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5分でわかるバイオマーカー: 医療現場と研究を支える核心指標

バイオマーカーの基礎から、医療現場および研究での活用法、個別化医療への貢献、医師や研究者による分析技術の利用までを解説します。医療イメージングセンターでのバイオマーカー活用例を含め、この記事でバイオマーカーの世界を5分で学びましょう。

第1章: バイオマーカーとは

バイオマーカーの定義と重要性

バイオマーカーは、生物学的過程、病理学的過程、または治療的介入に対する薬理学的応答の指標として、客観的に測定され評価される特性を指します[7][16]. これには、血圧、心拍数、血液検査の結果(たんぱく質の量など)といった生体由来のデータや、CTやMRI検査結果などのイメージングバイオマーカー、血液中の物質などの分子バイオマーカー、がんの進行に伴い増加する特定の物質などの腫瘍マーカーが含まれます[4].

バイオマーカーは、疾患の診断、状態の評価や予測に用いられるだけでなく、医薬品開発においても重要な役割を果たしています[16]. 医薬品開発においては、探索研究の段階で薬力学マーカーが用いられ、非臨床段階では毒性マーカーが利用され、臨床試験の段階では代替マーカー、診断マーカー、予後マーカー、予測マーカー、モニタリングマーカー、安全性マーカーなどが利用されます[16].

個別化医療において、バイオマーカーは特に重要です。個別化医療は、一般的な診療情報に加えて患者の遺伝的背景・生理的状態・疾患の状態をバイオマーカーによって把握し、患者個々に適切な治療法を設定しようとする医療アプローチです[16]. このアプローチにより、治療効果の最大化と副作用の最小化を目指します。疾患別の医薬品有効率には個人差があり、最適な医療の提供には試行錯誤的アプローチが必要でしたが、個別化医療により、より効果的な治療法の選択が可能になります[16].

バイオマーカーの利用は、疾患の早期発見、診断、治療法の選択、治療効果のモニタリング、さらには疾患の予防に至るまで、医療と研究の多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。特に、がんなどの重篤な疾患においては、バイオマーカーによる早期発見や治療法の選択が患者の生存率向上に直結するため、その重要性は計り知れません[14]. また、医薬品開発においても、バイオマーカーを用いることで、より効果的で安全な医薬品の開発が可能になり、医療の質の向上に貢献しています[16].

種類と用途

バイオマーカーは、疾患の診断、治療の効果の予測、病状のモニタリングなど、医療や研究分野で広く用いられています。これらは、生体内の生物学的な変化を示す客観的な指標であり、血液、尿、唾液などの体液や、組織に含まれるタンパク質、遺伝子などの物質が利用されます。バイオマーカーの種類と用途について、以下に詳しく解説します。

● 診断マーカー(Diagnostic Marker)

診断マーカーは、特定の疾患の存在を示すために用いられます。これにより、疾患の早期発見や正確な診断が可能になります。例えば、がんの診断において、特定の腫瘍マーカーが血液中で測定されます[2][4]。

● 予後マーカー(Prognostic Marker)

予後マーカーは、治療を受けない場合の疾病の経過や患者の生存率を予測するために使用されます。これにより、疾患の重症度や進行速度を評価し、治療方針の決定に役立てられます[1][10]。

● 薬力学マーカー(Pharmacodynamic Marker)

薬力学マーカーは、薬剤の作用機序や効果を評価するために用いられます。これにより、薬剤が体内でどのように作用しているかを理解し、効果的な治療法の選択に貢献します[1][10]。

● 予測マーカー(Predictive Marker)

予測マーカーは、特定の治療法に対する患者の反応を予測するために使用されます。これにより、患者にとって最も効果的な治療法を選択することが可能になります。例えば、特定の遺伝子変異を持つ患者が特定の薬剤により良い反応を示すことが知られています[2][5]。

● モニタリングマーカー(Monitoring Marker)

モニタリングマーカーは、治療中の疾患の状態や治療の効果を監視するために用いられます。これにより、治療の進行状況を評価し、必要に応じて治療方針の調整が行われます[1][10]。

● 患者層別マーカー(Stratification Marker)

