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私たちの細胞の核のなかでは、約2メートルにもおよぶDNAが、直径わずか10マイクロメートルほどの核にきちんと折りたたまれています。このとき、DNAはただ無秩序に詰め込まれているのではなく、「よく働く領域(Aコンパートメント)」と「休んでいる領域(Bコンパートメント)」という2つの区画に、自発的に空間的に分かれて配置されています。この記事では、ゲノムの三次元構造の基本単位である「A/Bコンパートメント」について、その発見の歴史から最新の研究、そして遺伝性疾患やがんとの関わりまでを、臨床遺伝専門医がやさしく解説します。
Q. A/Bコンパートメントとは何ですか?まず結論だけ知りたいです
A. A/Bコンパートメントとは、細胞核のなかでゲノムDNAが「活発に働くAコンパートメント」と「休んでいるBコンパートメント」という2つの区画に、空間的に分かれて配置される仕組みのことです。2009年に開発された「Hi-C法」というゲノムの立体構造を読み解く技術で発見されました。Aは遺伝子が活発に読み取られる領域、Bは核膜の内側に押しやられて眠っている領域で、この配置は細胞の分化やがん化に伴って大きく組み替えられます。
- ➤2つの区画の正体 → Aは活性・遺伝子が多い、Bは不活性・核膜近くで凝縮
- ➤見つけ方 → Hi-C法で染色体全体の接触地図を描くと「市松模様」が現れる
- ➤できるしくみ → 「相分離」という物理現象と「ループ押し出し」がせめぎ合う
- ➤臨床とのつながり → 構造変異による区画の破綻が遺伝性疾患・がんに関与
- ➤TADとの違い → コンパートメントはより大きなスケール(メガベース単位)の区画
1. A/Bコンパートメントとは:ゲノムを2つに分ける核内の「住み分け」
私たちの体をつくる細胞の一つひとつには、およそ30億塩基対、長さにして約2メートルにもなるDNAが収められています。これが直径わずか10マイクロメートル(1ミリメートルの100分の1)ほどの小さな核のなかに折りたたまれているのですから、その収納技術は驚異的です。しかし本当に重要なのは、DNAがただコンパクトに詰め込まれているのではなく、機能に応じて「秩序ある配置」で収納されているという点です。その最も大きなレベルの秩序が、この記事で扱う「A/Bコンパートメント」です。
A/Bコンパートメントとは、核のなかでゲノムが「Aコンパートメント」と「Bコンパートメント」という2つの空間的な区画に自発的に分かれる現象のことです。同じAどうし、同じBどうしは核のなかで優先的に近くに集まろうとし、AとBは互いに離れて混じり合いません。イメージとしては、パーティー会場で「よく喋る賑やかなグループ(A)」と「静かに休んでいるグループ(B)」が、自然と会場の別々の場所に固まっていくような住み分けです。このA/Bの区画は、数百万塩基対(メガベース、Mb)という非常に大きなスケールでゲノムを二分しています。
💡 用語解説:塩基対(えんきつい)とメガベース(Mb)
DNAは、A・T・G・Cという4種類の「塩基」が2本の鎖で対になって、はしごのような形で並んでいます。この対のひとつを「1塩基対」と呼び、ゲノムの長さを測る基本単位です。1メガベース(Mb)は100万塩基対を意味します。A/Bコンパートメントは数Mb(数百万塩基対)という広い範囲でゲノムを区切っており、後で登場する「TAD」(数十万〜100万塩基対程度)よりもさらに大きなスケールの構造です。
このA/Bという分け方は、単なる物理的な折りたたみの偶然ではありません。実は、19世紀末から光学顕微鏡で観察されてきた古典的な概念と、みごとに一致します。核を染色すると、濃く染まって凝縮している「ヘテロクロマチン」と、薄くほどけて広がっている「ユークロマチン」の2種類が見えます。このヘテロクロマチンとユークロマチンという見た目の違いが、現代の技術で測定されるBコンパートメント(凝縮・不活性)とAコンパートメント(弛緩・活性)にそれぞれ対応しているのです。つまりA/Bコンパートメントは、100年前の顕微鏡観察を、ゲノム配列と結びつけて定量的にとらえ直したものといえます。
