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遺伝子バリアントとは?がんからCOVIDまで、私たちの健康にどのように影響するのか

遺伝子バリアントという用語は、科学と医療の分野でしばしば登場しますが、その意味と私たちの日常生活への影響は必ずしも直感的には理解されません。簡単に言えば、遺伝子バリアントは遺伝子の塩基配列の標準配列からの違いや変異を指します。これらの違いは、私たちが見た目や性格だけでなく、病気に対する感受性に至るまで、さまざまな特徴を持つ理由となります。遺伝子バリアントは、人類が長い進化の過程で環境に適応するために発展してきました。そのため、遺伝子の多様性は生物学的な豊かさと健康の基盤となります。

遺伝子の多様性が人類にとってなぜ重要なのかについて考えるとき、その答えは生存と繁栄に直結します。遺伝子の多様性は、種としての人類が様々な環境や病気に適応し、生き残る能力を高めます。例えば、特定の遺伝子バリアントを持つ個人が疾患に対して自然に耐性を持っている場合、そのバリアントは集団内で有利となり、次世代へと伝えられる可能性が高まります。このように、遺伝子バリアントは、人類が変化する世界で生き延びるための鍵となるのです。

さらに、遺伝子バリアントの理解は、個別化医療の発展にも不可欠です。個々の遺伝的背景を理解することで、より効果的で副作用の少ない治療法を開発することが可能になります。例えば、特定の遺伝子バリアントを持つ人々が特定の薬に対して異なる反応を示すことが知られています。この知識を活用することで、患者一人ひとりに最適な治療法を提供できるようになります。

遺伝子バリアントの基本的な理解は、私たちが自身の健康を管理し、将来の医療技術の進展に向けた基盤を築く上で重要です。遺伝子のこの驚異的な多様性を祝い、それが私たちの生命の複雑さと豊かさをどのように形作っているかを理解することは、科学の進歩と人間の健康の未来に向けた第一歩です。

遺伝子バリアントの種類と役割

遺伝性疾患とゲノム多型の基本

遺伝性疾患ゲノム多型は、人類の健康と病の理解において重要な概念です。これらは、遺伝子の働きとその変異がどのようにして個人の特性や疾患のリスクに影響を与えるかを示しています。

●遺伝性疾患
遺伝性疾患は、遺伝子の変異によって引き起こされる病態を指します。これらの変異は、親から子へと遺伝することがあり、特定の疾患の発症リスクを高める可能性があります。遺伝性疾患は、単一遺伝子疾患多因子遺伝疾患の二つに大きく分けることができます。

単一遺伝子疾患: 特定の遺伝子の変異によって直接引き起こされる疾患で、例としてはシストリン尿症、ハンチントン病などがあります。これらの疾患は、遺伝子の明確な変異によって特徴づけられ、常に同じ遺伝子が影響を受けます。

多因子遺伝疾患: 環境要因と複数の遺伝子の変異が組み合わさって発症する疾患で、例としては心疾患、糖尿病、一部のがんなどがあります。これらの疾患は、特定の遺伝子だけでなく、ライフスタイルや環境との相互作用によっても影響を受けます。

●ゲノム多型
ゲノム多型は、個人間で見られる遺伝的な変異を指し、人類の遺伝的多様性の基盤を形成しています。これらの多型は、特定の遺伝子領域におけるヌクレオチドの違いによって生じ、多くの場合、健康や病気に直接的な影響を与えません。しかし、一部の多型は、疾患の感受性や薬物反応性に関連しています。

単一ヌクレオチド多型 (SNP:single nucleotide polymorphysm すにっぷと読みます): 最も一般的な形式のゲノム多型で、ゲノム上の特定の位置で一つのヌクレオチドが別のものに置き換わる変異です。SNPは、遺伝的な傾向や個人の特性、さらには薬物の効果や副作用の感受性を理解する上で重要です。
●遺伝性疾患とゲノム多型の関連
遺伝性疾患とゲノム多型の研究は、個人の健康と疾患のリスクを理解するために不可欠です。これらの知見は、パーソナライズ医療への道を開き、より効果的で個別化された治療戦略の開発に寄与しています。遺伝的検査を通じて個人の遺伝的背景を明らかにすることで、疾患の早期発見、予防、および管理が可能になり、将来の健康維持に大きく貢献することが期待されています。