患者層別マーカーは、特定の治療法が効果的であると予測される患者群を特定するために使用されます。これにより、個別化医療の実現に貢献し、不必要な副作用のリスクを減らしながら効果的な治療を提供することが可能になります[1][10]。

バイオマーカーは、これらの種類に限らず、さまざまな医療や研究分野で利用されており、個別化医療の進展に欠かせない重要な要素となっています。

第2章: 医療現場でのバイオマーカーの活用

検査と診断への応用

バイオマーカーは、疾患の有無や進行状態を示す目安となる生理学的指標であり、生体内の物質や生物学的プロセスを客観的に測定し評価する特性を指します。これらは、病態の発見、診断、治療効果のモニタリング、さらには治療介入による薬理学的応答の評価に広く用いられています。

● 病態の発見と診断

バイオマーカーは、疾患の早期発見や正確な診断に不可欠な役割を果たします。例えば、アルツハイマー病の研究では、血液中の特定のペプチド(APP669-711)が脳内の病変を示すバイオマーカーとして同定され、その産生機構が解明されました。これにより、血液検査を用いた脳内病変の早期診断技術がさらに正確になることが期待されています[17]。

● 治療効果のモニタリング

治療効果のモニタリングにおいても、バイオマーカーは重要な役割を担います。特定のバイオマーカーの変化を追跡することで、治療の有効性を評価し、必要に応じて治療方針の調整を行うことが可能になります。例えば、がん治療においては、特定のタンパク質の発現レベルをモニタリングすることで、抗がん剤の効果を評価し、患者に最適な治療法を選択するための指標として利用されています[18]。

● 治療介入による薬理学的応答の評価

バイオマーカーは、治療介入による薬理学的応答を評価するためにも用いられます。特定のバイオマーカーが治療によってどのように変化するかを観察することで、治療の効果や副作用のリスクを予測し、個別化医療の実現に貢献します。例えば、免疫チェックポイント阻害剤が効果的な患者を識別するためのバイオマーカーの発見は、がん免疫療法の適用範囲を拡大し、患者にとってより効果的な治療選択を可能にします[18]。

バイオマーカーの研究と開発は、病態の理解を深め、より正確な診断、効果的な治療法の選択、そして治療効果のモニタリングを可能にすることで、医療の質の向上に大きく貢献しています。

イメージングとバイオマーカー

医療イメージング技術とバイオマーカーの連携は、患者ケアの質を向上させるための重要な手段となっています。これら二つのアプローチを組み合わせることで、疾患の早期発見、正確な診断、効果的な治療計画の立案、および治療効果のモニタリングが可能になります。

● 医療イメージング技術

医療イメージング技術には、X線検査(レントゲン検査)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、超音波(エコー)検査などがあります。これらの技術は、体内の構造や機能を非侵襲的に可視化し、疾患の有無や進行状況を評価するために用いられます。例えば、MRIは軟部組織の詳細な画像を提供し、脳や脊髄の疾患の診断に有効です。一方、PET検査はがん細胞の活動を可視化し、がんの存在や転移の有無を検出するのに役立ちます[20]。

● バイオマーカー

バイオマーカーは、血液、尿、組織などの生体サンプル中に存在するタンパク質、遺伝子、その他の分子で、疾患の有無、病状の変化、治療の効果などを示す指標となります。バイオマーカーは、特定の疾患の診断、疾患の進行度の評価、治療応答の予測、患者のリスク評価などに利用されます。例えば、PSA(前立腺特異抗原)は前立腺がんのバイオマーカーとして知られており、血液中のPSAレベルの上昇は前立腺がんの可能性を示します[18]。

● イメージングとバイオマーカーの連携

イメージング技術とバイオマーカーの連携により、疾患のより正確な診断と効果的な治療が可能になります。例えば、イメージング技術によってがんの位置や大きさを特定し、バイオマーカーによってがんの種類や治療への感受性を評価することで、患者に最適な治療法を選択することができます。また、治療中や治療後にバイオマーカーの変化をモニタリングすることで、治療効果を評価し、必要に応じて治療計画を調整することが可能です[19]。

このように、医療イメージング技術とバイオマーカーの連携は、個別化医療の実現に向けた重要なステップとなっています。それぞれの技術の強みを活かし、患者一人ひとりに最適な診断と治療を提供することで、患者の生存率の向上や生活の質の改善に貢献しています。

