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もともと「がんを攻撃するために設計されたウイルス」が、いま食道がん治療の新しい選択肢として日本で実用化されました。2026年6月8日、テロメライシン(一般名スラタデノツレブ/開発コードOBP-301)が、手術や化学放射線療法が難しい食道がんを対象に厚生労働省から「通常承認」を取得。食道がんに対する腫瘍溶解アデノウイルスとしては世界初の実用化です。この記事では、なぜがん細胞だけで増えるのか、放射線や免疫療法とどう組み合わさるのか、そしてこの治療が遺伝診療とどうつながるのかを、臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医がやさしく解説します。
Q. テロメライシンとはどんな治療薬ですか?まず結論だけ知りたいです
A. テロメライシン(スラタデノツレブ/OBP-301)は、がん細胞の中だけで増えるように設計された「腫瘍溶解性ウイルス」という新しいタイプのお薬です。2026年6月8日、手術や化学放射線療法が難しい食道がんを対象に厚生労働省から通常承認を取得しました。放射線治療と併用すると、がんが消える割合(局所完全奏効率)が18か月時点で50%に達し、放射線単独の歴史的な成績(約22%)を大きく上回りました。
- ➤正体 → 弱毒化したヒトアデノウイルス5型に、がんの目印「hTERT」のスイッチを組み込んだウイルス製剤
- ➤がんだけを狙う仕組み → テロメラーゼが活発ながん細胞でだけ爆発的に増え、正常細胞では増えない
- ➤食道がんでの成績 → 放射線併用で局所完全奏効率が24週41.7%、18か月で50%(歴史的な放射線単独は約22%)
- ➤投与法 → 内視鏡で口から原発巣に直接注射。入院を伴わない外来でも実施可能な低侵襲な手技
- ➤広がる応用 → 胃・食道胃接合部がん、肝細胞がん、直腸・肛門管がんへ研究が拡大中
1. テロメライシンとは:がんを攻撃する「腫瘍溶解性ウイルス」
がんの治療は長いあいだ、手術・抗がん剤(化学療法)・放射線という3つの柱を中心に進んできました。しかし、ご高齢の方や、心臓・肺・肝臓・腎臓などの機能が落ちている方では、体の負担が大きい大きな手術や、副作用の強い全身化学療法に「耐えられない(不適応)」と判断されることが少なくありません。とくに食道がんは患者さんがご高齢であることが多く、こうした方に残された選択肢が放射線治療だけ、ということが現実に起きていました。
この行き詰まりを変える新しい考え方が、近年世界的に注目される「腫瘍溶解性ウイルス療法」です。テロメライシンは、岡山大学の藤原俊義教授らの研究をもとに、岡山大学発のバイオベンチャーであるオンコリスバイオファーマ社が開発した、遺伝子改変型の腫瘍溶解アデノウイルスです。日本では再生医療等製品(腫瘍溶解ウイルス製剤)として扱われ、2026年6月8日に厚生労働省から製造販売承認を取得しました。
💡 用語解説:腫瘍溶解性ウイルス(しゅようようかいせいウイルス)
正常な細胞には害を与えず、がん細胞の中でだけ感染・増殖して、内側からがん細胞を壊す(溶かす)ように設計された治療用のウイルスです。ウイルスが増えてがん細胞を壊すとき、隠れていたがんの目印(抗原)が一気に放出されるため、「直接がんを壊す」だけでなく「全身の免疫にがんを攻撃させる」という二段構えの効果が期待できます。日本ではすでに悪性脳腫瘍(膠芽腫)に対するデリタクトという別の腫瘍溶解ウイルス製剤も承認されており、テロメライシンは食道がんを対象にした製剤です。
ここで強調したいのは、この承認が有効性データを後から集めることを条件とする「条件付き・期限付き承認」ではなく「通常承認」であったことです。国内17施設で行われた臨床試験のデータで有効性と安全性が認められ、食道がんを対象とする腫瘍溶解アデノウイルスとしては世界で初めての実用化となりました。オンコリス社は「手術をせずにがんを治す(切らずに治す)」という治療コンセプトを掲げ、この治療を推進してきました。
2. なぜ「がん細胞だけ」で増えるのか:hTERTという分子スイッチ
