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【NIPT】辛い結果に寄り添う②

みなさま、こんばんわ。

ときどきわたしも一緒に涙ぐんでしまう患者さんがいます。

ま。私の場合、気は強いのですが泣き虫ですからね。

前回あるトリソミーで中絶を選んだ方が、今回は別のトリソミー。
まだ羊水検査を受けないと確定しないのですが。

それでも、引っかかるだけでも辛いですよね。

わたしは医学生のときに初めての出産をして。
そのとき、一卵性双生児の片方を36週6日で子宮内で失いました。
緊急帝王切開。

あの日のことは今でも鮮明に覚えています。

医学部の臨床実習であるポリクリは5年生の夏からだったので、出産後1年半ちかくたって
産婦人科をまわりました。
産婦人科の初日にNICUで小さな命が消えてしまい。
わたしは泣いてしまって、ポリクリ免除となりました。

なので。わたしは小児科にも産婦人科にも入局できませんでした。泣いてしまって仕事にならないからです。

血液・呼吸器・感染症内科に入局しました。

内科専門医を取って。
臓器横断型腫瘍内科医に転向して。

遺伝性腫瘍に遭遇することが多くなり。
遺伝性腫瘍の診療体制を構築することが必要だと感じました。

第一次がんプロフェッショナル養成プランの1期生であるわたし。
5年ごとの見直しで、今は第3次がんプロが走っています。
第3次がんプロには、シラバスに遺伝性腫瘍が入りました。

その10年前に、たった一人で真っ暗な泥沼に一人で踏み込んだわたし。

理由は、遺伝性乳癌卵巣がんが既に海外では着床前診断の対象となっていたからです。
そういう時代がいつか来る。

そのときのために、出生前診断に備えないといけない。わたしは、日本で初めてがん薬物療法専門医
臨床遺伝専門医を持っている医師になりました。2011年のことです。

腫瘍の専門家が出生前診断に備えるなんて、当時は頭がおかしいと言われて無視されました。

2013年、がん薬物療法専門医を認定している臨床腫瘍学会の年次学術集会で
会長シンポジウムで招待されて講演しました。
そのときのわたしの講演は、いつか遺伝性腫瘍が出生前診断の対象となることを予見して
われわれは急速に変わっていく時代に備えないといけない、というものでした。

しかし。誰の心にも響かなかったようです。

そして。
同じ年、NIPTがスタートした。

そのときは自分がかかわるなんて夢にも思っていませんでした。

某クリニックが結果を郵送だけで帰している、ということを知り。
そちらに行く患者さんたちを何とかしたいと思って

NIPTを扱うことにしたのが2017年8月。
やるぞ、と記者会見いたしました。

今、こうして辛い思いをする患者さんたちに
向き合ってよりそえる。

そのわたしと一緒に、亡くなった息子がいてくれるような気がします。

辛い思いをしたからこそ、辛い人たちに寄り添える。

なので。
確かに辛い思いはしたけど。

今、こうして妊娠出産でつらい思いをする人たちに
いろんな言葉をかけたり
一緒に泣いてしまったりしながら

先生に会えてよかったって言ってもらえる。

医師として歩んできた24年。

亡くなった息子は私と一緒にいて
出生前診断にわたしを導いてくれたような気がします。

別に誰が悪いわけでもなく、たまたま低い確率を引き当てる人がいるということなんです。
わたしも何十万分の一という確率を引き当ててしまった人なので。
世の中にはそういう確率を当ててしまう人がいて。
誰も悪いわけではないんです。
わたしなんておまけに1回目の出産は一卵性双生児で。
36週6日で一人心拍停止して緊急帝王切開。
どれもこれも当たりたくないけど、そういう少ない確率に当たる人がいて。
ここにはまえにトリソミーのお子さんを妊娠して大変な思いをした人もたくさん来ます。
2回続くということは確かに非常に少ないことだと思いますが
それでも誰が悪いわけでもなく、たまたまなんです。

まとめるとそんな話をしました。

わたしが子供を亡くしたとき
わたしに寄り添ってくれる医師はいませんでした。
ある夜の当直医は、点滴が漏れてしまったので入れ替えに来たのですが。
わたしが泣いていたため、どうして泣いてるんだ、泣いてると点滴ができない
と怒りました。

いったいなぜ息子を失ったばかりで泣いているわたしが医師からこんなことを言われないといけないのかわからなくて。
でも。
その経験はわたしに医師の言葉がどれくらい患者を傷つけるのか教えてくれました。

いろんな経験が今の私を作ってて。
確かに辛い思いをたくさんしたし。
でも。おかげで患者さんたちの辛い思いに共感できる。

わたしの悲しくてたまらなかった思いが
患者さんたちを癒す力に少しなるなら、それも良かったのかなと思います。

もちろん。
息子には無事に生まれてほしかったと
今でも涙が出ますが。

たかちゃん。
ママが死んだらやっと会えるね。
いっぱい抱きしめてあげるね。

でも。ママはまだやらないといけないことがたくさんあるから。
まだ君のところには行けない。
だからママと一緒に仕事しよう。

この患者さんに会って。
ママは初めて思いました。

ママくらい出生前診断に適切な医師はいない。
君が死んでしまったおかげなのだと思うと
まだまだまだまだ大粒の涙があふれて止まらないけど。

でも。
君はこうして今でもずっとママと一緒にいるんだと思います。
ママも時々、自分の傷口に塩を塗っているような気がするけど。

でも。だから寄り添える。頑張ろう。