NIPT Section1 母体血清中の胎児DNA
Section 1-1 はじめに
東京でNIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)などの遺伝子検査を提供するミネルバクリニックです。このページでは母体血清中になぜ胎児DNAがあるのかについてご説明しています。細胞は日に日に生まれ変わっていきますが、死んで新しい細胞ができます。死んだ細胞が壊れるときにDNAの断片ができて血液中を流れています。
この記事の著者:仲田洋美医師 臨床遺伝専門医、がん薬物療法専門医、総合内科専門医
母体血中のセルフリーDNAの発見
1997年、Lo氏らは妊娠中に胎児DNAが妊婦の血漿および血清中に認められることを実証しました。
その後の研究により、胎児DNAの妊娠変動や分娩後に迅速に消失していくことがわかりました。
循環胎児DNA(cffDNA)は母親の血漿中の循環母親由来DNAよりも短いDNA断片からなることも明らかになっていきました。
この20年間、この新しい分野は急激に進化してきました。
最初のころは,胎児に父親から遺伝し、妊娠中の母親には存在しなかったはずのDNA配列、例えば男性の胎児のY染色体、RhD陰性の母親の血清中のRhD陽性胎児のRHD遺伝子、および胎児に親から遺伝した突然変異の検出に焦点を当てていましたが、母親のゲノムにはありませんでした。
こうした初期の試みは、最近になって、マイクロフルイディクス・デジタルPGR、液滴デジタルPGR、および大規模並列シークエンシングなどのより新しい技術の登場とあいまって、単一遺伝子疾患(一つの遺伝子に病的な変化があれば病気を発症するというタイプの疾患)の非侵襲的出生前検査(NIPT)は現在、常染色体劣性遺伝疾患および性染色体に関連する疾患や、胎児の父方および母方のどちらから伝達されたかを解明することにまで拡大されています。
近年、非侵襲的出生前検査の分野で最も注目すべきなのは、胎児の染色体異数性(ダウン症(21トリソミー)は21番染色体が通常2本のところ3本あります。そういう数の異常のことを指します)を検出するのに大規模並列配列決定法(次世代シークエンサー)を用いることです。
2011年にこの技術を確かなものだと実証した最初の大規模臨床試験以来,この技術は世界中の数十カ国の臨床実践に急速に導入されています。
染色体異数体の検出に続いて、subchromosomalな異常の検出にもこのようなアプローチを用いることができるような進化が急速におこっています。
おそらく、母親の血漿中の胎児DNAの診断は、最終的には母親の血漿から胎児ゲノム全体を決定することができるようになるでしょう。
最近、これらの初期の研究に続いて、より新しい配列決定およびバイオインフォマティクスのアプローチを用いた、いわゆる第三世代の非侵襲的胎児ゲノムの分析が行われています。
このような方法により、胎児新生突然変異を母体血漿からゲノムワイドに調べることができ、胎児の母体遺伝も以前の試みより約2桁高い分解能で決定することができるようになりました。
以上のことから、過去20年間にわたり、母体血漿中の胎児DNAの診断的応用の発展が最も顕著であったことがわかります。
しかし、まだ学ぶべきことは多く、結局のところ、cffDNA(cell free fetal DNA)の生物学的意義や病原性は考えねばならない未解決の問題のままです。
それゆえ、今後20年間もまた非常に興味深い分野です。