テロメライシンの土台は、かぜのウイルスとして知られるヒトアデノウイルス5型を弱毒化したものです。アデノウイルスが細胞の中で増えるには、E1A・E1Bという最初に働く遺伝子の発現が必要です。テロメライシンでは、このE1A遺伝子を動かす「スイッチ(プロモーター)」を、人のテロメラーゼ(hTERT)のスイッチに入れ替えてあります。
💡 用語解説:テロメアは「細胞分裂の回数券」
テロメアは、染色体の端を守るキャップで、細胞が1回分裂するたびに少しずつ短くなっていきます。いわば細胞の寿命を数える「回数券」や「砂時計」のようなものです。ある長さまで短くなりきると、細胞はそれ以上分裂できなくなり、老化して二度と増えなくなります。これは、私たちの正常な細胞が無限には増えないように体に備わった大切なブレーキです。ところが、がん細胞の多くはテロメラーゼという酵素でこのテロメアを伸ばし続けるため、回数券が尽きることなく無限に分裂し続けてしまいます(不死化)。テロメライシンは、まさにこの「がん細胞だけがテロメラーゼを使っている」という違いを利用しているのです。詳しくはテロメアの解説ページもご覧ください。
💡 用語解説:テロメラーゼとhTERT
細胞が分裂するたびに、染色体の端にある「テロメア」という保護キャップは少しずつ短くなります。これを伸ばして補うのがテロメラーゼという酵素で、その中心部品がhTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)です。ふつうの大人の体細胞ではこの酵素はほとんど働いていませんが、ヒトのがんの約90%でhTERTが異常に活発になっており、これががん細胞が無限に増え続ける(不死化する)大きな理由になっています。テロメライシンは、このがん特有の性質を逆手に取っています。
つまり、hTERTがほとんど働いていない正常な組織にウイルスが入っても、E1Aが発現せず、ウイルスは増えません。一方、hTERTが活発ながん細胞に入ると、スイッチが強力に働いてウイルスが爆発的に増え、最終的にがん細胞の膜を壊して死滅させます。さらにテロメライシンでは、E1Bの発現がIRESという仕組みでE1Aと厳密に連動するよう設計されており、正常細胞でうっかりウイルスが増えてしまう「漏れ」のリスクが極限まで抑えられています。加えて、多くの第一世代ウイルスが取り除いていたE3領域をそのまま残しているため、免疫にすぐ排除されず、腫瘍の中で持続的に作用しやすいという特徴も持っています。
💡 用語解説:IRES(内部リボソーム進入部位)
私たちの細胞では、設計図である「mRNA」から、リボソームというタンパク質づくりの工場がタンパク質を組み立てます。ふつうリボソームはmRNAの先頭から読み始めますが、IRES(アイレス)はmRNAの途中からでもリボソームが乗り込んで読み始められるようにする特別な目印です。テロメライシンでは、このIRESを使ってE1AとE1Bという2つの遺伝子を1本のmRNAにつなげ、E1Aが作られるときだけE1Bも一緒に作られるようにしてあります。こうすることで、片方だけが勝手に働いて正常細胞でウイルスが「漏れて」増えてしまうことを防ぎ、「がん細胞でだけ増える」という安全設計を、より確実なものにしているのです。
テロメラーゼ(hTERT)が休んでいる正常細胞ではウイルスは増えず、テロメラーゼが活発ながん細胞でだけ爆発的に増えて細胞を壊す。この「がんだけを狙う」設計がテロメライシンの安全性と効果の土台になっている。
3. 食道がんでの臨床成績と歴史的な承認
テロメライシンが最初に実用化されたのは、手術や化学放射線療法が難しい食道がんです。まず岡山大学病院で行われた第I相試験では、標準治療が不適応と判断された進行食道がんの患者13名(年齢の中央値は約80歳)に、内視鏡でテロメライシンを腫瘍に直接注射し、放射線治療(総線量60グレイ)を併用しました。
その結果、用量制限毒性(治療を制限するほどの重い副作用)はみられず、最高用量でも安全に併用できることが確認されました。有効性も際立っており、13名中8名(61.5%)で原発巣の局所完全奏効(CR)が得られ、生検でもがん細胞が消えていることが確認されました。さらに3名が部分奏効を示し、全体の奏効率は84.6%にのぼりました。
💡 用語解説:完全奏効(CR)と局所完全奏効
