ある日,ミネルバクリニックに1本のお電話が.切羽詰まった声の主は,大変珍しい遺伝病のお子さんの親御さんでした.次のお子さんのリスクが知りたい.その要望にミネルバはこたえることが出来るのか?!と悩みながら一歩踏み出した先には,厚生労働省管轄の巨大病院Aの検査責任者との手に汗握る攻防がっ(◎_◎;)事実は小説より奇
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みなさま,こんばんわ.
実は.ある大変珍しい遺伝性疾患のお子さんを持つご夫婦が
わたしのところに来ました
その疾患は常染色体劣性疾患といって,病的な変異が同じ遺伝子に両親双方から伝達(遺伝することをこう言います)されないと
発症しないのですが.珍しい疾患というのは,大抵全国1か所くらいで研究がすすめられていて.
この方々もそういう医療機関A,つまり日本では最高の医療機関と思われているところを受診していました.
でも.全然次のお子さんのリスクがどうなのかとか説明受けてなかったんですよね.
それで.うちに来ることになりました.
A病院に遺伝子検査の結果をいただく手続きをしたのですが.なんかわたしなりに勘が働いて.
いわゆる女の勘ってやつですが.バカにならないことは世の常識(?)ではないでしょうか?(笑)
なんか変なことばかり言ってたんですよね.A病院が.1つは見つかったけどもう一つは見つからなかったって.
なので.それじゃあ,常染色体劣性なのに次のお子さんのリスクが説明できないので,
ご両親のキャリア診断(キャリアというのは発症しないけど病的遺伝子を持っている状態を指します)と,お子さんの検査をしました.
アメリカではNIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)だけではなく,妊娠まえにプレマタニティのキャリア診断が広まっています.
お子さんの検査はA病院でやってると言ってたので,さらに出すことになるので,わたしが負担しました.
だって.やったのにまたやりましょうって,言えなかったんですよね.
なので.わたしがお金出すのでやらせてって言ってやりました.
ところが.アメリカに出したらちゃんと2個見つかったんです.大変驚きました.
日本とアメリカの実力の違いを見せつけられて,ちょっとわたしもショックでしたが....
何よりショックだったのは,その病院の検査の責任者にお伝えしたところ.ちょー問題発言が(/_;)/~~
①自分たちは研究でやってるんだ
⇒遺伝子変異にはいろいろ種類があります.大きく欠けているタイプの変異は,次世代シークエンサーだけでは検出できません.次世代シークエンサーの一番苦手とするのが大きな欠失や挿入です.そのままずらずら読んでしまうんですよね.次世代シークエンサーしかつかわないという検査の方法自体が,大きな欠失があるとたくさん報告されている遺伝子に対しては間違っているわけで.それで検出できないからと言って自分たちが悪いんじゃない,研究でやってるんだ,という言い分でした.でも.臨床に返していいと言っているからには,研究だからこんなのでいいのだといってはいけませんよね.患者さんや血縁者にとっては大変大事な問題なので.それを検出できないやり方を採用して中途半端に検査をしているのであれば,看板に「うちでは大欠失は検出できない中途半端なやり方を採用しています.それでもよければうちで検査してください.」と書いておくべきでしょう.そこまで書いて,それでもA病院を選ぶなら,それは患者さんの自己責任でしょう.大体,こんな中途半端な研究に何億つぎ込んでも,日本の遺伝子変異のデータベースはまともなものになるわけがない.そもそも,自分たちの弱点を洗い出して克服しないといけないのに,そういう視点もなく,ただただ自分の正しさを主張する?あ~あ...わたしは,はっきり言って,自分が病気になったときにかかりたい医療機関はありません.表も裏も知りすぎていて.あ~,不幸だ...
②ここは日本だ,アメリカじゃない.
⇒これは,わたしが,「アノテーション(遺伝子変異があったとき,それに対する病的とか病的意義が不明というグレーディングをして,説明文をつけることをこう言います)もそもそも間違っている.そちらのレポートは2015年5月に出たアメリカの遺伝学会と病理学会のガイドラインの後に出されているので,それにのっとって,これを病的と判断しないといけないけど,そちらは未報告変異とだけ書いていて,臨床医が患者に誤りを伝える結果を招いている.検査するなら責任をもってやらないといけない.」と言ったことに対してですが.大変衝撃的でした.
みなさん.日本人ってどの組織に所属しているかとか肩書とかを重視しますが.
海外ではその人が何をできるのかという個人の能力を重視します.
医療機関の規模や肩書で信用できるのなら,それこそ東大のK先生なんかはどうなるんですかね?
そろそろそういう評価の仕方を変えないといけない時代に来てるんじゃないですか?
わたしは医療の密室性・封建制・情報の非対称性(専門的情報は一方的に医師側にある)が大嫌いです.
そんなもので守られるべきじゃない.もっと一人一人にきちんと寄り添おうと向き合うべきだ.
わたしは永遠に治らない病気ですから,よけいそう思ってしまいます.
患者さんにはここまで言えませんでしたけど.
ブログみてるかな?(笑)
いずれにせよ,彼らはわたしのところから笑顔で帰っていきました.本当にうれしかったです.
でも.実際にA病院の責任者と電話でやり取りした私は本当にショックで大変でした(>_<)
しばらくいろんなひとにやつあたりしてたくらい.ひどい話がゴロゴロ転がっている医療の世界ですが.
少しでも暖簾に腕押ししながら変えていきたいと思います.