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NIPT陽性後の中絶率は約9割|いつまで可能?産まない割合と遺伝カウンセリング

NIPT陽性後の中絶率は約9割|いつまで可能?産まない割合と遺伝カウンセリング

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。2025年国際誌『Global Woman Leader』表紙抜擢など、世界基準の出生前診断と遺伝カウンセリングを提供。

NIPT陽性後の中絶率は約9割|いつまで可能?産まない割合と遺伝カウンセリング

妊娠中に赤ちゃんの健康状態を調べるNIPT(新型出生前診断)。「もし陽性だったらどうしよう」という不安は、すべての妊婦さんが抱える切実な思いです。そして実際に陽性判定を受けたとき、目の前が真っ暗になり、激しいパニックと絶望感に襲われるのは当然のことです。
ネットを検索すれば「9割が中絶している」という数字が目に飛び込み、自分たちは命を選別しようとしている最低な親なのではないかと、ご自身を激しく責めてしまうお母様を私は数え切れないほど診てきました。
しかし、どうかご安心ください。あなたは決して孤独ではありません。このページでは、NIPT陽性後のリアルな現状(諸外国との比較)と、後悔のない決断をするために不可欠な正しい医療知識を、臨床遺伝専門医の視点から詳しくお伝えします。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🩺 NIPT陽性・中絶・遺伝カウンセリング
臨床遺伝専門医監修

Q. NIPTで陽性になったら、中絶しなければならないのですか?

A. 決してそのようなことはありません。
NIPTは非確定検査であるため、まずは羊水検査等による「確定診断」が必須です。その上で、ご夫婦がどのような選択をされても、臨床遺伝専門医が最大限に尊重し、サポートいたします。

  • 中絶の割合 → 日本国内でダウン症候群が確定した場合、約9割以上の方が選択されています
  • 期限(いつまで) → 法律により「妊娠22週未満(21週6日)」までと厳格に定められています
  • 必須のステップ → 決断の前に、必ず羊水検査による確定診断を受ける必要があります
  • 心の守り方 → 後悔を防ぐため、専門医による遺伝カウンセリングが不可欠です

1. 日本と諸外国におけるNIPT陽性後の中絶率(産まない割合)

日本ダウン症協会などが入手した過去のデータによれば、NIPT等の検査で陽性となり、さらに羊水検査などの確定診断によってダウン症候群(21トリソミー)などが確定したご夫婦のうち、約97%以上が人工妊娠中絶(産まない選択)を選んでいるとされています。これは非常に高く、重い数字です。

では、諸外国ではどうなのでしょうか。NIPTが導入された後の各国の状況を比較すると、文化や医療制度、社会的サポートの違いがはっきりと浮き彫りになります。

  • アメリカの場合:NIPTは通常の妊婦健診のように一般化しており、保険適用されるケースも多くあります。NIPT導入前後で中絶率(約64〜67%)に大きな変化はありません。産後のサポート体制や遺伝カウンセリングが充実しているため、検査結果を冷静に受け止め、妊娠を継続するご家族も一定数いらっしゃいます。
  • イギリスの場合:国を挙げてスクリーニング検査を推奨しています。NIPT導入前の中絶率は92%でしたが、導入後の中絶率は研究によって44%〜70%へと低下傾向がみられました。
  • フランスの場合:女性の自己決定権が強く尊重されており、障害を理由とした中絶は医師の証明があれば妊娠週数を問わず可能です。NIPTが自由診療で高額な点は日本と似ていますが、中絶の法的背景が大きく異なります。
  • アジア圏(台湾・中国・韓国など):日本と同様に、社会的なインフラ整備や障害に対する意識の壁から、陽性確定後の中絶率がほぼ100%に近い水準となる地域が多く存在します。

日本の「約9割」という数字だけを見ると、「日本人は命の選別を安易にしているのではないか」とご自身を責めてしまうかもしれません。しかし、私が長年のべ10万人以上のご家族の意思決定に伴走してきた経験から言えることは、決して安易な選択ではないということです。

諸外国と比較して日本の割合が高い背景には、障害を持つお子さんを「育てる」ための社会インフラや公的サポートがまだ十分に整っていないという、厳しい現実があります。「親亡き後、この子はどうやって生きていくのか」という切実な不安から、親としての重い責任感がゆえの苦渋の決断を下されているご夫婦がほとんどなのです。

2. 人工妊娠中絶は「いつまで」可能か?期限は妊娠21週6日

もし「産まない」という重い選択をする場合、法律で定められた厳格なタイムリミットが存在します。ここを知らないままパニックになっていると、取り返しのつかない事態になる危険性があります。