完全奏効(Complete Response, CR)とは、画像や内視鏡の評価で見えるがんが完全に消えた状態を指します。食道がんでは、内視鏡で原発巣(最初にがんができた場所)が消えたかどうかを評価した「局所完全奏効率(L-CR率)」が重要な指標になります。CRが得られると、口から食事を摂る機能が保たれやすくなり、生活の質(QOL)の維持に直結します。なお、完全奏効=完治を必ず意味するわけではなく、その後の経過観察が大切です。
この成果をもとに、岡山大学病院を含む全国17施設で第II相試験(OBP101JP試験)が行われ、全国で37名が登録されました。最終結果は国立がん研究センター中央病院の加藤健医師らによって国際学会で報告されています。下のグラフのとおり、放射線治療単独の歴史的な局所完全奏効率が約22%であったのに対し、テロメライシン併用群では24週時点で41.7%、18か月時点では50%にまで到達しました。
食道がんにおける局所完全奏効率の比較
放射線単独(歴史的成績)とテロメライシン併用療法の比較
放射線単独
(歴史的対照)
併用・24週
(L-CR率)
併用・18か月
(最終評価)
放射線にテロメライシンを上乗せすることで、がんが消える割合が大きく改善した。原発巣の局所制御が良くなることは、口から食事を摂る力を保つことに直結する。
なお、この試験で主要な評価のタイミングとされた24週時点では、事前に設定された統計上の基準にわずかに届かなかった一方、追跡を続けた最終解析(18か月)ではこれを上回りました。承認は、こうした第I相・第II相を通じた一連のデータを総合的に評価したうえでの通常承認です。数字の見え方だけでなく、ご高齢で他の選択肢が乏しい患者さんに、体の負担が少ない形で局所制御の可能性をもたらした点に、この治療の臨床的な意義があります。販売は、事前の提携契約に基づき富士フイルム富山化学が担います。
4. 放射線療法・免疫療法との相乗効果
テロメライシンの真価は、単独で使うときよりも、ほかの治療と組み合わせたときに発揮されます。とりわけ重要なのが放射線療法と免疫療法との相性です。
放射線との相乗:がんのDNA修復をじゃまする
放射線は、がん細胞のDNAに二本鎖切断という強いダメージを与えて死滅させます。ところが、がん細胞はDNAを修復する力でこのダメージから回復し、放射線が効きにくくなることがあります。テロメライシンは、がん細胞の中で増えるときに、放射線で生じた傷の修復をじゃますることで、放射線の効きを高めます(放射線増感)。
💡 用語解説:放射線増感(ほうしゃせんぞうかん)
放射線の効果を高める作用のことです。がん細胞は放射線で傷ついても自分で修復してしまうことがありますが、その修復をブロックすると、同じ放射線量でもがん細胞がより死にやすくなります。テロメライシンは、がん細胞のDNA修復に必要なタンパク質の動きをじゃますることで、放射線とウイルスの「足し算以上の効果(相乗効果)」を生み出します。食道がんで放射線との併用が高い完全奏効率を示した背景には、この仕組みがあります。
免疫療法との相乗:「冷たい腫瘍」を「熱い腫瘍」に変える
ペムブロリズマブに代表される免疫チェックポイント阻害薬は、がん治療に革命をもたらしました。しかしその効果は、もともと免疫細胞(CD8陽性T細胞)がたくさん入り込んでいる「熱い腫瘍」かどうかに大きく左右されます。免疫細胞が乏しい「冷たい腫瘍」には効きにくいのです。
💡 用語解説:冷たい腫瘍と熱い腫瘍
免疫細胞ががんの中にどれだけ入り込んでいるかで、がんは大きく2つに分けられます。免疫細胞がたっぷり入り込んでいるものを「熱い腫瘍(Hot Tumor)」、ほとんど入り込んでいないものを「冷たい腫瘍(Cold Tumor)」と呼びます。免疫チェックポイント阻害薬は、もともと免疫が働きかけている「熱い腫瘍」でこそ力を発揮します。テロメライシンはがん細胞を壊して目印(抗原)をまき散らし、炎症を起こすことで、冷たい腫瘍を熱い腫瘍へと変えると考えられています。
テロメライシンは、がん細胞を壊して大量のがん抗原を放出し、ウイルス感染そのものが発する「危険信号」とあわさって樹状細胞を活性化させます。その結果、がんを狙い撃ちするCD8陽性T細胞が呼び込まれ、免疫にブレーキをかける制御性T細胞は減ります。こうして「冷たい腫瘍」を「熱い腫瘍」に変えることで、免疫療法が効きにくかったがんでも効果が引き出せる可能性が、前臨床モデルで示されています。
5. ほかのがんへの広がり:胃・肝臓・直腸への研究
