目次
- 1 1. TNFRSF1B遺伝子とは ─ 炎症物質を「なだめる」受け皿
- 2 2. 遺伝子と受容体のかたち ─ 1p36.22に位置するTNFRSF1B
- 3 3. TNFR1とTNFR2 ─ 生と死を分ける受け皿の違い
- 4 4. 細胞内での信号 ─ TRAF2とNF-κBのネットワーク
- 5 5. 制御性T細胞とがん ─ 免疫の「ブレーキ」が悪用されるとき
- 6 6. 組織を守る働き ─ 神経や血管での修復
- 7 7. 遺伝子多型と病気 ─ わずかな配列の違いが与える影響
- 8 8. 血液バイオマーカー ─ 可溶性TNFR2という予測指標
- 9 9. 最新の治療開発 ─ 病気によって正反対のアプローチ
- 10 10. よくある誤解
- 11 よくある質問(FAQ)
- 12 参考文献
- 13 関連記事
📍 クイックナビゲーション
腫瘍壊死因子(TNF)と聞くと、多くの方は「炎症を起こす物質」「がんを攻撃する物質」というイメージを持たれるかもしれません。ところが同じTNFでも、それを受け取る受け皿(受容体)が違うと、細胞の運命はまったく逆の方向に進みます。TNFRSF1B遺伝子がつくるTNFR2という受容体は、細胞を死なせるのではなく、生き延びさせ、免疫の暴走にブレーキをかけ、傷ついた組織の修復を助ける、いわば「調停役」の受容体です。この記事では、TNFRSF1B遺伝子とTNFR2受容体のかたちと働きから、遺伝子多型と病気とのつながり、血液で測れるバイオマーカー、そしてがん免疫や自己免疫疾患に対する最先端の治療開発までを、遺伝専門医の視点でやさしく解説します。
Q. TNFRSF1B遺伝子とは何をする遺伝子ですか?まず結論だけ知りたいです
A. TNFRSF1B遺伝子は、TNFR2という受容体の設計図です。TNFR2は、炎症物質であるTNFを受け取りながらも、細胞を死なせるのではなく生き延びさせ、免疫にブレーキをかける制御性T細胞(Treg)の働きを支え、神経や血管の組織修復を助けます。全身に広く出ているTNFR1とは違い、TNFR2は制御性T細胞や一部の免疫細胞・神経系などに限って出ているのが特徴です。この限られた分布が、がん免疫や自己免疫の新しい治療標的として注目される理由になっています。
- ➤正体 → 第1染色体にある遺伝子で、TNFR2(別名CD120b・p75)という受け皿タンパク質をつくる
- ➤TNFR1との違い → TNFR1は「死のドメイン」を持ち細胞死を導く。TNFR2は持たず、生存・免疫抑制・修復に働く
- ➤免疫での役割 → 制御性T細胞(Treg)の司令塔。がんではこれが悪用され、免疫の逃げ道になる
- ➤バイオマーカー → 血液に溶け出す「可溶性TNFR2」は、糖尿病性腎臓病の進行を数年前から予測する指標になる
- ➤治療開発 → がんでは働きを止める抗体、自己免疫では逆に刺激する薬という、正反対の開発が進む
🧬 TNFRSF1B遺伝子・TNFR2の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 遺伝子名 | TNFRSF1B(TNF receptor superfamily member 1B)。別名 TNFR2、CD120b、p75、TNFRII |
| 染色体上の位置 | 第1染色体短腕 1p36.22。NCBI Geneの現行アノテーションでは13個のエクソンが記載されている[2] |
| つくるタンパク質 | I型膜貫通型の受容体。細胞外に4つのシステインリッチドメイン(CRD1〜4)を持つ[1] |
| リガンド(結合相手) | 腫瘍壊死因子(TNF)。特に細胞膜に結合した膜型TNFを強く受け取る[1] |
| 主に出ている細胞 | 制御性T細胞(Treg)、骨髄系細胞(マクロファージ等)、血管内皮、神経系の細胞など[1] |
| 主なはたらき | 細胞の生存・免疫抑制・組織修復。NF-κBという転写因子を活性化する[1] |
TNFRSF1Bは、それ単独の変化で特定の一つの病気を起こす「原因遺伝子」というよりも、配列のわずかな個人差(多型)が、さまざまな病気のかかりやすさや薬の効きやすさに影響する「感受性遺伝子」として研究されてきました。
1. TNFRSF1B遺伝子とは ─ 炎症物質を「なだめる」受け皿
TNFRSF1B遺伝子は、TNFR2(腫瘍壊死因子受容体2型)という受容体タンパク質の設計図となる遺伝子です。TNFR2は、CD120bやp75という別名でも呼ばれます。炎症や免疫を語るうえで欠かせないTNF(腫瘍壊死因子)という物質を受け取る受け皿は2種類あり、そのうちの一方がこのTNFR2です[1]。