💡 法的期限:母体保護法について

日本において人工妊娠中絶が認められているのは、母体保護法により「妊娠22週未満(妊娠21週6日)」までと厳格に定められています。この期限を1日でも過ぎると、どのような理由があっても中絶手術を行うことはできません。手術は必ず「母体保護法指定医」が行う必要があります。

さらに知っておくべき重要な事実として、妊娠12週未満の「初期中絶」と、妊娠12週以降〜22週未満の「中期中絶」では、母体への身体的・精神的な負担が大きく異なります。
中期中絶は、人工的に陣痛を起こして通常の出産と同じように分娩する形をとります。数日間の入院が必要となり、お母様は陣痛の痛みに耐えながら、亡くなる運命にある赤ちゃんを産まなければなりません。この経験は、想像を絶するほど深い悲しみを伴います。

一般的なNIPTは妊娠10週以降に受けられますが、検査結果が出るまでに1〜2週間かかります。もし陽性だった場合、そこからさらに「羊水検査(妊娠15週〜16週以降に実施可能)」を受け、その結果が出るまでにも数週間の時間が必要です。
つまり、検査を受けてから確定診断が下るまでの間に、時間的な猶予は非常に限られているのです。結果を待つだけの時間は精神を大きく削ります。だからこそ、陽性判明後には迅速に確定診断へ進む体制が整っている医療機関を選ぶことが、あなた自身の心と体を守る命綱となります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【あなたが下す決断に、間違いなどありません】

「命の選別をしてしまった」と、罪悪感に苛まれるお母様たちを数え切れないほど見てきました。私はこの30年間、遺伝診療の現場でご家族単位で何度もお話し合いを重ね、ともに涙し、ともに悩み抜いてきました。

その経験を持つ臨床遺伝専門医として、はっきりとお伝えします。ご夫婦で悩み、苦しみ抜いて出した結論に、他人が踏み込める正解・不正解はありません。産む決断も、産まない決断も、どちらも我が子を想う深い愛情に他なりません。どうか、ご自身を罰するような言葉で追い詰めないでください。

3. 決断の前に不可欠な「確定診断(羊水検査)」の手順と必須性

ここで絶対に誤解してはならない、最も重要な医学的事実をお伝えします。NIPTは非確定検査(スクリーニング)であり、それ単体で診断を下すことはできません。

NIPTの精度は非常に高いとはいえ、母体の血液中に溶け出している「胎盤由来」のDNAの断片を調べているという性質上、どうしても偽陽性(本当は陰性なのに、陽性と判定されてしまうこと)の可能性が残ります。

🔬 専門医解説:なぜ偽陽性が起きるのか(胎盤限局性モザイク)

偽陽性の主な原因の一つに「胎盤限局性モザイク(CPM)」があります。これは、胎盤の細胞には染色体異常が含まれているものの、赤ちゃん自身の細胞は完全に正常(陰性)であるという状態です。NIPTは胎盤のDNAを拾うため、これを「陽性」と判定してしまうことがあるのです。だからこそ、直接赤ちゃんの細胞を調べる羊水検査が絶対に必要になります。

無認可施設などで十分な説明を受けず、NIPTの陽性結果だけで絶望し、中絶の予約を入れようとされる方が稀にいらっしゃいますが、それは絶対におやめください。
必ず、妊娠中期の適切な時期に羊水検査による「出生前の確定診断」を受ける必要があります。超音波(エコー)での詳細な形態確認も含め、正しい手順を踏んで医学的に確定させなければ、一生取り返しのつかない後悔を抱えることになります。

4. なぜ約9割が産まない選択をするのか?ご夫婦の理由と葛藤

産まない選択をする背景には、ご夫婦ごとに非常に複雑で深い葛藤があります。決して「障害があるからいらない」という単純な理由ではありません。

  • 経済的・社会的ハードル:療育や頻回な通院にかかる医療費、そして何より「親亡き後の自立」という、生涯にわたるサポート体制への強烈な不安。
  • 上の子(兄弟児)への影響:きょうだいに将来の介護の負担や、結婚・就職における精神的な重荷を背負わせてしまうのではないかという懸念。
  • ご両親自身の年齢と体力:高齢出産の場合、お子さんが成人するまで健康で働き続けられるかという現実的な体力・寿命の問題。
  • 医学的・母体へのリスク:染色体異常を伴う赤ちゃんは、心疾患などの重篤な合併症を持つことが多く、お腹の中で亡くなってしまう(胎内死)リスクも高くなります。最悪の場合、母体感染による敗血症など、お母様自身の命に関わるケースも存在します。

