InstagramInstagram

16p11.2重複症候群とは?症状・原因・遺伝|東京・ミネルバクリニック

16p11.2重複症候群とは?症状・原因・遺伝|東京・ミネルバクリニック

16p11.2重複症候群とは?
症状・原因・遺伝形式を臨床遺伝専門医が解説

この記事でわかること
📖 読了時間:約20分
🧬 染色体微細重複・神経発達症
臨床遺伝専門医監修

Q. 16p11.2重複症候群とはどのような病気ですか?

A. 16番染色体短腕(16p11.2)の約600kbの領域が通常2コピーのところ3コピーに増える(微細重複)ことで発症する遺伝性症候群です。
16p11.2欠失症候群の「鏡像」的な特徴を示し、低体重・小頭症・言語発達遅滞・ADHD・統合失調症リスク上昇などが主な症状です。不完全浸透のため、重複があっても無症状の方も存在します。


  • 原因16番染色体短腕p11.2領域(BP4-BP5間)の約600kb微細重複

  • 主要症状 → 言語障害(約80%)、ADHD(30〜35%)、ASD(約20%)、統合失調症リスク(オッズ比14〜16倍

  • 鏡像的特徴 → 欠失では肥満・大頭症、重複では低体重・小頭症

  • 遺伝形式常染色体優性(不完全浸透)、約70%が親からの遺伝

  • 頻度 → 一般集団で約0.03〜0.05%(約2,000〜3,000人に1人)

\ 臨床遺伝専門医が直接担当します /


📅臨床遺伝専門医の診療を予約する

※オンライン診療も対応可能です

1. 16p11.2重複症候群とは|基本情報

【結論】 16p11.2重複症候群は、16番染色体短腕のBP4-BP5間(約600kb)が重複する染色体微細構造異常です。一般集団の約0.03〜0.05%にみられ、16p11.2欠失症候群とは「鏡像」的な表現型を示すことが大きな特徴です。

この症候群は2008年頃、自閉スペクトラム症(ASD)や発達障害の遺伝学研究の中で発見されました。16p11.2欠失症候群では過食・肥満・大頭症が多いのに対し、本重複症候群では低体重・小頭症など、まさに「鏡像」的な特徴を示します。

💡 用語解説:「鏡像的表現型(Mirror Phenotype)」とは?

同じ染色体領域の欠失(1コピー)重複(3コピー)で、正反対の症状が現れる現象です。これは遺伝子の「用量効果」を反映しており、遺伝子が少なすぎても多すぎても正常な発達に影響を及ぼすことを示しています。

16p11.2重複症候群の概要

項目 内容
疾患名 16p11.2重複症候群(OMIM #614671)
原因 16p11.2領域(BP4-BP5間)の約600kb重複
頻度 一般集団で約0.03〜0.05%(約2,000〜3,000人に1人)
遺伝形式 常染色体優性(不完全浸透)
遺伝の由来 約70%が親からの遺伝、約20〜30%がde novo(新生突然変異)
含まれる遺伝子 25以上の遺伝子(MAPK3、KCTD13、TAOK2など)

欠失症候群との比較|鏡像的表現型

16p11.2領域の遺伝子用量(コピー数)が変化することで、正反対の表現型が生じます。この鏡像的な関係は、脳の発達や代謝制御における遺伝子用量の重要性を示す貴重なモデルとなっています。

16p11.2欠失症候群(1コピー)

  • 肥満・過体重
  • 大頭症
  • ASDリスク上昇(より顕著)
  • てんかん約20%

16p11.2重複症候群(3コピー)

  • 低体重・痩身
  • 小頭症
  • 統合失調症リスク大幅上昇
  • てんかん約20〜25%

16p11.2CNVにおける鏡像的表現型欠失対重複
16p11.2領域の欠失と重複における鏡像的表現型の比較

💡 なぜ鏡像的表現型が生じるのか?

