目次
いただいたご質問(要約)
出産を控えて、臍帯血を保存(保管)した方がいいのか迷っています。お金をかけて保管しても意味がないのではないか、しなかったら後悔するのではないか、どう考えればよいでしょうか。
臍帯血保管とは、出産のときにへその緒(臍帯)と胎盤に残った血液を凍らせて保管しておくことです。保管先には、ほかの患者さんの移植に使ってもらうために寄付する公的バンクと、費用を払って自分の子や家族のために保管する民間バンクがあります。民間バンクに保管した臍帯血が自分の家族に使われることはまれで、米国小児科学会は「数千件に1件程度」としています。一方、家族に移植で治る病気の人がいる場合は考え方が変わります。この記事では、「意味ない」「後悔」と言われる理由、公的バンクと民間バンクの違い、費用、遺伝の病気がある家族での考え方を、臨床遺伝専門医の立場から整理します。妊娠中に赤ちゃんの染色体や遺伝子の病気が気になる方は、東京のNIPT(新型出生前診断)のページもあわせてご覧ください。
⏱️ 30秒でわかる要約
🩸 Q. 臍帯血保管は意味ないって本当?
民間バンクに保管した臍帯血が自分の家族に使われることは数千件に1件程度とまれです(米国小児科学会)。白血病には本人の臍帯血は使えず、再生医療への利用も研究段階です。ただし、家族に移植で治る病気の人がいる場合は意味が変わります。
🩸 Q. 公的バンクと民間バンクの違いは?
公的バンクは無料の寄付で、ほかの患者さんの移植に使われ、提供したご家族に返却されることはありません。民間バンクは有料で、自分の子や家族のために保管します。
🩸 Q. 費用はどのくらい?
公的バンクへの提供は無料です。民間バンクは保管年数と支払い方法で総額が変わり、月々2,980円(税込・120回払い)からと表示している例では、120回で35万7,600円になります。
🩸 Q. 家族に遺伝の病気があるときは?
生まれる子が同じ遺伝子の変化を持っていれば、その子自身の臍帯血では治療できません。兄弟姉妹のために保管する考え方があり、HLAが一致する確率は兄弟姉妹で4分の1です。
- ➤臍帯血保管とは → 何を保管し、何の治療に使われているか
- ➤公的 vs 民間バンク → 目的・費用・使われ方の違い
- ➤意味ない・後悔と言われる理由 → 使われる確率・白血病・再生医療の研究状況
- ➤費用と保管する人の割合 → 総額の考え方と、国が公表している報告
- ➤民間バンクを選ぶときに確かめること → 法律・契約・保管終了時の扱い
- ➤遺伝の病気がある家族 → 兄弟姉妹のための保管と、両親の保因者検査

1. 臍帯血保管とは?臍帯血と臍帯血移植の基本
臍帯血保管とは、赤ちゃんが生まれたあと、へその緒と胎盤に残っている血液を採って凍らせ、移植などに使えるように保管しておくことです。保管の目的によって、ほかの患者さんの移植に使う公的バンクと、自分の家族のために保管する民間バンクに分かれます。どちらを選ぶか、あるいはどちらも選ばないかは、ご家族が出産前に決めておく必要があります。
臍帯血とは
臍帯血(さいたいけつ)は、へその緒(臍帯)と胎盤の中を流れている赤ちゃん側の血液です。この中には、赤血球・白血球・血小板のもとになる造血幹細胞が含まれています。米国小児科学会は、臍帯血を幹細胞のすぐれた供給源と位置づけ、命にかかわる一部の病気の移植に役立つとしています[1]。
出産が終わればへその緒と胎盤は役目を終えるため、そこに残った血液を採っても、赤ちゃんの体から血液を抜くわけではありません。採れるのは生まれたその日だけなので、「あとで考える」ことができない点が、迷う方が多い理由のひとつです。
臍帯血移植で使われる病気
