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CCCH型(C3H型)ジンクフィンガーは、3つのシステインと1つのヒスチジンが1個の亜鉛イオンをつかんで小さな「指」の形をつくり、その指で一本鎖のRNAに直接くっついて遺伝子のはたらきを調整するタンパク質のドメイン(部品)です。免疫の暴走を鎮めたり、思春期のスイッチを押さえたり、がん抑制タンパク質の量を決めたりと、私たちのからだのさまざまな場面で「遺伝子の音量つまみ」として働いています。このページでは、その分子のしくみから臨床遺伝との接点までを、遺伝専門医がやさしく解説します。
Q. CCCH型ジンクフィンガーとは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. 亜鉛イオンを「3つのシステイン+1つのヒスチジン」でつかんで安定な指状の構造をつくり、その指で一本鎖RNAに配列を選んで結合するタンパク質ドメインです。結合したRNA(多くはメッセンジャーRNA)の分解を早めたり、逆に安定化させたりして、タンパク質がどれだけ作られるかを転写後の段階で細かく調整します。免疫の鎮静、抗ウイルス、思春期の開始時期の制御など、ヒトの生命現象に幅広く関わります。
- ➤正体 → 3Cys+1Hisが亜鉛を四面体配位してできる小型ドメイン。C2H2型など他の亜鉛フィンガーとは別グループ
- ➤はたらき → 一本鎖RNAに結合し、mRNAの分解・安定化・翻訳を制御する「転写後制御」の担い手
- ➤代表選手 → TTP(ZFP36)・Regnase-1・Roquin・ZAP(抗ウイルス)・Makorin(MKRN1/MKRN3)
- ➤ヒトの病気との接点 → MKRN3の機能喪失は「中枢性思春期早発症」の代表的な遺伝的原因
- ➤診断との関係 → 変異の同定と親由来性(刷り込み)の評価に、遺伝子診断と遺伝カウンセリングが重要
1. CCCH型ジンクフィンガーとは:遺伝子の「音量つまみ」を担う分子
私たちのからだの設計図はDNAに書かれていますが、その情報がタンパク質になるまでには「DNA→メッセンジャーRNA(mRNA)→タンパク質」という流れがあります。ジンクフィンガータンパク質は、この流れのどこかに関わって遺伝子のはたらきを調整する巨大なタンパク質ファミリーです。なかでもCCCH型(C3H型、ZC3Hなどとも表記)は、DNAではなく主に一本鎖のRNAに結合するという特徴を持ち、できあがったmRNAの寿命や翻訳の効率を左右する「転写後制御(できたRNAをどう扱うかの制御)」の主役として働きます。数のうえでは全ジンクフィンガーのごく一部にすぎない少数派ですが、その少数派が免疫や発生の要所を握っている点が、この分子の面白さです。
💡 用語解説:ジンクフィンガー(亜鉛の指)とは
ジンクフィンガーとは、亜鉛イオン(Zn2+)を「かすがい」のように使ってタンパク質の一部を小さくコンパクトに折りたたみ、指のように突き出した構造のことです。亜鉛をつかむアミノ酸の組み合わせで種類が分かれ、DNA結合で有名なC2H2型(システイン2+ヒスチジン2)や、ZZ型などがあります。CCCH型はシステイン3個+ヒスチジン1個で亜鉛をつかむタイプで、DNAではなくRNAに結合する点が大きな個性です。
CCCH型が「音量つまみ」と呼べるのは、遺伝子のスイッチを完全にオン・オフするのではなく、できあがったmRNAをどれだけ長持ちさせるかを調整して、タンパク質の量をなめらかに増減させるからです。たとえば炎症のときには、炎症性サイトカインのmRNAをすばやく壊して炎症の暴走を止めます。ウイルス感染のときには、ウイルス由来のRNAを狙い撃ちして分解します。発生や思春期の場面では、特定の遺伝子の発現を時間軸に沿って抑え込む「タイマー」としても働きます。ひとつの共通したドメインが、これほど多彩な生命現象に関わっているのが、CCCH型ジンクフィンガーの本質的な魅力です。
2. 亜鉛配位とC3Hモチーフ:指の形をつくる分子的なしくみ
CCCHドメインのいちばん小さな単位は、3つのシステイン(C)と1つのヒスチジン(H)が、たった1個の亜鉛イオンを四面体(三角錐に近い立体)の形でしっかりとつかむことで成り立っています。亜鉛は形を保つための「留め具」で、この配位がないと指はほどけてしまい、RNAに結合する力も失われます。アミノ酸の並びとしては、当初はC-X6〜14-C-X4〜5-C-X3〜4-H(Xは任意のアミノ酸)と定義されていましたが、植物ゲノムの網羅的な解析が進んだ結果、より幅の広いC-X4〜15-C-X4〜6-C-X3〜4-Hへと拡張されました[1]。なかでも指の中央に来る C-X7〜8-C-X5-C-X3-H という並びが最も普遍的で、進化のうえで他のバリエーションの元になった祖先型と考えられています。
