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17p11.2微小重複症候群(PTLS)の症状と特徴|東京・ミネルバクリニック

17p11.2微小重複症候群(PTLS)の症状と特徴|東京・ミネルバクリニック

17p11.2微小重複症候群(PTLS)とは?
症状・原因・診断・治療を臨床遺伝専門医が解説

この記事でわかること
📖 読了時間:約18分
🧬 染色体微小重複・神経発達症
臨床遺伝専門医監修

Q. 17p11.2微小重複症候群(PTLS)とはどのような病気ですか?

A. 17番染色体短腕(17p11.2)の一部が重複することで、RAI1遺伝子などが過剰になり生じる染色体異常症候群です。
ポトッキ・ルプスキ症候群とも呼ばれ、筋緊張低下・発達遅滞・自閉スペクトラム症(ASD)・睡眠障害などの症状が生じることがあります。スミス・マギニス症候群(微小欠失)とは対の関係にあります。


  • 原因17番染色体p11.2領域の微小重複(約3.7Mb)

  • 主要症状 → 発達遅滞(95%)、筋緊張低下(80%)、言語障害(90%)、ASD特性

  • 重要な特徴RAI1遺伝子の用量効果:過剰発現が神経発達や睡眠リズムに影響

  • 診断方法染色体マイクロアレイ検査(CMA)が確定診断のゴールドスタンダード

  • 頻度約1/20,000人(症状が軽度で見逃されている可能性あり)

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1. 17p11.2微小重複症候群(PTLS)とは|基本情報

第17番染色体における17p11.2の位置

【結論】 17p11.2微小重複症候群(Potocki-Lupski Syndrome: PTLS)は、17番染色体短腕の一部(約3.7Mb)が重複することで発症する疾患です。スミス・マギニス症候群(SMS)の原因となる欠失領域と同じ場所が重複する「対の関係」にあり、RAI1遺伝子の過剰発現が主な原因と考えられています。

この症候群は1990年代に発見され、確立された比較的新しい疾患概念です。症状の程度には個人差があり、一見してわかるような特異的な顔貌や奇形が目立たないことも多いため、診断には専門的な遺伝学的検査が必要です。

💡 用語解説:「隣接遺伝子症候群」とは?

染色体上の特定の領域に含まれる複数の遺伝子がまとめて欠失したり重複したりすることで、様々な症状が現れる疾患群のことです。PTLSは、この領域の遺伝子量が増えること(過剰発現)によって引き起こされます。

疾患の概要データ

項目 内容
疾患名 17p11.2微小重複症候群(Potocki-Lupski Syndrome: PTLS)
原因 17p11.2領域(約3.7Mb)の重複
責任遺伝子 RAI1(Retinoic Acid Induced 1)を含む複数遺伝子
頻度 約1/20,000人(過小評価の可能性あり)
遺伝形式 常染色体優性(顕性)(多くは新生突然変異)

2. 17p11.2微小重複症候群の主な症状

【結論】 PTLSの症状は多岐にわたりますが、特に乳児期の筋緊張低下(Hypotonia)と哺乳障害、そして全体的な発達遅滞・言語障害が高頻度で見られます。自閉スペクトラム症(ASD)や睡眠障害も重要な特徴です。

PTLS患者における主要臨床症状の有病率

図:PTLS患者における主要な臨床症状の頻度

主要な症状と頻度

症状カテゴリー 頻度 詳細
発達遅滞/知的障害 95% 軽度〜中等度の知的障害が多い。運動発達のマイルストーン遅延。
言語発達遅滞 90% 理解よりも発語(表出)の遅れが顕著。発語失行を伴うことも。
筋緊張低下 80% 乳児期の「フロッピーインファント」。抱っこした時にぐにゃりとする。
哺乳・成長障害 55% 吸う力が弱く、飲むのに時間がかかる。体重増加不良(Failure to Thrive)。
ADHD/多動 60% 不注意、多動性、衝動性。就学年齢で顕著に。
睡眠障害 50% 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)、入眠困難、中途覚醒。
先天性心疾患 40% 心室中隔欠損、左心低形成症候群(HLHS)、大動脈拡張など。
自閉スペクトラム症 30% 社会的コミュニケーションの問題、こだわり行動。

