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NIPT(新型出生前診断)陽性結果と中絶率

NIPT(新型出生前診断)の陽性結果は、出生前の赤ちゃんの染色体異常を示す可能性があります。この記事では、NIPTの陽性結果と中絶率について詳細に解説しし、関連する倫理的、医療的、および個人的な問題に焦点を当てます。

NIPTとは何か?

NIPT(新型出生前診断)は、妊娠初期の母体の血液中から胎児の遺伝子情報を解析する非侵襲的な検査です。その主な役割は、胎児の染色体異常や遺伝的疾患のスクリーニングであり、特に21トリソミーや18トリソミーなどの染色体異常の早期発見に役立ちます。NIPTは高い精度を誇り、妊娠中のリスクを評価する手段として広く利用されています。この検査を通じて、妊娠初期に特定の染色体異常のリスクを判断し、必要に応じて追加の検査やケアを提供することが可能です。NIPTは安全で効果的な選択肢の一つとして、妊婦と医療専門家にとって重要なツールとなっています。

NIPT陽性結果の意味とは?

NIPT(新型出生前診断)の陽性結果は、胎児に染色体異常が存在する可能性を示します。一般的に、陽性結果は主に21トリソミー(ダウン症)や18トリソミー、13トリソミーなどの染色体異常に関連しています。具体的には、21トリソミーの場合、胎児が21番染色体を3本持つことがあり、これによって特定の身体的特徴や発達上の課題が生じる可能性があります。

NIPTの陽性結果は、確定診断ではなくスクリーニング結果であるため、追加の検査が必要です。遺伝カウンセリングや羊水検査などの確定診断手段を通じて、染色体異常の有無を確認することができます。NIPTの陽性結果は、リスクの指標であるため、医師の協力のもとで検討することが不可欠です。

NIPT陽性後の中絶率について

NIPT陽性結果に関する妊娠中絶率は国や地域によって異なり、日本では、ダウン症と確定診断がつくと、99%以上が中絶を選んでいます。つまり、中絶率は99.9%以上です。

日本においても、NIPT陽性結果に対する妊娠中絶の選択肢は個人や家族に委ねられており、倫理的・宗教的な信念や家庭の状況に大きく影響されます。NIPTは特定の染色体異常の早期発見に役立つものの、その結果が確定診断ではないことに留意することが重要です。

NIPT陽性結果に直面した場合、慎重な検討と遺伝カウンセリングが必要です。日本においても、遺伝カウンセリングを受けて適切な決定をすることが支援されています。医師や専門家との協力を通じて、個別のケースに最適な選択をすることが重要です。

NIPTが可能になってからダウン症の妊娠中絶が増えたのか?

NIPTが導入されたことで、妊娠中絶が増加し、ダウン症児の出生が減少するのではないかという疑問が提起されています。NIPTがダウン症児の妊娠中絶率と出生率に与える影響を調査した研究を見てみましょう。

これは、NIPT後の妊娠転帰を報告した文献をレビューした研究で、ダウン症のNIPTの陽性結果が高リスクであった女性について中絶率を算出しています。米国、アジア、ヨーロッパ、英国の14の研究がレビューに含まれており、8件の研究でダウン症児の出生が報告されています。NIPT導入前の中絶と比較すると、NIPT導入後の終了率は横ばいか減少となっています。英国では43人中15人が、シンガポールでは6人中2人が、NIPTで高リスクと判定された後も妊娠を継続していました。

NIPT陽性結果に対する中絶の倫理的側面に焦点を当てた議論

NIPT(新型出生前診断)の陽性結果に対する中絶の倫理的側面は複雑な問題であり、以下のポイントに焦点を当てて議論されます。

自己決定権
妊娠中絶の決定は、倫理的には母親の自己決定権の一部として捉えられます。母親は自身の身体と未来の子供についての意思決定権を持ち、NIPTの陽性結果に基づく中絶を含む選択肢を検討する権利があります。
胎児の人権
倫理的な論点として、胎児の人権についても議論されます。胎児の権利を尊重し、どの段階で胎児に権利が認められるかについての立場が異なります。日本においては、人の始期を定めた法律の条文はないのですが、最高裁判例で「うまれて啼泣した時」からと言うことになっています。
医学的必要性
NIPTの陽性結果が確定診断ではないことに留意し、中絶が医学的に必要かどうかが考慮されます。医学的な必要性がない場合、倫理的な問題が浮上することがあります。しかし、日本においては、「経済的事由」で中絶が認められているので、実は、「今は仕事が忙しいので産めない」といった医学的必要性のないケースでも中絶が認められています。
倫理的指針
医療倫理学や法的規制に基づく倫理的な指針が、NIPT陽性結果に対する中絶の実施に関して方針を提供します。これらの指針は医療専門家や患者の意思決定に影響を与えます。日本においては、日本医学会の施設認定の条件に、「中絶ができる事」という内容があるため、中絶がワンセットとなっていることから、ダウン症と中絶に関する倫理的指針はない状態です。
社会的要因
社会的要因や文化的背景も倫理的議論に影響を与えます。NIPT陽性結果に対する中絶が特定の文化や価値観にどのように結びついているかが考慮されます。例えば、日本や韓国は子育てが難しい、障碍者に優しくない国であると考えられますが、こうした国では中絶率がほぼ100%となっています。