3つのシステイン(C)と1つのヒスチジン(H)が中心の亜鉛イオンをつかみ、指状の構造をつくる。その指が一本鎖RNAのAUリッチな配列に、水素結合と芳香族アミノ酸のはさみ込み(スタッキング)で結合する。
興味深いのは、この「亜鉛でつかむ」しくみが、実は別の金属に置き換わってしまう弱点を持つことです。炎症が起きた場所では銅イオンの濃度が高まりますが、免疫を鎮める役割を持つTTP(トリステトラプロリン)という代表的なCCCHタンパク質の2つの指に対し、一価の銅イオンが3対1の割合で入り込み、本来の折りたたみを壊してしまうことが報告されています[2]。銅が入るとTTPはRNAに結合できなくなり、炎症を鎮める力を失います。金属の恒常性がくずれると、指の機能まで巻き添えで壊れてしまう——CCCHドメインの構造と機能が金属配位に強く依存していることを示す、象徴的な例です。
3. RNAをどう認識するか:タンデム指とアロステリーの妙
CCCH型が標的RNAをどう見分けているのかは、TTPの仲間であるTIS11dというタンパク質の2つの指(タンデムジンクフィンガー)と、AUリッチ配列(5′-UUAUUUAUU-3′)が結合した立体構造の解析によって、はじめて原子レベルで明らかになりました[3]。2つの指は18アミノ酸のひもでつながれ、それぞれが隣り合う「UAUU」の部分に結合します。結合を支えているのは、タンパク質の骨格とRNAの塩基のあいだの水素結合と、指の中に保存された芳香族アミノ酸が塩基のあいだにはさみ込む「スタッキング」です。この2つの力で、指はRNAの特定の配列をしっかりとくわえ込みます。
💡 用語解説:AUリッチ配列(ARE)とは
AUリッチ配列(AU-rich element, ARE)とは、mRNAの末尾側にある3′非翻訳領域によく見られる、アデニン(A)とウラシル(U)に富んだ短い配列です。炎症性サイトカインなど「短時間だけ作って早く止めたい」タンパク質のmRNAに多く、CCCH型タンパク質がここに結合すると、そのmRNAが分解の合図を受け取ります。いわば「早く壊してください」という付箋のような目印です。
CCCH型の指は、結合していないときは二次構造が乏しく、ゆらゆらと柔らかい状態にあります。この構造の柔らかさこそが、複雑なRNAを動的につかまえる鍵になります。線虫の発生で細胞の運命を決めるPOS-1というCCCHタンパク質では、2つの指が複数の立体構造のあいだを行き来し、指の中の結合ポケットどうしが連動して動くことで、TTPよりも幅広いRNA配列を柔軟に受け入れられることが示されています[4]。片方の指へのRNA結合が、離れたもう片方の指の折りたたみを助ける——このような「離れた場所どうしが影響し合う」性質をアロステリック効果と呼び、CCCH型が標的を選び分ける精妙さを支えています。POS-1は発生の過程で特定の細胞に局在し、母親由来のmRNAの翻訳を制御することで、正しい体づくりに寄与します。
4. 自然免疫を制御するCCCHタンパク質:炎症のブレーキ役
🔍 関連用語:サイトカイン/自己免疫疾患/液–液相分離(LLPS)
ヒトの自然免疫では、感染に対してサイトカインという炎症の合図が一気に放出されますが、これが止まらないと今度はからだ自身が傷ついてしまいます。そこで、炎症の「アクセル」を踏んだあとにすばやく「ブレーキ」をかける役割を、複数のCCCH型タンパク質が分担しています。この転写後のブレーキ機構は、免疫の暴走を防ぐ安全装置として非常に重要です。
TTP(ZFP36)ファミリー:mRNAの尾を切り、蓋を外す
TTP(遺伝子名ZFP36)とその仲間ZFP36L1・ZFP36L2は、TNF-αなど炎症性サイトカインのmRNAのAUリッチ配列に結合し、そのmRNAを分解へ導きます。しくみは二段構えです。まずTTPはC末端の保存された配列を通じて、mRNAの尾(ポリAテール)を刈り取る巨大な酵素複合体CCR4-NOTの足場であるCNOT1に直接結合し、複合体を標的mRNAへ引き寄せます[5]。さらにTTPは、5′末端の「蓋(キャップ)」を外すデキャッピング酵素DCP2とも、たがいの柔らかい領域(天然変性領域)を介してつながることが分かってきました[6]。この結合はTTPを液–液相分離でできる小さな液滴(Pボディに相当する分子の集まり)へ引き込み、尾の除去と蓋外しを効率よく連動させます。
💡 用語解説:脱アデニル化と液–液相分離
脱アデニル化とは、mRNAの末尾にある「ポリAテール」という尾(アデニンの連なり)を短く刈り取ることです。この尾はmRNAの寿命を守る役割があり、短くなると分解が始まります。TTPは尾を切る酵素をmRNAに呼び寄せる「案内役」です。