第3章: バイオマーカーの探索と開発

最新の探索技術

最新の探索技術によるバイオマーカーの発見は、がん診断や治療の精度を高めるために重要な役割を果たしています。バイオマーカーとは、生体内の特定の状態や病態を示す指標となる物質であり、血液や組織などから検出されます。最先端技術を用いたバイオマーカーの探索は、疾患の早期発見、治療効果の予測、個別化医療の実現に寄与しています。

● リキッドバイオプシーと次世代シーケンシング

リキッドバイオプシーは、血液中の循環腫瘍DNA(ctDNA)や細胞外小胞(エクソソーム)、循環腫瘍細胞(CTC)などを分析する技術です。これにより、侵襲性の低い方法でがんの遺伝的変異を検出し、治療の選択や効果のモニタリングが可能になります[1]。

次世代シーケンシング(NGS)は、リキッドバイオプシーで得られたサンプルから、がん関連遺伝子の変異を高速かつ大規模に解析する技術です。NGSにより、がんの遺伝的プロファイルを詳細に把握し、個別化医療に必要な情報を提供します[1]。

● メタボロミクス

メタボロミクスは、生体内の代謝物質の全体像を解析する技術で、フレイル(虚弱)などの状態を示すバイオマーカーを同定するのに用いられます。この技術により、高齢者の健康状態や疾患のリスクを評価する新たな指標が発見されています[19]。

● AIと機械学習

AIと機械学習は、膨大なデータセットからパターンを識別し、新しいバイオマーカーを発見するために活用されています。これにより、従来の手法では見過ごされがちな微細な変化も検出でき、診断や治療の精度を向上させることが可能です[3][15]。

● マススペクトロメトリー

マススペクトロメトリーは、分子の質量を測定することで、特定のタンパク質や代謝物質を同定する技術です。アルツハイマー病の早期検出に有効なアミロイドβなどのバイオマーカーを血液から検出するために用いられています[4]。

● メディア探索技術

メディア探索技術は、音や映像の断片を基に情報を検索する技術で、医療分野では画像診断に応用されています。この技術により、医療画像から疾患の兆候を高精度に検出することが可能になります[18]。

これらの最先端技術は、バイオマーカーの発見という複雑なプロセスを、より迅速かつ正確に行うための強力なツールとなっています。バイオマーカーの探索と同定により、疾患の早期発見や治療のパーソナライズが進み、医療の質の向上に貢献しています。

バイオマーカーの開発プロセス

バイオマーカーの開発プロセスは、その発見から臨床試験への応用、さらには実用化に至るまで、多段階の研究と検証を要する複雑なプロセスです。このプロセスは、基礎研究から始まり、プロテオミクスやゲノミクスなどの技術を用いた探索、バイオマーカーの同定、検証、臨床試験への応用、そして最終的な実用化に至るまでの一連のステップを含みます。

1. 基礎研究とバイオマーカーの探索

バイオマーカーの開発は、疾患の生物学的メカニズムを理解する基礎研究から始まります。この段階では、プロテオミクスやゲノミクスなどの網羅的解析技術を用いて、疾患特異的な分子や変化を同定します。このプロセスには、疾患と正常状態の生物学的サンプルを比較分析し、疾患関連分子を発見する作業が含まれます[17][18]。

2. バイオマーカーの同定と検証

発見されたバイオマーカー候補は、その後、さらに厳密な検証を経て、その有用性が評価されます。この段階では、バイオマーカーが疾患の診断、予後予測、治療反応の予測などに有効であるかどうかを検証します。検証プロセスには、大規模な患者コホートを用いた研究が含まれ、バイオマーカーの臨床的妥当性が確認されます[16]。

3. 臨床試験への応用

バイオマーカーが臨床的に有用であると確認された後、次のステップは臨床試験への応用です。この段階では、バイオマーカーを用いて、特定の治療法の効果を予測したり、患者の選択や治療のパーソナライズに役立てたりします。臨床試験では、バイオマーカーを用いた治療法の安全性と有効性が評価されます[16]。

