東京電力福島第1原発事故の収束作業に従事した後、放射線被ばくが原因で三つのがんを併発したとして、札幌在住の元作業員の男性(57)が東電など3社に約6500万円の損害賠償を求めた訴訟は5日、札幌地裁(湯川浩昭裁判長)で第1回口頭弁論が開かれ、東電など3社は請求棄却を求めた。男性は弁論終了後の記者会見で「今後、自分のようになる人はたくさん出てくる。(裁判を闘うことが)他の人のためにもなる」と語った。

原告弁護団によると、事故収束作業の被ばくと発がんの因果関係を争う裁判は全国で初めて。男性は2011年7月はじめから10月末までの約4カ月間、福島第1原発でがれきの撤去作業などに従事。記録上の被ばく線量は56・41ミリシーベルトで、三つのがんは12年6月から13年5月に発症した。

男性が発症したぼうこう、胃、結腸の各がんについて、国は《1》被ばく線量100ミリシーベルト以上《2》被ばくから発症までの期間が5年以上―の両方を満たすことを労災認定の目安としており、男性は労災申請したものの、認定されなかった。

口頭弁論でも、東電は「被ばくとがん発症に因果関係はない」と争う姿勢。男性は「本来の仕事は重機の遠隔操作だったのに、実際には高線量の現場で、放射能に汚染されたがれきを直接触る危険な作業もあった」と主張している。

会見で男性は、三つのがんを併発した原因について

「原発での作業以外にあり得ない」と強調。弁護団長の高崎暢(とおる)弁護士は、原爆症をめぐる訴訟で、国が申請を却下した被爆者が裁判で原爆症と認定される例が相次いでいることに触れ、「数字だけではなく、労働環境の実態を踏まえた判断をしてほしい」と述べた。

弁護団は5日、原発作業員を対象とした無料の相談窓口を開設した。相談や問い合わせは、たかさき法律事務所(電)011・261・7738(平日の午前9時15分~午後5時30分)へ。