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シャルコー・マリー・トゥース病とは?原因・症状・遺伝を解説|東京・ミネルバクリニック

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 遺伝性末梢神経障害
臨床遺伝専門医監修

Q. シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)とはどのような病気ですか?

A. 末梢神経(手足の神経)の運動・感覚機能が、数十年単位でゆっくり障害される遺伝性末梢神経障害です。
多くは下腿の筋力低下・足下垂・凹足(ハイアーチ)から始まり、進行すると手指の巧緻運動にも影響します。原因遺伝子は多数ありますが、最も多いのはPMP22遺伝子の重複(CMT1A)です。

  • 代表的原因第17番染色体短腕(17p11.2)のPMP22重複=CMT1A
  • 主な症状足のつまずき・足下垂・凹足、腱反射低下、感覚低下
  • 分類の軸脱髄型(CMT1)軸索型(CMT2)、X連鎖型(CMTX)など
  • 診断の要神経伝導検査(NCV)+遺伝子検査
  • 治療 → 根治療法は未確立。装具・リハビリ・整形外科的治療で生活の質を守る

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1. シャルコー・マリー・トゥース病とは|基本情報

【結論】 シャルコー・マリー・トゥース病(CMT)は、遺伝子の変化により末梢神経が障害される疾患群です。多くは思春期〜若年成人期に気づかれ、数十年単位でゆっくり進行します。生命予後に大きく影響しないことが多い一方、歩行や手作業に支援が必要になる場合があります。

CMTは「単一の病気」ではなく、原因遺伝子が多数あるため、症状・進行速度・合併症の出方に幅があります。まずはどのタイプか(脱髄型/軸索型/X連鎖など)を整理し、適切な検査につなげることが重要です。

💡 用語解説:「末梢神経」とは?

脳・脊髄(中枢神経)から手足へ伸びる神経のネットワークです。運動(筋肉を動かす)感覚(触る・痛い・温度・位置)を担い、CMTではこの神経が徐々に弱くなります。

CMTの分類(ざっくり理解のために)

分類 病態の中心 代表例
CMT1(脱髄型) ミエリン(髄鞘)の障害 → 伝導速度が遅い CMT1A:PMP22重複、CMT1B:MPZ変異
CMT2(軸索型) 軸索(アクソン)の障害 → 振幅低下が主体 CMT2A:MFN2変異 など
CMTX(X連鎖) ギャップ結合異常など(男性で重症化しやすい) CMTX1:GJB1変異
CMT4(常染色体劣性) 多様(小児期発症・重症のことも) SH3TC2、GDAP1 など

⚠️ 遺伝形式の表記について

CMTは、常染色体優性(顕性)が多い一方で、常染色体劣性(潜性)X連鎖もあります。同じ「CMT」という診断名でも、遺伝の仕方と再発リスクはタイプで大きく異なります。

2. CMTの主な症状|進行のしかた

【結論】 CMTは足(下腿)から始まる左右対称の筋力低下が典型で、足下垂(フットドロップ)凹足をきたしやすい病気です。進行はゆっくりで、長期にわたり生活の工夫・装具・リハビリが重要になります。

よくみられる症状

🦶 まず「足」から出やすいサイン
  • つまずきやすい、段差で足先が引っかかる
  • 足下垂(つま先が上がりにくい)で鶏歩(膝を高く上げる歩き方)になる
  • 凹足・ハンマー趾、靴擦れ・タコができやすい
  • 足先の感覚が鈍い(靴下を履いているような感覚)

⚠️ ポイント:CMTでは「強い電撃痛」のような神経痛は典型的ではなく、むしろ筋力低下に伴う関節痛・姿勢のゆがみが問題になることがあります。

上肢(手)への影響

足の症状より遅れて、手の小さな筋肉が痩せ、ボタン留め・箸・筆記などの細かい動作が難しくなることがあります。生活上の工夫や作業療法が役立ちます。

💡 早めに整えるとラクになるもの

AFO(足関節装具)やインソールは、転倒予防疲労軽減に直結します。「歩けるうちは我慢」ではなく、安全に歩き続けるための道具として考えるのがコツです。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【“足のクセ”を見逃さない】

CMTは、最初は「運動が苦手」「よく捻挫する」「靴が合わない」など、病気として見えにくいサインから始まることが少なくありません。凹足や足下垂が目立つ前でも、歩き方や疲れ方にはヒントがあります。

大切なのは、“気づいたタイミングで評価する”こと。神経伝導検査と遺伝子検査でタイプが分かると、生活設計と家族への説明が一気に整理できます。

3. 原因と遺伝子|PMP22重複(CMT1A)を中心に

【結論】 CMTの原因は遺伝子の変化です。最頻型のCMT1Aは、第17番染色体短腕(17p11.2)のPMP22遺伝子が1コピー多い(重複)ことにより、髄鞘形成がうまくいかなくなります。CMTには常染色体優性(顕性)常染色体劣性(潜性)・X連鎖など多様な遺伝形式があり、家族への影響評価にはタイプ特定が重要です。