臍帯血は、骨髄移植や末梢血幹細胞移植と並ぶ造血幹細胞移植の移植源のひとつです。米国小児科学会の方針声明では、臍帯血がおもに使われているのは、乳幼児や子どもの血液のがん、血液の病気、生まれつきの免疫不全、代謝の病気だとまとめられています[1]。
日本では公的バンクを通じた臍帯血移植が積み重ねられており、日本赤十字社の資料では、2021年3月17日に臍帯血移植が2万例に達したと報告されています[2]。つまり臍帯血は「将来の夢の治療」ではなく、すでに血液の病気の治療で毎年使われている医療資源です。ただし、ここで使われているのは主に公的バンクに寄付された、他人の臍帯血です。
💡 用語解説:HLA(ヒト白血球抗原)
HLAは、白血球などの表面にある「自分の目印」となる型です。移植では、提供する人と受ける人のHLAがどれだけ一致しているかが大切になります。HLAを決める遺伝子は6番染色体の近い場所に並んでいて、父と母からひとまとまりずつ受け継がれます。詳しくはHLA(主要組織適合遺伝子複合体)で解説しています。
採取はいつ、どうやって行うのか
日本赤十字社の公的バンクの説明書では、赤ちゃんが無事に生まれ、へその緒を切り離したあとに、へその緒と胎盤に残っている血液を採ると説明されています。お母さんと赤ちゃんに痛みはなく、お産への影響もないこと、お産の経過によっては母子の安全を優先して採取しないことがあることも書かれています[3]。
採った臍帯血は36時間以内に凍結保存しなければならないとされ、必要な細胞だけを分けて、凍結保護剤を加えて凍らせます[4]。公的バンクでは、血液の検査・血液型・HLA・感染症・無菌の検査に合格したものだけが移植用に使われます[4]。採取できる施設が限られている点は、次の章で説明します。
2. 公的バンク(寄付)と民間バンク(自分の子のため)の違い
公的バンクは「ほかの患者さんのための寄付」、民間バンクは「費用を払って自分の家族のために保管する契約」です。同じ「臍帯血を保管する」でも、目的・費用・使われ方がまったく違います。
公的バンクの説明書には、提供は営利を目的とせず、提供したご家族に利益はなく、提供しなくても不利益はないこと、そして提供した臍帯血はどのような場合も返却されないことが明記されています[3]。「寄付したうえで、もしものときは自分の子にも使える」という形ではない点は、誤解されやすいところです。
また、移植の基準に合わなかった臍帯血は研究に使われるか、適切に廃棄されます[3]。量や細胞の数が足りずに保管されないこともあります。公的バンクへの提供を考えている方は、出産を予定している施設が提携施設かどうかを、妊娠中の早い時期に確かめておく必要があります。
3. 臍帯血保管は「意味ない」「後悔」と言われる3つの理由
「意味ない」と言われるのは、民間バンクに保管した臍帯血が実際に自分の家族に使われることがまれで、使いたい場面でも使えないことがあるためです。ここでは理由を3つに分けて、根拠と一緒に見ていきます。
理由1:自分の家族に使われることがまれ
米国小児科学会は2017年の方針声明で、民間バンクに保管した臍帯血が使われることはまれで、その頻度を「数千件に1件程度」と記しています[1]。さらに、移植などの臨床目的で実際に出庫された臍帯血は、公的バンクのほうが民間バンクより30倍多いという報告も紹介されています[1]。
この差には理由があります。公的バンクの臍帯血は、全国、さらには世界中の患者さんの中から「HLAが合う人」を探して使われます。民間バンクの臍帯血は、使える相手がその家族に限られるため、使われる機会はどうしても少なくなります。
理由2:白血病になっても、本人の臍帯血は使えない
「将来この子が白血病になったときのために」と考える方は少なくありません。しかし米国小児科学会は、子どもの白血病では、その子の臍帯血にすでにがんの前段階の細胞が含まれていることがあり、本人の臍帯血はその子の白血病の治療に使えず、他人からの移植が必要になると説明しています[1]。