2. 発見の歴史とHi-C法:市松模様が語るゲノムの分画
🔍 関連記事:Hi-C法とは/3Dゲノム(総論)/ヘテロクロマチン/ユークロマチン
この空間的な区画の起源は、1928年にさかのぼります。植物学者エミール・ハイツが、苔類の細胞核を顕微鏡で観察し、細胞分裂が終わったあとも凝縮したまま濃く染まる領域を「ヘテロクロマチン」、ほどけて拡散する領域を「ユークロマチン」と名づけました。しかし、この区別は長い間「見た目の分類」にとどまり、ゲノムのどの配列がどちらに属するのかまでは分かりませんでした。
状況が一変したのは、2009年にリーバーマン=エイデンらが開発した「Hi-C法」によってです。この技術は、核のなかでDNAのどの部分とどの部分が物理的に接触しているかを、ゲノム全体にわたって網羅的に測定します。得られた接触データを地図(コンタクトマップ)として描くと、そこに鮮やかな「市松模様(チェッカーボードパターン)」が浮かび上がりました。これは、ゲノムがメガベース規模で2種類の区画に分かれ、同じ区画どうしが優先的に接触していることを示す、まさにA/Bコンパートメントの発見でした。
💡 用語解説:Hi-C法(ハイシーほう)
Hi-C法とは、核のなかで近くにあるDNAどうしを化学的に「のり付け」してからつなぎ合わせ、どの領域とどの領域が接触していたかを大量に読み取る技術です。近くにある配列ほど頻繁に接触するため、その接触頻度を集計すると、ゲノムの立体的な折りたたみ方を「地図」として復元できます。この地図を色の濃淡で表すと、接触の多い区画どうしが格子状に浮かび上がり、市松模様として見えるのです。Hi-C法は、目に見えない核のなかの三次元構造を、配列情報として定量化する画期的な手法でした。
このコンパートメントの区画は、驚くほど頑丈な性質を持ちます。染色体を人工的に細かく断片化して、DNA鎖のつながりという物理的な拘束を取り除いても、1万〜2万5千塩基対以上の断片が保たれていれば、A/Bの相分離状態は自発的に維持されることが「液体クロマチンHi-C」という手法で示されました。これは、A/Bコンパートメントが単にDNA鎖が連続しているから生じる受け身のパッキングではなく、同じ性質を持つ領域どうしが能動的に引き合う力によって、積極的につくり出されていることを意味します。
3. AとBの性質の違い:活性と不活性の見事な分極
AコンパートメントとBコンパートメントは、単に場所が違うだけではありません。遺伝子の密度、活動状態、核のなかでの位置、DNAが複製されるタイミングなど、さまざまな性質が見事なまでに正反対に分かれています。この「分極」こそが、A/Bコンパートメントの本質です。
Aコンパートメントは、DNAがほどけて開いた「オープンクロマチン」の状態で、遺伝子がぎっしり詰まっており、活発に読み取り(転写)が行われています。核の内部、とくに転写を助ける因子が集まる「核スペックル」という構造の近くに位置します。一方Bコンパートメントは、DNAがぎゅっと凝縮した「クローズドクロマチン」で、遺伝子が少なく、活動が抑えられています。核の辺縁部、すなわち核ラミナ(核膜の内側の裏打ち構造)や核小体の周辺に押しやられています。
💡 用語解説:エピジェネティック標識(ヒストン修飾・DNAメチル化)
DNAそのものの配列は変えずに、遺伝子の「働きやすさ」を調節する目印のことです。DNAを巻きつける糸巻きのようなタンパク質(ヒストン)に化学的な標識をつけるヒストン修飾や、DNAに直接メチル基をつけるDNAメチル化があります。「H3K27ac」のような活性の目印はAコンパートメントに、「H3K9me3」のような抑制の目印はBコンパートメントに集まっており、この目印の分布がA/Bの区画分けと連動しています。
とくに興味深いのは、DNAが複製されるタイミングとの関係です。細胞が分裂する前にDNAをコピーするS期において、Aコンパートメントは早い時間帯に、Bコンパートメントは遅い時間帯に複製されます。この複製タイミングは、単に転写が活発だから早く複製されるという受け身の結果ではなく、細胞分裂を越えて安定して受け継がれる、独立したエピジェネティックな性質だと考えられています。実際、複製の区切りの境界は、A/Bコンパートメントの境界と正確に一致することが分かっています。
