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C症候群(Opitz三角頭蓋症候群) – 遺伝子疾患情報 | 症状・原因・診断基準

仲田洋美 医師

この記事の監修:仲田洋美(臨床遺伝専門医)

のべ10万人以上の意思決定に伴走。国際医療誌『Medical Care Review APAC』『Global Woman Leader』の2誌で表紙を飾り、「Top Prenatal Testing Service in APAC 2025」に選出されるなど、世界基準の遺伝医療を提供。

C症候群(Opitz三角頭蓋症候群)は、世界で60例未満しか報告されていない超希少遺伝性疾患です。CD96遺伝子の変異が主な原因で、特徴的な三角形の頭蓋変形と全身の多発先天異常を呈します。遺伝的背景が患者ごとに異なることも多く、包括的な遺伝学的解析と多学際的な医療支援が不可欠です。

この記事でわかること
📖 読了時間:約15分
🧬 C症候群・CD96遺伝子・希少遺伝性疾患
臨床遺伝専門医監修
  • 疾患概要と別名 → 1969年初記載の超希少疾患。CD96遺伝子変異が主因
  • 臨床的特徴 → 三角頭蓋・知的障害・先天性心疾患・関節拘縮など多系統の症状
  • 分子遺伝学 → CD96遺伝子の役割とT280Mミスセンス変異のメカニズム
  • 診断・治療 → 全エクソーム解析が第一選択。根治療法はなく対症療法が中心
  • 出生前検査との関係 → 父親の加齢とde novo変異リスク、次子への備え

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1. C症候群(Opitz三角頭蓋症候群)とは:概要と発見の歴史

C症候群(Opitz三角頭蓋症候群)は、染色体3q13.13-q13.2に位置するCD96遺伝子のヘテロ接合性変異によって引き起こされる極めて稀な遺伝性疾患です。1969年にOpitzらによって初めて記載され、三角頭蓋(trigonocephaly)を特徴的所見とする複数の先天異常を伴う症候群として知られています。OMIM登録番号は211750です。

💡 用語解説:三角頭蓋(trigonocephaly)とは?

前頭縫合の早期癒合によって前頭部が狭小化し、上方から見ると頭蓋が三角形に見える状態です。C症候群の最も特徴的な外観的所見であり、診断の重要な手がかりとなります。前頭縫合は通常、乳幼児期に自然に融合しますが、C症候群では出生前後から異常に早く閉じてしまうため、この特徴的な頭蓋形状が生じます。

CD96遺伝子は免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーをコードしており、細胞接着と細胞成長に重要な役割を果たします。特に胚発生期において、前頭部と心血管系の発達に必須の機能を持っています。

💡 免疫グロブリンスーパーファミリーとは?
細胞の表面に存在するたんぱく質の大きなグループで、細胞同士の「接着」や「認識」に関わります。免疫機能だけでなく、受精卵(胚)の発育にも重要な役割を担います。CD96はこのグループに属し、細胞の接着と増殖の制御スイッチとして機能します。

C症候群は遺伝学的に極めて複雑で、CD96遺伝子変異によるもの以外に、ASXL1遺伝子変異によるBohring-Opitz症候群(C様症候群)との臨床的重複も認められています。近年の分子遺伝学的研究により、本症候群は「private syndrome」すなわち患者ごとに異なる遺伝的背景を持つ可能性が示唆されており、正確な診断には包括的な遺伝学的解析が必要です。

🔬 「private syndrome(プライベート症候群)」とは?
患者さんごとに原因となる遺伝子が異なる可能性がある症候群を指します。臨床的には似た症状でも遺伝的背景が異なるため、一人ひとりに合わせた遺伝学的検査と解釈が必要になります。

有病率は推定80万〜100万人に1人とされており、現在までに世界で60例未満の報告しかない超希少疾患です。症状の重篤度は極めて可変的で、軽度の発達遅延から重篤な多臓器不全まで幅広い表現型を示します。

疾患の別名と国際分類

C症候群は複数の名称で呼ばれることがあります。「C」という名称は、Opitzらが最初の症例を報告した際に用いた命名に由来します。

名称の種類 名称
OMIM ID 211750
英語正式名 C SYNDROME / Opitz trigonocephaly syndrome
日本語名 C症候群 / Opitz三角頭蓋症候群 / 三角頭蓋症候群
別名 多発性先天異常症候群C型 / TRIGONOCEPHALY SYNDROME

遺伝的不均一性:複数の遺伝子が関与する

C症候群は単一の遺伝子疾患ではなく、複数の遺伝子が原因となる可能性があります。主要なものを以下にまとめます。

CD96遺伝子(OMIM 606037)

