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原発性線毛機能不全症9

疾患に関係する遺伝子/染色体領域

疾患概要

CILIARY DYSKINESIA, PRIMARY, 9; CILD9
原発性線毛機能不全症9(CILD9)は、17q25染色体上のDNAI2遺伝子(605483)のホモ接合性変異によって引き起こされます。
原発性線毛機能不全症(Primary Ciliary Dyskinesia, PCD)は、正常な繊毛の機能が失われることで引き起こされる常染色体劣性遺伝疾患です。繊毛は呼吸器や生殖器など多くの器官で重要な役割を果たしており、異常があると慢性的な気道感染症や不妊などの症状が現れます。

カルタゲナー症候群(Kartagener syndrome)は、PCDに加えて内臓逆位(situs inversus)を併発する症状です。PCD患者の約半数がこの症候群を発症します。通常、体内の臓器は左右非対称に配置されていますが、カルタゲナー症候群では、この配置が左右逆になることがあります。これは、胚発生の段階で繊毛運動が正常に機能しないため、臓器の左右のパターン形成がランダムに決定されることが原因です。そのため、同一家族内でも、約50%の患者に内臓逆位が見られることがあります【Afzelius, 1976; El Zein et al., 2003】。

カルタゲナー症候群やPCDのような疾患は、複数の異なる遺伝子変異が原因で発症することが知られており、遺伝的多様性が特徴です。これにより、疾患の重症度や臨床的な表現型にも個人差が生じます。

臨床的特徴

Loges ら(2008年)は、イラン系ユダヤ人の近親交配家族において、原発性線毛機能不全症(PCD)の新生児2人を報告しました。この2人の新生児は、新生児肺炎、反復性鼻炎、副鼻腔炎、中耳炎、難聴、慢性咳、および気管支拡張症といった特徴を示しました。また、家族内の他の2人のメンバーにも内臓逆位が認められ、これらの症状がカルタゲナー症候群と一致していることが確認されました。さらに、家族には不妊症の男性も含まれており、電子顕微鏡による検査では、呼吸器線毛および精子尾部の外側ダイニンアームの欠如が確認されました。

一方、Knowles ら(2013年)は、アシュケナージ系ユダヤ人のCILD9を発症した3人の患者について報告しています。これらの患者は、新生児呼吸窮迫症候群、副鼻腔炎、中耳炎、気管支拡張症、および鼻内一酸化窒素の減少などの症状を呈し、そのうち2人には内臓逆位が認められました。これらの患者の呼吸器上皮細胞では、電子顕微鏡検査により線毛外ダイニンアームの欠損が確認されました。これらの特徴は、PCDおよびカルタゲナー症候群の典型的な症状です。

遺伝

Loges ら(2008)が報告した家族における CILD9 の伝達パターンは、常染色体劣性遺伝と一致していました。

分子遺伝学

CILD9を発症した3つの無関係な家系の患者において、Logesら(2008年)はDNAI2遺伝子に3つの異なるホモ接合性変異(605483.0001-605483.0003)を特定しました。影響を受けた線毛では、機能的なDNAI2タンパク質が完全に欠損しており、これらの変異は劣性の機能喪失変異と一致していました。

また、Knowles氏らは、CILD9患者であるアシュケナージ系ユダヤ人の3名において、DNAI2遺伝子におけるホモ接合性変異(W453X;605483.0004)を同定しました。この変異はエクソームシーケンスにより同定され、ハプロタイプ解析により創始者効果の存在が示唆されました。

疾患の別名

CILIARY DYSKINESIA, PRIMARY, 9, WITH OR WITHOUT SITUS INVERSUS

参考文献

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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