白血病の移植で臍帯血を使うときは、公的バンクに寄付された他人の臍帯血を使うのが基本です。「自分の臍帯血だから拒絶反応がなく安心」という説明を見かけることがありますが、病気の種類によっては、自分の細胞であることがかえって使えない理由になります。
理由3:再生医療・自閉症への利用は、まだ研究段階
民間バンクの案内では、再生医療への利用が保管の理由として挙げられることがあります。日本赤十字社は、民間バンクについて、再生医療などへの応用は医療技術としてまだ確立していないと説明しています[4]。米国小児科学会も、自分の臍帯血を再生医療に使うことを支える科学的データはまだないとしています[1]。
「臍帯血 自閉症」で調べる方も多いので、研究の結果を紹介します。米国で、2〜7歳の自閉スペクトラム症の子ども180人を、本人の臍帯血・他人の臍帯血・偽薬の3群に分けて点滴し、6か月後に比べたランダム化比較試験が行われました。点滴は安全に行えましたが、全体として社会性や自閉症の症状が改善したという結果は得られませんでした[6]。研究者は、一部の子どもに役立つかどうかはさらに研究が必要だと結論しています[6]。
⚠️ 自閉症について知っておいてほしいこと
自閉症の原因の一部には、染色体の小さな欠け(微小欠失)や単一の遺伝子の変化があります。こうした原因の一部は、妊娠中のNIPTで調べられるものがあります。詳しくは一部の自閉症・発達障害の原因はNIPTでわかるで説明しています。ただし調べられるのは原因の一部で、結果が陰性でも自閉症にならないという意味ではありません。
🩺 院長コラム【「まれ」という数字を、正面から見てほしい】
「数千件に1件」という頻度を見て、「それなら意味がない」と感じる方は多いと思います。私は、だから無意味だとは言いません。使わなかった保険を「無駄だった」と言わないのと同じで、「備えてある」ことに価値を感じる方もいるからです。
ただし、その備えが何に使えて何に使えないのかは、正確に知っておいてほしいと考えています。とくに「白血病への備え」と「再生医療への期待」は、根拠の強さがまったく違います。数字と中身を知ったうえで選んだのであれば、保管してもしなくても、後悔は少なくなるはずです。
4. 臍帯血保管の費用・料金と、保管する人の割合
公的バンクへの提供は無料、民間バンクは有料で、総額は保管年数と支払い方法で大きく変わります。月額の安さだけで比べず、何年分でいくらになるかを計算して比べることが大切です。
民間バンクの費用の考え方
日本の民間バンクの料金は各社が公表しています。たとえば、月々2,980円(税込)から保管できると表示し、その金額が120回の分割払いであると明記している例があります[9]。この表示どおりに計算すると、2,980円×120回で35万7,600円です。これは「最も安い表示の場合」の計算なので、保管年数やプランによって総額はさらに変わります。
参考として、米国小児科学会は米国の民間バンクについて、最初の費用が1,350〜2,300ドル、年間の保管料が100〜175ドルと紹介しています[1]。国が違っても、「最初にまとまった費用がかかり、その後も保管料がかかる」という構造は共通しています。
💴 民間バンクの見積もりで確かめたい費用
| 確かめること | 理由 |
|---|---|
| 何年分の料金か | 10年と20年では総額が大きく違う |
| 月額が分割払いか | 月額表示は分割回数をかけた総額で比べる |
| 更新するときの料金 | 契約期間が終わったあとの費用は別にかかることがある |
| 採取が少なかったときの扱い | 量や細胞数が足りない場合の返金・保管の有無 |
臍帯血を保管する人の割合は?
