC症候群にみられる粗な顔つきや小頭症はSMCではみられず、知的発達は正常に保たれます[8]。中枢神経が守られる理由として、脳で主に働く近い仲間の遺伝子RAB33Aが、脳の中でRAB33Bの働きを肩代わりしている可能性が議論されています[2]。RAB33Aは主に中枢神経系で発現するのに対し、RAB33Bは全身の多くの組織で発現するという発現パターンの違いが、この「脳は守られ、骨に症状が集中する」というSMC2の特徴を説明する手がかりになると考えられています[2]。
追跡研究に含まれた患者さんでは、全員が程度の差はあれ体幹短縮性の低身長と樽状胸郭を示し、成長とともに肘や指の関節のこわばりが明らかになっていきました。骨盤のX線ではレース状の腸骨稜、基部が低形成の短い腸骨、扁平椎、形成不全の寛骨臼、小さく外側にずれた大腿骨頭、小さく不整な手根骨といった所見が、全例で認められています[1]。これらは一つひとつが単独で診断を決めるものではなく、組み合わせのパターンとして評価することが、SMC2を疑う手がかりになります。
追跡研究が示す「10歳の閾値」
SMC2の長期経過は、5家系7名(診断時4〜18歳)を数年〜9年追跡した研究で明らかにされています[1]。診断時点では7名中6名が自分の力で歩けていました。しかし成長とともに肘や指の関節のこわばりが少しずつ悪化します。重要な転換点が「10歳」です。10歳を超えると、重い股関節痛、股関節・膝関節の強いこわばり(強直)が現れ、歩くことが著しく難しくなりました。最終観察時に自力歩行を保てていたのは2名のみで、SMC2が運動機能と生活の質を進行性に奪う病気であることが示されています[1]。
図2:SMC2の運動機能の自然経過
幼児期〜学童前期
多くが自力歩行が可能。低身長・胸郭の変形などで気づかれる。
10歳前後(転換点)
股関節痛・股関節と膝の強直が進み、歩行が難しくなる。
思春期以降
自力歩行の維持が困難になる例が増える。関節の管理が重要に。
診断と鑑別——X線所見と遺伝子検査
診断の鍵となる特徴的なX線所見
SMC2のX線所見はDMC症候群と一致し、次の2つがとくに診断の手がかりになります[3]。
一つは腸骨稜(骨盤の上ふち)のレース状陰影です。骨盤のX線で、腸骨の辺縁が複雑なレース編みのような透けた像を示すもので、SMC・DMCにきわめて特徴的な所見です。もう一つは脊椎の扁平化(扁平椎)と「二重こぶ」です。12歳未満では、平たくなった椎体の上下のふちの中央がへこんで「こぶが2つ」に見える特徴があり、思春期以降にはこの所見が消えて、細長い椎体に置き換わるという年齢による変化を示します[1]。ほかに、寛骨臼(股関節の受け皿)の形成不全、大腿骨頭の小ささや外へのずれ、手根骨の不整などがみられます。
「レース状」に見える病理のしくみ
この「レース状陰影」の正体は、腸骨稜の骨と軟骨の境目で、骨組織が波打つように(wavy pattern)沈着していることにあります[6]。成長軟骨では、本来きれいに柱状に並ぶはずの軟骨細胞の配列が失われています。さらに電子顕微鏡で見ると、軟骨細胞の中の粗面小胞体(タンパク質を作る場所)が大きく膨らみ、内部に細かい物質がたまっていることが確認されます[6]。これは、ゴルジ体の機能不全によって、外へ分泌されるはずの材料タンパク質が細胞内で渋滞し、その手前の粗面小胞体にたまって小胞体ストレスを引き起こしていることを、目に見える形で示すものです。分子レベルでの「物流の停滞」が、組織レベルの「軟骨細胞の異常」となり、さらにX線レベルの「レース状陰影」として現れる——SMC2は、細胞の中のできごとが骨のかたちにまで一本の線でつながって見える病気だといえます[6]。なお、こうした粗面小胞体の拡張は、SMCとDMCの両方で共通して観察されており、両者が同じ「小胞体貯留病」としての性格を持つことを裏づけています[6]。
鑑別すべき病気と遺伝子検査の役割