16p11.2領域に含まれる遺伝子群は、脳の細胞増殖や代謝制御に関与しています。遺伝子のコピー数が1コピー(欠失)だと細胞増殖が促進され肥満・大頭症に、3コピー(重複)だと抑制され低体重・小頭症になると考えられています。

2. 16p11.2重複症候群の主な症状

【結論】 本症候群の症状は言語障害(約80%)、低体重、小頭症、ADHD(30〜35%)、ASD(約20%)、統合失調症リスク上昇(オッズ比14〜16倍)など多岐にわたります。ただし、不完全浸透のため同じ重複でも症状は様々であり、無症状から重度まで幅広いスペクトラムを示します。

身体的特徴

📏 身体的特徴
  • 低体重:出生時から体重が低め、成長しても痩せ型になる傾向
  • 小頭症:頭囲が小さい傾向(欠失症候群の大頭症と対照的)
  • 低身長:身長もやや低めになることがある
  • 特徴的顔貌:一貫したパターンはなく、外見上目立った異常がない場合も多い

⚠️ 体重増加不良(Failure to Thrive):乳児期に体重増加不良がみられることがあり、哺乳困難や摂食障害を伴う場合があります。満腹中枢の感受性亢進が原因の可能性が指摘されています。

神経発達症状

症状カテゴリー 頻度 詳細
言語障害 約80% 言語理解・表出の遅れ、発語失行、構音障害
発達遅滞 高頻度 運動発達遅滞(約1/3)、精神運動発達遅滞
知的障害 約30% IQは非保因家族より平均26ポイント低下、多くは軽度〜境界域
ADHD 30〜35% 注意欠如・多動性障害、最も一般的な行動上の問題
自閉スペクトラム症(ASD) 約20% 社会的コミュニケーション障害、限定的興味
てんかん 20〜25% 焦点性発作、全般性発作、多くは薬物療法でコントロール良好
学習障害 約50% 読み書き・算数の困難、特別支援教育が必要なケースも

16p11.2重複症候群における主要な臨床症状と合併症の頻度
16p11.2重複症候群における主要な臨床症状と合併症の頻度

精神医学的症状|統合失調症リスク

本症候群を特徴づける最も深刻なリスクは、統合失調症との強い関連です。

⚠️ 統合失調症リスク
  • オッズ比:14.5〜16倍(既知の遺伝的変異の中で最も高いリスク因子の一つ)
  • 発症時期:思春期〜成人期に発症、前駆症状の早期発見が重要
  • 臨床的意義:思春期以降の精神科的モニタリングが不可欠

16p11.2重複による精神・神経疾患の相対リスク
16p11.2重複による精神・神経疾患の相対リスク(統合失調症オッズ比14〜16倍)

💡 用語解説:「前駆症状(Prodrome)」とは?

統合失調症が本格的に発症する前に現れる初期症状のことです。急激な行動変化、引きこもり、睡眠障害、奇妙な言動などが含まれます。前駆期に早期介入することで、予後の改善が期待できます。

その他の精神症状

小児期〜思春期

  • ADHD(30〜35%)
  • ASD(約20%)
  • 不安障害
  • 行動上の問題

成人期

  • 統合失調症
  • うつ病
  • 不安障害
  • 双極性障害

身体合併症

神経精神症状に加え、以下のような身体的合併症も報告されています。

合併症 詳細
腎・尿路系異常(CAKUT) 腎無形成、腎低形成、馬蹄腎、膀胱尿管逆流症など
先天性心疾患 大血管転位症などの重篤な心奇形の報告あり
脊柱側弯症 成長期(思春期)に進行する可能性
その他 筋緊張低下、仙骨部皮膚陥凹など
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【症状の多様性を理解する】

16p11.2重複症候群で最も重要なのは、「重複があるからといって必ず重症になるわけではない」ということです。同じ家族内でも、重複を持つ人それぞれで症状の表れ方が大きく異なります。

実際、重複を持ちながら明確な問題なく通常学級で生活している例も報告されています。一方で、統合失調症のリスクは無視できません。

大切なのは、「リスクを知った上で、適切なモニタリングと早期介入を行う」こと。過度な心配は不要ですが、専門家と連携したフォローアップ体制を整えることが重要です。

3. 原因と遺伝的背景

【結論】 本症候群の原因は、16p11.2領域(BP4-BP5間)の約600kbの微細重複です。この領域には25以上の遺伝子が含まれ、遺伝子用量の増加が神経発達や代謝に影響を及ぼします。約70%が親からの遺伝であり、約20〜30%がde novo変異です。

発生メカニズム|非対立遺伝子間相同組換え(NAHR)

16p11.2領域には低コピー反復配列(LCR)が存在し、減数分裂時に非対立遺伝子間相同組換え(NAHR)を誘発しやすい構造になっています。

💡 用語解説:非対立遺伝子間相同組換え(NAHR)とは?

