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NTとは?妊娠11週から13週の胎児後頚部のむくみ

NTとは?妊娠11週から13週の胎児後頚部のむくみ

NT

妊娠初期の超音波検査で指摘されるNTとはいったい何なのかご存知ですか。また、NTの指摘により胎児にどのような影響があるかが気になるという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、NTとは何かを解説するとともに、スクリーニング検査と精密検査の違いや、遺伝カウンセリングについても紹介します。

NTとは

NT(Nuchal Translucency)とは、妊娠初期の胎児を超音波で観察する際、後頸部(うなじ)にみられる「低エコー域」と呼ばれる部分です。胎児の染色体等の異常を示唆する超音波ソフトマーカーの一つです。NTとは、胎児を11週0日から13週6日で超音波検査装置で見た時に見える後頚部に黒く抜けて見える透光性の部分を指し、透明に見えるのは水が多いから、つまり浮腫があることを意味しています。胎児の中矢状面を超音波で測定し、最も一般的には頭殿長CRL)が45~84mm(妊娠11~14週頃)で計測しますが、時にはCRLが38mm(妊娠10週5日頃)で測定されることもあります。

NT肥厚は、頭殿長に応じて3mm以上または3.5mm以上、あるいは妊娠週数に対して95パーセンタイルまたは99パーセンタイル以上であるとさまざまに定義されます。

NT肥厚の病的意義

基本的に、NTはすべての胎児にみられるものです。しかし、低エコー域が通常の胎児と比べて分厚く映る場合には、ダウン症候群21トリソミー)やターナー症候群(Xモノソミー)などの染色体異常や心奇形などの可能性が示唆されます。

例えば、染色体の数や構造の異常、特に先天性心疾患などの有害な病気のリスクは、NTが徐々に大きくなるにつれて増加します。超音波検査でNT肥厚が確認された場合、その臨床的意義(主要な常染色体異数性の残存リスクおよびその他の異常)およびさらなる評価の選択肢について話し合うために遺伝カウンセリングが必要になります。羊水穿刺または絨毛膜絨毛サンプリングによる診断的遺伝学的検査や胎児の構造的異常をしっかりと評価するための妊娠18~22週での詳細な超音波評価の実施が推奨されています。
まだ実施していなければ、セルフリーDNAによる一次または二次スクリーニング(NIPT)を検討することも可能です。

NTの正確な測定は、複合検査の重要な要素であるが、21、18、13トリソミーのスクリーニングをNIPTで受ける患者では、主観的にNTが正常に見える場合は、正確な測定が必要ない場合がある。しかし、例えば、欠失、重複、不均衡な構造再配列、モザイク、稀な常染色体トリソミー)、微小欠失・重複などの臨床的に関連する非典型的な染色体異常や単一遺伝子疾患などが胎児の構造奇形と関連している場合があるため、胎児のNTの評価は依然として重要です。

通常、妊娠初期にみられる一過性の皮膚の生理的変化でNTが増大していても、その後に消えることがほとんどです。頸部の浮腫や病理的変化である嚢胞性ヒグローマまでを含めた超音波のみえ方であるため、一度発見されても妊娠中期に消えてしまう方が多いとされています。妊娠14週以前に肥大したNTが消失することは、およそ5人に1人の胎児に起こり、消失しない胎児と比較して予後が改善するようですが、異数性(NTが95%以上の場合8%)およびその他の深刻な病気(NTが95%以上の場合17%)のリスクが減るわけではありません。

NTの厚みが示唆する染色体異常

NTの厚みが示唆する代表的な染色体異常には以下の2つの疾患があります。

● ダウン症候群(21トリソミー)

ダウン症候群では超音波検査で胎児の頸部浮腫が認められます。これは、超音波検査でうなじ部分の皮膚が厚い状態が妊娠中期まで継続した場合です。ダウン症候群は21番目の染色体が1本多く、3本存在する染色体異常です。ダウン症候群の子どもには発育・精神発達の遅れ、特徴的な頭部と顔貌、低身長などの特徴がみられます。ダウン症候群の小児の大半が大人になり、平均寿命は55歳です。最近では70代~80代まで生きている人もおり、発症率は約1,000人に1人の割合です。