神経発達・行動面の特徴

🧠 PTLSの発達特性
  • 言語障害:理解は比較的良好ですが、言葉を話す(表出)のが苦手です。口腔運動の計画障害(小児発語失行)を伴うことがあり、専門的な言語療法が必要です。
  • 社会性(ASD):目が合わない・無関心といった典型的なASDとは異なり、他者に関わろうとする意欲(Socially seeking)は見られますが、距離感や方法が不適切でコミュニケーションに失敗しやすい特徴があります。
  • 睡眠の問題:RAI1遺伝子は概日リズムに関与しており、その過剰発現により睡眠覚醒リズムが乱れ、夜間の覚醒や早朝覚醒などが生じやすくなります。

身体的特徴

PTLSの身体的特徴は一般的に「微細(subtle)」であり、顕著な奇形を伴わないことも多いですが、以下のような特徴が見られることがあります。

👤 身体所見
  • 顔貌:逆三角形の顔立ち、広い額、眼間開離(目が離れている)、眼瞼裂斜下(タレ目)、球根状の鼻尖など。
  • 体格:低身長や低体重(Failure to Thrive)の傾向があります。成長ホルモン分泌不全を合併することもあります。
  • その他:口蓋・歯科的異常、腎臓の形態異常、側弯症などの骨格異常。
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【診断の難しさについて】

PTLSは、ダウン症のように「一目でわかる」特徴が少ない疾患です。乳児期の筋緊張低下や哺乳障害、あるいは言葉の遅れといった症状は、他の多くの疾患でも見られるため、診断がつかないまま「発達遅滞」として経過観察されているケースが少なくありません。

しかし、「なんとなく発達がゆっくり」という背後に、この染色体の微細な重複が隠れていることがあります。診断がつくことで、将来の見通しが立ち、必要な療育や医療的ケア(特に心臓や睡眠のチェック)に繋げることができるのが最大のメリットです。

当院では、のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた経験を活かし、不確実な不安を抱えるご家族に寄り添った診療を行っています。

3. 原因とメカニズム|遺伝子量効果

17p11.2領域における対側性ゲノム再構成メカニズム

【結論】 17p11.2領域には「低コピー反復配列(LCR)」が存在し、減数分裂時のエラー(NAHR)が起こりやすい構造をしています。このエラーにより、一方は欠失(スミス・マギニス症候群)、もう一方は重複(PTLS)という鏡像関係の変異が生じます。

RAI1遺伝子の用量効果

PTLSの症状の多くは、重複領域に含まれるRAI1(Retinoic Acid Induced 1)遺伝子のコピー数が増えること(過剰発現)によって引き起こされると考えられています。

RAI1遺伝子の機能

転写因子として他の遺伝子の働きを調節する司令塔の役割を果たしています。特に概日リズム(体内時計)の制御や、神経系の発生、シナプス機能に関与しています。

遺伝子量効果(Dosage Effect)

  • 欠失(1コピー):ハプロ不全 → スミス・マギニス症候群(睡眠リズム逆転、自傷など)
  • 重複(3コピー):過剰発現 → PTLS(中枢性睡眠障害、ASD様行動など)

4. 診断方法|CMA検査の重要性

【結論】 17p11.2の微細重複は、従来の染色体検査(G分染法)では見逃される可能性が高いです。確定診断には、ゲノム全体を高解像度で解析できる染色体マイクロアレイ検査(CMA)がゴールドスタンダード(第一選択)となります。

検査方法 特徴 PTLSの検出
染色体マイクロアレイ(CMA) 推奨。微細な重複や欠失(CNV)を網羅的に検出可能。 ◎ 確実に検出可能
G分染法(核型分析) 従来の一般的な染色体検査。解像度が低く微細変異は見えない。 ✕ 見逃されることが多い
FISH法 特定の領域をピンポイントで調べる。疑いがある場合に有用。 △ ターゲットが合えば可能

原因不明の発達遅滞で悩んでいませんか?