特定のバリアント(例えば、BRCA1/BRCA2など乳がん関連)がどのように疾患リスクに影響するか

乳がんは世界中の女性にとって主要な健康問題の一つであり、遺伝的要因がリスクの重要な要素として認識されています。特に、BRCA1およびBRCA2遺伝子の変異は乳がんのリスクを著しく高めることが知られています。この記事では、これらの遺伝子バリアントがどのように疾患リスクに影響するかについて詳しく解説します。

●BRCA1およびBRCA2遺伝子の役割
BRCA1とBRCA2遺伝子は、正常な細胞機能においてDNA損傷の修復に関与するタンパク質をコードしています。これらのタンパク質は、特に二本鎖DNAの切断が起きた際の修復に必要であり、細胞の遺伝情報を正確に保持するのに役立ちます。正常なBRCA1およびBRCA2タンパク質が機能することで、がんへの進行を防ぐことができます。

●BRCA1/BRCA2の変異と乳がんリスク
BRCA1またはBRCA2遺伝子に変異が生じると、DNA損傷の修復が不適切になり、細胞の遺伝情報が時間と共に蓄積されることになります。これにより、乳がんを含むさまざまながんのリスクが高まります。研究によると、BRCA1またはBRCA2の変異を持つ女性は、一般人口と比較して乳がんを発症するリスクが大幅に高くなることが示されています。

●リスクの具体的な数値
一般的に、乳がんの生涯リスクは女性の約12%です。しかし、BRCA1またはBRCA2の変異を持つ女性の場合、このリスクは50%から70%まで高まる可能性があります。BRCA1の変異は特に卵巣がんのリスクも高めます。

●リスク管理と対策
BRCA1またはBRCA2の変異を持つ個人は、乳がんのリスクを管理するために特定の戦略を採用することが推奨されます。これには、定期的な乳房検査(マンモグラフィーまたはMRI)、予防的乳房切除や卵巣切除手術、化学予防療法が含まれます。また、家族歴に基づいて遺伝的カウンセリングを受けることも重要です。

●結論
BRCA1およびBRCA2遺伝子のバリアントは、乳がんおよび他のがんのリスクを大幅に高めることができます。これらの遺伝子変異を持つ個人は、適切なリスク管理戦略を通じて、がんの早期発見と予防の可能性を最大化することができます。遺伝的リスクの評価とそれに基づいた予防策の理解は、乳がんの発症率を減少させる上で不可欠です。

遺伝子バリアントと疾患

がん、COVID-19を含む具体的な疾患と遺伝子バリアントとの関連

がんやCOVID-19といった疾患は、遺伝子バリアントとの関連性において、研究者たちの間で大きな関心を集めています。これらの疾患と遺伝子バリアントの関係を理解することは、病気の予防、診断、治療法の改善に向けた重要な一歩となります。

●がんと遺伝子バリアント
がんは、体の細胞が制御を失い、異常に成長し続ける病気です。遺伝子バリアントはがんの発症において重要な役割を果たすことが知られています。特定の遺伝子バリアントは、がんを発症するリスクを高めることがあります。例えば、BRCA1やBRCA2のような遺伝子に変異がある場合、乳がんや卵巣がんのリスクが顕著に高くなります。これらのバリアントは遺伝的であり、家族歴を通じて伝わることがあります。がん関連の遺伝子バリアントの同定は、高リスクな個人の早期発見と予防措置を可能にします。