「臍帯血バンクをする人の割合」を気にする方は多いのですが、国が公表しているのは、民間バンクの事業者ごとの保管数や提供実績の報告で、出産した人のうち何%が保管しているかという統計の形にはなっていません。
国に提出された民間バンク1社の業務実績報告(2025年3月31日時点)を見ると、保管している臍帯血は816件、その年に新たに保管したのは12件でした。そして、契約者やその家族への提供、第三者への提供、研究への提供は、いずれも0件と報告されています[8]。1社の数字なので全体を代表するものではありませんが、保管された臍帯血が実際に使われる機会の少なさを、日本の公的な報告で確かめられる例です。
同じ報告では、契約が終わった155件のうち64件が、契約者の住所がわからず連絡がとれないため、同意を得られないまま処分できずに残っているとされています[8]。保管は十数年、二十年という長い契約になります。引っ越しなどで連絡先が変わったら届け出ることも、契約の一部だと考えておいてください。
5. 臍帯血保管のメリット・デメリット
メリットは「出産のときにしか採れないものを残しておける」こと、デメリットは「費用がかかるわりに使われる機会がまれで、使えない病気もある」ことです。ここまでの内容を表にまとめます。
⚖️ 民間バンクに保管するメリット・デメリット
米国小児科学会は、命にかかわる病気の移植のためには公的バンクへの提供を勧め、民間バンクの役割は「家族に、家族の臍帯血移植で治療できる病気の人がいる場合」に限られるとしています[1]。また、医師は保管先を決める前に、自分の臍帯血と他人の臍帯血の使われ方の違い、利点と限界を正しく伝えるべきだとしています[1]。
6. 民間バンクを選ぶときに確かめること
民間バンクを選ぶときは、会社の評判よりも、法律にもとづく届出をしているか、契約で保管期間と終了時の扱いがどう決められているかを確かめてください。「〇〇 怪しい」と検索する前に、次の点を見れば、契約の中身を自分で判断できます。
2019年からの法律のルール
移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律が改正され、2018年12月14日に公布、2019年3月14日に施行されました。許可を受けた臍帯血供給事業者以外の者が、移植に用いる臍帯血を業として採取・保存・引き渡しすることなどが禁止され、違反には3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはその両方が科されます[7]。
ただし、本人や家族が自分たちで使うために、本人の求めに応じて採取・引き渡しする場合は禁止の対象外とされています[7]。つまり民間バンクで家族のために保管すること自体は認められており、そのうえで国は民間バンクに、業務内容の届出と業務実績の報告を求めています[8][10]。
契約前に確かめたい5つのこと
📝 民間バンクの契約前チェック
| 項目 | 確かめる内容 |
|---|---|
| 国への届出 | 厚生労働省への届出・業務報告を行っている事業者か |
| 保管期間 | 何年保管するか、延長できるか、延長の費用 |
| 終了・事業をやめたときの扱い | 契約が終わったとき、事業者が事業をやめたときに臍帯血をどうするか |
| 第三者・研究への提供 | 家族以外や研究に使われることがあるか、同意の取り方 |
| 連絡先の変更 | 引っ越し・連絡先変更の届け出方法(連絡がとれず処分できない例が報告されている[8]) |
民間バンクの届出書の様式でも、契約者に連絡がとれない場合の扱い、第三者への提供の有無、品質管理の体制などを事業者が記入することになっています[10]。契約前にこれらを質問し、書面で答えをもらっておくと安心です。
7. 遺伝の病気がある家族では、どう考えるか
家族に、造血幹細胞移植で治療できる遺伝の病気の人がいる場合は、臍帯血保管の意味が大きく変わります。米国小児科学会も、民間バンク(家族のための保管)が役に立つのは、家族にこうした病気の人がいる場合だとしています[1]。ここでは臨床遺伝専門医の立場から、考え方の順番を整理します。
生まれる子本人の遺伝の病気には、本人の臍帯血は使えない