食道がんでの実用化を足がかりに、テロメライシンはほかのがんへも研究が広がっています。なお、ここから先は主に臨床試験の段階にある内容で、これらのがんに対しては承認された治療ではない点にご注意ください。
胃・食道胃接合部(GEJ)腺がん:免疫療法との併用
進行した胃・食道胃接合部腺がんでは、抗PD-1抗体(ペムブロリズマブ)が効きにくい患者さんが少なくありません。米国コーネル大学が主導した第II相試験(NCT03921021)では、2ライン以上の治療後に進行した難治性の患者16名に、テロメライシンの腫瘍内注射とペムブロリズマブを併用しました。16名中3名(19%)で部分奏効が得られ、しかもその効果は長く続きました(一部は奏効期間が33か月以上、20か月以上)。
とくに注目されたのは、脳転移が縮小した症例です。原発巣に局所投与しただけで、離れた場所の転移巣まで小さくなる現象は「アブスコパル効果」と呼ばれます。現在は耐性克服を検証する新たな第II相試験(NCT06340711)も進行しています。
💡 用語解説:アブスコパル効果
体の一か所だけに治療(放射線やウイルス注射など)を行ったのに、治療していない離れた場所のがんまで小さくなる現象のことです。局所の治療によって全身を巡る「がんを攻撃する免疫」が呼び覚まされた結果と考えられています。テロメライシンで脳転移が縮小した例は、局所に打ったウイルスが全身の免疫を動かした強い証拠とされ、免疫療法との組み合わせが注目される理由になっています。
肝細胞がん(HCC):全身の免疫が動く手がかり
アデノウイルスはもともと肝臓に感染しやすい性質を持つため、肝細胞がんは理にかなった標的です。韓国・台湾の施設で行われた第I相試験では、標準治療に反応しなくなった進行肝細胞がんの患者20名に、超音波で確認しながら腫瘍に直接注射しました。忍容性は良好で、評価できた14名中11名(78%)で病勢安定が得られました。さらに高用量を投与した患者では、血液中のCD8陽性T細胞がベースラインから約50%増加しており、局所の注射が全身の免疫を動かしていることが示されました。これは将来、免疫療法と組み合わせる根拠になります。
下部直腸・肛門管がん:人工肛門を避ける「臓器温存」へ
直腸や肛門管のがんでは、手術で肛門括約筋を切除し、永久的な人工肛門(ストーマ)が必要になることがあり、術後の生活に大きな影響を与えます。2026年6月3日、オンコリス社と台湾の共同開発パートナーであるメディジェン・バイオテクノロジー社は、下部直腸がん・肛門管がんを対象とした第1b/2a相試験の治験届を日本のPMDA(医薬品医療機器総合機構)に提出したと発表しました。術前の化学放射線療法にテロメライシンを上乗せして腫瘍を強力に縮小させ、最終的には手術自体を避ける「臓器温存療法」の確立を目指す研究です。
6. 次世代パイプライン:OBP-702とTelomeScan
テロメライシンは画期的ですが、hTERTの働きが弱い細胞や、特定の難治性肉腫などでは効きにくい場合もあります。そこで開発が進む次世代版がOBP-702です。これはテロメライシンの基本構造に、強力な腫瘍抑制遺伝子である野生型p53を組み込んだ「武装化」ウイルスで、ウイルス増殖による直接の細胞破壊に加え、p53によるアポトーシス(自死)を強制的に引き起こす二重の細胞死を狙います。
💡 用語解説:p53と腫瘍抑制遺伝子
腫瘍抑制遺伝子は、細胞のブレーキ役として、傷ついた細胞ががん化しないように見張る遺伝子です。その代表がp53で、DNAに修復できない傷があると細胞をアポトーシス(自死)へ導きます。多くのがんではこのp53が壊れて働かなくなっています。OBP-702は、ウイルスを通じてがん細胞の中に正常なp53を大量に届けることで、失われたブレーキとアポトーシスのスイッチを取り戻させる発想の薬です。
前臨床では、hTERTやウイルスの受容体(CAR)の発現が低い骨肉腫の細胞でも、OBP-702はテロメライシンより低い用量で細胞を死滅させました。さらに、短鎖脂肪酸の一種である酪酸(バチレート)がOBP-702の感染効率を高めるという研究も報告されており、食事やサプリメントとウイルス療法を組み合わせる新しい可能性も探られています。
TelomeScan(OBP-401):診断への応用