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遺伝学的検査で原因がわかるかもしれません。
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5. 治療と管理(マネジメント)

【結論】 PTLSに対する根本的な遺伝子治療法は現時点ではありません。しかし、早期療育(PT/OT/ST)や心臓・睡眠の問題への医学的介入によって、予後やQOL(生活の質)を大きく改善することが可能です。

ライフステージ別のケア・サーベイランス

PTLSライフステージ別ケア・サーベイランス工程表

表:ライフステージごとに推奨される検査と介入

乳児期(0〜2歳)

  • 栄養管理:哺乳障害への対応、高カロリーミルク、経管栄養の検討
  • 心臓評価:心エコーによる先天性心疾患のスクリーニング
  • 早期療育:筋緊張低下に対する理学療法(PT)の開始

幼児〜学童期

  • 言語療法(ST):発語失行への専門的アプローチ、AAC(拡大代替コミュニケーション)の導入
  • 教育支援:個別の教育計画(IEP)、学習障害へのサポート
  • 行動・睡眠:ADHD薬物療法、メラトニン等の使用検討

6. 遺伝カウンセリングと家族への遺伝

【結論】 PTLSの多くは新生突然変異(de novo)で発生しますが、親から遺伝するケースもあります。次子への再発リスクを正しく評価するためには、両親の遺伝学的検査と遺伝カウンセリングが重要です。

📋 再発リスクの考え方
  • 両親とも正常(de novo):次子への再発リスクは一般集団とほぼ同等(1%未満)。ただし生殖細胞系列モザイクの可能性はゼロではありません。
  • 親が保因者:親に重複がある場合、次子に遺伝する確率は50%となります。親が軽症や未診断であっても、子どもに重い症状が出る可能性があります(表現型の多様性)。
  • カウンセリングの役割:正確なリスク評価と、家族計画における選択肢(出生前診断など)についての情報提供を行います。
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【家族のケアについて】

希少疾患の診断を受けたご家族は、孤独感や将来への不安を強く感じることがあります。「なぜうちの子が?」と自分を責めてしまう親御さんもいらっしゃいます。

PTLSは遺伝子の変化によって偶然起こるものであり、妊娠中の行動や親のせいではありません。正しい情報を知り、療育や支援に繋がることで、お子さんの可能性を伸ばすことができます。

当院では、医学的な説明だけでなく、ご家族の心理的なサポートも大切にしています。お一人で悩まず、ぜひ専門家を頼ってください。

7. 出生前診断について|NIPTと確定検査

【結論】 17p11.2の重複は、一般的なNIPT(21, 18, 13トリソミーのみ)では検出できません。全染色体検査や微小欠失に対応したNIPT、あるいは羊水検査でのCMA解析によって検出が可能です。

検査の検出能

検査 検出可能性 備考
NIPT(基本プラン) ✕ 検出不可 基本検査は主要3トリソミーのみ対象。
スーパーNIPT(全染色体) △ 可能性あり 3.7Mbの重複はサイズ的に検出できる可能性がありますが、スクリーニング検査です。
羊水検査+CMA ◎ 検出可能 確定診断のゴールドスタンダード

ミネルバクリニックのNIPT検査体制

当院のスーパーNIPT(第3世代)は、全染色体の異数性だけでなく、特定の微小欠失(17p11.2欠失のスミス・マギニス症候群など)も検査範囲に含まれています。PTLSのような重複については、全染色体検査の中で波形異常として検出される可能性があります。

🔬 世界最新鋭の技術

COATE法を用いたスーパーNIPTは、偽陰性を極限まで減らした高精度なスクリーニングを提供します。

💰 互助会制度で安心

互助会制度(8,000円)により、NIPT陽性時の確定検査(羊水検査等)の費用は全額補助されます。追加負担の心配なく確定診断に進めます。

👩‍⚕️ 専門医によるサポート

臨床遺伝専門医が、検査前のカウンセリングから結果説明、その後のフォローアップまで一貫して担当します。

一人で悩まず、専門医を頼ってください

出生前診断や遺伝学的検査について詳しく知りたい方は、
臨床遺伝専門医にご相談ください


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よくある質問(FAQ)

Q1. PTLSの頻度はどれくらいですか?