減数分裂時に、類似した配列(LCR)間で誤った組換えが起こる現象です。これにより、一方の染色体では欠失が、もう一方では重複が生じます。16p11.2領域はこのNAHRが起こりやすい「ホットスポット」であり、欠失と重複が再発性(Recurrent)に発生します。

遺伝形式と家族内発症

家族性継承(約70%)

両親のいずれかから重複を受け継ぐケース。無症状の親から発見されることも多く、不完全浸透の典型例。親も軽微な症状を持つ場合がある。

新生突然変異(約20〜30%)

両親に重複がなく、配偶子形成時または受精後初期に新たに発生(de novo)。de novo例の頻度は欠失症候群より低い。

16p11.2重複症候群の遺伝的起源遺伝性と新生突然変異の比率
16p11.2重複症候群の遺伝的起源:約70%が親からの遺伝

⚠️ 重要な注意点

16p11.2重複症候群の大きな特徴は、約70%が親からの遺伝であることです。これは22q11.2欠失症候群(約90%がde novo)などとは大きく異なります。お子さんに重複が見つかった場合、両親の検査が強く推奨されます。

主要な責任遺伝子

約600kbの重複領域には25以上の遺伝子が含まれますが、神経発達に特に重要と考えられている遺伝子があります。

遺伝子 主な機能 関連する表現型
MAPK3 MAPキナーゼ経路、細胞増殖・分化 脳サイズ制御(小頭症との関連)
KCTD13 タンパク質分解、神経発生制御 脳サイズ・神経回路形成
TAOK2 MAPキナーゼ活性化、樹状突起形成 皮質発達異常、ASD

「2ヒット仮説」と表現型の多様性

同じ重複を持つ家族でも症状の程度が大きく異なる理由として、「2ヒット仮説(Two-hit hypothesis)」が提唱されています。

🎯 2ヒット仮説
  • 第1ヒット:16p11.2重複 → 脳の発達バッファ(予備能)を低下
  • 第2ヒット:別の遺伝子変異、他のCNV、環境要因など
  • 2つのヒットが重なることで閾値を超え、症状が顕在化

2024年のオランダの研究では、約20%の症例で追加の遺伝変異が見つかり、症状に寄与している可能性が指摘されています。

4. 16p11.2重複症候群の診断方法

【結論】 本症候群の確定診断には染色体マイクロアレイ検査(CMA)が不可欠です。従来のG分染法では検出できない微細な重複を高精度で検出できます。臨床症状のみで診断することはできません。

診断のきっかけ

🔍 検査を行う場面
  • 原因不明の発達遅滞・知的障害:CMAが第一選択検査として実施
  • 自閉スペクトラム症の精査:遺伝学的原因検索として
  • 言語発達遅滞の精査:特に表出性言語障害がある場合
  • 統合失調症の遺伝学的検索:若年発症や家族歴がある場合
  • 出生前診断:羊水検査でCMAを実施した際に偶発的に発見

遺伝学的検査の種類

検査方法 特徴 16p11.2重複の検出
染色体マイクロアレイ(CMA) ゴールドスタンダード。微細CNVを高解像度で検出 ◎ 検出可能
G分染法(核型分析) 解像度は5〜10Mb程度 ✕ 検出困難(約600kbの微細重複)
FISH法 特定領域のプローブを使用 △ 専用プローブで可能(微細な余剰シグナルの判別は困難)

💡 用語解説:染色体マイクロアレイ(CMA)とは?