臨床現場でよく直面するのが、「絶対に産みたい」と願う妻と、「現実的に育てられない」と中絶を主張する夫との間で、意見が激しく対立するケースです。夫婦間で倫理観のすり合わせができないまま、法律のタイムリミットに追われて決断を下してしまうと、その後に深いトラウマや拭えない後悔を残し、最悪の場合、夫婦関係が破綻してしまうこともあります。

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【夫婦の絆を守るために】

意見が割れたまま、どちらかが折れる形で重い決断を迫られるのは、あまりにも残酷です。もし今、お二人の気持ちがすれ違っているなら、決してご夫婦の中だけで完結させようとしないでください。

第三者である専門医を交えて冷静に話し合う場を設けることが、ご夫婦の絆を守るためのクッションとなります。私はそのために、カウンセリングの時間を惜しみません。

5. 後悔しない決断のために。専門医による遺伝カウンセリングの重要性

残念なことに、一部の施設では十分な説明や心理的サポートがないまま採血だけが行われ、陽性の結果だけを紙切れ一枚で渡される無認可施設(NIPT難民)の問題が多発しています。医学的な知識も心の準備もないままパニックの海に放り出されれば、誰もが正常な判断力を失います。

ミネルバクリニックは無認可施設(非認証施設)に分類されますが、当院では臨床遺伝専門医による詳細な遺伝カウンセリングから判定、陽性後のケア、確定検査の手配までを一貫して行う、極めて稀有な医療機関です。

遺伝カウンセリングでは、「疾患の正確な医学的情報の提供」「ご夫婦の倫理観・価値観のすり合わせ」「利用できる社会資源(サポート体制)の紹介」、そして何より「決断に伴う悲しみを支える心理的ケア(グリーフケア)」を時間をかけて行います。医師が特定の選択を誘導・推奨することは医療倫理上絶対にありません。決定の主役は、常に患者様ご家族です。

また、金銭的な不安が確定診断への障壁とならないよう、当院では互助会(8,000円)により、羊水検査費用が全額補助されます(※NIPT受検者全員に自動で適用される制度です)。さらに2025年6月からは院内での羊水・絨毛検査も可能となり、たらい回しにされることなく、不安な時間を最小化する体制を整えています。

もし今、他院で「陽性」と言われて暗闇の中で震えているなら、どうか一人で抱え込まず、一度私にお話を聞かせてください。あなたが心から納得できる道を、一緒に探していきましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1. NIPTで陽性になったら、必ず中絶しなければならないのですか?

決してそのようなことはありません。NIPTは非確定検査であるため、まずは羊水検査による確定診断が必須です。その上で、ご夫婦がどのような意思決定をされても、私たちが最大限に尊重し、専門的な立場からサポートいたします。

Q2. 人工妊娠中絶は妊娠何週まで可能ですか?

日本の母体保護法により、妊娠22週未満(妊娠21週6日)までと厳格に定められています。NIPTの再検査や羊水検査の結果が出るまでの期間を考慮すると、時間的な余裕は決して多くありません。陽性判定後は迅速な対応が求められます。

Q3. ダウン症候群の場合、産まない選択をする割合はどのくらいですか?

日本国内のデータでは、羊水検査等でダウン症候群が確定した場合、約9割以上のご夫婦が人工妊娠中絶(産まない選択)をされています。これは日本の社会的サポート体制の課題と、ご家族の重い責任感が背景にあります。

Q4. NIPTの結果だけで中絶を決めてもいいですか?

絶対におやめください。NIPTは「胎盤限局性モザイク」などの影響で、赤ちゃんは正常なのに陽性と出てしまう「偽陽性」の可能性が残ります。取り返しのつかない決断を防ぐため、必ず羊水検査などの確定診断を受けてください。

Q5. 検査施設で陽性と言われましたが、羊水検査の案内がありません。

法律上のタイムリミットが迫っています。すぐに当院のような臨床遺伝専門医のいる医療機関へご相談ください。ミネルバクリニックでは、他院で検査された方の確定診断の手配や、遺伝カウンセリングも受け付けております。

Q6. 産まない選択をした場合、その後の心のケアはどうすればいいですか?

深い悲しみや罪悪感を一人で抱え込む必要はありません。当院では、重い決断を下された後の心のケア(グリーフケア)も、遺伝カウンセリングの大切な役割として、ご夫婦の心が落ち着くまで継続してサポートいたします。

関連記事

参考文献

  • [1] 厚生労働省「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」 [公式サイト]
  • [2] 日本産科婦人科学会「母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針(改訂)」 [PDF]
  • [3] 日本産婦人科医会「人工妊娠中絶について(母体保護法)」 [JAOG公式サイト]
  • [4] ACOG. Screening for Fetal Chromosomal Abnormalities. Practice Bulletin No. 226. [ACOG]


仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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