液–液相分離(LLPS)とは、水の中で油滴が分かれるように、特定のタンパク質やRNAが集まって「液滴」をつくる現象です。分解に必要な酵素をこの液滴に集めることで、反応を効率化できます。
Regnase-1(ZC3H12A)とRoquin(RC3H1):時間と場所を分けた二段構え
炎症の収束には、CCCHドメインに加えてRNAを切る「はさみ」の機能を持つRegnase-1(ZC3H12A/MCPIP1)と、RNAのステムループ(ヘアピン構造)を見分けるRoquin(RC3H1)の二者が相補的に働きます。Regnase-1はPINと呼ばれるRNase(RNAを切る酵素)ドメインを持ち、IL-6などのmRNAを直接切断します[7]。特徴的なのは、Regnase-1がまさにリボソームが翻訳している最中のmRNAを狙い、その切断にはナンセンス変異依存分解(NMD)の因子であるUPF1というヘリカーゼの働きを必要とする点です[8]。一方Roquinは、Pボディやストレス顆粒という「翻訳が止まっているmRNAのたまり場」で、ステムループ(CDEと呼ばれる構造)を認識し、CCR4-NOTを介して穏やかに分解へ導きます[10]。両者はよく似た炎症性mRNAを、時間(炎症の早期と後期)と場所(リボソーム上とたまり場)を分けて制御しているのです。
Regnase-1がいかに重要かは、これを働かなくしたマウスが、重い貧血・脾腫・リンパ節腫脹をともなう全身性の自己免疫炎症で早期に命を落とすことからも分かります[7]。Regnase-1自身は、免疫受容体が刺激されるとキナーゼによってリン酸化され、ユビキチンを介した分解や酵素活性の抑制を受けて、炎症の局面ごとにきめ細かく調節されます。さらにRegnase-1は、鉄の取り込みに関わるトランスフェリン受容体1(TfR1)やPHD3のmRNAも分解して、鉄代謝の恒常性にも関わっています。実際、Regnase-1を欠いたマウスは十二指腸での鉄の取り込み障害から鉄欠乏性貧血を来すことが報告されており[9]、免疫だけでなく鉄の管理にもこの分子が関与していることが分かります。
ZAP(ZC3HAV1):ウイルスの「異物RNA」を見抜く抗ウイルス因子
インターフェロン刺激で強く誘導されるZAP(ZC3HAV1/PARP13)は、外から侵入したウイルスのRNAを見分けて壊す抗ウイルス因子です。ヒトのmRNAでは「CpG」という並び(シトシンのすぐ後にグアニンが来る配列)が少なく抑えられているのに対し、多くのウイルスRNAではCpGが相対的に多く残っています。ZAPはこのCpGの多さを「異物の目印」として利用し、2番目の指(ZnF2)にあるポケットでCpGを直接つかんで、ウイルスRNAだけを標的にします[11]。最適な標的になるには、CpGがおよそ12〜30ヌクレオチド間隔で複数並んでいることが重要とされます(報告により幅があります)。ZAPが結合したRNAには分解の酵素群が呼び寄せられ、ウイルスRNAは速やかに除去されます。
ZAPには長短2つのアイソフォーム(同じ遺伝子から作られる型違い)があります。短い型(ZAP-S)は3′リン酸を持つRNAで誘導され、RNAヘリカーゼRIG-Iの集合を促してインターフェロン応答を後押しする一方[12]、最終的にはインターフェロン自身のmRNAを分解して応答を鎮める「負のフィードバック」も担います[13]。長い型(ZAP-L)は脂質修飾を受けて細胞内の膜系に局在し、侵入初期のウイルスへの物理的な最前線を築きます。アクセルとブレーキ、そして配置換えを1つの遺伝子でまかなう——ここにもCCCH型らしい多機能性が表れています。ZAPはNF-κBシグナルやcGAS-STING経路とも関わり、抗ウイルス防御のハブとして働いています。
5. ユビキチン系・エピゲノムとの接続:Makorinと思春期のタイマー
🔍 関連用語:ユビキチン・プロテアソーム系/DNAメチル化/MBD/TRD
CCCHドメインは、しばしばタンパク質にゴミ処理の目印(ユビキチン)を付けるRINGフィンガーという別のドメインと同じ分子の中で融合し、RNA制御とタンパク質分解を橋渡しするハイブリッド型として進化しました。その代表がMakorin(MKRN)ファミリーです。ここでは、CCCH型が単なるRNA結合を超えて、ユビキチン・プロテアソーム系やエピゲノム制御にまで手を広げていることが分かります。
💡 用語解説:ユビキチンとE3リガーゼ
ユビキチンとは、不要になったタンパク質に付けられる小さな「廃棄タグ」です。このタグが数珠つなぎに付くと、プロテアソームという分解装置がそのタンパク質を壊します。どのタンパク質にタグを付けるかを決める「担当者」がE3ユビキチンリガーゼで、MakorinはRINGドメインを使ってこの担当者として働きます。タグの付け方によっては、分解ではなく「機能の切り替え」の合図になることもあります。