SMC2を正確に診断するには、似た所見を示す病気を見分ける必要があります。とくにSMC1型とは臨床・X線では区別できず、確定にはRAB33BとDYMを調べる遺伝子検査が不可欠です[1]。次の表に主な鑑別点をまとめます。
| 疾患名 | 原因遺伝子 | SMC2との見分け方 |
|---|---|---|
| SMC2型 | RAB33B | 知能正常・小頭症なし。レース状腸骨稜、二重こぶ椎体。 |
| SMC1型 | DYM | SMC2と臨床・X線で区別不能。遺伝子検査で鑑別。 |
| DMC症候群 | DYM | X線はSMCと同一だが、小頭症と知的障害を伴う。 |
| Morquio症候群 (MPS IVA) | GALNS | 体幹短縮など似るが角膜混濁を伴い、尿検査・酵素活性で鑑別。 |
| メタトロピック異形成症 | TRPV4 | SMC特有の「レース状腸骨稜」がみられない。 |
骨系統疾患は臨床的な多様性が大きいため、確定診断には次世代シーケンシング(NGS)を使った骨系統疾患の遺伝子パネル検査が有効です。RAB33B・DYMをはじめ、COL2A1やCOMPなど多数の関連遺伝子を一度に評価でき、臨床所見だけでは難しいSMC1とSMC2の区別も含めて、確定的な診断につなげられます。低身長そのものを幅広く調べたい場合は、低身長の遺伝子パネル検査という選択肢もあります。
SMC2はきわめてまれで、これまでに報告された家系も限られています。そのため、診断がつくまでにいくつもの医療機関を回る「診断の放浪(diagnostic odyssey)」に陥りやすい病気でもあります。特徴的なX線所見(レース状腸骨稜、二重こぶ椎体)に早く気づき、適切なタイミングで遺伝子検査につなげることが、確定診断までの時間を短くし、必要な医学的・支持的ケアを適切な時期に始めることにつながります[2]。確定診断は、ご本人の見通しを整理するだけでなく、ご家族の遺伝カウンセリングや将来の家族計画の相談にとっても、出発点になります。
治療・管理と遺伝カウンセリング
整形外科的な管理と股関節の課題
現時点でSMC2を根本的に治す治療法はなく、進行する骨格変形へのケアと合併症の予防が管理の中心になります。SMC2では大腿骨頭の進行性の移動やX脚がみられます。下肢変形に対する低侵襲な矯正(ガイデッド・グロース)は、近縁のDMC症候群で報告されている治療選択肢ですが、RAB33BによるSMC2に特異的な長期成績は十分に確立されていません[13]。
一方、DMC/SMCスペクトラムの股関節病変では、骨切り術後にも亜脱臼や変性が進行する例が報告されており、手術適応は慎重に検討されます[8]。重い関節破壊が進んだ成人では人工股関節全置換術が選択肢となり、DMC症候群の報告では、小さく変形した骨盤・寛骨臼に対応するためCTを用いた術前計画が行われています[14]。ただし、これらの整形外科治療のエビデンスの多くはDMCまたは遺伝学的サブタイプが明確でないSMCの症例報告・小規模シリーズに基づき、RAB33BによるSMC2だけを対象とした治療成績は限られています。OrphanAnesthesiaのSMC指針では、緊急でない手術については麻酔リスクと整形外科手術の長期成績を考慮し、思春期まで延期することが提案されています[8]。
最重要:環軸椎(頸椎)の不安定性と麻酔の注意
SMC2を含むSmith-McCort異形成症の医療管理で重要な注意点の一つが頸椎(首の骨)の病変です。歯突起低形成(首の2番目の骨の突起が育ちにくい)に伴う環軸椎不安定性や脊髄圧迫を合併することがあり、頸椎が不安定な場合には首の不用意な操作が重大な神経学的合併症につながるおそれがあります。全身麻酔を伴う手術では、この点への備えが重要です[8]。