💡 用語解説:「脱髄」と「軸索障害」

脱髄は神経の“絶縁体”であるミエリンが傷む状態で、神経伝導速度が遅くなります。軸索障害は神経線維そのものが弱り、信号の強さ(振幅)が下がります。CMTでは両者が混ざることもあります。

17p11.2とPMP22:コピー数で病態が分かれる

遺伝学的変化 主な病態 代表的診断名
17p11.2のPMP22重複(コピー数増加) 脱髄型が中心 CMT1A
17p11.2のPMP22欠失(コピー数減少) 圧迫に弱い神経(反復性) HNPP(家族性圧迫性ニューロパチー)

よく検査される代表遺伝子

遺伝子 関連タイプ ポイント
PMP22 CMT1A(重複)、HNPP(欠失) コピー数解析が重要
GJB1 CMTX1(X連鎖) 男性で重症化しやすい/中枢神経症状を伴うことがある
MPZ CMT1B など 軽症〜重症まで幅が大きい
MFN2 CMT2A(軸索型) 若年発症・重症化のことがある

4. 診断方法|神経伝導検査と遺伝子検査

【結論】 CMTの診断は、①臨床所見 ②神経伝導検査(NCV) ③遺伝子検査の三本柱です。NCVは脱髄型/軸索型の方向性を決め、遺伝子検査が確定診断と家族説明の基盤になります。

💡 用語解説:「NCV(神経伝導速度)」

末梢神経に電気刺激を与え、信号がどれくらいの速さで伝わるかを測る検査です。脱髄型では速度が遅くなり、軸索型では速度は保たれつつ信号の強さが弱くなることが多いです。

ステップ 内容 目的
① 問診・診察 症状の始まり、家族歴、凹足・腱反射低下、筋萎縮の分布 CMTを疑う
② NCV/EMG 脱髄型/軸索型の方向づけ 検査戦略(遺伝子)を決める
③ 遺伝子検査 PMP22コピー数、パネル検査、必要によりWES 確定診断と家族への説明

「遺伝子検査=こわい」ではありません

診断がつくと、予後の見通し・合併症の注意点・家族への説明が整理できます。
不安が強い方は、遺伝カウンセリングで丁寧にご説明します。

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5. 治療と長期管理|できることは多い

【結論】 CMTには現時点で根本的な治療(治癒療法)は確立していません。一方で、装具・リハビリ・整形外科的治療・環境調整により、転倒を減らし、生活の質を保つことができます。研究としては、CMT1Aを対象にPXT3003などの開発が進んでいます。

歩行・転倒予防

  • AFO(足関節装具)で足下垂を補正
  • インソール・靴型装具で足底負担を分散
  • 住環境(段差・手すり・夜間照明)の調整

ストレッチと筋力維持

  • アキレス腱の拘縮予防(毎日のストレッチ)
  • 低負荷の筋トレ・有酸素運動(無理のない範囲)
  • 作業療法で手作業の工夫・自助具

整形外科的治療

  • 凹足・槌趾の矯正(腱移行・骨切り・固定など)
  • 変形が固まる前の評価が重要
  • 疼痛・潰瘍予防にもつながる

薬と注意点

  • 筋肉痛・関節痛は鎮痛薬で対処することがある
  • ビンクリスチンなど一部薬剤は神経障害増悪リスクが知られる
  • 服薬は主治医と情報共有(診断名・遺伝子型があるとより安全)
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【“治す”だけが医療ではない】

CMTは根治療法が未確立でも、生活の質を守る医療ができます。装具やリハビリは「最後の手段」ではなく、転倒を防ぎ、行動範囲を保つための主役です。

そして、遺伝性疾患だからこそ、検査結果を「家族でどう受け止めるか」が大切になります。医師の役割は情報提供と意思決定支援であり、決めるのはご本人・ご家族です。

6. 遺伝カウンセリング|家族への説明と再発リスク

【結論】 CMTは遺伝形式が多様なため、「誰にどのくらい遺伝するか」を整理するには遺伝カウンセリングが重要です。常染色体優性(顕性)では子へのリスクが高く見える一方、症状の幅も大きく、家族ごとに説明の焦点が変わります。

📋 カウンセリングで整理すること
  • 臨床像(脱髄型/軸索型/混合)と家族歴の一致
  • 遺伝形式:常染色体優性(顕性)/常染色体劣性(潜性)/X連鎖
  • 家族の誰が検査対象か(症状の有無にかかわらず)
  • 将来の妊娠・出生前検査の選択肢(必要な場合のみ)

7. 出生前診断について|NIPTと羊水検査

【結論】 CMTは多くが小児期〜成人期に発症し、生命予後が良好で重症度の幅が大きい疾患です。そのため、出生前診断の扱いには倫理的な論点があり、海外でも一律に推奨される対象ではありません。家族内で原因が確定している場合は、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で評価を検討する選択肢がありますが、検査の意味づけは個別性が高く、遺伝カウンセリングで丁寧に整理します。