同じTNFを受け取る受容体でも、もう一方のTNFR1(TNFRSF1A遺伝子がつくる)は、細胞に「死になさい」という信号や強い炎症の信号を送る係です。これに対してTNFR2は、細胞に「生き延びなさい」という信号を送り、免疫のブレーキ役である制御性T細胞を支え、傷ついた組織の修復を後押しします[1]。同じ物質から正反対の結果が生まれるのは、受け皿の内側のつくりがまったく違うからです。この記事の主役は、この「なだめる側」の受け皿をつくるTNFRSF1B遺伝子です。
💡 用語解説:受容体(レセプター)とリガンド
受容体とは、細胞の表面にあって、外から来た特定の物質を受け取る「受け皿」のことです。受け取る相手の物質をリガンドと呼びます。鍵(リガンド=TNF)と鍵穴(受容体=TNFR2)の関係にたとえられます。鍵が鍵穴にはまると、細胞の中にスイッチが入り、さまざまな反応が始まります。同じ鍵でも、はまる鍵穴が違えば、開くドアが違ってくるのです。
TNFR2の大きな特徴は、その分布の偏りです。TNFR1が全身のほぼすべての細胞に広く出ているのに対して、TNFR2は制御性T細胞や骨髄系の免疫細胞、血管の内側の細胞、神経系の一部の細胞など、限られた場所にしか強くは出ていません[1]。この「必要な場所にしかない」という性質は、後で述べるように、TNFR2を狙った薬をつくるうえで大きな利点になります。全身どこにでもある標的を薬で叩くと副作用が広く出やすいのに対し、限られた場所にしかない標的なら、狙いを絞りやすいからです。
2. 遺伝子と受容体のかたち ─ 1p36.22に位置するTNFRSF1B
TNFRSF1B遺伝子は、第1染色体の短い腕、1p36.22という場所に位置しています[2]。NCBI Geneの現行アノテーションでは13個のエクソンが記載されており、そこからつくられるTNFR2は、細胞膜を1回貫いて内と外にまたがる「I型膜貫通タンパク質」です[1]。
受容体の細胞の外に出ている部分(細胞外ドメイン)は、4つのシステインリッチドメイン(CRD1〜CRD4)という共通の部品からできています。このうち真ん中あたりのCRD2とCRD3が、リガンドであるTNFを実際につかまえる部分です[1]。TNF受容体スーパーファミリーと呼ばれる仲間は、この4つのCRDというかたちの特徴で見分けられます。
リガンドが来る前から準備しておく ─ PLADのしくみ
TNFR2のいちばん外側にあるCRD1は、少し変わった働きを持っています。この部分はPLAD(プラッド/プレリガンド結合会合ドメイン)と呼ばれ、リガンドがまだ来ていない状態でも、受容体どうしをあらかじめゆるく寄り集まらせておく役割を果たします[1]。
これは、いわば消防隊が出動前から待機して隊列を組んでいるようなものです。TNFが近づいてきた瞬間に、ばらばらの状態から集まるのでは間に合いません。あらかじめ寄り集まって準備しておくことで、リガンドが結合したときにすばやく、効率よく信号を伝えられるのです。実験でPLADを壊すと、受容体は集まれずにばらばらの単量体になり、リガンドをつかまえる力そのものが落ちてしまうことが示されています[2]。かたちの一部分が、機能全体の効率を左右しているわけです。
3. TNFR1とTNFR2 ─ 生と死を分ける受け皿の違い
TNFが細胞に「死」を命じるのか、それとも「生存」を促すのか。この根本的な分かれ道は、受容体の細胞の内側の部分のつくりの違いから生まれます。TNFR1とTNFR2は、細胞外のCRDやPLADは似ていますが、細胞内のつくりと、そこに呼び寄せる相棒タンパク質がまったく異なります[4]。
TNFR1とTNFR2 ─ 同じTNFから正反対の結果へ
TNFR1(TNFRSF1A)
- 細胞内に「死のドメイン(DD)」を持つ
- TRADD・FADDなどを呼び寄せる
- カスパーゼを動かし細胞死へ
- アポトーシス・ネクロプトーシス・強い炎症
- 全身のほぼすべての細胞に分布
TNFR2(TNFRSF1B)
- 死のドメインを持たない
- TRAF2・c-IAPを呼び寄せる
- NF-κBを動かし生存・増殖へ
- 制御性T細胞の安定化・組織修復
- Treg・骨髄系・内皮・神経系に限定
TNFR1は、細胞内に「死のドメイン(デスドメイン、DD)」という部品を持っています。ここにTRADDやFADDといった相棒タンパク質が集まると、カスパーゼという酵素の連鎖反応が始まり、細胞はアポトーシス(計画的な細胞死)へと向かいます[4]。一方のTNFR2には、この死のドメインがありません。代わりにTNFR2はTRAF2(TNF受容体関連因子2)やc-IAP(細胞内アポトーシス阻害タンパク質)という相棒を呼び寄せ、細胞の運命を死ではなく、NF-κBを介した生存・増殖、そして制御性T細胞の安定化へと切り替えます[1][4]。
💡 用語解説:アポトーシスとNF-κB
