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私たちのからだは、細菌やウイルスといった「外敵(非自己)」だけでなく、感染がなくても自分の細胞が傷ついたこと(危険)を感知して免疫を動かしています。この「危険シグナル」の正体がDAMPs(傷害関連分子パターン)です。本記事では、DAMPsとアラーミンの違い、HMGB1などの代表分子、無菌性炎症から自己免疫疾患・がん治療への応用までを、臨床遺伝専門医がやさしく解説します。
Q. DAMPs(傷害関連分子パターン)とは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. DAMPsとは、細胞が傷ついたり死んだりしたときに細胞の外へ漏れ出す「内側の分子」のことで、免疫に向けて『ここで組織が壊れた』と知らせる危険シグナルとして働きます。本来は核やミトコンドリアの中で別の仕事をしている分子ですが、外に出た瞬間に炎症のスイッチへと役割を変えます。感染がなくても起こる「無菌性炎症」の出発点であり、外傷・敗血症・自己免疫疾患・神経変性・がんまで、幅広い病態の共通の土台です。
- ➤DAMPsとアラーミンの関係 → アラーミンはDAMPsの中でも特に「免疫を強く刺激する」一群を指す部分集合
- ➤代表的な分子 → HMGB1・ヒストン・ATP・S100タンパク質・ミトコンドリアDNAなど
- ➤感知するしくみ → TLR・RAGE・NLRP3・cGAS-STINGなどのパターン認識受容体が受け取る
- ➤病気とのつながり → 自己免疫疾患・神経変性・虚血再灌流障害の共通基盤として研究が進む
- ➤最新の話題 → がん治療での「免疫原性細胞死」、DAMPsを狙う治療薬の臨床試験
1. 「危険モデル」とDAMPs:免疫学の見方を変えた発想
長いあいだ免疫学は、「自分のものか(自己)、よそ者か(非自己)」を見分け、よそ者である病原体を攻撃するという「自己・非自己モデル」を中心に発展してきました。しかしこの考え方だけでは、感染がまったくないのに起こる炎症——たとえば血流が途絶えた組織に血が戻るときに起こる障害(虚血再灌流障害)、打撲や手術などの物理的なケガ、自己免疫疾患——や、移植された臓器が攻撃される最初のしくみを、うまく説明できませんでした。
この行き詰まりに新しい視点をもたらしたのが、1994年にPolly Matzingerが提唱した「危険モデル(Danger Model)」です [1]。免疫系は「よそ者かどうか」ではなく、「組織が傷んでいる・細胞がストレスを受けているという“危険”の合図」を感じ取って動き出す、という発想です。やがて2003年にWalter Landが、病原体由来の分子パターン(PAMPs)とはっきり区別するため、組織が壊れたときに細胞から放出される内側の危険シグナルを「傷害関連分子パターン(DAMPs)」と名づけました [2]。
💡 用語解説:PAMPs(パンプス)とDAMPs(ダンプス)
PAMPsは「病原体(Pathogen)」に共通してみられる分子のパターンで、細菌の細胞壁成分やウイルスの核酸など、外からやってくる“よそ者”の目印です。一方DAMPsは「傷害(Damage)」を受けた自分の細胞から出てくる分子で、内側から発せられる“危険”の目印です。免疫はこの両方を、同じ種類の受容体で見張っています。だからこそ、感染がなくても組織が壊れれば炎症が立ち上がるのです。
💡 用語解説:無菌性炎症(むきんせいえんしょう)
細菌やウイルスといった病原体がいないのに起こる炎症のことです。やけど・打撲・梗塞・自己免疫など、組織そのものの傷害が引き金になります。普通の感染症の炎症と症状(腫れ・熱感・痛み)はよく似ていますが、原因が「外敵」ではなく「自分の壊れた細胞が出すDAMPs」である点が決定的に異なります。DAMPsはこの無菌性炎症の出発点にあたります。
2. DAMPsとアラーミンの違い:包含関係を整理する
DAMPsとよく似た言葉に「アラーミン(Alarmins)」があります。これは2005年にJoost Oppenheimらが提唱した用語で、専門的な文脈ではDAMPsとほぼ同じ意味で使われることも多いのですが [3]、厳密には包含関係があります。
DAMPsは、細胞が傷ついたりストレスを受けたりして外に放出されるあらゆる内因性の分子パターンを広く指す言葉です。これに対してアラーミンは、その中でも「免疫を積極的に刺激する(免疫刺激性をもつ)」ものに限った、いわば一段しぼり込んだ部分集合です。たとえば、死につつある細胞の表面に現れるホスファチジルセリンという分子は、マクロファージに「食べてください」と知らせるDAMPの一種ですが、同時に炎症を鎮める抗炎症シグナルも発するため、免疫を活性化するアラーミンには分類されません。つまり「すべてのアラーミンはDAMPsだが、すべてのDAMPsがアラーミンとは限らない」という関係です。