4. 実用化

臨床試験での成功後、バイオマーカーは実用化の段階に進みます。このプロセスには、規制当局の承認、診断キットや治療法の開発、市場への導入などが含まれます。実用化されたバイオマーカーは、臨床現場での診断や治療選択に直接貢献し、患者のアウトカムの改善に寄与します[16]。

● 課題と展望

バイオマーカーの開発プロセスは、時間と費用を要する複雑なプロセスであり、新規バイオマーカーの発見から実用化に至るまでの道のりは平坦ではありません[16][18]。しかし、バイオマーカーの開発と応用は、個別化医療の実現に向けた重要なステップであり、疾患の早期発見、診断の精度向上、効果的な治療法の選択など、医療の質の向上に大きく貢献することが期待されています。

第4章: バイオマーカーと個別化医療

バイオマーカーによる治療の個別化

バイオマーカーは、患者ごとの治療計画において重要な役割を果たしています。バイオマーカーとは、生体内の物質や生理学的プロセス、病理学的変化、または薬理学的反応を示す客観的な指標であり、疾患の診断、治療の効果予測、治療応答のモニタリング、疾患の進行予測などに利用されます[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15][16][17][18][19][20]。

♦ 治療の個別化におけるバイオマーカーの役割

● 診断マーカー
診断マーカーは、特定の疾患の存在を示すバイオマーカーです。これにより、患者が特定の疾患を持っているかどうかを判断し、適切な治療法を選択するための基礎情報を提供します[12]。

● 予後マーカー
予後マーカーは、疾患の経過や患者の生存率を予測するために使用されます。これにより、治療の必要性や緊急性を評価し、治療計画を立てる際の重要な情報を提供します[13]。

● 薬力学マーカー
薬力学マーカーは、薬剤の体内での動態や作用機序を理解するために使用されます。これにより、患者ごとに最適な薬剤の選択や投与量の調整が可能になります[12]。

● 予測マーカー
予測マーカーは、特定の治療に対する患者の反応を予測するために使用されます。例えば、がん治療においては、特定の遺伝子変異を持つ患者が特定の分子標的薬に反応するかどうかを予測するために使用されます[1][3][6]。

● モニタリングマーカー
モニタリングマーカーは、治療中の患者の状態を監視し、治療の効果を評価するために使用されます。これにより、治療の有効性を追跡し、必要に応じて治療計画を調整することができます[12]。

● 患者層別マーカー
患者層別マーカーは、特定の薬剤に関連する特定の分子を発現している患者を選別するために使用されます。これにより、治療の個別化が可能になり、効果的な治療法を選択し、不必要な副作用を避けることができます[7][11]。

● 安全性・毒性マーカー
安全性・毒性マーカーは、薬剤の安全性や毒性を評価するために使用されます。これにより、患者にとって安全な治療法を選択し、副作用のリスクを最小限に抑えることができます[12]。

♦ 個別化医療におけるバイオマーカーの統合

個別化医療では、これらのバイオマーカーを統合して、患者ごとに最適な治療計画を立てます。患者の遺伝的背景、生理的状態、疾患の状態を詳細に把握し、それに基づいて治療法を選択します。これにより、治療効果の最大化と副作用の最小化を目指します[19]。

バイオマーカーに基づく治療の個別化は、がん治療だけでなく、他の多くの疾患においても進展しています。これにより、患者のQOL(Quality of Life)の向上と医療費の削減が期待されています[18][20]。