NIPT陽性結果に対する中絶の倫理的側面については、個別の状況によって異なるため、遺伝カウンセリングや医師の支援を受けつつ、慎重な検討が必要です。倫理的な観点からの意思決定は個人や家族にとって重要な過程であり、慎重な考慮が求められます。

倫理的な問題の検討:ケース1

Aさんは夫にすすめられてNIPTを受けました。夫が障害のあるお子さんは育てられないと言って、積極的にNIPTを受けました。Aさんとしては、「どうせ陰性だろうから」と軽く考えていました。ところが、結果はダウン症陽性でした。羊水検査で確認もしたのですが、やはり陽性でした。

Aさんはそれでも産みたいと思ったのですが、夫が強固に中絶を勧めました。拒否して自分で上のお子さんとダウン症の次子を育てることも考えたのですが、子どもにきちんと教育を受けさせることができるのかなど、経済的な問題で断念せざるを得ませんでした。ですが、不同意のままで中期中絶した経験は壮絶で、Aさんの心にトラウマを残しました。

医学的な問題の検討:ケース2

Bさんは10週のとき、赤ちゃんに首の後ろのむくみ(NT)を指摘されました。羊水検査をしたのですが、ダウン症陽性でした。それでも、Bさんは産もうかなと迷っていたため、18週で分かっていたのに、中絶手術を決めるのに時間がかかりました。

その後、赤ちゃんの心拍が20週ごろに停止しているのがわかりました。

その上、破水したようで、そこから感染し、Bさんは敗血症となり、命の危機に陥り、中絶手術も緊急帝王切開となり、手術後は集中治療を受けることになりました。もっと早く決断していたら、普通に分娩ですんだかもしれませんが。

折角、「産みたい」と思っても、ダウン症の赤ちゃんは、生まれてこれない可能性もあります。

医師や遺伝カウンセラーが提供できる支援とアドバイス

NIPT(新型出生前診断)の陽性結果に対する医師や遺伝カウンセラーの支援とアドバイスは以下のような点に焦点を当てられます。

確定診断
陽性結果を受けて、医師や遺伝カウンセラーは確定診断を行うための追加の検査オプションを提供し、患者に選択肢を説明します。
情報提供
医師や遺伝カウンセラーは患者に関連情報を提供し、特定の染色体異常(例: ダウン症)に関する理解を深める手助けを行います。
感情的サポート
NIPT陽性結果は家族にとって感情的に難しい瞬間となることが多いため、医師やカウンセラーは感情的サポートを提供し、患者の感情や懸念に対応します。
意思決定支援
医師やカウンセラーは患者に対して、妊娠継続と中絶の選択肢を理解し、個人的な価値観や状況に合わせた意思決定をサポートします。
遺伝カウンセリング
NIPT陽性結果に伴う遺伝的カウンセリングを提供し、遺伝的リスクや遺伝カウンセリングが将来の妊娠に与える影響について議論します。

医師(遺伝専門医)と遺伝カウンセラーは患者のニーズと状況に合わせて支援を提供し、難しい決定に対処する際に役立つ存在です。

中絶決定への対処方法

NIPT(新型出生前診断)の陽性結果を受けて中絶を選択するプロセスは以下のステップで進行します。

確定診断の検討
NIPTはスクリーニング検査であり、確定診断ではありません。陽性結果に対する第一歩は、確定診断を行うための追加の検査を検討することです。一般的に、羊水検査や絨毛検査などが確定診断の手段として提供されます。
遺伝カウンセリング
遺伝カウンセリングを受けることが重要です。遺伝カウンセラーはNIPT陽性結果に関する情報提供や感情的サポートを提供し、選択肢についての理解を深めます。
医師との相談
主治医との相談が必要です。医師は確定診断の結果と患者の健康状態を考慮し、中絶手術の適切な方法やタイミングについてアドバイスを受けます。
法的および倫理的要件の確認
NIPT陽性結果に基づく中絶は、地域や中絶の時期により要件が異なる場合があります。地元の規制に従い、手続きを進めることが必要です。
手術の実施
確定診断が行われ、中絶が決定された場合、母体保護法指定医によって中絶手術が実施されます。手術方法やアフターケアについての詳細は医師から提供されます。
感情的サポート
NIPT陽性結果に対する中絶は感情的に難しい決断であるため、感情的なサポートが必要です。家族や友人とのコミュニケーションやサポートグループへの参加が役立つことがあります。

NIPT陽性結果に対する中絶を選択するプロセスは個人や家族によって異なります。遺伝カウンセリングや医療専門家の支援を受けながら、慎重な検討と決定を下すことが大切です。

まとめ

NIPT陽性結果を受けた中絶率は日本ではほぼ100%近くなっています。出生前診断に対してネガティブな意見もあるでしょうが、現実として、障害を抱えて生きていくのが難しい社会となっていることが要因として大きいので、社会変革をせずに、NIPTだけを悪者にしても何も解決しないと思います。

ミネルバクリニックでは、NIPTの経験が日本有数の臨床遺伝専門医が常駐し、みなさまをサポートしています。

院長アイコン

ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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