遺伝の病気は、生まれつき持っている遺伝子の変化が原因です。生まれてくる子が病気の原因となる遺伝子の変化を持っていれば、その子の臍帯血の細胞も同じ変化を持っています。そのため、その子自身の遺伝の病気を、その子の臍帯血で治すことはできません。必要なのは、同じ変化を持たず、HLAが合う人の細胞です。
移植で治療されることがある遺伝の病気には、重症複合免疫不全症(SCID)やサラセミアなどがあります。上の子がこうした病気で移植を検討している場合、次に生まれる子の臍帯血は、上の子の移植の候補になりえます。
兄弟姉妹でHLAが一致する確率は4分の1
HLAを決める遺伝子は、父からひとまとまり、母からひとまとまりを受け継ぎます。父の2つのまとまりのどちらか1つ、母の2つのまとまりのどちらか1つを受け継ぐので、組み合わせは4通りです。そのため、兄弟姉妹どうしでHLAが同じ組み合わせになる確率は、原則として4分の1(25%)になります。
言いかえると、上の子のために下の子の臍帯血を保管しても、4分の3はHLAが合いません。また、潜性(劣性)遺伝の病気では、下の子が上の子と同じ病気だったり、保因者だったりする可能性もあります。兄弟姉妹のための保管を考えるときは、上の子の主治医と移植の担当医に、移植の必要性と、どんな条件なら臍帯血が使えるかを確かめることが出発点です。
両親の保因者検査で、次の子のリスクを知る
移植で治療される遺伝の病気には、常染色体潜性(劣性)遺伝やX連鎖遺伝のものが多くあります。こうした病気は、両親が病気の遺伝子の変化を1つずつ持つ「保因者」であっても、両親自身には症状がないため、子どもが生まれるまで気づかれないことがあります。
当院の拡大版保因者検査には、女性787遺伝子と男性714遺伝子、女性1009遺伝子と男性911遺伝子の2つの組み合わせがあります。女性787遺伝子・女性1009遺伝子の一覧には、βサラセミアのHBB、SCIDのADA・IL2RG・RAG1が含まれています。オンライン診療でも受けられ、オンラインの遺伝カウンセリングの料金は事前にお支払いいただきます。妊娠中の方は、NIPTと同じ日に採血するファミリーセーフティ プラスもあります(単独では受けられません)。
🩺 院長コラム【臍帯血を考えるなら、家族の病歴を先に整理する】
臍帯血保管の判断で、私がいちばん大切だと考えているのは、ご家族の病歴です。血液の病気や生まれつきの免疫の病気、代謝の病気のご家族がいるかどうかで、臍帯血を保管する意味は大きく変わります。
そして遺伝の病気の場合は、「臍帯血で治す」より前に、「次の子がその病気を持つ可能性はどのくらいか」「妊娠中に何を調べられるか」を知ることが役に立つと考えています。両親の保因者検査や妊娠中の検査で分かることを整理したうえで、臍帯血をどうするかを決める順番をおすすめします。
妊娠中にできること
当院では、遺伝カウンセリングで家族の病歴を整理し、妊娠中に調べられることをご説明しています。当院のNIPT(新型出生前診断)は妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は確定検査で確かめる必要があります。当院では、NIPTで陽性になったときの確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。当院の遺伝子検査・NIPT・遺伝カウンセリングは自費診療です。
なお、当院では臍帯血の採取・保管は行っていません。公的バンクへの提供や民間バンクでの保管を考えている方は、出産を予定している分娩施設に、提携しているバンクや採取の対応を確かめてください。厚生労働省も、出産を予定している方向けに臍帯血の情報をまとめています[10]。
よくある質問(FAQ)
Q1. 臍帯血保管は意味ないって本当ですか?
民間バンクに保管した臍帯血が自分の家族に使われることはまれで、米国小児科学会は数千件に1件程度としています。子ども本人の白血病には使えず、再生医療への利用も研究段階です。一方、家族に移植で治療できる病気の人がいる場合は、兄弟姉妹のための保管に意味があります。
Q2. 公的バンクに提供した臍帯血を、あとで自分の子に使えますか?
使えません。公的バンクに提供した臍帯血は、移植が必要なほかの患者さんのためのもので、どのような場合も返却されないと説明されています。提供は無料で、提供しなくても不利益はありません。
Q3. 自分の臍帯血で、将来の白血病を治療できますか?