アポトーシスとは、細胞が自ら計画的に死んでいく現象で、体が正常に保たれるために欠かせないしくみです。NF-κB(エヌエフ・カッパー・ビー)は、細胞の核の中に入って多くの遺伝子のスイッチを入れる転写因子で、炎症・免疫・細胞の生存に関わる中心的な司令塔です。TNFR1が「死のスイッチ」を入れやすいのに対し、TNFR2はNF-κBを通じて「生存のスイッチ」を入れる、と整理すると分かりやすくなります。
膜型TNFを好み、リガンドを「受け渡す」
TNFには、細胞膜にくっついたままの膜型TNFと、切り離されて血液中を漂う可溶型TNFの2つの形があります。TNFR2は、このうち膜型TNFを、細胞どうしの接触を通じて受け取ったときに、最も強く活性化されます[1]。可溶型TNFに対しては、TNFR2はいったんつかまえても比較的すぐに手放す性質があります。この性質から、TNFR2は可溶型TNFを一時的にとらえて局所の濃度を高め、近くにある高感度なTNFR1へと受け渡す「取り次ぎ役」としても働くと考えられています。TNFR1とTNFR2は、単純に別々に働くのではなく、たがいの活性を調整し合う関係にあるのです[4]。
4. 細胞内での信号 ─ TRAF2とNF-κBのネットワーク
TNFR2に膜型TNFが結合すると、細胞内では次々と相棒タンパク質が集まってきます。中心となるのがTRAF2の呼び寄せです。TRAF2は、強力な酵素活性を持つ2つの抗アポトーシスタンパク質、c-IAP1とc-IAP2を集めるための足場として働きます[1][4]。TRAF2は、もともとこのTNFR2の相棒として発見されたタンパク質でもあります[4]。
TNFR2の細胞内シグナルの流れ
c-IAP1/2を集める
IKK・TAK1を活性化
生存遺伝子をオン
Treg安定化・増殖
集まったTRAF2とc-IAPの複合体は、標的タンパク質に特定のタイプのユビキチン鎖を付けることで、シグナル伝達の足場をつくり、TAK1やIKK(IκBキナーゼ)という酵素を活性化します[1]。その結果、転写因子NF-κBが核の中に移動し、細胞の死を防ぐ遺伝子群の働きが高まって、細胞の生存がしっかりと支えられます[1]。さらにTNFR2は、古典的なNF-κB経路だけでなく、非古典的(もう一つの)NF-κB経路も動かすことが知られており、制御性T細胞の増殖応答を強く高めることが分かっています[1][4]。
相棒を「使い切る」ことでTNFR1を方向転換させる
TNFR2のシグナルには、もう一つ巧妙な側面があります。TNFR2が強く働き続けると、細胞内のTRAF2の在庫が消費されて減っていきます。TRAF2はTNFR1が生存信号を出すためにも必要なので、これが枯渇すると、TNFR1の信号は生存側から細胞死の側へと相対的に傾くことになります[4]。つまりTNFR2は、共通の相棒を先に使ってしまうことで、TNFR1が導く生と死のバランスを間接的に方向転換させる、高度なフィードバック制御を担っているのです。マクロファージのような免疫細胞では、この2つの受容体のかけ合いが、細胞が生きるか死ぬかの判断に重要な意味を持ちます[4]。
🩺 院長コラム【「一つの物質・一つの遺伝子」で語れない体のしくみ】
患者さんとお話ししていると、「この物質は良いもの、あの物質は悪いもの」と単純に分けたくなるお気持ちはよく分かります。けれどTNFとその受容体の世界は、その二分法がいかに通用しないかを教えてくれます。同じTNFが、受け皿がTNFR1かTNFR2かで、細胞を殺しもすれば生かしもする。しかも両者は相棒タンパク質を奪い合いながら、たがいの結末を書き換えていきます。
遺伝子や分子は、単独ではなく関係性の中で意味を持ちます。TNFRSF1Bという一つの遺伝子を理解するだけでも、免疫という複雑なネットワークの一端が見えてきます。だからこそ、断片的な情報だけで「良い・悪い」を決めつけず、全体のバランスの中で捉える姿勢が、遺伝医療では大切だと考えています。
5. 制御性T細胞とがん ─ 免疫の「ブレーキ」が悪用されるとき
TNFR2は、免疫の自己制御を担う制御性T細胞(Treg)に、とりわけ強く出ています[1]。制御性T細胞は、免疫が自分の体を攻撃しないようにブレーキをかける、免疫のバランス調整役です。TNFR2を介した信号は、この制御性T細胞の性質を安定させ、強い免疫抑制の力を持たせ、体の中で増やす方向に働きます[3][4]。
💡 用語解説:制御性T細胞(Treg)
制御性T細胞(Treg、ティーレグ)は、免疫の暴走を抑える「ブレーキ役」のリンパ球です。免疫が自分自身の体を攻撃してしまう自己免疫を防ぎ、過剰な炎症をなだめる大切な役割を担っています。ところがこのブレーキが強すぎると、がんに対する免疫までも抑え込んでしまい、かえってがんに有利に働くことがあります。TNFR2は、このTregの働きを支える中心的な受容体の一つです。
腫瘍の中で起こる「免疫の乗っ取り」