アラーミンはDAMPsという大きな分子ファミリーの中で、宿主防御の引き金を引く「免疫刺激性」に特化したサブセットとして位置づけられます。
3. DAMPsの正体:5つの分子カテゴリーと代表分子
🔍 関連記事:サイトカインとは/インフラマソーム/NLRP3/cGAS-STING経路
DAMPsはひとつの分子ではなく、タンパク質・核酸・代謝産物・イオン・糖鎖という5つの幅広いカテゴリーからなる、多様な分子の集まりです [4]。共通するのは、正常なときは細胞内の決まった場所(核・ミトコンドリア・細胞質など)に厳重にしまわれ、DNAの調節やタンパク質の管理といった本来の仕事をしている、という点です。ところが深刻なストレスや細胞死によって外へ漏れ出した瞬間、本来の機能とはまったく別の「アラーム」として働き始めます。代表的なものを、由来する場所ごとに見ていきましょう。
核に由来するDAMPs:HMGB1とヒストン
核から出てくるDAMPsの筆頭がHMGB1です。正常なときは核の中に豊富にあり、DNAに結合してクロマチン(DNAの折りたたみ構造)を安定させたり転写を調節したりしています。しかしネクローシス(事故的な細胞死)などで外に出ると、RAGEやTLR2・TLR4という受容体に結合し、強力に炎症を引き起こす分子へと劇的に性質を変えます。同じく、染色体の土台をつくるヒストンも、外に出るとTLR2・TLR4・TLR9やNLRP3インフラマソームを活性化するDAMPとして働きます。さらに、損傷細胞から血中に流れ出した細胞遊離DNA(cfDNA)やミトコンドリアDNAは、cGASやTLR9などのセンサーに「ウイルスの核酸」と勘違いされ、インターフェロン応答を呼び起こします。
💡 用語解説:HMGB1(エイチエムジービーワン)
High-mobility group box 1の略で、もともと核の中でDNAを安定させる「縁の下の力持ち」のタンパク質です。ところが細胞が壊れて外に放出されると、免疫細胞の受容体に結合して炎症を強く引き起こす危険シグナルに変身します。DAMPsの中で最も研究が進んでいる代表選手で、外傷・敗血症・自己免疫疾患・がんなど、細胞がダメージを受けるあらゆる場面で増えることが知られています。
細胞質・ミトコンドリアに由来するDAMPs
細胞のエネルギー通貨であるATPも、細胞外に高濃度で漏れ出すと、マクロファージのP2X7受容体に結合します。これがきっかけでカリウムイオンが細胞外へ急流出し、NLRP3インフラマソームという炎症装置の組み立てが始まります。またS100タンパク質ファミリー(S100A8/A9=カルプロテクチンなど)は、ふだんはカルシウムの調節などを担いますが、放出されるとRAGEやTLR4のリガンドとなり、好中球やマクロファージを炎症の現場へ強力に呼び寄せます [5]。
特に重要なのがミトコンドリア由来DAMPs(mtDAMPs)です。ミトコンドリアは進化的に細菌を起源とすると考えられており、その構成成分は病原体(PAMPs)とよく似ています。そのため、ひどい組織損傷でミトコンドリアが壊れ、ミトコンドリアDNAやホルミルペプチドが漏れ出すと、免疫系はこれを「細菌感染」と取り違え、感染がないのに本物の重症感染症と同じような激しい炎症を起こしてしまうのです。
このほか、肥満や代謝異常にともなって体内にたまる尿酸結晶やコレステロール結晶は「ライフスタイル関連分子パターン(LAMPs)」と呼ばれ、NLRP3インフラマソームを慢性的に刺激し続けて、痛風や動脈硬化といった長く続く無菌性炎症の駆動力になることが知られています。
4. どう放出されるか:細胞の「死に方」がシグナルを決める
DAMPsが細胞の外へ出るしくみは、膜が壊れて受け身で漏れるものから、生きた細胞が積極的に分泌するものまで、実にさまざまです。そして「どんな死に方をするか」が、そのあとに続く炎症の強さと性質を大きく左右します [6]。
ネクローシス:受け身で爆発的に漏れ出す
外傷や重い虚血によるネクローシスや、プログラムされた壊死であるネクロプトーシスでは、最後に細胞膜が完全に破れます。その結果、HMGB1・ATP・cfDNAなどの中身が濃度差に従って一気に外へ放出されます。このとき漏れ出すHMGB1は炎症を起こす力を完全に保ったままなので、強い炎症が立ち上がります。
アポトーシス:静かな死とその例外