MKRN1:p53とp21を操る、がん抑制の調律師
MKRN1は、通常の細胞ではがん抑制タンパク質p53と細胞周期の抑制因子p21の両方にユビキチンを付けて分解し、不要な細胞死を抑えています。ところがDNAに深刻な傷が入るなどの強いストレス下では、一転してp21を優先的に分解し、細胞をアポトーシス(プログラムされた細胞死)へと導く「機能スイッチ」として働きます[14]。平常時は細胞を生かし、危機のときは傷ついた細胞を排除する——CCCH型とRINGを併せ持つMKRN1は、DNA損傷応答とがん抑制の微妙なバランスを調律しています。
MKRN3:思春期の開始を決める「ゲノムのタイマー」
CCCH型がヒトの臨床に最も直接触れるのが、MKRN3です。MKRN3は思春期を始める指令ホルモンGnRH(ゴナドトロピン放出ホルモン)の産生を抑え込む「ブレーキ」として働き、思春期の開始時期を決めるタイマーの役割を果たします。そのしくみは二重です。核の中では、メチル化DNA結合タンパク質MBD3にユビキチンを付けることで、MBD3がGNRH1遺伝子のプロモーターに結合してDNA脱メチル化酵素TET2を呼び込むのを妨げ、結果としてGNRH1をメチル化で抑えた状態に保ちます[15]。細胞質では、ポリA結合タンパク質(PABPC1/3/4)にユビキチンを付けてGNRH1のmRNAの尾を短くし、翻訳が始まりにくい状態にします[16]。転写と翻訳の両面から、思春期のスイッチを二重にロックしているのです。
💡 用語解説:中枢性思春期早発症(CPP)とは
中枢性思春期早発症とは、脳からのGnRH分泌が通常より早く始まってしまい、年齢に不相応に早く二次性徴(乳房発育や陰毛など)が現れる状態です。MKRN3の「ブレーキ」が変異で効かなくなると、思春期のロックが早く外れてしまうため、MKRN3の機能喪失変異は家族性の中枢性思春期早発症の代表的な遺伝的原因として知られています。原因遺伝子を調べることは、診断や家族の見通しに役立ちます。
MKRN3の変異による中枢性思春期早発症には、もう一つ重要な遺伝学的な特徴があります。MKRN3は「父親から受け継いだ遺伝子だけが働く(母親由来はもともと沈黙している)」刷り込み(インプリンティング)を受ける遺伝子です。そのため、同じ変異でも父親から受け継いだ場合に発症し、母親から受け継いだ場合には症状が出にくいという、親由来性に依存した特徴的な遺伝形式をとります。この点は、家系内の再発リスクを考えるうえで欠かせない視点です。
6. 植物での多様性と進化:数を増やして環境に立ち向かう
CCCH型は動物だけのものではありません。むしろ植物では、乾燥・高塩・低温・病原体といった逃げられないストレスに立ち向かうため、この遺伝子ファミリーがゲノム全体で大きく数を増やしました。網羅的な解析では、シロイヌナズナで68個、イネで67個のCCCH型遺伝子が同定され[1]、ポプラでは91個にまで拡張していることが報告されています[17]。トウモロコシ68個、ヒヨコマメ58個など、多くの作物で大規模な遺伝子重複による拡張が確認されており、これは植物が環境適応のために「同じ道具をたくさん用意した」進化の跡だと考えられます[18]。
🌾 環境ストレス耐性
植物に特有の「RR-TZF」構造を持つタンパク質は、糖・アブシシン酸・ジャスモン酸などの合図に応じて核と細胞質を往復し、成長と防御の遺伝子発現バランスを組み替えます[20]。
🌸 発生・器官形成
シロイヌナズナのHUA1は、花の器官の同一性を決める遺伝子AGAMOUSの前駆体mRNAの加工に関わり、正しい花づくりに寄与します[19]。
動物では免疫の恒常性のために分解酵素やユビキチンリガーゼと融合し、細胞内の区画(Pボディやストレス顆粒)と連動して時空間的に精密な制御を発達させました。一方植物では、遺伝子ファミリーの大規模な重複とRR-TZFのような独自の結合構造を獲得し、ホルモンに応じて核内の転写制御と細胞質のRNA分解を切り替える柔軟なネットワークを築きました。構造の柔らかさと金属置換に伴う機能の可塑性という共通の核を保ちながら、動物と植物がそれぞれの生存戦略に合わせてこのドメインを作り替えてきたことが分かります。
7. 用語と臨床のつながり:診断・遺伝形式・遺伝カウンセリング
🔍 関連用語:インプリンティング疾患/臨床遺伝専門医/遺伝カウンセリングとは