●COVID-19と遺伝子バリアント
COVID-19は、SARS-CoV-2ウイルスが引き起こす呼吸器疾患であり、全世界でパンデミックを引き起こしました。遺伝子バリアントは、個人がこのウイルスにどの程度感染しやすいか、また重症化するリスクがどれくらいあるかに影響を及ぼします。研究者たちは、特定の遺伝子バリアントがCOVID-19の重症化と関連していることを発見しています。たとえば、HLA遺伝子の特定のバリアントは、ウイルスに対する個人の免疫応答に影響を与えることが示されています。これらの発見は、リスクの高い人々を特定し、ワクチンや治療法の開発において個別化アプローチを取るための道を開いています。

●結論
遺伝子バリアントの研究は、がんやCOVID-19を含む多くの疾患に対する理解を深め、より効果的な治療法や予防策の開発に寄与しています。遺伝子バリアントが疾患のリスクや進行にどのように影響するかを理解することは、医療分野におけるパーソナライズドアプローチを推進し、将来的にはより多くの命を救うことにつながります。遺伝子の世界は複雑でありながら、その中には疾患を克服するための鍵が隠されています。

遺伝子検査がどのようにしてこれらのバリアントを特定し、リスク評価に役立てるか

遺伝子検査は、DNAの特定領域を分析して遺伝的バリアントを識別し、個人の疾患リスクや薬物反応性を評価する強力なツールです。このプロセスは、遺伝的情報の収集、解析、解釈を通じて行われ、個人の健康管理や疾患の予防、治療選択に大きな影響を与えます。

●遺伝子検査のプロセス
サンプル収集: 遺伝子検査は、通常、血液や唾液などの生体サンプルからDNAを抽出することで開始されます。

DNAの抽出と精製: 収集したサンプルからDNAを抽出し、検査に適した品質に精製します。

DNAシークエンシングまたはジェノタイピング: DNAシークエンシングは、DNAの完全または部分的な塩基配列を決定します。ジェノタイピングは、特定の遺伝子座のバリアントを識別するより迅速でコスト効率の高い方法です。これらの技術により、遺伝子の変異や多型が特定されます。

データ解析: シークエンシングまたはジェノタイピングによって得られたデータは、バイオインフォマティクスのツールを使用して解析され、特定のバリアントが識別されます。

リスク評価と解釈: 識別された遺伝的バリアントは、既知の疾患関連バリアントと照らし合わせられ、その人の疾患リスクや薬物反応性が評価されます。この情報は、遺伝カウンセラー臨床遺伝専門医によって解釈され、患者へのカウンセリングや治療計画の策定に役立てられます。

●遺伝子検査の応用
疾患リスクの評価: 遺伝性がん、心血管疾患、希少疾患など、特定の遺伝的リスクを持つ疾患の評価に用いられます。
薬物遺伝子検査: 個人の薬物代謝能力や副作用のリスクを評価し、パーソナライズされた薬物治療を提供します。
キャリアスクリーニング: 特定の遺伝性疾患の保因者(キャリア)かどうかを調べ、家族計画に重要な情報を提供します。
遺伝子検査は、疾患の早期発見、予防、および治療のカスタマイズに不可欠な役割を果たしています。個々の遺伝的バリアントの理解を深めることで、より効果的で個別化された医療への道が開かれます。

GenequestなどのDTC遺伝子検査と医療機関で行う遺伝子検査の違い

DTC(Direct-to-Consumer)遺伝子検査と医療機関で行う遺伝子検査は、遺伝情報を取得する手段として共通していますが、目的、範囲、精度、利用される情報の管理方法など、いくつかの重要な違いがあります。