この本来は体を守るためのしくみが、がんの周りの環境(腫瘍微小環境)では悪用されてしまいます。がん細胞自身やその周囲の細胞が出すTNFによって、腫瘍の中に入り込んだTNFR2陽性の制御性T細胞が選ばれて活性化・増殖します[3]。その結果、がんの周りには強力な免疫抑制のネットワークができあがり、がんを攻撃するはずのキラーT細胞やNK細胞の働きが抑え込まれてしまいます。こうしてがんは免疫の目をすり抜ける「免疫逃避」に成功するのです[3]。
TNFR2は、腫瘍の中で最も強い抑制力を持つタイプの制御性T細胞に高く出ていることが分かっており、また多くのがん細胞そのものにも出ていることが報告されています[1][3]。TNFR2の発現が正常組織では比較的限られているという性質とあわせて考えると、TNFR2は「がんの中の免疫ブレーキ」を選択的に外すための、有望な次世代の標的として注目されています[3]。この考え方が、後で述べるがん免疫療法の開発につながっていきます。
6. 組織を守る働き ─ 神経や血管での修復
TNFR2の役割は、免疫細胞の中だけにとどまりません。中枢神経系では、TNFR2はオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPC)やミクログリア、アストロサイトといった細胞に出ています[13]。オリゴデンドロサイトは、神経の軸索を包む髄鞘(ミエリン)という絶縁体をつくる細胞で、その前駆細胞であるOPCは、傷ついた髄鞘を修復するもとになる細胞です。
💡 用語解説:髄鞘(ミエリン)と脱髄
髄鞘(ミエリン)は、神経の電線にあたる軸索を包む絶縁体のようなもので、信号を速く正確に伝えるために欠かせません。この髄鞘が壊れてしまうことを脱髄といい、多発性硬化症などの病気で起こります。壊れた髄鞘を作り直すことを再髄鞘化(リマイエリン化)と呼び、神経を守るうえでとても重要な過程です。
動物実験では、オリゴデンドロサイトのTNFR2を働かなくすると、脱髄が悪化し、髄鞘の修復が減り、神経を包む細胞が失われることが示されました[14]。逆に言えば、TNFR2は膜型TNFの信号を受けて、OPCを修復モードに切り替え、髄鞘の再生を促す大切なスイッチとして働いているということです[14]。多発性硬化症では、可溶型TNFがTNFR1を介して神経を傷つける一方、膜型TNFがTNFR2を介して修復を促すという、対照的な関係があると考えられています[13]。血管の内側の細胞でも、TNFR2は細胞の接着や増殖、生存を助け、組織の保護に関わることが知られています。
7. 遺伝子多型と病気 ─ わずかな配列の違いが与える影響
TNFRSF1B遺伝子の配列には、人によってわずかな違い(多型)があります。こうした違いは、受容体の働きや量を少しずつ変え、さまざまな病気のかかりやすさや、薬の効きやすさに影響することが研究されてきました。ここでは代表的な多型を見ていきます。
💡 用語解説:一塩基多型(SNP)とミスセンス変異
一塩基多型(SNP、スニップ)とは、DNAを構成する塩基のうち1文字だけが人によって違っている、ごくありふれた個人差のことです。多くは病気とは無関係ですが、一部は体質や病気のかかりやすさに関わります。このうち、その1文字の違いによってタンパク質のアミノ酸が別のものに置き換わるものをミスセンス変異と呼びます。設計図の1文字が変わって、できあがる部品の材料が1か所変わるイメージです。
rs1061622(M196R)── 乳がんや自己免疫、薬の効きやすさと関連
最もよく研究されているのが、rs1061622という多型です。これは受容体の196番目のアミノ酸が、メチオニン(M)からアルギニン(R)に置き換わるミスセンス変異で、M196Rとも呼ばれます。中国北東部の漢民族女性を対象とした症例対照研究では、この多型のG型(GT遺伝子型やGアレル)を持つ人は、乳がんへのかかりやすさがやや低いという関連が報告されました[5]。
また、この多型は抗TNF薬(TNFの働きを抑える生物学的製剤)の効きやすさとも関連することが、複数の研究で示されています。強直性脊椎炎の患者さんを対象とした研究では、rs1061622の特定の遺伝子型が、エタネルセプトという抗TNF薬への長期的な反応と関連していました[6]。関節リウマチや乾癬などを含む解析でも、この多型が抗TNF療法への反応性と関わることが報告されており、体質に応じた薬の選択(薬理遺伝学)の観点から注目されています[6]。
rs1061624 ── ハプロタイプで乳がんリスクが変わる