4. サブコンパートメント:もっと細かい階層構造
🔍 関連記事:サブコンパートメント/ヌクレオソーム
A/Bという2つの区画は、さらに細かく分けることができます。2014年、ラオらは高解像度のHi-Cデータを解析し、ゲノムを「A1・A2・B1・B2・B3」という5つの主要なサブコンパートメント(さらに特殊なB4を加えて6種類)に細分化することに成功しました。単純な白か黒かの二分法ではなく、その中間段階を含めたより精密な地図が描かれたのです。
これらのサブコンパートメントは、それぞれ核のなかで特定の構造物と結びついています。たとえばA1は最も活性が高く、核スペックルに直接寄り添う領域で、常に使われる「ハウスキーピング遺伝子」が多く含まれます。B2は核小体の外縁に、B3は核ラミナの内面に強く結合します。B1はポリコームというタンパク質複合体による、状況に応じて切り替わる抑制を受ける領域です。B4は19番染色体に特有の、ごく特殊な抑制領域です。こうして、単なるAとBの奥に、核内の微細な位置と対応した階層構造が広がっていることが明らかになりました。
解析技術の進歩はさらに続き、近年では超高深度のHi-Cデータと専用のアルゴリズムを組み合わせることで、ゲノムを500塩基対という極めて細かい解像度でマッピングできるようになりました。すると、これまで不活性なBコンパートメントに完全に埋もれていると思われていた領域のなかにも、個々の活性なプロモーター(遺伝子の読み取り開始点)だけが「極小のAコンパートメント」として孤立し、核スペックルの方向へ突き出している様子が見えてきました。A/Bの区画は、大きなスケールでは明快に二分されつつ、細かく見るとモザイクのような複雑さを持っているのです。
5. どうやってできる?相分離とループ押し出しのせめぎ合い
🔍 関連記事:液–液相分離(LLPS)/相分離(PPPS)/コヒーシン/CTCF
では、A/Bコンパートメントはどのようにして自発的につくられるのでしょうか。その主役として広く支持されているのが「相分離(そうぶんり)」という物理現象です。相分離とは、水と油が自然に分かれるように、性質の異なるものが混じり合わずに区画をつくる現象です。核のなかでは、同じ性質を持つクロマチン領域どうしが引き合い、性質の違う領域とは分かれることで、AとBの住み分けが生まれると考えられています。
💡 用語解説:2種類の相分離(PPPSとLLPS)
核内の相分離には、対照的な2つのしくみがあります。
ポリマー・ポリマー相分離(PPPS):特定の目印を認識するタンパク質が、離れたDNA領域どうしを「橋渡し」してつなぎ止めることで凝縮させるしくみ。DNA鎖という足場がなくなると、凝縮体も消えます。
液–液相分離(LLPS):特殊なタンパク質やRNAが、水と油のように液滴(膜のない粒)をつくって分離するしくみ。DNAの足場がなくても、タンパク質の液滴だけで独立して存在できます。
ところが、この相分離による「静かな住み分け」に、絶えず割り込んでくる別の力があります。それが「コヒーシンによるループ押し出し」です。コヒーシンというリング状のタンパク質は、エネルギーを使ってDNAをたぐり寄せ、ループ(輪)をつくり出します。この動きはゲノムを能動的にかき混ぜる「攪拌」として働き、相分離が進めようとするAとBの静かな分離を、力ずくで乱そうとします。つまり核のなかでは、「分けようとする相分離」と「混ぜようとするループ押し出し」が、常にせめぎ合っているのです。
💡 用語解説:コヒーシンとループ押し出し
コヒーシンは、DNAを取り囲むリング状のタンパク質複合体です。DNAの上を動きながら、まるで巾着袋の口を絞るようにDNAを引き込み、次第に大きなループを押し出していきます。このループが「TAD」という中規模の構造をつくります。ループ押し出しはATPというエネルギーを消費する能動的な動きで、A/Bコンパートメントをつくる相分離とは別のしくみです。両者は物理的に競合しますが、担っている分子が違うため、並行して働いています。
