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全前脳胞症(ぜんぜんのうほうしょう)の症状・原因・顔について
赤ちゃんの先天異常の中で、割と頻度が高いのは全前脳胞症(ぜんぜんのうほうしょう)です。流産になってしまうこともありますが、生まれてくる場合もあります。
全前脳胞症は比較的一般的な脳の先天性欠損症です。目の間隔が狭かったり、頭の大きさが小さかったり、時には口唇裂、口蓋裂など顔面にも異常がでることがあり、他の先天性欠損症と同じように、顔面にも影響が出ます。
全前脳胞症とはどんな異常?いつ起こる?
全脳性脳症は、大脳半球を二つに分割するための前脳(胚性前脳)の障害によって引き起こされる障害です。その結果、脳の構造が一つになり、重度の頭蓋骨や顔面の欠損が生じます。目の間隔が狭く、頭のサイズが小さいといった特徴があります。時には、他の先天性欠損症と同様に、口唇や口蓋の裂け目がおきるなどの症状も出ます。全脳症のほとんどのケースで奇形は、赤ちゃんが出生前に死ぬように深刻です。軽症の場合、赤ちゃんは正常または正常に近い脳の発達と、目、鼻、上唇に影響を与える顔面の奇形を持って生まれてきます。
この先天異常は受精後まもなく発生し、初期胚発生の間に250分の1の確率で起ります。無事に出生するのは1万~2万人に一人です。確率としては低い傾向にあります。
全前脳胞症の3つの分類
全前脳胞症のおおよその定義は前脳の発生過程で本来左右に分かれるべき脳が分割せず、それによって大脳皮質、基底核、視床がくっついてしまっている状態です。しかし分割は大きく3つに分けられることができます。ただし、人によって状態はさまざまです。
- ・脳が全く分割されていない無分葉型は、通常、重度の顔面奇形に関連付けられています。
- ・脳の半球がやや分裂している半分葉型は、この疾患の中間的な重症度を引き起こします。
- ・脳半球が分かれている証拠がかなりある分葉型は、最も軽症であす。分葉型全前脳胞症のいくつかのケースでは、赤ちゃんの脳はほぼ正常であることがあります。
全前脳胞症の顔貌について
軽度の全前脳胞症の特徴として頭蓋顔面異常があります。主に見られるのが小頭症、中顔面の平坦化、目の間隔が狭い、扁平な鼻です。上顎中切歯が一つしかないも含まれます。
重度の全前脳胞症の約80%は顔面に特徴を持っています。全前脳胞症の顔面異常の中で最も軽症なのは、正中唇裂(顎前突出症)です。最も重症なのは、環状眼症です。通常は、鼻の付け根が占める領域に単一の目があり、鼻が欠損しているか、または目の上に鼻口蓋(管状の鼻)があることです。最も一般的な顔面異常は、鼻孔が密着した目を分離する無頭症です。別の顔面異常である猿頭症は、小さくて平らな鼻と一つの鼻孔が、不完全または未発達な眼球の下に位置していることが特徴です。
全前脳胞症の遺伝について
複数の人が、全前脳胞症の素因を持つ家族であってもすべての人が同じ程度の影響を受けるわけではありません。ほとんどの家族が、再発リスクは低いといえます。基本的には全前脳胞症の特徴を認識する訓練を受けた専門家に相談するのがいいでしょう。
全前脳胞症は遺伝的変化や環境の影響など、いくつかの原因があります。個々の家族における猿頭症の原因は多くが不明のままです。
治療法について
小児の奇形の程度はそれぞれ異なります。一般的な問題は発生しますが、治療は個別化する必要があります。根本的な治療方法はないので、治療は対症療法と支持療法が中心です。たとえば、経口摂取ができないなら経鼻経管栄養の実施があげられます。
全前脳胞症の寿命は?
予後は一様に不良であることが示唆されています。しかしこの障害を持つ人の予後は、脳や顔面の奇形の重症度や関連する臨床合併症によって異なります。そのため生後間もなく亡くなってしまうこともあれば、成人を迎える子がいるのも珍しくありません。
全前脳胞症の原因
一番多いのは、13トリソミーなどの染色体異常です。25%とも50%とも言われています。次に多いのが、ほかの先天奇形症候群にみられるもので、25%くらいをしめます。
1.GLI3遺伝子変異による多発奇形症候群(Pallister-Hall症候群)
2.Smith-Lemli-Opitz症候群
さらに、神経管に関係した遺伝子の異常によっても起こります。
3.神経管の腹側化誘導因子(SHH,SIX3, TGIF,PTCH,など)の異常
→2019年に理化学研究所が脳の形成に重要なSHH(ソニックヘッジホック)の働きを制御してしまう「遺伝子の働きを制御する」DNAをマウスから発見しました。ヒトを含む他の動物のゲノム中にも、類似する配列があることがあることがわかりました。このDNAにより、DNA配列が機能不全を起こすと、全前脳胞症の原因になりうることがわかっています。
2.神経管の背側化因子(ZIC2)の遺伝子変異
常染色体優性遺伝形式の家族性発症もあり、この場合は病的変異が見つかるのは40%位とされています。家族性がない孤発性の場合には、病的変異が見つかる率は非常に低くなっていて一番多いSHH遺伝子でも5%くらいです。
全前脳胞症の発見・検査方法
胎児の大脳の左右の分地は妊娠初期から始まります。超音波でも妊娠8週目から大脳の分離を確認することができます。全前脳胞症の赤ちゃんを妊娠されたお母さんたちはエコー検査で頭の大きさの小ささを指摘された方が多いようです。
またミネルバクリニックで実施している新型出生前診断(NIPT)では全前脳胞症と併発する13トリソミーの検査も合わせて行うことができます。
最も正確に脳の状態がわかる検査方法は脳スキャン(CTまたはMRI)です。いくつかの全前脳胞症に関連する遺伝子の分子検査も可能です。
全前脳胞症の早期発見にはエコー検査を
生まれながらに重篤な疾患を背負っている全前脳胞症。お腹の中にいるうちにその疾患がわかり、中絶を選ばれる方もいますが、中には中絶可能週を過ぎた超音波(エコー検査)で医師から可能性を指摘されることもあるようです。症状の程度は生まれてくるまで分らず、また流産の可能性もあり、無事に生まれてきたとしても手厚い介護が必要になります。愛情を持って育てられている方々は本当に立派だと思います。しかし、すべての方が同じ選択をできるとは限りません。産む選択をしたとしても、生後の赤ちゃんや家族の生活、治療の準備をするために、早い段階で赤ちゃんの健康状態を知っておければ安心です。
全前脳胞症の多くは13トリソミーに合併しますので、こちらは新型出生前診断で早期発見が可能です。
ミネルバクリニックでは、妊娠9週目から赤ちゃんの健康状態を検査できる新型出生前診断(NIPT)を行っています。遺伝子の異常でおこることがはっきりしている一部の全前脳胞症を検査することも可能ですし、全前脳胞症をよく合併する13トリソミー他、ダウン症の可能性もみることができます。詳しくはトップページからNIPTのページへお進みください。