麻酔にあたっては、次のような配慮が示されています[8]。まず術前評価では、既知の頸椎病変や、頸椎疾患に伴う筋力低下・痙性などの神経症状を確認し、脊椎麻酔・硬膜外麻酔を検討する場合には先天性脊椎異常の除外が必要です。気道確保では、短頸や頸部可動域の異常などから困難気道を想定して準備します。ファイバースコープ挿管は一つの選択肢ですが、同指針はすべての症例で必須とはしていません。また気管チューブは予想より細いサイズしか通らない場合があるため、複数のサイズを事前に準備しておくことが勧められています。抜管は、再挿管が難しくなる可能性を考慮し、患者さんが十分に覚醒してから慎重に行うことが推奨されています。これらは、患者さんやご家族が手術を受ける際に、麻酔科・整形外科・遺伝診療の間で情報を共有しておくべき大切なポイントです。
遺伝形式と遺伝カウンセリング
SMC2は常染色体潜性(劣性)遺伝です。ご両親がともに「保因者」(変化を1つだけ持つが発症しない方)の場合、お子さんが2つとも変化を受け継いで発症する確率は、妊娠ごとに25%です。保因者だけになる確率が50%、どちらの変化も受け継がない確率が25%です[3]。ご家族にSMC2の方がいる場合や、近親婚のご家庭では、こうした再発リスクや、出生前診断・着床前診断といった選択肢について、正確な情報をもとに考えていくことが大切です。判断を急がず、遺伝カウンセリングのなかで、ご家族の価値観に沿って整理していくことをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. SMC2は知的障害を伴いますか?
いいえ。SMC2では知的発達は正常に保たれ、小頭症も原則みられません。これは、骨の所見がほぼ同じでも小頭症と知的障害を伴うDMC症候群との重要な違いです[8]。
Q. SMC1型とSMC2型は、症状で見分けられますか?
症状やX線所見だけでは区別できません。原因遺伝子がDYM(SMC1)かRAB33B(SMC2)かの違いなので、確定には遺伝子検査が必要です[1]。
Q. なぜ手術のとき、首の状態が特に大切なのですか?
歯突起低形成に伴う環軸椎不安定性や脊髄圧迫を合併することがあり、頸椎が不安定な場合には麻酔中の不用意な頸部操作が神経学的合併症につながるおそれがあるためです。全身麻酔の前には、頸椎病変の有無を把握し、困難気道を想定した気道確保の計画を立てることが重要です[8]。
Q. 子どもに遺伝する確率はどれくらいですか?
常染色体潜性遺伝のため、ご両親がともに保因者の場合、お子さんが発症する確率は妊娠ごとに25%です。詳しい見通しは遺伝カウンセリングで整理できます[3]。
Q. 治る治療法はありますか?
現時点で根本的な治療法は確立されていません。変形や合併症に対する整形外科的な管理と、手術時の慎重な麻酔管理が中心です。病態の解明が進み、将来の治療開発に向けた基礎研究が続いています[2]。
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参考文献
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- [3] Additional three patients with Smith-McCort dysplasia due to novel RAB33B mutations. Am J Med Genet A. 2017. [PubMed 28127940]
- [4] Golgi-resident small GTPase Rab33B interacts with Atg16L and modulates autophagosome formation. Mol Biol Cell. 2008. [PubMed 18448665]
- [5] Rab33b and Rab6 are functionally overlapping regulators of Golgi homeostasis and trafficking. Traffic. 2010. [PubMed 20163571]
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