CMAは、従来のG分染法では検出できない微細な染色体の重複・欠失(コピー数変異:CNV)を検出する検査です。日本では原因不明の発達遅滞・先天異常に対する保険適用検査として実施されています。

近位重複と遠位重複の区別

「16p11.2重複」と診断された場合、それが具体的にどの領域を指しているのかを確認することが重要です。

近位重複(Proximal):BP4-BP5

  • 約600kbの重複
  • 本記事の主な対象
  • 低体重・小頭症・統合失調症リスク

遠位重複(Distal):BP2-BP3

  • 約220kbの重複
  • SH2B1遺伝子を含む(体重制御に関与)
  • 症状は近位より軽度との報告あり

お子さんの発達が気になっていませんか?

発達遅滞や言語障害の原因検索には遺伝学的検査が有効です。
臨床遺伝専門医にご相談ください


📅臨床遺伝専門医の診療を予約する

※オンライン診療も対応可能です

5. 治療と長期管理

【結論】 本症候群には根本的な治療法は存在せず、症状に応じた対症療法・早期療育・継続的支援が中心となります。特に思春期以降の精神科的モニタリングが統合失調症リスクの観点から重要です。

ライフステージ別の管理

ライフステージ 主な対応
乳児期・幼児期(0〜5歳) 体重・成長モニタリング、腎超音波・心エコー、発達スクリーニング、早期療育開始(PT・OT・ST)
学童期(6〜12歳) 知能検査・学習評価、特別支援教育の検討、ADHD・ASDへの対応、てんかん管理
思春期・成人期(13歳〜) 精神疾患の早期発見(統合失調症の前駆症状)、脊柱側弯症チェック、就労・自立支援

16p11.2重複症候群臨床管理ロードマップ
16p11.2重複症候群の臨床管理ロードマップ:ライフステージ別の対応

症状別の治療・対応

発達遅滞・言語障害

  • 早期療育が最も重要
  • 言語聴覚療法(ST)
  • 作業療法(OT)・理学療法(PT)
  • 特別支援教育

ADHD・ASD

  • 行動療法・環境調整
  • 応用行動分析(ABA)
  • ADHD薬物療法
  • ペアレントトレーニング

精神症状(成人期)

  • 前駆症状の早期発見が最重要
  • 定期的な精神科チェックイン
  • 抗精神病薬・抗うつ薬
  • 家族への心理教育

低体重・成長障害

  • 栄養士による指導
  • 高カロリー食の検討
  • 成長曲線の定期チェック

💊 研究の進展:16p11.2欠失症候群では、GABA_B受容体作動薬「アーバクロフェン(Arbaclofen)」の第II相臨床試験が進行中です。有効性が示されれば、重複症候群への応用も議論される可能性があります。

6. 遺伝カウンセリングの重要性

【結論】 16p11.2重複の高い遺伝率(約70%が親からの遺伝)不完全浸透率は、遺伝カウンセリングを非常に重要なものにします。両親の検査家族全体へのサポートが不可欠です。

遺伝カウンセリングで伝えるべきポイント

📋 カウンセリングの要点
  • 高い遺伝率:約70%が親から遺伝 → 両親の検査が強く推奨される
  • 不完全浸透率:重複があっても無症状〜軽症の方も多い
  • 予後の不確実性:同じ重複でも症状は無症状〜重度まで様々
  • 統合失調症リスク:思春期以降の精神科的モニタリングの重要性
  • 早期介入の有効性:療育やサポートで予後改善の可能性

再発リスク

状況 次子への再発リスク
両親とも正常(de novo) 1%未満(生殖細胞モザイクの可能性はあり)
片親が保因者 50%(ただし症状発現は不確実)
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【遺伝カウンセリングで大切にしていること】

16p11.2重複症候群の遺伝カウンセリングで特に重要なのは、「約70%が親からの遺伝」という事実への対応です。お子さんに重複が見つかった場合、無症状だった親御さんが「自分も同じ重複を持っていた」と知ることがあります。

これはある意味では安心材料にもなります。親御さん自身が社会生活を送れているという事実は、「重複があっても普通に生活できる可能性がある」証拠だからです。

一方で、統合失調症のリスクなど、不安になる情報もお伝えしなければなりません。私は中立的な立場で正確な情報を提供しつつ、ご家族が前向きに歩んでいけるようサポートしています。