テロメライシンの技術は治療だけでなく診断にも応用されています。TelomeScan(OBP-401)は、ウイルスに緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子を組み込んだもので、血液中を流れる生きたがん細胞(CTC)にだけ感染して光らせることができます。ウイルスが増える=生きたがん細胞、という仕組みなので、死んだ細胞のかけらと区別しやすく、ごく微量のがん細胞を高感度にとらえられると期待されています。
💡 用語解説:リキッドバイオプシーとCTC
リキッドバイオプシーは、血液など体液を調べてがんの情報を得る、体に負担の少ない検査です。血液中を流れるがん細胞そのものをCTC(循環腫瘍細胞)、がんから漏れ出たDNAをctDNAと呼びます。早期発見や、治療後に再発の芽が残っていないか(微小残存病変)を繰り返しチェックする用途で注目されています。当院でも血液で行うリキッドバイオプシー検査を提供しています(こちらはctDNAを調べる検査で、TelomeScanとは技術が異なります)。
7. テロメライシンと遺伝診療のつながり
テロメライシンは、テロメラーゼ(hTERT)・p53・がん抑制遺伝子・細胞死・免疫といった、がんの分子生物学の中心テーマが詰まった治療です。これらは、がんがどう生まれ、どう進むかを理解するうえで欠かせない知識であり、当院が提供する遺伝性腫瘍の診療や遺伝カウンセリングとも地続きの世界です。ここでは、この治療が遺伝診療とどうつながるのかを正直にご説明します。
🦠 テロメライシン治療そのもの
テロメライシンの投与は、内視鏡や画像ガイド下での腫瘍内注射が必要で、消化器・がん専門の治療施設で行われます。当院ではテロメライシン治療そのものは行っておりません。
🧬 当院ができること
遺伝性腫瘍のリスク評価:遺伝性がん遺伝子検査(154遺伝子)でがんになりやすい体質を調べる
経過観察:リキッドバイオプシーによる再発モニタリング
相談:遺伝カウンセリングでご家族の不安に寄り添う
食道がんを含むがんの多くは、生まれた後に体の細胞で起こる体細胞変異が原因で、それ自体が子どもに遺伝するわけではありません。一方で、家系の中にがんが多いなど、生まれつきがんになりやすい体質(遺伝性腫瘍)が関わるケースもあります。臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医として、当院は「治療そのもの」ではなく、その前後にあるリスクの把握・予防・早期発見・ご家族の意思決定支援という役割を担っています。テロメライシンのような新しい治療を理解する土台づくりも、私たちの大切な仕事だと考えています。
8. よくある誤解
誤解①「ウイルスを体に入れるなんて危ない」
テロメライシンは弱毒化したアデノウイルスを土台にし、がん細胞でだけ増えるように設計されています。正常細胞では増えず、臨床試験でも用量制限毒性は確認されませんでした。よくある副作用は発熱や食道炎などで、多くは管理可能な範囲です。
誤解②「どんながんにも効く夢の薬だ」
現在承認されているのは手術・化学放射線療法が難しい食道がんに限られます。胃がんや肝がん、直腸がんなどは研究段階です。hTERTの働きが弱いがんでは効きにくい場合もあり、万能薬ではありません。
誤解③「食道がんは遺伝するの?」
食道がんの多くは生まれた後に生じる体細胞変異が原因で、それ自体が子どもに伝わるわけではありません。ただし、家系にがんが多い場合などは遺伝性腫瘍が関わることもあり、気になる方は遺伝カウンセリングが役立ちます。
誤解④「ミネルバクリニックで受けられる?」
テロメライシンの投与は専門の治療施設で行われ、当院では治療そのものは行っていません。当院が担うのは、がんの遺伝的リスク評価・遺伝カウンセリング・リキッドバイオプシーによる経過観察です。
9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ
よくある質問(FAQ)
🏥 がん家系・遺伝性腫瘍のご相談
ご家族にがんが多い、がんになりやすい体質が心配——
そんなとき、遺伝性腫瘍の検査や遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医・がん薬物療法専門医が在籍するミネルバクリニックにご相談ください。
参考文献
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