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遺伝子検査:出生前診断;障害児の出産「茨城では減らせる方向に」 教育委員発言

この発言で問題になるのは,「障害者のうまれてくる権利」でしょう.

うまれてきたら大変なので,その前に判ったほうがいい,と言う発言が問題になっているのですよね.

要するに,中絶して障害者を減らしたい,と言うことでしょうか.

ダウン症(21トリソミー)を例にとってみましょう.

www.bmj.com/content/339/bmj.b3794

Figure 1 compares the total number of Down’s syndrome diagnoses (top line) with the estimated number of Down’s syndrome live births that would have occurred in the absence of antenatal diagnoses and selective termination (middle line). The two lines differ because some of these pregnancies would have miscarried naturally and not resulted in a live birth. The bottom line gives the estimated number of Down’s syndrome live births that did occur in the presence of antenatal diagnoses and selective termination. The difference between the bottom two lines is attributable to antenatal screening and subsequent terminations, the effects of which have clearly increased over time.

イギリスで1989年から20008年までのダウン症(21トリソミー)の出生前診断数と出生数を調査したものです.

青は全診断数 71%の増加です.
赤の破線は出生前診断をしないで産まれた数 48%増加しています.
緑の破線は出生前診断をして,中絶せずに産まれた数.1%しか増加していません.

F1.medium

出生前診断が問題になるのは,堕胎と直結するからです.

ダウン症(21トリソミー),18トリソミー,13トリソミー(トリソミーは染色体が3本あることをいいます)という,生命予後に影響の大きい疾患のみ,現在の日本では出生前診断の対象となっていますが.

海外では既に,「成人するまで何の問題もなくすごせる」ことがほとんどの遺伝性乳がん卵巣がんの出生前診断も行われています.

何が正しくて何が間違っているかという価値判断は,時代と共に変わっていくものです.

たとえば,30年前はまったく市民権のなかった同性愛が,近年,認められつつありますよね.

基本的には,価値判断は個人に委ねられるものですが,やはり「公共の利益に反しない限り」という制限がつくものです.

出生前診断の問題には,胎児の「障害があっても生まれる権利」と,母体の「障害児を育てる精神的身体的経済的不利益を避ける権利」とでも言ったら良いのか,そういう二つの権利のぶつかり合いを調整しないといけませんよね.

「立場の数だけ正義はある」 だから,正義と正義がぶつかっている場面で必要なのは調整です.

しかし.ここで問題が.

胎児は物言えず,意思表明が出来ないのです.

とにかく,こうした問題は,「倫理」という名のもとに,「かわいそうだ」という「感情論」にすりかえられていき,不毛な議論になることがほとんどです.

しかし.「かわいそうだ」は主観を含む言葉ですので,どの程度でかわいそうだと判断するのかという基準が個々人で異なりますから,こういう言葉を用いて議論すると収拾がつかなくなります.

どんどん発達していく科学技術を前に,遺伝専門医としては,悩ましい場面が多いのですが.

個々の最適化のために,難題に立ち向かっていかねばなりません.

さまざまな問題があるということを,皆様に知っていただきたくてこれを書きました.

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障害児の出産「茨城では減らせる方向に」 教育委員発言

朝日新聞デジタル 11月19日(木)3時0分配信

 茨城県の教育施策を話し合う18日の県総合教育会議の席上で、県教育委員が障害児らが通う特別支援学校を視察した経験を話すなかで、「妊娠初期にもっと(障害の有無が)わかるようにできないのか。(教職員も)すごい人数が従事しており、大変な予算だろうと思う」と発言した。

発言したのは、今年4月に教育委員に就任した東京・銀座の日動画廊副社長、長谷川智恵子氏(71)。発言を受け、橋本昌知事は会議で「医療が発達してきている。ただ、堕胎がいいかは倫理の問題」と述べた。長谷川氏は「意識改革しないと。技術で(障害の有無が)わかれば一番いい。生まれてきてからじゃ本当に大変」「茨城県では減らしていける方向になったらいい」などとした。

会議後の取材に、長谷川氏は出生前診断の是非などについて「命の大切さと社会の中のバランス。一概に言えない。世話する家族が大変なので、障害のある子どもの出産を防げるものなら防いだ方がいい」などと話した。

橋本知事は取材に「事実を知って産むかどうかを判断する機会を得られるのは悪いことではない」とし、長谷川氏の発言に「問題はない」と話した。(酒本友紀子)

NIPT(新型出生前診断/非侵襲的出生前検査)/ 新宿ミネルバクリニック