●DTC遺伝子検査の特徴
アクセスのしやすさ: DTC遺伝子検査は、消費者がインターネットを通じて直接購入し、自宅でサンプル(通常は唾液)を採取し、結果をオンラインで受け取ることができます。
範囲: これらの検査は、祖先情報、遺伝的素質、健康リスク、運動能力や肌の質など、幅広い情報を提供することがあります。ただし、提供される情報の臨床的意義は限定的な場合が多いです。また、DTC遺伝子検査は疾患の診断に直接結びつく内容については行ってはならないと規制されています。
規制と精度: DTC遺伝子検査は医療機関で行われる検査ほど厳格な規制を受けていない場合があり、結果の解釈には慎重さが必要です。精度や信頼性は、提供する企業によって異なります。
●医療機関で行う遺伝子検査の特徴
臨床的な目的: 医療機関で行われる遺伝子検査は、特定の疾患や状態の診断、リスク評価、治療のガイドラインとしての利用を目的としています。
精度と信頼性: これらの検査は医療標準に基づき、精密な機器と厳格な品質管理のもとで行われます。結果の精度と信頼性は非常に高いです。
専門家による解釈とカウンセリング: 結果は医療専門家によって解釈され、必要に応じて遺伝カウンセリングが提供されます。これにより、患者は自分の遺伝的リスクや状態を正確に理解し、適切な医療的判断を下すことができます。
結論
DTC遺伝子検査は、一般的な遺伝的情報へのアクセスを提供し、個人の好奇心を満たすか、健康に関する一般的な指針を提供することができますが、医療機関で行う遺伝子検査の代わりになるものではありません。医療機関の検査は、診断、予防、治療計画の策定において重要な役割を果たし、専門家による解釈とカウンセリングを通じて、患者にとって最も適切な医療行動を支援します。遺伝子検査を受ける際は、その目的と限界を理解し、必要に応じて医療専門家の助言を求めることが重要です。

COVID-19ではなぜあれほどウイルスのバリアントができるのか

COVID-19を引き起こすウイルス、SARS-CoV-2が多くのバリアントを生み出す理由は、ウイルスの自然な進化の過程に根ざしています。ウイルスは生物として非常に単純な構造をしており、増殖するためには宿主の細胞を利用する必要があります。その過程で、ウイルスの遺伝物質(RNAまたはDNA)が複製されますが、この複製プロセスは完璧ではなく、時に誤り(変異)が生じます。以下に、SARS-CoV-2が多様なバリアントを生み出す主な理由を説明します。

1. 高い変異率
SARS-CoV-2はRNAウイルスであり、RNAウイルスはDNAウイルスや細胞の遺伝物質よりも変異率が高い傾向にあります。これはRNAを複製する際のエラー訂正機能がDNAよりも効率が低いためです。その結果、SARS-CoV-2が宿主の細胞内で複製する際には、常に新しい変異が生じる可能性があります。

2. 大規模な感染拡大
COVID-19パンデミックは全世界に広がり、数億人が感染しました。これにより、ウイルスは多くの異なる宿主の中で複製する機会を得ました。異なる宿主の中でウイルスが複製することで、新しい変異が生じやすくなり、それが新たなバリアントへと発展することがあります。

3. 自然選択
ウイルスの変異の中には、ウイルスにとって有利なものもあります。例えば、より効率的に宿主に感染できる変異、宿主の免疫応答を逃れる変異、あるいはウイルスの増殖速度を高める変異などです。これら有利な変異を持つウイルスは、自然選択によって他のウイルスよりも優位に立ち、その結果としてバリアントが拡散します。

4. 免疫逃避
人間の免疫システムは、感染したウイルスを認識し、排除するように進化してきました。しかし、ウイルスもまた、免疫システムの攻撃から逃れるために進化します。これにより、免疫応答を避ける変異を持つウイルスバリアントが出現することがあります。

結論
以上のように、ウイルスが多くのバリアントを生み出すのは、自然な進化の過程の結果です。SARS-CoV-2の場合、高い変異率、広範な感染拡大、自然選択のプロセス、そして免疫逃避戦略が複合的に作用し、多様なバリアントの出現を促しています。これらのバリアントはパンデミックの管理と対策に新たな課題をもたらし、ワクチンや治療法の適応を継続的に必要としています。

がんにおける遺伝子バリアントのメカニズムとがん化における役割とは

がんにおける遺伝子バリアントのメカニズムとがん化(がん細胞への変化)における役割を理解するには、がんの基本的な原理と遺伝子の変異がどのように細胞の振る舞いに影響を与えるかについての知識が必要です。がんは、細胞の成長と分裂を制御する遺伝子の変異によって引き起こされる病気です。これらの遺伝子変異は、細胞が無制限に成長し、侵攻的になり、最終的には正常な組織や器官を破壊する能力を獲得することを可能にします。