同じ研究では、rs1061624という別の多型(遺伝子の3’非翻訳領域という調節に関わる部分にある)についても解析されています。こちらはA型(AG・AA遺伝子型やAアレル)が乳がんのかかりやすさの増加と関連していました[5]。さらに、2つの多型の組み合わせ(ハプロタイプ)で見ると、rs1061622とrs1061624の特定の組み合わせが乳がんリスクを上下させることが示されました[5]。一つひとつの多型の影響は小さくても、組み合わせで見ると意味が変わってくる、という遺伝学のおもしろさがよく表れた例です。
💡 多型の解釈は「確率の話」であり「運命」ではありません
ここで挙げた多型と病気の関連は、いずれも集団を統計的に見たときの傾向(リスクがやや高い・低い)を示すものであり、その多型を持っているからといって必ず病気になる・ならないという話ではありません。多くの病気は、複数の遺伝的要因と生活習慣・環境が組み合わさって起こる多因子性のものです。TNFRSF1Bの多型も、その多数ある要因のうちの一つにすぎない、という点を正確に受け止めることが大切です。
8. 血液バイオマーカー ─ 可溶性TNFR2という予測指標
細胞膜の上にあるTNFR2は、ADAM17という酵素によって切り離され、可溶性TNFR2(sTNFR2)として血液中に溶け出します。この血液中のsTNFR2の濃度は、全身の炎症の状態やTNFの信号ネットワークの活性を敏感に反映するため、近年、予後予測バイオマーカーとして研究・臨床応用が進んでいます。
💡 用語解説:バイオマーカーと可溶性受容体
バイオマーカーとは、血液検査などで測れて、体の状態や病気の進みやすさを客観的に示してくれる目印のことです。可溶性受容体は、細胞膜にあった受容体が切り離されて血液中を漂うようになったもので、その量は、TNF/TNFRシグナルや炎症・組織障害の状態を反映する指標として研究されています。
糖尿病性腎臓病の進行を数年前から予測する
sTNFR2の有用性が最もよく確かめられているのが、糖尿病性腎臓病(糖尿病による腎臓の障害)の進行予測です。米国のジョスリン糖尿病センターが行った2型糖尿病患者さんの追跡研究では、血液中のsTNFR1やsTNFR2の濃度が高い人は、その後に末期腎不全へ進行する危険が高いことが示されました[7]。同じチームによる1型糖尿病患者さんの研究でも、これらの受容体濃度が、タンパク尿など既存の指標とは独立して、12年間にわたる早期の腎機能低下と強く関連していました[8]。
重要なのは、この関連が、アルブミン尿(腎障害の従来の指標)などを考慮したあとでも残るという点です。つまりsTNFR2は、既存の指標では見えない段階から、腎機能が落ちていく危険を早めに教えてくれる可能性があるのです[7][8]。これらの受容体が単なる炎症の結果ではなく、腎機能低下の初期の病態そのものに関わっている可能性を示す知見として注目されています。
この確かな知見をもとに、米国では機械学習を使った検査「KidneyIntelX」にsTNFR1とsTNFR2の測定値が組み込まれました。この検査は、2型糖尿病と早期の慢性腎臓病を持つ成人において、腎機能が進行して低下する危険を評価するもので、2023年に米国FDAからDe Novo(新規区分)の販売承認を受け、実地臨床での運用が始まっています[9]。TNFR2の研究が、基礎から臨床の現場へと橋渡しされた代表例といえます。
その他の病気での有用性
sTNFR2は、糖尿病性腎臓病以外でも予後の指標として研究されています。慢性腎臓病や心血管疾患では、sTNFR1/sTNFR2の高値が、年齢や性別、既存の炎症マーカーとは独立して、心血管イベントや死亡の予測因子になることが報告されています。また、重症の感染症においても、これらの受容体の血中濃度の上昇が病気の重症度と関連することが知られています。アルツハイマー病の分野でも、脳脊髄液中のsTNFR2が神経変性の指標と関連する一方、TNFR2の神経保護作用を反映して、認知機能の維持と関連する場面があることも示唆されており、研究が進められています。
9. 最新の治療開発 ─ 病気によって正反対のアプローチ
TNFR2が「生存・免疫抑制・修復」という二面的な性質を持つことは、病気に応じて正反対の治療戦略を可能にします。がんではTNFR2の働きを止める(アンタゴニスト)、自己免疫や神経の病気では逆に刺激する(アゴニスト)という、方向の異なる開発が同時に進んでいます。
TNFR2を狙う2つの正反対の戦略
🚫 がん ─ 働きを止める(アンタゴニスト)
- 腫瘍内の制御性T細胞を減らす
- 免疫のブレーキを外す
- キラーT細胞を再活性化
- 例:BI-1808(抗TNFR2抗体)
✅ 自己免疫・神経 ─ 刺激する(アゴニスト)
- 制御性T細胞を増やす
- 過剰な免疫をなだめる
- 髄鞘の修復・神経保護
- 例:EHD2-scTNFR2など(研究段階)
がん免疫療法:TNFR2の働きを止める抗体 BI-1808