CCCH型ジンクフィンガーは、多くが基礎研究で解き明かされてきた分子ですが、ヒトの臨床遺伝と確かに接点を持ちます。その最も分かりやすい入り口が、前述のMKRN3の機能喪失変異による中枢性思春期早発症です。思春期が早く始まるお子さんを診るとき、家族性のパターンがあれば原因遺伝子を調べることが診断の助けになり、家系内での見通しを立てる材料になります。MKRN3は父由来発現の刷り込み遺伝子であるため、インプリンティングという遺伝形式の理解が、再発リスクの説明に不可欠になります。同じ変異でも、父親から伝わったのか母親から伝わったのかで発症のしやすさが変わるためです。
💡 用語解説:刷り込み(インプリンティング)と新生突然変異
刷り込み(インプリンティング)とは、同じ遺伝子でも「父由来か母由来か」で働き方が変わる現象です。父由来だけが働く遺伝子では、母から受け継いだ変異は表に出にくく、親由来性が病気の出方を左右します。
新生突然変異(de novo変異)とは、両親には無く、お子さんで初めて生じた変異のことです。家族歴がなくても病気が起こり得る理由の一つで、遺伝カウンセリングではこうした可能性も含めて説明します。
ミネルバクリニックでは、成人を診療する臨床遺伝専門医が、こうした遺伝性疾患の原因や遺伝形式について、文献と専門的知見にもとづいてご家族の遺伝カウンセリングを行っています。お子さん本人の診療や治療はそれぞれの専門診療科が担いますが、「なぜこの病気が起きたのか」「次のお子さんや家族にどう関わるのか」という遺伝の視点からの情報提供は、意思決定を支える大切な柱です。なお、本ページで扱ったCCCH型の分子機構の多くは基礎研究の知見であり、直接の検査項目に結びつくものばかりではありません。気になる症状や家族歴がある場合は、まず遺伝の専門家にご相談いただくことをおすすめします。出生前の検査全般についてはNIPTのご案内もご参照ください。
8. よくある誤解
誤解①「ジンクフィンガー=DNAに結合する」
よく知られるC2H2型はDNA結合が有名ですが、CCCH型は主に一本鎖RNAに結合します。同じ「亜鉛の指」でも、つかむアミノ酸の違いによって結合相手も役割も大きく異なります。
誤解②「mRNAを壊すだけの分子」
分解の促進は代表的な働きですが、CCCH型は状況によってはmRNAを安定化・保護したり、翻訳を促したりすることもあります。「壊す」と「守る」を使い分ける、双方向の調整役です。
誤解③「基礎研究の話で人には関係ない」
CCCH型のMKRN3は、中枢性思春期早発症という実際のヒトの病気の主要な原因遺伝子です。免疫・がん抑制・鉄代謝など、臨床に直結するテーマにも深く関わっています。
誤解④「亜鉛さえあれば必ず正常に働く」
炎症などで銅などの別の金属が入り込むと、指の形が壊れて機能を失うことがあります。金属の恒常性が乱れると、CCCH型の働きも巻き添えで低下し得ます。
9. 臨床遺伝専門医からのメッセージ
よくある質問(FAQ)
🏥 遺伝性疾患・遺伝子診断のご相談
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参考文献
- [1] Genome-wide analysis of CCCH zinc finger family in Arabidopsis and rice. BMC Genomics. [BMC Genomics]
- [2] Cu(I) Disrupts the Structure and Function of the Nonclassical Zinc Finger Protein Tristetraprolin (TTP). Inorganic Chemistry. [ACS Inorg Chem]
- [3] Recognition of the mRNA AU-rich element by the zinc finger domain of TIS11d. Nature Structural & Molecular Biology. [Nat Struct Mol Biol]
- [4] Structure and Dynamics of the CCCH-Type Tandem Zinc Finger Domain of POS-1 and Implications for RNA Binding Specificity. Biochemistry. [Biochemistry]
- [5] Structural basis for the recruitment of the human CCR4-NOT deadenylase complex by tristetraprolin. Nature Structural & Molecular Biology. [Nat Struct Mol Biol]