この関係は、実験でみごとに証明されています。コヒーシンを細胞から取り除くと、ループやTADの構造は消えてしまいますが、かき混ぜる力がなくなった結果、相分離が最大限に解放されてA/Bコンパートメントの分離はむしろ強まり、普段は見えない細かい区画まではっきり現れます。一方、ループの境界役であるCTCFというタンパク質を取り除くと、TADの境界は弱まるものの、A/Bコンパートメントの全体像はほとんど変わりません。これは、大きなスケールのコンパートメント化とTAD形成が、別々の分子によって並行して制御されていることを示す重要な証拠です。
6. 分化とがんでの再編成:区画が組み替わるとき
🔍 関連記事:細胞周期とは/サブコンパートメント
A/Bコンパートメントは、一度決まったら固定されるわけではありません。細胞の一生のなかで、そして細胞が分化したりがん化したりする過程で、柔軟に、時に劇的に組み替えられます。この動的な再編成こそ、A/Bコンパートメントが単なる静的な構造ではなく、生命の営みに深く関わる仕組みであることを物語っています。
細胞周期のなかでの組み立て直し
細胞が分裂するとき(M期)、ゲノムの立体構造はいったん完全に解体され、コンパートメントも消えてしまいます。その後、娘細胞のなかで再び組み立て直されます。かつては、分裂後にゆっくりと境界が確立され、時間をかけて徐々に強まると考えられていました。しかし、細胞に負担をかけない観察技術とHi-Cを組み合わせた研究により、実際には段階的でダイナミックな組み立て直しが起きていることが分かりました。とくにA/Bコンパートメントの分離の強さは、DNA複製が始まるS期の突入時に急激に最大へと達し、活性な領域どうしが一気に集まって、核スペックルを中心とした発現ネットワークが構築されます。
💡 用語解説:細胞周期とS期
細胞が分裂して増えるとき、DNAをコピーして2つに分ける一連のサイクルを「細胞周期」と呼びます。大きくG1期→S期→G2期→M期(分裂期)に分かれ、このうちS期がDNAを複製(コピー)する時期です。A/BコンパートメントはこのS期の入り口で最も強く再構築され、複製の進行と歩調を合わせて安定化します。
細胞が運命を決めるとき:区画のスイッチング
受精卵に近い万能な幹細胞から、皮膚・神経・血液などの特定の細胞へと変化していく「分化」の過程では、ゲノム全体の20〜36%もの領域で、AとBの区画が入れ替わる大規模なスイッチングが起こります。ある遺伝子座がAからBへ移れば(A-to-B)、核膜近くの不活性な環境へ隔離されて眠りにつき、逆にBからAへ移れば(B-to-A)、活性な環境へ解き放たれて働き始めます。
重要なのは、細胞が新しい運命を固定するとき、局所的なTADの境界の変化よりも、この大きなスケールのコンパートメントのスイッチングのほうが、遺伝子発現の変化と強く連動しているという点です。細胞のアイデンティティは、遺伝子を核のどの「区画」に置くかという空間配置によって、構造的に支えられているのです。
がんにおける区画の破壊と「臓器のなりすまし」
がん細胞は、このコンパートメントの組み替えを悪用します。前立腺がんの進行モデルでは、正常な細胞ではBコンパートメントに封じ込められていたがん関連の遺伝子領域が、がん化に伴ってAコンパートメントへとスイッチ(B-to-A)して活性化する様子が観察されています。眠っていたはずの領域が、区画の移動によって目を覚まし、がんの増殖を後押しするのです。
さらに驚くべきことに、がんが特定の臓器へ転移する際には、転移先の正常な組織が持つコンパートメントのパターンを「まねる」現象が報告されています。たとえば肺へ転移する能力を得た乳がん細胞は、乳がん由来でありながら、自らのゲノムの三次元配置を正常な肺の細胞に似せて再構成していました。この「臓器のなりすまし」は、がん細胞が新しい住処に適応し、生き延びるための巧妙な戦略と考えられ、将来的には転移の起こりやすさを予測するバイオマーカーとしての応用も期待されています。
7. 遺伝診療との接続:立体構造の破綻が病気を生むとき