腫瘍の中で制御性T細胞が免疫を抑え込んでいる状態を解除するため、TNFR2を選択的に狙うモノクローナル抗体の開発が進んでいます。その代表として注目されているのが、スウェーデンのバイオインベント社が開発中の、ファースト・イン・クラス(新しいタイプで初めての)抗体「BI-1808」です[10]。BI-1808は、腫瘍内のTNFR2陽性の制御性T細胞を減らし、骨髄系細胞やキラーT細胞(CD8陽性T細胞)を活性化して、PD-1阻害薬(既存の免疫チェックポイント阻害薬)との相乗効果を狙う設計になっています[11]。
進行した皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)と進行卵巣がんを対象とした第2a相臨床試験の中間解析では、以下のような結果が報告されています。数値はいずれも試験途中の中間データであり、確定した治療効果を保証するものではありませんが、これまで治療の選択肢が限られていた難治性の患者さんにおける結果として注目されています。
BI-1808 第2a相試験の中間データ(客観的奏効率ORR)
CTCLは前治療歴の多い難治例(前治療の中央値5〜6ライン)を対象とした signal-seeking コホートの中間データ。卵巣がんはプラチナ製剤後に進行した25例の中間データ。数値は試験途中のものです。
進行CTCL(菌状息肉症やセザリー症候群を含む)に対する単剤療法では、客観的奏効率(ORR、腫瘍が一定以上小さくなった人の割合)が40%、病勢コントロール率(DCR)が93%と報告され、2年以上続いている完全奏効の例も確認されました[10]。ペムブロリズマブ(PD-1阻害薬)との併用では、ORR 50%、DCR 75%でした[10]。進行卵巣がんでのペムブロリズマブ併用では、プラチナ製剤後に進行した難治例25名において、確認されたORRが24%、DCRが56%で、無増悪生存期間(病気が進行せずに保たれた期間)の中央値は10.3か月と報告されています[11]。これは、PD-1阻害薬単剤の過去の目安(約8%)を上回る結果でした[11]。BI-1808は、卵巣がんに対して米国FDAからファストトラック指定を受けており、開発が加速されています[12]。
自己免疫・神経疾患:TNFR2を刺激するアゴニスト
がんとは逆に、過剰な免疫をなだめつつ組織の修復を促したい多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患では、TNFR2を選択的に刺激するアゴニストの開発が求められています。インフリキシマブやエタネルセプトに代表される従来の抗TNF療法は、TNFR1由来の炎症を抑える一方で、TNFR2由来の組織修復や制御性T細胞の働きまで同時に抑えてしまいます[13]。実際、多発性硬化症に抗TNF療法を使うと、かえって症状が悪化しうるという難しさが知られてきました[13]。
これに対して、TNFR2だけを選んで刺激するアゴニスト(EHD2-scTNFR2などが研究されています)は、動物モデルで目覚ましい効果を示しています。抑制力の高いTNFR2陽性の制御性T細胞を増やし、オリゴデンドロサイト前駆細胞の分化を促して髄鞘の修復を導き、酸化ストレスから神経細胞を守る、といった働きです[13]。実験的自己免疫性脳脊髄炎(多発性硬化症の動物モデル)では、運動麻痺の改善や中枢神経への炎症細胞の浸潤の抑制が確認されています[13]。TNFR2アゴニストは、「免疫を抑える」と「組織を再生する」という2つの目標に、単一の分子で同時に取り組みうる、まれなタイプの治療候補として期待されています[13]。
💡 これらの治療の多くは開発・研究段階です
ここで紹介したTNFR2アゴニストによる自己免疫・神経疾患の治療は、その多くが動物モデルや細胞レベルの研究段階にあり、ヒトでの有効性・安全性が確立した治療ではありません。がんに対するBI-1808も臨床試験の途中段階です。TNFR2を標的とする治療は非常に有望な方向ですが、現時点で確立した標準治療になっているわけではない、という点は正確に受け止める必要があります。
CAR-T細胞療法への応用 ─ TNF受容体ファミリーの共刺激ドメイン
TNFRSF1Bが属するTNF受容体スーパーファミリーは、CAR-T細胞療法という最先端のがん治療にも活かされています。CAR-T療法では、患者さん自身のT細胞を遺伝子改変して、がんを狙い撃ちできるように作り変えます。その際、T細胞を長く生き延びさせ、疲れにくくするための「共刺激ドメイン」という部品が重要になります[15]。