アポトーシスは、発生や細胞の入れ替わりで日常的に起こる、免疫学的に「静かな」死だと考えられてきました。実際、アポトーシスで遅れて放出されるHMGB1は完全に酸化された形になっており、炎症を起こす力を失っています。これが、アポトーシスが周囲に炎症をまき散らさないしくみの核心です。一方で、小胞体ストレスによるアポトーシスでは、細胞が崩れる前にATPが「私を見つけて(Find-me)」シグナルとして放出され、貪食細胞による速やかな片づけを促します。
パイロトーシス:炎症性の細胞死
パイロトーシスは、インフラマソームの活性化に続いてカスパーゼ-1が働き、ガスダーミンDというタンパク質が細胞膜に巨大な孔(あな)を開けることで起こる、非常に炎症性の高い細胞死です。この孔からIL-1βやIL-18が直接放出され、強い炎症が引き起こされます。なお、鉄に依存するフェロトーシスなど、近年さまざまな制御された細胞死が同定され、それぞれ固有のDAMP放出パターンをもつことが分かってきています。
生きた細胞からの能動的放出とNETs
死ななくても、強いストレスを受けた細胞はチャネルや小胞を使ってDAMPsを能動的に分泌します。特に注目されるのが、好中球によるNETs(好中球細胞外トラップ)です。活性化した好中球は、DNAとヒストン、抗菌酵素が混ざり合った網目状の構造物を細胞の外に投げ出します。これは感染防御に役立つ一方で、過剰につくられると周囲の組織を傷つけ、後で述べる自己免疫疾患の大きな原因になります。
5. 危険を感知する受容体(PRRs)とシグナル伝達
🔍 関連記事:パターン認識受容体(PRRs)/TLR(Toll様受容体)/インフラマソーム
外へ放出されたDAMPsは、マクロファージや樹状細胞などの免疫細胞だけでなく、血管や上皮の細胞にも備わっているパターン認識受容体(PRRs)によって感知されます。この結合が、無菌性炎症を推し進める一連のスイッチを入れる引き金になります。
放出されたDAMPsがTLR・RAGE・NLRP3・cGAS-STINGなどの受容体に結合し、NF-κBやIRF3を介してサイトカインを誘導、無菌性炎症が立ち上がる流れ。
主な受容体ネットワークを整理すると、まず細胞表面のTLR2・TLR4がHMGB1・S100・HSPsなどを広く認識し、転写因子NF-κBを介してIL-6やTNF-αといった炎症性サイトカインをつくらせます。エンドソーム内のTLR7・8・9は自己の核酸を感知してI型インターフェロンを誘導します。RAGEはHMGB1やS100の主要な受け皿となり、NLRP3インフラマソームはATPや尿酸結晶を感知してIL-1βを成熟させます。さらにcGAS-STING経路は、細胞質に漏れ出したミトコンドリアDNAを感知し、TLRとは独立して強いI型インターフェロン応答を持続させます [7]。
6. 無菌性炎症と病気:外傷・自己免疫・神経変性
適度なDAMPsによる炎症は、有害なものを取り除き、傷を治すために欠かせない自己防衛のしくみです。しかし、広い範囲で細胞死が起きたり、片づけのしくみが破綻したりして、DAMPsが過剰・持続的にたまると、炎症がさらに細胞ストレスを生み、それがまたDAMPsを増やすという悪循環(自己増幅ループ)が生まれます。これが、急性の重症病態から慢性の病気までを動かす根本の力になります。
外傷・敗血症・虚血再灌流障害
重い外傷や大量出血では大規模な細胞傷害が起き、HMGB1やヒストンなどのDAMPsが血流に爆発的に放出されます。これが全身の受容体を一斉に刺激し、全身性炎症反応症候群(SIRS)から急性肺障害や多臓器不全へと進むことがあります。また、心筋梗塞や脳梗塞の治療で血流を再開させると、酸素が急に戻ることで逆に大量の細胞死とDAMPs放出が起こり、救えるはずだった組織の障害が広がる「虚血再灌流障害」というジレンマも知られています。
自己免疫疾患(SLE・関節リウマチ)の悪循環
全身性エリテマトーデス(SLE)や関節リウマチ(RA)では、DAMPsが単なる炎症物質ではなく、「自己抗原」と「免疫を煽る補助剤」の両方として働き、免疫寛容の破綻を先導します [8]。SLEでは、死細胞の片づけ(エフェロサイトーシス)がうまくいかず、放置された死細胞から核のDNAやクロマチンが露出します。これが自己抗体と複合体をつくり、樹状細胞のTLR9を刺激し続けて、過剰なインターフェロン産生が止まらなくなります。RAでも、寿命が延びた好中球が投げ出すNETsが、シトルリン化タンパク質などの新しい標的を樹状細胞やB細胞に提示し、自己抗体の産生が続く悪循環を生みます [9]。こうした病態は、関節リウマチと遺伝子の理解とも深く結びついています。なお、NLRP3インフラマソームの異常が関わる一群の病気は自己炎症性症候群として遺伝子検査の対象になります。
神経変性疾患とミクログリアの変化