参考文献・出典
[1] www.kitano-hp.or.jp/section/kokyuki-geka/biomarker
[2] www.jstage.jst.go.jp/article/dds/37/1/37_17/_pdf
[3] www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/3/104_449/_pdf
[4] patents.google.com/patent/JP2014516531A/ja
[5] www.jst.go.jp/crds/pdf/2023/RR/CRDS-FY2023-RR-03.pdf
[6] www.jstage.jst.go.jp/article/naika/107/9/107_1660/_pdf
[7] www.jpma.or.jp/opir/research/rs_057/pb1snq0000000zvf-att/pdf_article_057_01.pdf
[8] www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/medical_equipment_healthcare/pdf/001_02_00.pdf
[9] ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/drug_therapy/dt02.html
[10] memoinoncology.com/clinical-trials/%E3%83%90%E3%82%A4%E3%82%AA%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%81%AB%E5%9F%BA%E3%81%A5%E3%81%8F%E8%87%A8%E5%BA%8A%E8%A9%A6%E9%A8%93%EF%BC%9A%E8%A9%A6%E9%A8%93%E3%81%AE%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4/
[11] www.jpma.or.jp/opir/research/rs_056/pb1snq0000000zpo-att/pdf_article_056_01.pdf
[12] www.3d-gene.com/about/article/art_001.html
[13] www.cancernet.jp/upload/w_baio161214.pdf
[14] answers.ten-navi.com/dictionary/cat04/1846/
[15] jp.illumina.com/science/customer-stories/icommunity-customer-interviews-case-studies/kolhe-augusta-interview-cancer-biomarker.html
[16] clarivate.com/cortellis/ja/solutions/trials-intelligence-analytics/
[17] www.cancer-pedia.com/glossary/16/
[18] www.ncc.go.jp/jp/ri/department/clinical_proteomics/project/040/index.html
[19] www.pmda.go.jp/files/000155707.pdf
[20] www.ncc.go.jp/jp/ri/division/rare_cancer_research/project/020/010/20170907190651.html

免疫系とバイオマーカー

免疫系のバイオマーカーは、疾患の診断、治療の効果の指標、病状の変化や予後の予測などに用いられる生体内の物質や生物活性を指します。これらは、血圧、心拍数、心電図、血液中のタンパク質などの生体由来のデータとして測定されます[5]。免疫系のバイオマーカーには、サイトカイン細胞膜分子、細胞増殖性や傷害活性などが含まれ、疾患の進行や治療に対する反応と相関性を有して増減する免疫関連の生体分子や生物活性を指します[11]。

● 免疫療法におけるバイオマーカーの役割

免疫療法は、がんなどの疾患に対して体内の免疫系を活用する治療法です。この治療法において、バイオマーカーは以下のような重要な役割を果たします。

1. 治療効果の予測:
免疫療法の効果を予測するために、特定のバイオマーカーが使用されます。例えば、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を予測するために、PD-L1の発現や腫瘍細胞の体細胞変異数などが研究されています[2]。

2. 治療選択の導入:
患者の免疫系の状態や腫瘍の特性を理解することで、最も適した免疫療法を選択することができます。例えば、PD-1抗体がん免疫治療の有効性を判別するバイオマーカーの同定は、治療選択に役立ちます[8]。

3. 治療のモニタリング:
治療中の患者の免疫系の状態をモニタリングし、治療の効果を評価するためにバイオマーカーが利用されます。これにより、治療の調整や継続の判断が可能になります[15]。

4. 個別化医療の実現:
バイオマーカーを用いることで、患者個々の免疫系の特性に合わせた個別化医療が実現されます。これにより、より効果的で副作用の少ない治療が可能になります[5][10]。

5. 有害事象の予測:
免疫療法による有害事象を予測するためにもバイオマーカーが研究されています。例えば、T細胞レセプターベータ(TCRB)遺伝子内の多型が有力な指標となる可能性が示唆されています[9]。

● 免疫療法におけるバイオマーカーの研究動向

免疫療法におけるバイオマーカーの研究は、腫瘍内在性因子、腫瘍微小環境、宿主に関連する因子など、多様な要素を統合的に解析する方向に進んでいます[7]。また、次世代シーケンサー(NGS)を用いたがん免疫ゲノム解析が不可欠となっており、バイオインフォマティクス解析ツールを駆使した研究が進められています[17]。

免疫療法の効果を予測するバイオマーカーの同定は、がん免疫研究の一つの目標となっており、がん由来の研究材料はしばしば入手が難しいため、血液などの非侵襲的なサンプルからのバイオマーカーの同定が重要視されています[12]。

総じて、免疫系のバイオマーカーは、免疫療法の効果を予測し、治療の選択とモニタリングを行い、個別化医療を実現するための重要なツールとして機能しています。これらのバイーマーカーの研究と開発は、より効果的で安全な治療法の提供に寄与することが期待されています。