- [6] Intrinsically disordered regions of tristetraprolin and DCP2 directly interact to mediate decay of ARE-mRNA. Nucleic Acids Research. [Nucleic Acids Res]
- [7] mRNA degradation by the endoribonuclease Regnase-1/ZC3H12a/MCPIP-1. Biochim Biophys Acta. [PubMed 23500036]
- [8] Regnase-1 and Roquin Regulate a Common Element in Inflammatory mRNAs by Spatiotemporally Distinct Mechanisms. Cell. [Cell]
- [9] Regnase-1 Maintains Iron Homeostasis via the Degradation of Transferrin Receptor 1 and Prolyl-Hydroxylase-Domain-Containing Protein 3 mRNAs. Cell Reports. [Cell Reports]
- [10] Roquin Promotes Constitutive mRNA Decay via a Conserved Class of Stem-Loop Recognition Motifs. Cell. [Cell]
- [11] Structure of the zinc-finger antiviral protein in complex with RNA reveals a mechanism for selective targeting of CG-rich viral sequences. PNAS. [PNAS]
- [12] ZAPS is a potent stimulator of signaling mediated by the RNA helicase RIG-I during antiviral responses. Nature Immunology. [Nat Immunol]
- [13] RNA-binding protein isoforms ZAP-S and ZAP-L have distinct antiviral and immune resolution functions. Nature Immunology. [Nat Immunol]
- [14] Differential regulation of p53 and p21 by MKRN1 E3 ligase controls cell cycle arrest and apoptosis. The EMBO Journal. [EMBO J]
- [15] MKRN3 regulates the epigenetic switch of mammalian puberty via ubiquitination of MBD3. National Science Review. [Natl Sci Rev]
- [16] MKRN3-mediated ubiquitination of Poly(A)-binding proteins modulates the stability and translation of GNRH1 mRNA in mammalian puberty. Nucleic Acids Research. [PMC8053111]
- [17] Comprehensive analysis of CCCH zinc finger family in poplar (Populus trichocarpa). BMC Genomics. [BMC Genomics]
- [18] The Roles of CCCH Zinc-Finger Proteins in Plant Abiotic Stress Tolerance. Int J Mol Sci. [PMC8347928]
- [19] Two RNA Binding Proteins, HEN4 and HUA1, Act in the Processing of AGAMOUS Pre-mRNA in Arabidopsis thaliana. Developmental Cell. [Dev Cell]
- [20] The Arabidopsis thaliana tandem zinc finger 1 (AtTZF1) protein in RNA binding and decay. The Plant Journal. [Plant J]