現在使われている多くのCAR-T製剤には、TNF受容体スーパーファミリーの一員である4-1BB(TNFRSF9)の細胞内ドメインが組み込まれており、これがT細胞の長期的な生存に寄与しています。4-1BBは、まさにTNFR2と同じようにNF-κB経路を動かすことで、T細胞の増殖と持続を支えると考えられています[15][16]。さらに最新の研究では、別のTNF受容体ファミリー分子であるCD30の細胞内ドメインを組み込んだCAR-Tが、NF-κB経路の自律的な活性化を通じて、固形がんモデルでも抗腫瘍効果や持続性を高めることが報告されています[16]。TNF受容体ファミリー由来の信号を体系的に理解し最適化することは、次世代のCAR-T開発の重要なテーマになっています。
10. よくある誤解
誤解①「TNFの受容体はすべて炎症・細胞死を起こす」
同じTNFを受け取っても、TNFR1は細胞死や炎症、TNFR2は生存・免疫抑制・修復と、正反対の結果を導きます。TNFRSF1BがつくるTNFR2は、むしろ炎症をなだめ、組織を守る側の受容体です。
誤解②「TNFRSF1Bの多型があると病気になる」
多型と病気の関連は、集団を見たときの確率的な傾向です。多型を持っていても必ず病気になるわけではありません。多くの病気は複数の遺伝的要因と環境が組み合わさって起こり、この多型はその一因にすぎません。
誤解③「抗TNF薬はTNFのすべてを抑えるから万能」
従来の抗TNF薬は、炎症を起こすTNFR1だけでなく、修復に働くTNFR2の信号まで同時に抑えてしまいます。多発性硬化症では、これがかえって症状を悪化させうることが知られており、受容体を選ぶ治療の開発が進んでいます。
誤解④「TNFR2の治療はもう確立している」
がんに対する抗TNFR2抗体は臨床試験の途中段階、自己免疫・神経疾患のTNFR2アゴニストは主に動物・細胞レベルの研究段階です。有望ですが、確立した標準治療ではないのが現状です。
よくある質問(FAQ)
Q1. TNFRSF1B遺伝子とは何をする遺伝子ですか?
TNFRSF1B遺伝子は、TNFR2という受容体タンパク質の設計図となる遺伝子です。TNFR2は、炎症物質であるTNF(腫瘍壊死因子)を受け取る2種類の受け皿のうちの一方で、CD120bやp75とも呼ばれます。もう一方のTNFR1が細胞死や炎症を導くのに対し、TNFR2は細胞の生存、免疫のブレーキ役である制御性T細胞の働きの維持、組織の修復に関わります。第1染色体の1p36.22という場所にあり、NCBI Geneの現行アノテーションでは13個のエクソンが記載されています。
Q2. TNFR1とTNFR2は何が違うのですか?
いちばんの違いは、受容体の細胞内側のつくりです。TNFR1は「死のドメイン」という部品を持ち、TRADDなどを呼び寄せてカスパーゼを動かし、細胞死(アポトーシス)や強い炎症を導きます。一方TNFR2はこの死のドメインを持たず、TRAF2やc-IAPという相棒を呼び寄せてNF-κBを活性化し、細胞の生存や免疫抑制、組織修復に働きます。また、TNFR1が全身のほぼすべての細胞に出ているのに対し、TNFR2は制御性T細胞や骨髄系細胞、神経系などに限って出ているのも大きな違いです。
Q3. TNFR2はなぜがん治療で注目されているのですか?
がんの周りでは、免疫のブレーキ役である制御性T細胞が集まって、がんを攻撃する免疫を抑え込んでしまいます。TNFR2は、この抑制力の強い制御性T細胞にとりわけ多く出ており、また多くのがん細胞そのものにも出ています。しかもTNFR2は正常組織での発現が比較的限られているため、TNFR2を狙えば、正常組織への影響を抑えつつ「がんの中の免疫ブレーキ」を選択的に外せる可能性があります。この考え方から、TNFR2は次世代の免疫治療標的として研究が進んでいます。
Q4. 可溶性TNFR2(sTNFR2)を測ると何が分かりますか?
可溶性TNFR2は、細胞膜上のTNFR2が切り離されて血液中に溶け出したもので、全身の炎症やTNFの信号の活性を反映します。特に糖尿病性腎臓病では、血中のsTNFR1・sTNFR2の濃度が高い人ほど、その後に腎機能が低下する危険が高いことが、複数の追跡研究で示されています。この関連はタンパク尿など既存の指標とは独立しており、早い段階から進行の危険を予測できる可能性があります。米国ではこの測定値を組み込んだ検査が実用化されています。
Q5. TNFRSF1Bの遺伝子多型があると、抗TNF薬は効きにくいのですか?
rs1061622(M196R)という多型は、関節リウマチや乾癬、強直性脊椎炎などで、抗TNF薬(TNFの働きを抑える生物学的製剤)の効きやすさと関連することが報告されています。ただし、これはあくまで集団を統計的に見たときの傾向であり、多型だけで薬の効果が決まるわけではありません。薬の反応には、病気の種類やほかの多くの要因も関わります。将来的には、こうした遺伝情報を薬選びの参考にする「薬理遺伝学」の発展が期待されていますが、現時点で個人の治療方針を多型だけで決めるものではありません。
Q6. TNFR2を刺激する薬は、どんな病気に使えそうですか?