アルツハイマー病・パーキンソン病・ALSなどの進行には、中枢神経に限った慢性的な神経炎症が深く関わっています [10]。異常にたまったアミロイドβやα-シヌクレイン、傷ついた神経から出るATPやHMGB1はDAMPsとして働き、脳の常在マクロファージであるミクログリアのTLR4やNLRP3を刺激します。すると、神経を守る性質だったミクログリアが、神経毒性をもつ炎症性の状態へと変わり、IL-1βやTNF-αを大量に放出して神経変性を加速させてしまうのです。ミトコンドリアの機能不全に関連するミトコンドリア透過性遷移孔(mPTP)の開口も、DAMPs漏出の一因として注目されています。
7. がん治療への応用:免疫原性細胞死(ICD)と治療の最前線
🔍 関連記事:免疫原性細胞死(ICD)/腫瘍微小環境/免疫チェックポイント阻害薬
腫瘍微小環境のなかで、DAMPsは「両刃の剣」です。少量がだらだら放出されるとマクロファージを免疫抑制的な性質へ誘導し、がんの増殖や免疫からの逃避を助けてしまいます。ところが、特定の治療で大量のDAMPsを一気に出させると、免疫が劇的に目覚め、強い抗腫瘍免疫を呼び起こす鍵になります [11]。
放射線療法や一部の抗がん剤などは、がん細胞に免疫原性細胞死(ICD)と呼ばれる特殊な死を引き起こします。ICDの最大の特徴は、決まったタイミングで特定のDAMPs(ICDトライアド)が協調して放出されることです。
💡 用語解説:ICDトライアド(3つの危険シグナル)
免疫原性細胞死で放出される、代表的な3つのDAMPsの組み合わせです。
- ▸カルレティキュリン(CRT) → 細胞表面に出て「私を食べて(Eat-me)」と知らせる
- ▸ATP → 「私を見つけて(Find-me)」と樹状細胞を呼び寄せる
- ▸HMGB1 → 樹状細胞のTLR4に結合し、抗原提示を後押しする
ICDの誘導は、免疫細胞があまり入っていない「冷たい腫瘍」を、攻撃役のT細胞が豊富に入る「熱い腫瘍」へと変える可能性があります。これにより免疫チェックポイント阻害薬の効果を高める戦略として、研究が活発に進んでいます。近年は、特定の細菌感染がネクロトーシスとHMGB1放出を通じてこのプロセスを後押しするという報告も出ています [12]。
バイオマーカーとしてのDAMPs
DAMPsは病気の引き金であると同時に、血中の濃度を測ることで重症度や組織損傷の規模を推し量るバイオマーカーとしての応用も進んでいます。S100タンパク質・HMGB1・cfDNAなどは、損傷の規模とよく相関することが報告されています。たとえば、鈍的胸部外傷にともなう心筋挫傷の早期リスク評価で、新しいDAMPマーカーの活用が検討されています [13]。また、アルツハイマー病の臨床試験では、こうした炎症・変性に関わるバイオマーカーの導入が広がっています [14]。下のグラフは、ある集計でのバイオマーカー導入率の傾向を示したものです。
アルツハイマー病臨床試験におけるバイオマーカー導入率(フェーズ別)
試験フェーズごとの導入率(2025年集計/出典の定義による)
第1相
第2相
第3相
早期に有効性を探る第2相で導入率が最も高い傾向が示されています。数値は集計の定義に依存するため、傾向の理解にとどめてご覧ください。
DAMPsを標的とする治療と「恒常性維持」という考え方
DAMPsの暴走が重症化の主因と分かってきたことで、これを抑える分子標的薬の開発も進んでいます。たとえば、TREM-1という受容体を介したシグナルを遮るペプチド(ナンギボチド)が敗血症性ショックを対象に臨床試験段階にあり [15]、eNAMPTという分子を中和する抗体が急性肺障害を対象に開発されています。ここで共有されつつある大切な考え方が「DAMP恒常性(ホメオスタシス)の維持」です。DAMPsは単なる毒ではなく、傷の修復に幹細胞を呼び寄せ、組織再生を指揮する生理的なシグナルでもあります。だからこそ、すべてのDAMP経路を無差別に止めるのではなく、暴走の引き金になっている特定の経路だけを部分的・選択的に抑え、修復力を残すことが、次世代の治療目標とされています。現時点では多くが研究・開発の段階にある点に留意が必要です。
8. よくある誤解
誤解①「炎症は感染がないと起きない」
感染がなくても、ケガ・梗塞・自己免疫などで細胞が壊れれば、DAMPsを引き金に無菌性炎症が起こります。むしろ多くの慢性疾患では、この感染を伴わない炎症が中心的な役割を果たしています。
誤解②「DAMPsとアラーミンは同じ言葉」
ほぼ同義で使われることもありますが、厳密にはアラーミンはDAMPsの中で免疫を強く刺激する一群を指す部分集合です。抗炎症的に働くDAMPもあり、それはアラーミンには含まれません。
誤解③「DAMPsはただの“悪者”だ」