遺伝子バリアントのメカニズム
遺伝子バリアントは、DNAの配列に生じる変更です。これらの変更は、遺伝子の機能に影響を及ぼし、細胞の成長、分裂、死に関する指示を変えることがあります。遺伝子変異は、がん抑制遺伝子の機能不全やオンコジーンの活性化といった形でがんの発生に寄与します。

オンコジーンの活性化: オンコジーンは、正常に機能するとき細胞の成長と分裂を促進する遺伝子です。変異によって過剰に活性化されたオンコジーンは、細胞の制御不能な成長を引き起こし、がん化を促進します。
がん抑制遺伝子の機能不全: がん抑制遺伝子は、細胞の成長を抑制し、DNA損傷の修復、細胞の異常成長の検出、細胞死の誘導などを担います。これらの遺伝子の変異や損失は、細胞の成長制御機構の故障を引き起こし、がん化を促進します。
がん化における遺伝子バリアントの役割
がん化は、正常細胞ががん細胞に変化する過程です。この過程で遺伝子バリアントは以下のような役割を果たします。

無制限の細胞増殖: オンコジーンの活性化やがん抑制遺伝子の機能不全により、細胞は正常な成長サイクルの制御を失い、無制限に増殖します。
細胞死の回避: がん細胞は、プログラムされた細胞死(アポトーシス)の回避メカニズムを獲得します。これにより、損傷した細胞が死ぬ代わりに生き残り、増殖を続けます。
血管新生: がん細胞は、自らに栄養を供給する新しい血管を形成する能力を獲得することがあります。これにより、がんの成長と転移が促進されます。
組織侵攻と転移: さまざまな遺伝子バリアントは、がん細胞に正常組織を侵攻し、体の他の部位に転移する能力を与えます。
遺伝子バリアントは、がんの発生、成長、転移に深く関与しており、これらの遺伝子変異を特定することは、がんの早期発見、診断、治療戦略の開発において非常に重要です。遺伝子検査を通じてこれらのバリアントを同定することで、個別化された治療計画の策定が可能となり、がん治療の効果を高めることができます。

遺伝子バリアントの研究進展

Natureなどの科学誌における最新の研究と発見の概要

深層学習を用いた遺伝的バリアントの効果の予測:
研究概要: 遺伝型判定や塩基配列解読の研究において、遺伝的バリアントが遺伝子、細胞、生物の機能にどのような影響を及ぼすかについて知識が不足している課題があります。従来の計算手法は教師あり予測と臨床的な疾患ラベルの使用に依存しており、偽陽性率と偽陰性率が高い傾向があります。しかし、D. Marks氏らは変分オートエンコーダーを用いて遺伝子の進化的保存と塩基配列の状況を学習し、疾患ラベルや教師を必要とせずにバリアントの効果を予測できるモデル「EVE(evolutionary model of variant effect)」を開発しました。このモデルは、実験的に精巧で比較的ロースループットな(一度に1遺伝子)、高深度の変異スキャンによる手法と同等以上の予測性を持ち、3000を超える遺伝子についての予測はウェブサイトで公開されています。
COVID-19の重症化に関連した遺伝的要因:
研究概要: 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者の重症化に関連した遺伝的バリアントが特定されており、これは新薬開発につながる標的分子の理解に寄与しています.
All of Us研究プログラムによる遺伝的バリアントの特定:
研究概要: 「All of Us(オール・オブ・アス)研究プログラム」で得られた多様な参加者からの約25万例の全ゲノム塩基配列の解析によって、2億7500万を超える遺伝的バリアントが新たに特定されました

