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NIPTで国内検査でイルミナ社のVeriseq2を自社で検査して微小欠失を検出できるとうたっている東京衛生検査所とヒロクリニックに対する疑問を臨床遺伝専門医として正々堂々と書きたいと思います。
イルミナ社のVeriseq2でNIPTで微小欠失症候群が検出可能か?
イルミナ社のシークエンサーを導入してVeriseq2でNIPTで微小欠失症候群の検出が可能であるとうたっている検査会社があります。
東京衛生検査所です。ここはヒロクリニックが運営しています。
今日は臨床遺伝専門医としてずっと疑問に感じてきたこの点についての記事を書きたいと思います。
わたしも説明をイルミナから受けましたが、イルミナは7Mb以下の小さな欠失は検出できないといっていました。
ところが、東京衛生検査所ではこれより小さなサイズの微小欠失が検出可能だとうたっているのです。
nipt.hiro-clinic.or.jp/plan/
nipt.hiro-clinic.or.jp/nipt/microdeletions/
微小欠失症候群のサイズは一般にはほとんどのものが7Mb未満の小さなサイズであり、Veriseq2では検査できません。そもそも微小欠失の定義は5Mb未満の欠失です。
イルミナの子会社のベリナタは5種類の微小欠失症候群を検出できるようにしていますが、それはベリナタ独自の検査方法であって、Veriseq2とは違います。Veriseq2はあくまでもイルミナ(シークエンサーという塩基配列を決定する機械の会社)が作ったNIPT検査方法です。
NIPTと言っても会社ごとにやり方は違うので、イルミナとベリナタは同じではありません。
微細欠失症候群を測定している会社たちはそれぞれ独自の検査方法を研究開発しています。
ですので、イルミナのVeriseq2では微小欠失症候群の検査はできません。
この点について、イルミナジャパンに質問しようかと思いましたが、ヒロクリニックがこううたっているのと、イルミナジャパンはどうせ何も返答しないだろうと思い、放置していました。
海外でイルミナ社のVeriseq2を導入した検査会社から取り扱いを依頼されました
最近、海外でイルミナ社のVeriseq2を導入した検査会社から取り扱いを依頼されました。
ミネルバクリニックでは微小欠失症候群ができるかが大変気になりますので、質問をしました。
すると、そちらの会社では、イルミナに確認して返答してくれるということでした。
そして、本日メールが返ってきました。
the larger the microdeletion the easier to detect it.
A 95 % detection probabilities of a deletion of 7 Mb is obtained at a fetal fraction of > 8 % with the current Veriseq 2 test (see figure below).
So to detect smaller deletions of 3 Mb like 22q11 reliably you need a high fetal fraction.
But Illumina will soon upgrade to Veriseq 3, which is suspected to be more sensitive for smaller microdeletions
翻訳するとこうなります。
微小欠失は大きければ大きいほど、検出が容易になります。
現在のVeriseq 2テストでは、7Mbの欠失の95%の検出確率は、8%以上の胎児分率で得られます。
つまり、22q11のような3Mbの小さな欠失を確実に検出するには、高い胎児分画(母体の中の赤ちゃんのDNAの率)が必要なのです。
しかし、Illuminaは近いうちにVeriseq 3にアップグレードする予定で、より小さな微細欠失に対してより感度が高くなるとおもわれます。
つまり、現行、イルミナのVeriseq2では微小欠失症候群は検査できません
上記の海外の検査会社にイルミナ社がした返事からするとそうなります。
ちなみにイルミナVeriseq2を採用している平石クリニックは
Veriseq2で検査しているのは全染色体だけで、全染色体は国内検査。
微小欠失症候群については海外に出しているということです。
なぜヒロクリニックと東京衛生検査所はイルミナVeriseq2でNIPTで微小欠失症候群が検出可能とうたうのか?
大変疑問に感じます。
今回、どうせイルミナジャパンはまともな返事はしないと思い、海外の検査会社を通じてイルミナ本社に問い合わせてこの返事をもらいました。
イルミナは、検査システムを導入した会社(医療機関)がどんなふうに集客するかについても、もう少し責任を持つべきでしょう。
本当は学会がこういう活動をしないといけないのですが、学会は絶対こういう活動しないので。
臨床遺伝専門医として堂々この件についてレポートいたしました。
名誉棄損に問われるかもしれませんが、メールなどはちゃんとあるのと、公益性のある内容なので、訴えられても大丈夫だと思います。