染色体3q13.13に位置。C症候群の主要な原因遺伝子で、免疫グロブリンスーパーファミリーに属するたんぱく質をコードします。

ASXL1遺伝子(OMIM 612990)

染色体20q11に位置。Bohring-Opitz症候群(C様症候群、605039)の原因遺伝子として同定されています。

その他の関連遺伝子

FOXP1、MAGEL2、IFT140、KLHL7なども関連が報告されています。3p欠失・3q重複などの染色体異常も同様の表現型を呈することがあります。

2. 臨床的特徴:多系統にわたる多彩な症状

C症候群は多くの臓器・器官にわたる先天異常を特徴とする複雑な疾患です。症状の程度は患者によって大きく異なりますが、以下のような所見が報告されています。

⚠️ 重要:約半数の患者が生後1年以内に死亡するとされており、重篤な心血管異常や多臓器不全が主な死因です。軽症例では比較的良好な予後も期待できますが、長期的な発達支援が必要です。

① 頭蓋顔面異常

最も特徴的な所見は三角頭蓋(trigonocephaly)です。前頭縫合の早期癒合により前頭部が狭小化し、上から見ると頭が三角形に見えます。顔面では以下の所見が見られます。

  • 上向きの眼瞼裂(目が上方向に傾いた外観)
  • 内眼角贅皮(目頭に余分な皮膚のひだがある状態)
  • 眼間開離(両目の間隔が広い状態)
  • 鼻根部陥凹・短鼻・小顎症(顎が小さい)
  • 低位耳介(耳の位置が低い)・耳介奇形

② 神経発達異常

重篤な知的障害が高頻度に認められ、多くの症例で精神運動発達遅滞を呈します。筋緊張低下(hypotonia)は乳児期から顕著で、運動発達の遅延をきたします。一部の症例では正常知能も報告されており、表現型の幅は極めて広範囲です。

💡 筋緊張低下(hypotonia)とは?
筋肉の張りが弱くなった状態です。乳児期に「体がぐにゃぐにゃする」「首がすわらない」などの形で気づかれることが多く、C症候群では出生直後から認められることがあります。理学療法や運動療育によるアプローチが重要です。

③ 心血管系異常

先天性心疾患は可変的に認められます。心室中隔欠損、心房中隔欠損、Fallot四徴症、Eisenmenger症候群などが報告されています。重篤な心疾患は予後を左右する重要な因子となります。

④ 骨格異常

関節拘縮(特に肘・手関節・指の屈曲拘縮)が特徴的です。多指症(通常は軸後性)・合指症も高頻度に見られます。脊椎異常として側弯症や後弯症を伴うこともあります。

💡 関節拘縮とは?
関節が硬くなって動かしにくくなった状態です。胎児期から関節の動きが制限されるため、出生時すでに手足が特定の角度で固まっていることがあります。理学療法・作業療法・装具療法で改善を図ります。

⑤ その他の異常

皮膚異常

皮膚の弛緩・冗長性(特に頸部)、前額部の毛細血管奇形、口唇裂・口蓋裂

泌尿生殖器異常

男児:停留精巣・尿道下裂・小陰茎。腎奇形(水腎症・腎形成異常)

消化器・その他

臍ヘルニア・横隔膜ヘルニア・腸回転異常、摂食困難、成長障害、聴力障害

仲田洋美院長

🩺 院長コラム【超希少疾患と向き合うご家族へ】

「世界で60例しかない」と言われると、ご家族は深い孤独を感じます。診察室でその言葉を聞くたびに、「でも、だからこそ一人ひとりに寄り添う医療が必要なんだ」と強く思います。情報が少ない疾患ほど、国際的な専門家ネットワークやデータベースをフル活用した診断・支援の組み立てが重要になります。

遺伝性疾患の診断後に大切なのは「今すぐ何ができるか」を整理することです。医学的管理はもちろん、次の子どもへの出生前診断の選択肢を把握しておくことも、ご家族の心の安定につながります。ひとりで抱え込まないでください。

3. 分子遺伝学:CD96遺伝子と発症メカニズム

C症候群の分子遺伝学的基盤は、2007年のKaname et al.による画期的な研究によって初めて解明されました。均衡転座t(3;18)(q13.13;q12.1)を有するC症候群患者の解析から、CD96遺伝子が3q13.13の転座切断点で破綻していることが発見されました。

💡 用語解説:ヘテロ接合性変異とは?