疾患原因となる遺伝子の変異率

l世代で、座位あたりの疾患原因となる変異率を最も直接的に推定する方法は、両親には見られない遺伝性疾患の新規患者の発生率を測ることであり、1個の変異によって罹患し、その変異を持つすべての新生児で明確に識別できる症状を引き起こす場合に測定できます。
例えば軟骨無形成症では骨成長が遅延することで低身長を呈するため、これらの必要条件を満たしています。
ある研究では一連の242,257出生中で7人の軟骨無形成症の罹患児が出生していました。この7人は、正常の身長の両親から生まれていて、軟骨無形成症では遺伝子に変異があると必ず発症するため、両親には変異自体がなく、子のみにある新生突然変異と考えられます。この座位における新生変異率は.責任遺伝子の総計2×242,257コピー中で7個の新生変異を認めるものとして、またはl世代あたりこの座位では約1.4×10―5の疾患原因変異率と算定することができます。この高い変異率は実質的に軟骨無形性症のすべての患者で同一の変異、すなわち翻訳タンパク質のグリシンコドンをアルギニンに変化させるGからAへの変異が見つかることから特に顕著なものです。
検出可能な疾患の症状の出現により新生変異の発生が特定できる他のいくつかの疾患で原因となる遺伝子の変異率が試算されています。

軟骨形成不全 FGFR3遺伝子 1.4×10-5
無虹彩症  PAX6遺伝子 2.9~5×10-6
Duchenne型筋ジストロフィー DMD遺伝子 3.5~10.5×10-5
血友病A F8遺伝子 3.2~5.7×10-5
血友病B F9遺伝子 0.2~0.3×10-5
神経線維腫1型 NF1遺伝子 4~10×10-5
多発性膿胞腎1型 PKD1遺伝子 6.5~12×10-5
網膜芽細胞腫 PB1遺伝子 0.5~1.2×10-5

これらや他の疾患で算出した変異率は、 1世代の座位あたりで10―4から10―7まで1、000倍を超える変動幅があります。

これらの差異をもたらす原因は、以下に挙げるものが関連しています。
・さまざまな遺伝子のサイズ
・疾患をもたらす当該遺伝子のすべての変異の割合変異が起こる親の年齢と性別変異
・当該の遺伝子における変異のホットスポットの有無

実際には軟骨無形成症で特定の領域特異的な変異が高率に生じることはCpGメチル化された位置において反対鎖でCからTへの塩基置換が生じることで部分的な説明ができ、脱アミノ化による変異のホットスポットの1つです。
異なる遺伝子の中でこのように変異率に輻があるにもかかわらず遺伝子変異率の中央値はおおよそ1×10―6である。
識別できる疾患またはその他の遺伝的な特徴の原因となる既知の変異がヒトのゲノムの少なくとも5000個の遺伝子上に存在する(現在までに遺伝性疾患として5千が同定されている)ことを考えると、約200人に1人がいずれか一方の親から既知の疾患関連遺伝子の新生変異を受け取っていることになります。

変異率における性差と加齢の影響

精子のDNAは卵子のDNAと比較してより多くの複製サイクルを経ていることから、 エラーが生じる機会が断然多くなります
ここから予測されることは、多くの変異が母親よりも父親の方でより頻繁に生じていることです。
実際ある疾患(例えば軟骨無形成症)では原因となる新生変異がほぼ常に父親の生殖細胞に生じるミスセンス変異アミノ酸が変わってしまう変異)であることが明らかになっています。年配の男性の生殖細胞では減数分裂の前により多くの回数のDNA複製を経ており、このことかが父親の加齢で父由来の新生変異の頻度が高めていると予測されます。事実いくつかの疾患(軟骨無形成症など)の遺伝子変異の発生率、自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder) におけるCNVなどの局所的な変異の発生率と父親の加齢は相関しています。しかし、理由ははっきりしないのですが他の疾患においては変異の種類と親由来や加齢の影響はそれほど顕著ではありません。

☞とすると、父親の加齢で父由来の新生変異の頻度が高めていると判明している疾患をターゲットに赤ちゃんの新生突然変異の検査をするとよいということになります!リンクをクリックして是非ご覧ください!

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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