🔍 関連記事:染色体の構造と遺伝性疾患/エンハンサー・ハイジャッキング/エンハンサー
A/Bコンパートメントは、一見すると基礎研究の話に思えるかもしれません。しかし実際には、遺伝性疾患やがんの理解に直結する、臨床的にも重要な概念です。ここが用語解説にとどまらず、遺伝診療とつながる部分です。
私たちのゲノムには、遺伝子のスイッチを遠くから操作する「エンハンサー」という調節領域があります。通常、エンハンサーはTADやコンパートメントの区画によって「担当する遺伝子」だけに作用するよう仕切られています。ところが、大きな欠失・逆位・転座といった構造変異が、この区画の境界(TAD境界やコンパートメント境界)を壊してしまうと、エンハンサーが本来関係のない遺伝子を誤って活性化してしまうことがあります。これを「エンハンサー・ハイジャッキング(エンハンサーの乗っ取り)」と呼びます。
💡 用語解説:構造変異とエンハンサー・ハイジャッキング
構造変異とは、DNAの1文字が変わる小さな変異とは違い、染色体の大きな断片が丸ごと失われたり(欠失)、向きが逆になったり(逆位)、別の場所へつなぎ替わったり(転座)する、大規模な変化のことです。こうした変異がゲノムの立体的な仕切りを壊すと、遺伝子を活性化するエンハンサーが「担当外」の遺伝子に届いてしまい、本来オフのはずの遺伝子がオンになることがあります。これがエンハンサー・ハイジャッキングで、発達異常やがんの原因となる場合があります。
このように、A/BコンパートメントやTADといった染色体の高次構造の破綻は、配列そのものには異常がなくても病気を引き起こしうる、新しいタイプの発症メカニズムとして注目されています。従来の遺伝子検査は、主にDNAの「文字の並び」の変化を探してきました。しかし近年は、大きな構造変化が立体構造の境界に与える影響も、発達異常や希少疾患の原因として評価されるようになってきています。A/Bコンパートメントの理解は、こうした「配列は正常なのに発症する」タイプの疾患を読み解くための土台となる知識なのです。
ただし、現時点でA/Bコンパートメントそのものを日常の遺伝子診断で直接測定する検査は一般化していません。この分野は主に研究段階にあり、基礎研究で得られた知見が、少しずつ臨床の疾患理解へと橋渡しされている段階です。遺伝性疾患や染色体構造の異常についてご不安がある場合は、臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングのなかで、個別の状況に応じた説明を受けることができます。
8. よくある誤解
誤解①「A/BコンパートメントとTADは同じもの」
両者はスケールも仕組みも異なります。コンパートメントは数百万塩基対という大きな区画で相分離によってつくられ、TADはより小さなループ構造でコヒーシンの押し出しによってつくられます。コヒーシンを除くとTADは消えてもコンパートメントはむしろ強まる、という実験がその違いを示しています。
誤解②「区画は一度決まったら変わらない」
実際には非常に動的です。細胞が分化する過程ではゲノムの20〜36%もの領域でAとBが入れ替わり、細胞周期のなかでも組み立て直されます。がん化に伴う区画のスイッチングも知られており、コンパートメントは状況に応じて柔軟に再編成されます。
誤解③「Aは良い区画、Bは悪い区画」
良し悪しではなく役割分担です。すべての遺伝子が常にオンである必要はなく、不要な遺伝子をBコンパートメントで確実に眠らせておくことも、細胞が正しく機能するために不可欠です。AとBのバランスと適切な配置こそが健全さの鍵となります。
誤解④「立体構造は遺伝子検査と無関係」
配列に異常がなくても、構造変異が立体構造の境界を壊すことで病気が起こる例が知られています。ゲノムを平面の文字列としてだけでなく三次元の建築物としてとらえる視点は、遺伝性疾患の理解に欠かせないものになりつつあります。
よくある質問(FAQ)
🏥 ゲノム・遺伝子診断のご相談
染色体の構造異常や遺伝性疾患に関する
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