子どもの白血病では、その子の臍帯血にすでにがんの前段階の細胞が含まれていることがあり、本人の臍帯血はその子の白血病の治療に使えず、他人からの移植が必要になると米国小児科学会は説明しています。
Q4. 臍帯血で自閉症は治りますか?
自閉スペクトラム症の子ども180人を対象にしたランダム化比較試験では、臍帯血の点滴で、全体として社会性や自閉症の症状が改善したという結果は得られませんでした。現時点では研究段階です。
Q5. 兄弟姉妹なら臍帯血を使えますか?
兄弟姉妹でHLAが一致する確率は、原則として4分の1です。家族に造血幹細胞移植で治療できる病気の人がいる場合は、兄弟姉妹のために保管する考え方があります。使えるかどうかは、移植の担当医に確かめてください。
Q6. ミネルバクリニックで臍帯血の採取や保管はできますか?
当院では臍帯血の採取・保管は行っていません。出産を予定している分娩施設に、提携しているバンクや採取の対応を確かめてください。当院では、家族の病歴の整理や両親の保因者検査、妊娠中のNIPTについて、臨床遺伝専門医が遺伝カウンセリングでご説明しています。
まとめ
臍帯血保管は、出産のときにしか採れない臍帯血を残しておく選択肢です。公的バンクは無料の寄付でほかの患者さんの移植に使われ、民間バンクは有料で家族のために保管します。民間バンクの臍帯血が家族に使われるのは数千件に1件程度とまれで、子ども本人の白血病には使えず、再生医療・自閉症への利用は研究段階です[1][6]。
一方で、家族に移植で治療できる病気の人がいる場合は、兄弟姉妹のための保管に意味があります。遺伝の病気が心配な方は、臍帯血をどうするかの前に、両親の保因者検査や妊娠中のNIPT(新型出生前診断)で分かることを整理しておくと、判断の材料が増えます。
🏥 妊娠中の検査と家族の遺伝の相談
ミネルバクリニック(東京・北青山)は臨床遺伝専門医が常駐し、NIPTは妊娠9週から、妊娠6〜8週は臨床研究として受けられます。陽性の場合は確定検査(絨毛検査・羊水検査)まで院内で受けられます。検査を受けるかどうかまだ決めていない方は、検査で何がわかるかを遺伝カウンセリングとはで先にご覧ください。
参考文献
- [1] Shearer WT, Lubin BH, Cairo MS, Notarangelo LD; Section on Hematology/Oncology; Section on Allergy and Immunology. Cord Blood Banking for Potential Future Transplantation. Pediatrics. 2017;140(5):e20172695. [DOI: 10.1542/peds.2017-2695]
- [2] 日本赤十字社 九州さい帯血バンク. 九州さい帯血バンクのご案内. [日本赤十字社]
- [3] 日本赤十字社 さい帯血バンク. さい帯血提供についての説明. [日本赤十字社]
- [4] 日本赤十字社 造血幹細胞移植情報サービス. さい帯血バンクについて. [日本赤十字社]
- [5] 千葉県. 臍帯血(さい帯血)について. [千葉県]
- [6] Dawson G, Sun JM, Baker J, et al. A Phase II Randomized Clinical Trial of the Safety and Efficacy of Intravenous Umbilical Cord Blood Infusion for Treatment of Children with Autism Spectrum Disorder. J Pediatr. 2020;222:164-173.e5. [DOI: 10.1016/j.jpeds.2020.03.011]
- [7] 厚生労働省健康局長通知. 移植に用いる造血幹細胞の適切な提供の推進に関する法律の一部を改正する法律の施行について(日本神経学会ウェブサイト掲載). [PDF]
- [8] 厚生労働省. 臍帯血プライベートバンク 業務実績報告書(様式4、2025年3月31日時点). [厚生労働省]
- [9] 民間さい帯血バンクの報道発表資料(2025年12月19日). [報道発表]
- [10] 厚生労働省. 赤ちゃんを出産予定のお母さんへ(臍帯血関連情報)/臍帯血プライベートバンク 業務内容の届出(様式1). [厚生労働省] [届出様式の例]