私たちの染色体は2本ずつペアになっています。「ヘテロ接合性変異」とは、このうち片方の染色体にだけ変異がある状態を指します。C症候群ではCD96遺伝子の1コピーに変異があるだけで疾患が発症します。これが「常染色体優性遺伝」という遺伝形式の根拠です。

CD96遺伝子の構造と機能

CD96遺伝子(TACTILE遺伝子とも呼ばれる)は、染色体3q13.13に位置し、免疫グロブリンスーパーファミリーに属する糖たんぱく質をコードします。この蛋白質は細胞表面受容体として機能し、CD155(ポリオウイルス受容体)との相互作用により細胞接着を制御します。CD96は特に以下の機能を持ちます。

  • ナチュラルキラー(NK)細胞と標的細胞間の接着促進
  • 細胞増殖の制御
  • 胚発生期における前頭部と心血管系の発達制御
  • 神経堤細胞の分化と移動の調節

変異のメカニズム:T280Mミスセンス変異

Kaname et al.(2007)の研究では、C様症候群患者のCD96遺伝子エクソン6にT280Mミスセンス変異(839C→T)が同定されました。この変異により、CD96たんぱく質の細胞接着能と細胞増殖能が著しく低下することが実験的に証明されています。

💡 ミスセンス変異とは?
DNAの1塩基が別の塩基に置き換わることで、アミノ酸が異なるものに変わってしまう変異のことです。「T280M」は280番目のアミノ酸(スレオニン:T)がメチオニン(M)に変わったことを意味します。このわずかな変化がCD96たんぱく質の機能を大きく損ないます。

変異型CD96たんぱく質を発現する細胞では、細胞接着活性の完全な消失、細胞増殖能の有意な低下、細胞形態の異常などが観察されます。CD96遺伝子は胎児脳・心臓・血管・骨格筋・免疫系組織・泌尿生殖器系など多くの組織で高い発現を示しており、これがC症候群の多彩な臨床症状と対応しています。マウス胚を用いた解析では、Cd96遺伝子が発生10日目の胚において前頭部と心血管系で強く発現することが確認されています。

4. 遺伝形式:常染色体優性・劣性・生殖細胞モザイク

C症候群の遺伝形式は複雑で、複数の遺伝様式が報告されています。当初は常染色体劣性遺伝が想定されていましたが、分子遺伝学的研究の進歩により、より複雑な遺伝メカニズムが明らかになっています。

💡 常染色体優性遺伝とは?
遺伝子の1コピーだけに変異があれば疾患が発症する遺伝形式です。理論上、罹患した親から子への遺伝確率は50%になりますが、C症候群の多くは親には変異がなく、受精卵の段階で新たに生じた「de novo変異(新規変異)」によるものです。

常染色体優性遺伝

CD96遺伝子変異による症例では転座と点変異の両方がヘテロ接合性で認められます。変異の多くはde novo(新規)で発生します。

常染色体劣性遺伝

一部の家族例では、正常な両親から複数の罹患児が生まれる例が報告されており、近親婚の既往も見られます。

生殖細胞モザイク

多くが孤発例である一方で同胞発症例も報告されており、生殖細胞モザイクの可能性も示唆されます。再発リスクは約10%と見積もられます。

💡 生殖細胞モザイクとは?
親本人には症状がなくても、精子や卵子の一部だけに変異が含まれている状態です。この場合、一見「突然変異」のように見えても次の子どもにも変異が受け継がれるリスクがあります。C症候群で同胞(きょうだい)に発症例がある場合、この可能性を念頭に置く必要があります。

遺伝形式の複雑さから、個々の家族に対する適切な遺伝カウンセリングが不可欠です。分子遺伝学的診断により、より正確なリスク評価と遺伝カウンセリングが可能となります。特に同胞発症の報告があることから、次子妊娠時には十分な監視が必要です。

5. 診断基準と鑑別診断

C症候群の診断は、特徴的な臨床所見と分子遺伝学的検査の組み合わせによって行われます。遺伝学的不均一性が高いため、包括的な遺伝学的評価が特に重要です。

主要診断基準

① 三角頭蓋

前頭縫合の早期癒合による特徴的な頭蓋形態。最重要の診断手がかり。

② 特徴的顔貌

上向き眼瞼裂・内眼角贅皮・鼻根部陥凹・小顎症の組み合わせ

③ 知的障害

軽度から重度まで可変的な知的発達の遅れ

④ 筋緊張低下

乳児期からの顕著な筋緊張低下(hypotonia)

⑤ 関節拘縮

特に上肢(肘・手首・指)の屈曲拘縮が特徴的

分子遺伝学的診断

確定診断には以下の遺伝学的検査が推奨されます。

  • 全エクソーム解析(WES):第一選択として推奨。未知の変異も網羅的に検出可能
  • 特定遺伝子解析:CD96・ASXL1・FOXP1・MAGEL2の変異解析
  • 染色体検査:3番染色体異常のスクリーニング
  • アレイCGH:コピー数変動(CNV)の検出