● ターナー症候群(Xモノソミー)

ターナー症候群は超音波検査で、嚢胞性ヒグローマが認められます。嚢胞性ヒグローマとはリンパ管系の先天奇形のことで、リンパ液が頸部リンパ嚢胞内に蓄積されるために起こります。ターナー症候群は、2本のX染色体のうち1本の一部または全体が欠失する染色体異常で女の子に起こります。ターナー症候群の子どもは身長の低さが典型的な特徴で、大人になったときの平均身長は138cm前後です。また、首の後ろに皮膚のたるみや二次性徴が現れないことが多いといった身体的な特徴もあります。発症率は約1,000人に1人です。

NT増大=染色体異常の確定ではない

NTは、頚部皮膚の厚みが描出されただけのものです。超音波検査で膨らんでみえる場合は、皮膚が局所的にむくんでいるものと考えられています。そのため、NTの厚みがあるからといって、染色体異常だと確定させるものではありません。

経過観察を続けながら、再度NTがみられる場合には医師と相談して、疑いのある疾患を診断するための検査を行います。

胎児異常は複数の因子から推測される

ダウン症候群やターナー症候群などの胎児異常は、NTの増大だけが発症の原因ではありません。ダウン症候群の場合、母体の年齢が高くなるほど発症するリスクが高くなることがわかっています。

NTの厚みは妊娠週数などに左右されることもわかっているため、母体血清マーカー検査(クアトロテスト)など、複数のスクリーニング検査の組み合わせにより、初めて胎児異常の予測を立てられるのです。

スクリーニング検査と精密検査の違い

超音波検査などのスクリーニング検査で胎児異常の可能性を指摘されても、その確定のためには羊水検査絨毛検査などの精密検査が必要です。前述したように、スクリーニング検査は単にその可能性を指摘しているに過ぎません。

NTが増大した胎児は、増大していない胎児と比べると、ダウン症候群などである可能性は高くなります。ところが、うなじ部分の皮膚が厚いこと自体は異常とはいえません。そのため、単なる個体差に過ぎないことも十分にあり得るのです。

スクリーニング検査で胎児異常の可能性を指摘されると、不安になって悩んだり落ち込んだりしてしまう方も多いでしょう。しかし、スクリーニング検査の結果は可能性の指摘に過ぎません。1人で悩まずに、医師やパートナー、家族に相談して不安を解消することが大切です。

遺伝カウンセリングの重要性

NTを調べられる出生前診断で、胎児の染色体異常の可能性が疑われるとき、とても不安で何も手につかないこともあるでしょう。そのようなときは、遺伝カウンセラーや専門の心理士による遺伝カウンセリングを受けるという解決策があります。遺伝カウンセリングでは、遺伝カウンセラーや心理士が、遺伝に関する病気や悩みを、科学的な根拠を基にして相談にのってくれます。

染色体異常などの不安の解消には専門家へのコンサルテーションが欠かせません。本人の意思を尊重しながら科学的根拠を基に今後の方針について相談できるため、検査に対する理解も深めることができます。

まとめ

NTの可能性を指摘され、不安な気持ちになるのは自然なことです。しかし、多くの場合、妊娠中期までにみえなくなるため、心配しすぎるのはよくありません。

低エコー域が通常の胎児と比べて分厚く映る場合、胎児異常の可能性があります。これについても、病気だと確定させるものではないことを念頭に置いて置くことが重要です。染色体異常などの不安がある場合には、1人で悩まずに遺伝カウンセリングを受けてみてはいかがでしょうか。


 

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

  • 仲田洋美総合内科専門医、臨床遺伝専門医
    がん薬物療法専門医
    医療法人社団ミネルバ ミネルバクリニック 院長

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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