臨床遺伝専門医として、のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた経験を活かし、一人ひとりに寄り添います。

7. 出生前診断について

【結論】 16p11.2重複は出生前診断で検出可能です。羊水検査でのCMAが確定診断となりますが、胎児の予後予測は困難であり、慎重な遺伝カウンセリングが必要です。

出生前検査での検出

検査 検出可能性 備考
NIPT(全染色体検査) △ 限定的 約600kbの微細重複は検出困難なことが多い。スクリーニング検査
羊水検査+CMA ◎ 検出可能 確定診断のゴールドスタンダード
絨毛検査+CMA ◎ 検出可能 妊娠初期(11〜14週)に実施可能

出生前診断で見つかった場合の対応

🔍 出生前診断後の対応
  • 遺伝カウンセリング:重複の意味、不完全浸透率、予後の不確実性を説明
  • 両親の検査:親が同じ重複を持つか確認(保因者なら安心材料の一つに)
  • 詳細超音波:心奇形、腎奇形などの構造異常を精査
  • 出生後フォロー体制:発達モニタリング、早期療育の準備

⚠️ 重要な考慮点:出生前診断で16p11.2重複が見つかった場合、「超音波で異常がないから大丈夫」とも「重複があるから問題」とも言えません。約70%が親からの遺伝であるため、親御さん自身が無症状の保因者である可能性も高いです。その場合、「自分と同じように普通に生活できる可能性」を示す安心材料になることもあります。

8. ミネルバクリニックのサポート体制

ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医の専門性を活かした診療体制を整えています。染色体異常の検査から結果説明、フォローまで一貫してサポートいたします。

🔬 高精度な検査技術

スーパーNIPT(第3世代)とCOATE法を採用。全染色体検査も対応可能です。

🏥 院内で確定検査まで対応

2025年6月より産婦人科を併設し、羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能に。転院の必要がなく、心理的負担を軽減できます。

👩‍⚕️ 臨床遺伝専門医が常駐

臨床遺伝専門医が検査前後の遺伝カウンセリングを担当。結果の説明から今後の選択肢まで、専門家が寄り添います。

💰 互助会で費用面も安心

互助会(8,000円)により、陽性時の確定検査(羊水検査)費用が全額カバーされます。上限なしで安心です。

一人で悩まず、専門医を頼ってください

16p11.2重複症候群について詳しく知りたい方、
出生前検査を検討している方は臨床遺伝専門医にご相談ください


📅臨床遺伝専門医の診療を予約する

※オンライン診療も対応可能です

よくある質問(FAQ)

Q1. 16p11.2重複症候群はどのくらいの頻度でみられますか?

一般集団で約0.03〜0.05%(約2,000〜3,000人に1人)と推定されています。自閉スペクトラム症のある方では約0.5%(200人に1人)、統合失調症患者群では約0.3%と、特定の症状を持つ集団ではより高頻度で見つかります。

Q2. 重複があれば必ず症状が出ますか?

いいえ、重複があっても無症状〜軽症の方も存在します。不完全浸透率と表現型の多様性が本症候群の特徴であり、同じ家族内でも症状の程度は大きく異なります。一部の保因者は明確な問題なく通常学級で生活している例も報告されています。

Q3. 16p11.2欠失症候群とは何が違いますか?

「鏡像的表現型」と呼ばれる正反対の特徴を示します。欠失では肥満・大頭症・ASDリスク上昇が多いのに対し、重複では低体重・小頭症・統合失調症リスク上昇が特徴です。これは同じ領域の遺伝子用量が「少なすぎても多すぎても」影響があることを示しています。

Q4. 統合失調症のリスクはどのくらい高いですか?

16p11.2重複は統合失調症のリスクをオッズ比14.5〜16倍に高めることが報告されており、既知の遺伝的変異の中で最も高いリスク因子の一つです。ただし、全員が発症するわけではありません。思春期以降の精神科的モニタリングと、前駆症状の早期発見が予後改善の鍵となります。

Q5. 子どもがこの重複を持っています。親も検査すべきですか?