約20,000人に1人と推定されています。しかし、症状が軽度であったり非特異的であるため、診断されずに見過ごされているケースが多く、実際の発症頻度はもっと高いと考えられています。

Q2. スミス・マギニス症候群(SMS)とはどう違うのですか?

SMSは同じ17p11.2領域の欠失(遺伝子不足)によって起こり、重度の睡眠障害や自傷行為が特徴です。一方、PTLSはこの領域の重複(遺伝子過剰)によって起こり、症状はSMSよりも全体的にマイルドな傾向がありますが、ASD特性や発達遅滞が見られます。

Q3. 治療法はありますか?

根本的な治療法はありませんが、対症療法が有効です。早期からの理学療法(PT)、言語療法(ST)、作業療法(OT)を行うことで発達を促せます。心疾患や睡眠障害など合併症の医学的管理も重要です。

Q4. 互助会費は別途かかりますか?

当院でNIPTを受検されるすべての方に、一律で8,000円の互助会費が適用されます(検査費用に含まれる形ではなく別途申し受けます)。この制度により、陽性時の羊水検査費用(約15〜20万円)が全額補助され、追加の経済的負担なく確定検査を受けることができます。

Q5. 次の子にも遺伝しますか?

多くの場合は新生突然変異(de novo)であり、次子への再発リスクは1%未満です。ただし、親が同じ重複を持っている場合は50%の確率で遺伝します。詳しくは遺伝カウンセリングでご相談ください。

🏥 一人で悩まないでください

17p11.2微小重複症候群について心配なこと、検査を受けるかどうか迷っていること、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。

参考文献

  • [1] Potocki L, et al. Molecular mechanism for duplication 17p11.2- the homologous recombination reciprocal of the Smith-Magenis microdeletion. Nat Genet. 2000;24(1):84-87. [PubMed]
  • [2] Potocki L, et al. Characterization of Potocki-Lupski syndrome (dup(17)(p11.2p11.2)) and delineation of a dosage-sensitive critical interval that can convey an autism spectrum disorder phenotype. Am J Hum Genet. 2007;80(4):633-649. [PubMed]
  • [3] Magoulas PL, et al. Potocki-Lupski Syndrome. GeneReviews®. [GeneReviews]
  • [4] Walz K, et al. Williams-Beuren syndrome and 7q11.23 duplication syndrome: different consequences of dosage imbalance. Am J Med Genet C Semin Med Genet. 2010;154C(4):457-466. [PubMed]
  • [5] MedlinePlus Genetics. Potocki-Lupski syndrome. [MedlinePlus]
  • [6] Treadwell-Deering DE, et al. Cognition and behavior in Potocki-Lupski syndrome: a study of 12 individuals. Am J Med Genet A. 2010;152A(11):2701-2710. [PubMed]
  • [7] OMIM #610883 – POTOCKI-LUPSKI SYNDROME; PTLS. [OMIM]

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プロフィール

この記事の筆者:仲田 洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科・腫瘍学を軸に、 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。 出生前診断・遺伝学的検査においては、検査結果そのものだけでなく 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年、国際誌『Global Woman Leader』および『Medical Care Review APAC』の2誌で立て続けに表紙(Cover Story)に抜擢。 「日本のヘルスケア女性リーダー10名」や「アジア太平洋地域のトップ出生前検査サービス」として、世界的な評価を確立しています。

▶ 仲田洋美の詳細プロフィールはこちら

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