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先天異常とは?
このページでは先天異常とは? 割合・確率・定義・症状についてについてお伝えしていきます。
出生前におこる身体的な異常を先天異常、または先天奇形といいます。奇形は形の異常、先天異常は見た目は奇形がなくても機能の異常があることも含む広い概念です。先天異常は出生前、出生時、または生後1年くらいしてから判明します。先天異常の原因は判らないものも多いですが、子宮内の赤ちゃんの感染、遺伝的な原因、環境要因などが先天異常発生の要因として挙げられます。
ヒトのからだはDNAに書き込まれた遺伝子という設計図をもとに作っていきます。遺伝子はDNAのなかでタンパクに翻訳されて働く部分でゲノム(DNAの塩基配列全てをゲノムと呼びます)のたった2%しかありません。そのからだの設計図である遺伝子ですが、どの遺伝子が どの時期に どの細胞で働き(発現し) どれくらいのタンパクを生産するか ということも正確に制御されています。もし、設計図である遺伝子がが壊れていたり、制御する部分が壊れていたりすると胎児期の脳や心臓その他を形成する重要な時期に、遺伝子の働きのエラーが起こり、重篤な先天異常につながります。
先天異常の定義とは?
先天異常(birth defect)は出生前に発生要因があり、出生時あるいは生後間もなくその異常に気づかれる形態的あるいは機能的異常を総じていいます。形の異常(形態異常)と機能の異常があります。
先天的な形態異常は先天奇形(congenital malformation)と呼ばれます。
先天的な機能異常には先天代謝異常、神経・筋疾患、内分泌疾患、血液疾患、免疫異常など様々な疾患が含まれます。
先天異常の発生割合は?
受精卵からヒトの形が作られるまでの発生過程は大変複雑です。個々の疾患の発生頻度は高くはありませんが、先天異常をすべて含めるとその頻度は比較的高く、新生児の2~4%を占めます。平成21年の人口動態統計によれば先天異常(「先天奇形等」)は乳幼児期(0~4歳)における死亡原因の第1位を占めています。
,先天異常に対しては多くの誤解や偏見があり, 家族の気持ちに配慮しつつ診療にあたることが大切です。形態の異常をさす「奇形」という用語が差別用語であると考える人もいるので,用語の使用にあたっては注意を要します.
先天異常の原因とは?
こちらは、先天異常に関する成書ですが、先天異常は約3%におこり、原因の10-15%が染色体異常、2-10%が単一遺伝子異常となっています。
先天異常は必ずしも遺伝が原因ではない
一般人のみならず医療関係者の中にも「先天異常=遺伝病」であると誤解されている方がいらっしゃいますが、 実際にはメンデル遺伝病に属する形態異常は少ないものです。
また,先天異常児が生まれた場合、母親に原因があるという誤った考えが流布しているため、母親が自責の念にかられたり、配偶者等から責められる場合があります。科学的な情報を適切な文脈で提供すべきです。
先天異常は出生児の約3%に生じます。しかしそのうち染色体異常が原因と特定できる割合は5~10%程度のみとなっています。染色体検査を調べても異常が見つけられないこともあります(実際には普通の分染法では見つからなくてもターゲットを定めて特殊染色をすると見つかる場合もあります)。
環境が原因でおこる先天異常
受精してから3か月の聞は臓器の分化形成が急速に行われる時期(器官形成期)です。この時期に外部からの影響が原因で異常をきたす場合があります。
風疹、サイトメガロウイルス、 トキソプラズマなどのウイルスも感染の時期によって奇形の原因となります。
また,母親が服用した場合,フェニトイン・パルプロ酸など抗けいれん薬の一部は胎児に小頭症・心奇形などを引き起こし,アンギオテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬は,腎尿細管異形成症の原因となります。
ただし先天異常のある子どもの母親がなんらかの薬を摂取していたことがわかったとき,不用意に両者を結び付けるようなコメントをすべきではありません。
また,X線撮影についても1回の単純撮影であれば胎芽に対する影響はありません。
米国内において、精神発達遅滞のはっきりとした原因の中では、胎児アルコール症候群が最も多くなっています。胎児アルコール症候群とは、子宮内発育不全と生後の低身長・発達遅滞・平滑な上口唇・平滑で長い人中を特徴とします。妊娠期間中に胎児に影響がないアルコール摂取量はどれくらいなのか判っていません。ですので,娠期間中は飲酒を避けることが望ましいでしょう。
しかし、妊娠初期に少量のアルコール摂取を1~2回程度行って、先天異常を持つ赤ちゃんが生まれてしまったときに、その原因をアルコール摂取と決めつけることは適切ではありません。
先天異常で見られる多発奇形症候群とは?
先天異常を認めた場合,解剖学的に離れた複数の部位に複数の奇形が分布する場合を「多発奇形症候群」といいます。多発奇形症候群と考えられる場合には,単一遺伝子病や染色体異常症である可能性が高くなります。出生週数や年齢に比して成長障害や過成長があるか、身体各部の均整はどうか、左右対称か、筋緊張の異常はないか、などから実際の先天異常の組み合わせによって病名について臨床診断を行い、遺伝子検査や染色体検査で確定診断をすることになります。
NIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)でわかる赤ちゃんの異常は?
- 染色体の数の異常
- 染色体の構造異常
- 単一遺伝性疾患
minerva-clinic.or.jp/nipt/super-nipt/
でご確認ください。
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この記事の著者 仲田洋美(総合内科専門医、がん薬物療法専門医、臨床遺伝専門医)