💡 用語解説:この疾患でよく話題になる領域(17p11.2 / PMP22)

CMT1Aでは、第17番染色体短腕(17p11.2)のPMP22重複が代表的です。同じ領域でコピー数が減る(欠失)と、CMTとは別の病態(HNPP)につながることがあります。出生前に結果を扱う場合は、「結果が何を意味し、何が予測できないのか」を丁寧に整理する必要があります。

⚖️ 倫理的に議論されるポイント
  • 生命予後が良好で、支援と医療により長期の生活が可能であること
  • 同じ遺伝子型でも重症度の予測が難しいこと
  • 成人期発症が多く、将来の本人の自己決定(知る/知りたくない)に関わること

出生前検査で「確定」する方法

検査 位置づけ ポイント
NIPT スクリーニング 疾患によっては解釈が難しい場合があり、結果は遺伝カウンセリングで整理します
羊水検査+CMA ◎ 確定診断 Gバンド法では検出できない微小欠失を確定診断可能。
※学会指針では、原則として超音波での構造異常がある場合などが対象とされています。
絨毛検査+CMA ◎ 確定診断 妊娠初期に実施可能。適応と限界を事前に説明します

⚠️ NIPTの補足:当院のNIPTは微小欠失を中心に設計されていますが、同じ領域でコピー数が増える「重複」も検出されることがあります。その場合、結果の意味づけは専門的な判断が必要となるため、遺伝カウンセリングで詳しくご説明します。

費用面の不安が大きい方へ

当院では、NIPT受検者全員に適用される互助会制度により、陽性時の確定検査(羊水検査)費用を全額補助します。詳細はNIPT検査で陽性になったときの互助会をご確認ください。

検査の「目的」から一緒に整理します

出生前診断は、結果そのものよりも「どう受け止めるか」が難しいことがあります。
臨床遺伝専門医が中立的に情報を整理し、ご家族の意思決定を支援します。

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よくある質問(FAQ)

Q1. CMTはどのくらいの頻度で起こりますか?

CMTは遺伝性末梢神経障害の中では比較的頻度が高いとされます。症状が軽い方は未診断のこともあるため、実際の頻度は把握が難しい面があります。

Q2. 「脱髄型」と「軸索型」は何が違うのですか?

脱髄型はミエリン(髄鞘)が主に障害され、神経伝導速度が遅くなります。軸索型は神経線維そのものが弱り、速度は保たれつつ信号の強さが低下しやすいです。神経伝導検査(NCV)で方向性が分かります。

Q3. 遺伝子検査は必ず必要ですか?

CMTが疑われる場合、確定診断と家族への説明のために遺伝子検査が重要になります。特にPMP22はコピー数異常が関与するため、適切な検査方法(コピー数解析)が必要です。検査の目的と限界は遺伝カウンセリングで整理します。

Q4. 治療法(薬)はありますか?

現時点で根治療法は確立していません。症状に応じてリハビリ、装具(AFO)、整形外科的治療、疼痛への対処などを行います。CMT1Aを対象にPXT3003などの研究開発が進んでいます。

Q5. 子どもに遺伝しますか?

遺伝形式によって異なります。常染色体優性(顕性)の場合は子どもに受け継がれる確率が高く見える一方、症状の程度には幅があります。常染色体劣性(潜性)やX連鎖もあるため、タイプ特定と家族歴の評価が重要です。

Q6. どの診療科に相談すればいいですか?

一般には神経内科が中心ですが、遺伝性疾患として整理するには臨床遺伝の視点が重要です。診断・家族説明・将来の選択肢を含めて相談したい場合は、臨床遺伝専門医が担当する遺伝カウンセリングが役立ちます。

Q7. 出生前診断でCMTを調べられますか?

家族内で原因が確定している場合、確定検査(羊水検査・絨毛検査)で評価を検討する選択肢があります。検査の適応と結果の意味づけは個別性が高いため、遺伝カウンセリングで丁寧に整理します。

🏥 一人で悩まないでください

CMTについて心配なこと、検査を受けるかどうか迷っていること、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。

🧬 その他の染色体異常(トリソミー・部分モノソミー)について

各染色体の異数性や微小欠失・重複による特徴的な疾患、および予後については以下のリンクから詳細をご確認いただけます。

参考文献

  • [1] NCBI Bookshelf. Charcot-Marie-Tooth Disease (StatPearls). [NCBI]
  • [2] GeneReviews. Charcot-Marie-Tooth Hereditary Neuropathy Overview. [NCBI]
  • [3] MedlinePlus Genetics. Charcot-Marie-Tooth disease. [MedlinePlus]
  • [4] Muscular Dystrophy Association. Signs and Symptoms of CMT. [MDA]
  • [5] The Current State of Charcot–Marie–Tooth Disease Treatment. [MDPI]
  • [6] ClinicalTrials.gov. PXT3003 in CMT1A (study information). [ClinicalTrials.gov]

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仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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