みなさま、こんにちわ。
前回、多胎で一人無脳症の妊婦さんのお話をしましたが。
minerva-clinic.or.jp/nipt_tataihitorimunousyou/
実は。。。。
わたし、彼女に言えなかったことが当日ありました。
①日本生殖医学会のガイドラインで、彼女の年齢だと良好胚の移植は1つに限られているにもかかわらず、医師がこれを守らず良好胚を2つ移植したため、今回の多胎に至っている。
www.jsrm.or.jp/guideline-statem/guideline_2007_01.html
⇒医師がガイドラインを守っていたら、たとえ無脳症であったとしても一人だけなので、NIPT受けて3つのトリソミーがなかったら二人とも産みます、という壮絶な覚悟をしなくて済んだでしょう。
無脳症のお子さんは生まれてこれない可能性も高く、うまれても生きられない可能性が圧倒的に高い。
先日も無脳症のお子さんがうちの患者さんでいましたが、そのままterminationを迎えました。
妊婦さんたちが高齢化している中、はやくお子さんを持ちたいという観点から、今回はあきらめてまた妊娠したいという思いを非難するべきでないでしょう。
②世の中には減数手術があること。
NIPTの結果が出たので、ご夫婦をお呼びして話をしました。
結果自体は出た夜に電話で伝えました。
ケースバイケースでこういう対応をすることもあります。
言っていることは四角四面なのですが。
やっぱりバックグラウンドが一例一例異なるので。
わたしなりに、症例にあわせています。
結果として、①②ともにお伝えしました。
減数手術のことは産婦人科から聞いていたそうですが、具体的にどの医療機関とかは教えてもらえなかったそうで。
わたしの知っている中で一番実績のある医療機関名をお伝えしました。
やっぱり、知らずに決定すべきではないと思ったからです。
減数手術をすると2人ともダメになるケースもあります。
それでも。ちゃんと話を聞いてから決めるべきではないかと思ったので。
倫理的に問題のある選択肢を提示することが、専門医としてどうなのかなという迷いはあったのですが。
でも。それって、専門医としての自分の立場を守ってるってことだと思うんですよね。
実は。先日、某地方紙が取材に来て。
わたしが提示したSクリニックのある地方なので。
紹介すべきかどうか悩んでいる、と眉間にしわを寄せて吐露しました。
結果。記者さんと話した日に一晩考えて。
専門医としてどうなのよ、と自問する前に、まずは相手にとっての利益の最大化を図ってこそ専門医ではないか、と思ったわけです。
なので。
当該ご夫妻にSクリニックの固有名詞をお伝えしました。
実は、
わたしの先輩の弟(医師兄弟です)が不妊治療でさずかった多胎を、双胎ではなくもっと多い数字だったので、Sクリニックに行って減数手術して一人だけ産んだ、ときいていたので、知ってたんですよね。
当時は、なんてクリニックだ。゚ヽ(゚`Д´゚)ノ゚。 と思ってたんですけど。
まさか、自分が患者さんに紹介するなんて夢にも思っていませんでした。
正義って一つじゃない。
正しいことは立場により変わる。
立場の数だけ正義はあり、正義と正義がぶつかっているときに必要なのは調整だと思います。
いろいろ葛藤しましたが。
堕天使でいいよ、別に。そう思って。1人1人に寄り添うということはそういうことだと思います。
話をしたら
御自分たちのいっている大病院の産婦人科では減数手術のことは教えてくれたけど
具体的にどこに連絡すればいいのか教えてくれず、わからなかったのでそのまま産もうと決めたらしいのですが。
一度話を聞いてみたい、と言っていました。
その結果、どういう道を選択しても、十分な選択肢の中ご自分たちで選んだのであれば
納得がいくと思います。
まだまだ全然安心ではないのですが
笑顔で帰っていくお二人を見て
わたしも頑張ろうって思いました。
それにしても。『減数手術』というから聞こえは良いが、正確には「間引き」であって。こんなことを考えたりしないといけないのも、すべては最初の産婦人科医がガイドラインを守らずに2個戻したからであって。
彼らだけで女性を診療すると、相互批判もないので、改善していかない。
彼らはわれわれ遺伝専門医を、「妊婦のことは産婦人科で」診療すべきだと言って排除しようとする。
やっぱり、産婦人科の閉ざされた体質を変えていくためにも、われわれ産婦人科ではない分野の遺伝専門医がかかわることの重要性を痛感しています。
以前経験した症例でも患者さんが簡単に減数をしてもらう、、ということを言っていたので、驚いたことがあったのですが、産婦人科医師は動じていませんでしたね。
もしも2個以上のたまごを戻すのなら、
またそれから間引くのなら
それを決める遺伝カウンセリングには産婦人科医以外の遺伝専門医が受け持つと決めるくらいでないと、
いつまでも透明度は非常に低い。
NIPTもあわせて、日本医学会では産婦人科医がGCをしてはならないという決まりを作るべ木だと思います。
昨今話題になっている遺伝性乳癌卵巣がんの予防的卵巣卵管切除RRSOや予防的乳房切除RRMも同じ。
切って金儲けしたい外科医は、遺伝カウンセリングにかかわったり予防的切除の適応を決めることはできない、と決めるべきでしょう。
そもそも、抗癌剤や手術で「儲ける」医療機関が抗癌剤や手術の適応について説明するのもおかしな話じゃないかと思います。話の持っていきかたで患者さんをそうしないといけないと駆り立てることは可能なので。というかむしろそういうことばかり行われているのが医療の世界の現状ではないでしょうか?
出生前診断では性別を言わない、と日産婦は自分たちで決めておいて、5-6年前に簡単にその制限を取ったりしましたよね。日産婦の倫理審査委員会は何をしているのでしょうか。
自分たちの希望をすべて通すのが倫理審査委員会の役割なのでしょうか。
日産婦の中枢は、自分たちの都合のよいことにお墨付きをくれる貴重な機関が倫理審査委員会と考えているのでしょう。
減数とかいうからいいことのようにきこえるのでしょ?
間引き、というべきです。
そうすれば、ARTの医者も少しは自分のしたことを自覚するかもしれませんからね。
患者さんたちは怒るべきです。