過剰な免疫をなだめつつ組織を修復したい病気、たとえば多発性硬化症や関節リウマチなどの自己免疫疾患が候補と考えられています。TNFR2を選んで刺激するアゴニストは、動物モデルで、抑制力の高い制御性T細胞を増やし、髄鞘の修復を促し、神経を守る効果を示しています。ただし、これらの多くはまだ動物・細胞レベルの研究段階で、ヒトでの有効性・安全性が確立した治療ではありません。有望な方向として研究が進められている段階です。
Q7. TNFRSF1Bはミネルバクリニックの遺伝子検査で調べられますか?
TNFRSF1Bは、単独の変化で特定の一つの遺伝病を起こす原因遺伝子というよりも、配列の個人差(多型)がさまざまな病気のかかりやすさや薬の効きやすさに関わる「感受性遺伝子」として研究されている遺伝子です。そのため、一般的な単一遺伝子疾患の確定診断とは位置づけが異なります。ご自身やご家族の体質・病気に関わる遺伝的な背景が気になる場合は、どのような検査が適しているかを含めて、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングでご相談いただけます。
Q8. TNFRSF1BとTNFR2は違うものですか?
同じものを別の角度から呼んでいるだけで、指しているものはひとつながりです。TNFRSF1Bは「遺伝子」の名前で、TNFR2はその遺伝子からつくられる「タンパク質(受容体)」の名前です。設計図がTNFRSF1B遺伝子、その設計図からできあがる部品がTNFR2受容体、という関係になります。TNFR2はさらにCD120b、p75、TNFRIIといった別名でも呼ばれます。
🏥 遺伝子と体質・病気に関わる遺伝相談
免疫や体質に関わる遺伝的な背景、遺伝子検査の適応や結果の意味について
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにご相談いただけます。
検査を受けるかどうかを含め、中立の立場で判断材料を整理します。
参考文献
- [1] Tumor Necrosis Factor Receptor 2 (TNFR2): An Emerging Target in Cancer Therapy. Cancers (Basel). 2022. [PMC9179537]
- [2] TUMOR NECROSIS FACTOR RECEPTOR SUPERFAMILY, MEMBER 1B; TNFRSF1B. OMIM. [OMIM 191191]
- [3] The Roles of TNFR2 Signaling in Cancer Cells and the Tumor Microenvironment and the Potency of TNFR2 Targeted Therapy. [PMC9222015]
- [4] Targeting Regulatory T Cells by Addressing Tumor Necrosis Factor and Its Receptors in Allogeneic Hematopoietic Cell Transplantation and Cancer. [PMC6724557]
- [5] Association of TNF-α, TNFRSF1A and TNFRSF1B Gene Polymorphisms with the Risk of Sporadic Breast Cancer in Northeast Chinese Han Women. PLoS One. 2014. [PMC4091942]
- [6] Role of TNFRSF1A and TNFRSF1B polymorphisms in susceptibility, severity, and therapeutic efficacy of etanercept in HLA-B27-positive Chinese Han patients with ankylosing spondylitis. [PMC6081148]
- [7] Circulating TNF Receptors 1 and 2 Predict ESRD in Type 2 Diabetes. [PMC3294310]
- [8] Circulating TNF receptors 1 and 2 predict stage 3 CKD in type 1 diabetes. J Am Soc Nephrol. 2012. [PubMed 22266664]
- [9] KidneyIntelX.dkd, De Novo Classification Request DEN200052. U.S. Food and Drug Administration (FDA). 2023. [FDA DEN200052]
- [10] BioInvent’s TNFR2 Antibody BI-1808 Delivers Meaningful Responses and Immune Activation as Single Agent and in Combination with KEYTRUDA in Advanced CTCL (EHA 2026). BioInvent. 2026. [BioInvent]
- [11] BioInvent Reveals Solid Data with its TNFR2 Antibody BI-1808 and KEYTRUDA (pembrolizumab) in Advanced Ovarian Cancer at ASCO. BioInvent. 2026. [BioInvent]
- [12] BioInvent Receives FDA Fast Track Designation for BI-1808 for the Treatment of Ovarian Cancer. BioInvent. 2026. [BioInvent]
- [13] TNFR2 Agonism: Basic Science and Promising Treatment for Multiple Sclerosis and Related Diseases. Int J Mol Sci. 2025. [PMC12386426]
- [14] Oligodendroglial TNFR2 Mediates Membrane TNF-Dependent Repair in Experimental Autoimmune Encephalomyelitis by Promoting Oligodendrocyte Differentiation and Remyelination. [PMC4854972]
- [15] The Implementation of TNFRSF Co-Stimulatory Domains in CAR-T Cells for Optimal Functional Activity. Cancers (Basel). 2022. [PMC8773791]
- [16] Enhancement of CAR-T cell efficacy and persistence via CD30 costimulation and NF-κB signaling. Mol Cancer. 2025. [Molecular Cancer]