DAMPsは傷の修復や組織再生を促す生理的なシグナルでもあります。問題になるのは過剰・持続的にたまったときで、だからこそ治療は「全部止める」のではなく「暴走分だけ抑える」方向が探られています。
誤解④「血中HMGB1が高ければ病名がわかる」
HMGB1などは非常に非特異的で、外傷・がん・自己免疫など細胞が傷つくあらゆる場面で上がります。診断には経時的な変化の観察や、ほかの所見との組み合わせが欠かせません。
9. 遺伝医療とのつながりと専門医からのメッセージ
DAMPs自体は免疫学の基礎概念ですが、遺伝医療とも接点があります。NLRP3インフラマソームの過剰な活性化が病態の中心となる自己炎症性症候群は、原因遺伝子の同定が診断や治療方針の手がかりになります。また、DAMPsが関わる神経炎症が背景にあるパーキンソン病・アルツハイマー病・認知症やALSといった神経変性疾患でも、遺伝的背景の理解が、ご本人やご家族の意思決定を支える材料になります。「危険シグナル」の科学は、こうした遺伝性疾患の理解と地続きにあります。
よくある質問(FAQ)
🏥 遺伝子検査・遺伝カウンセリングのご相談
自己炎症性症候群・自己免疫疾患・神経変性疾患など
遺伝が関わる病気の検査・遺伝カウンセリングは
臨床遺伝専門医が在籍するミネルバクリニックにご相談ください。
参考文献
- [1] DAMPening Inflammation by Modulating TLR Signalling. PMC. [PMC2913853]
- [2] Damage-associated molecular patterns (DAMPs) in diseases: implications for therapy. PMC. [PMC12394712]
- [3] Alarmins and Immunity. PMC. [PMC5699517]
- [4] Anti-DAMP therapies for acute inflammation. Frontiers in Immunology. 2025. [Frontiers]
- [5] S100 Proteins As an Important Regulator of Macrophage Inflammation. Frontiers in Immunology. [Frontiers]
- [6] Release mechanisms of major DAMPs. PMC. [PMC8016797]
- [7] Link between sterile inflammation and cardiovascular diseases: Focus on cGAS-STING pathway. PMC. [PMC9441773]
- [8] Damage-associated molecular patterns and their role as initiators of inflammatory and auto-immune signals in systemic lupus erythematosus. PubMed. [PubMed 28961019]
- [9] Neutrophils in the Pathogenesis of Rheumatoid Arthritis and Systemic Lupus Erythematosus. Frontiers in Immunology. 2021. [Frontiers]
- [10] Roles of Microglia in Neurodegenerative Diseases. PMC. [PMC10867232]
- [11] Immunogenic cell death and DAMPs in cancer therapy. PubMed. [PubMed 23151605]
- [12] Microbes trigger cell death to boost cancer immunotherapy effectiveness. News-Medical. 2026. [News-Medical]
- [13] Novel DAMP markers advance myocardial contusion detection. News-Medical. 2026. [News-Medical]
- [14] Biomarkers in Alzheimer’s Disease Clinical Trials: 2025. PubMed. [PubMed 41716297]
- [15] Nangibotide (TREM-1 antagonist). New Drug Approvals. [New Drug Approvals]