第5章: 研究と医療現場での課題

分析技術の進展と課題

バイオマーカー分析における技術的進歩は、医学研究や臨床診断の精度を大幅に向上させています。特に、遺伝子解析技術、プロテオミクス、メタボロミクスなどの分野での進展は顕著です。これらの技術は、疾患の早期発見、個別化医療の実現、新薬開発の加速に貢献しています。しかし、技術的進歩には課題も伴います。以下に、バイオマーカー分析における主な技術的進歩と課題を概説します。

● 技術的進歩

1. 高スループットシーケンシング技術
– 次世代シーケンシング(NGS)技術の発展により、大規模な遺伝子解析が迅速かつ低コストで可能になりました。これにより、がんや遺伝性疾患の原因遺伝子の同定、個別化医療への応用が進んでいます。

2. プロテオミクスとメタボロミクス
– 高感度質量分析計を用いたプロテオミクスとメタボロミクスの分析技術は、疾患特異的なタンパク質や代謝物の同定を可能にし、疾患のメカニズム解明や新たなバイオマーカーの発見に貢献しています。

3. バイオインフォマティクス
– 大量の生物学的データを解析・統合するバイオインフォマティクスの技術は、複雑な生物学的システムの理解を深め、バイオマーカーの同定に不可欠な役割を果たしています。

● 技術的進歩に伴う課題

1. データの解釈と標準化
– 大量のデータが生成される一方で、その解釈や標準化には課題があります。異なる研究機関や実験条件で得られたデータの比較・統合を困難にしています。

2. バイオマーカーの臨床応用
– 新たに同定されたバイオマーカーの臨床応用には、厳格な検証が必要です。特に、バイオマーカーの感度や特異性、予測能力の評価は、その臨床的有用性を決定する上で重要です。

3. 倫理的・規制的課題
– 遺伝子情報を含むバイオマーカーの利用は、個人のプライバシー保護や遺伝情報の取り扱いに関する倫理的、規制的な課題を引き起こします。これらの課題に対処するためのガイドラインや法規制の整備が求められています。

技術的進歩により、バイオマーカー分析の可能性は大きく広がっていますが、その応用を実現するためには、上述の課題に対する継続的な取り組みが必要です。

倫理的および規制の側面

## 倫理的考慮事項

バイオマーカー研究における倫理的考慮事項は、主に患者の同意、プライバシーの保護、データの取り扱い、および研究結果の開示に関連しています。個人の遺伝情報は非常に敏感な情報であり、適切な同意なしに使用されるべきではありません。研究者は、参加者からインフォームドコンセントを得ること、個人情報の保護を確実に行うこと、そして研究結果が個人に与える影響を考慮することが求められます[6][7][11][17]。

また、バイオマーカー研究においては、特に遺伝情報を含む個人情報の保護が重要です。個人情報保護法に基づき、試料・情報の利用目的、利用者の範囲、管理責任者の情報などを公開することが義務付けられています[11]。さらに、研究における倫理的な課題を十分に議論し、研究開始前に適切な倫理審査を受けることが必要です[6]。

## 規制の現状

バイオマーカーの利用に関する規制は、医薬品の安全性と有効性を保証するために重要です。規制当局は、バイオマーカーを用いた医薬品の開発において、その有効性や安全性の評価にバイオマーカーを利用することが可能であると認識しています[12][14][18]。また、バイオマーカーの妥当性確認には、概念の吟味、実験の妥当性確認(分析および臨床上の妥当性確認を含む)、分析能力の妥当性確認およびプロトコル標準化の証明が含まれます[5]。

日本では、医薬品開発におけるゲノム試料の採取や臨床試験実施に際して考慮すべき倫理的事項を明確にするためのガイドラインが存在します[8][16][17]。これらのガイドラインは、ファーマコゲノミクス検討を行う臨床試験を実施する際に、通常の臨床試験に付加して考慮すべき事項を明確にすることを目的としています。

さらに、臨床研究法の施行に関するQ&Aでは、医薬品の有効性に影響を与える遺伝子変異を探索的に検討する臨床研究(治験の付随研究)など、いわゆるバイオマーカー研究に関する規制上の取り扱いが説明されています[15]。

倫理的および規制の側面は、バイオマーカー研究と利用の進展に伴い、常に進化し続ける分野です。研究者、医療従事者、規制当局は、新たな科学的知見と社会的価値観の変化に応じて、これらの側面を適切に管理し、更新していく必要があります。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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