はい、両親の検査は強く推奨されます。16p11.2重複の約70%は親からの遺伝であり、無症状の親御さんが同じ重複を持っていることがあります。親が同じ重複を持ちながら健康であれば、お子さんの予後にとって安心材料になる可能性があります。詳しくは遺伝カウンセリングでご相談ください。

Q6. NIPTで16p11.2重複は検出できますか?

NIPTでの検出は限定的です。約600kbという微細な重複は、現在のNIPT技術では検出困難なことが多いです。NIPTはあくまでスクリーニング検査であり、確定診断には羊水検査での染色体マイクロアレイ検査(CMA)が必要です。

Q7. 治療法はありますか?

根本的な治療法は現時点で存在しません。治療は症状に応じた対症療法が中心となります。発達遅滞には早期療育(言語聴覚療法・作業療法・理学療法)が有効です。ADHD・ASD・てんかん・精神症状に対しては、それぞれに応じた薬物療法や行動療法を行います。関連する欠失症候群では新薬の臨床試験も進行中です。

Q8. 次の子どもにも遺伝する可能性はありますか?

まず両親の検査が必要です。両親が正常(de novo)なら次子への再発リスクは1%未満です。片親が保因者なら50%の確率で重複が遺伝しますが、症状が現れるかどうかは別問題です。不完全浸透のため、重複を持っていても無症状のことが多いです。

🏥 一人で悩まないでください

16p11.2重複症候群について心配なこと、検査を受けるかどうか迷っていること、
どんなことでもお気軽にご相談ください。
臨床遺伝専門医があなたとご家族に寄り添います。

参考文献

  • [1] MedlinePlus Genetics. 16p11.2 duplication. [MedlinePlus]
  • [2] Weiss LA, et al. Association between microdeletion and microduplication at 16p11.2 and autism. N Engl J Med. 2008;358(7):667-675. [PubMed]
  • [3] McCarthy SE, et al. Microduplications of 16p11.2 are associated with schizophrenia. Nat Genet. 2009;41(11):1223-1227. [PubMed]
  • [4] Jacquemont S, et al. Mirror extreme BMI phenotypes associated with gene dosage at the chromosome 16p11.2 locus. Nature. 2011;478(7367):97-102. [PubMed]
  • [5] Shinawi M, et al. Recurrent reciprocal 16p11.2 rearrangements associated with global developmental delay, behavioural problems, dysmorphism, epilepsy, and abnormal head size. J Med Genet. 2010;47(5):332-341. [PubMed]
  • [6] Simons VIP Consortium. Simons Variation in Individuals Project (Simons VIP): a genetics-first approach to studying autism spectrum and related neurodevelopmental disorders. Neuron. 2012;73(6):1063-1067. [PubMed]
  • [7] Zufferey F, et al. A 600 kb deletion syndrome at 16p11.2 leads to energy imbalance and neuropsychiatric disorders. J Med Genet. 2012;49(10):660-668. [PubMed]
  • [8] DECIPHER Database – 16p11.2 recurrent microduplication. [DECIPHER]
  • [9] OMIM #614671 – Chromosome 16p11.2 Duplication Syndrome. [OMIM]
  • [10] Simons Searchlight. 16p11.2 Duplication Family Guide. [Simons Searchlight]

関連記事



プロフィール

この記事の筆者:仲田 洋美(臨床遺伝専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、臨床遺伝学・内科・腫瘍学を軸に、 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。 出生前診断・遺伝学的検査においては、検査結果そのものだけでなく 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。
2025年、国際誌『Global Woman Leader』および『Medical Care Review APAC』の2誌で立て続けに表紙(Cover Story)に抜擢。 「日本のヘルスケア女性リーダー10名」や「アジア太平洋地域のトップ出生前検査サービス」として、世界的な評価を確立しています。

▶ 仲田洋美の詳細プロフィールはこちら

お電話での受付可能
診療時間
午前 10:00~14:00
(最終受付13:30)
午後 16:00~20:00
(最終受付19:30)
休診 火曜・水曜

休診日・不定休について

クレジットカードのご利用について

publicブログバナー
 
medicalブログバナー
 
NIPTトップページへ遷移