💡 全エクソーム解析(WES)とは?
たんぱく質をコードするすべての遺伝子(エクソーム)の塩基配列を一度に解読する検査です。原因遺伝子が特定されていない場合や複数の遺伝子が候補に挙がる場合に有用で、C症候群のように遺伝的不均一性が高い疾患では特に威力を発揮します。

鑑別が必要な疾患

疾患名 主な特徴・鑑別ポイント
Bohring-Opitz症候群 ASXL1変異。C様症候群として最も臨床的に近い疾患
Kleefstra症候群 EHMT1変異。知的障害・自閉症様特徴・特徴的顔貌
Kabuki症候群 KMT2D/KDM6A変異。特徴的顔貌・成長障害・多臓器異常
Schaaf-Yang症候群 MAGEL2変異。関節拘縮・知的障害・自閉症スペクトラム症状
単独三角頭蓋 他の先天異常を伴わない孤立性の三角頭蓋
仲田洋美院長

🩺 院長コラム【「診断がついた」その後が大切です】

C症候群の診断が確定したとき、ご家族が最初に感じるのは「これからどうなるの?」という不安です。超希少疾患であればあるほど、調べても情報が少なく、孤立感が増します。でも、「診断はゴールではなくスタート」だということをお伝えしたいのです。

治療の方向性を組み立て、定期フォローの体制を整え、次の妊娠への備えを一緒に考える。それが遺伝専門医の役割です。診断後の遺伝カウンセリングをぜひ活用してください。

6. 治療と管理:多学際的アプローチが基本

C症候群に対する根治的治療法は現在のところ存在せず、対症療法と多学際的アプローチによる包括的管理が治療の中心となります。早期からの適切な介入により、患者の生活の質を改善し、合併症を予防することが可能です。

🏥 新生児期・乳児期の急性管理

  • 気道管理(小顎症・筋緊張低下による気道閉塞リスク)
  • 摂食支援(経管栄養・胃瘻造設の検討)
  • 先天性心疾患の早期発見・循環管理

🔧 外科的治療

  • 頭蓋形成術(生後6〜12ヶ月が目安)
  • 先天性心疾患の根治術または姑息術
  • 多指症・合指症の形成外科的治療

🌱 発達支援

  • 理学療法(筋緊張低下・運動発達遅滞への対応)
  • 作業療法(ADL獲得・関節拘縮予防)
  • 言語療法(コミュニケーション能力向上)
  • 個別の特殊教育プログラム

長期経過観察の目安

  • 成長発達の評価(3〜6ヶ月毎)
  • 心機能評価(年1〜2回)
  • 神経学的評価・発達検査(年1回)
  • 聴力検査・眼科検査(年1回)
  • 整形外科的評価(年1〜2回)

7. 予後と転帰:早期管理が生活の質を左右する

C症候群の予後は症状の重篤度により大きく異なります。予後を決定する主要因子は心血管異常の重篤度、中枢神経系異常の程度、および多臓器不全の有無です。

⚠️ 生命予後について:約50%の患者が生後1年以内に死亡するとされており、主要死因は重篤な先天性心疾患・多臓器不全・呼吸不全です。一方で、適切な医学的管理により成人期まで生存可能な症例も増加しています。

神経発達予後

大多数の症例で中等度から重度の知的障害が認められますが、一部では正常知能も報告されています。言語発達の遅滞が顕著で、自閉症スペクトラム様の行動異常を伴うことがあります。理学療法により運動機能の一定の改善が期待できますが、関節拘縮の進行に注意が必要です。

父親の加齢とde novo変異リスク

C症候群を含む多くの希少遺伝性疾患はde novo変異(新規変異)で生じますが、父親の加齢効果(paternal age effect)との関連が確認されています。高齢父親からの出生児では、精子形成過程での変異蓄積によりde novo変異のリスクが増加します。

💡 de novo変異(新規変異)とは?
親には存在しない変異が、子の受精卵の段階で新たに生じたものです。C症候群の多くはこのde novo変異によるため、「家族歴がないから安心」とは言い切れません。父親が高齢になるほど、精子のDNAに新規変異が蓄積しやすくなることが知られています。

ミネルバクリニックのMulti-NIPT de novoでは、父親の加齢に関連する新規変異リスクを包括的に評価し、早期からの適切な遺伝カウンセリングを提供しています。C症候群をはじめとする重篤な遺伝性疾患のリスク評価が可能で、家族計画における重要な判断材料となります。

よくある質問(FAQ)

Q1. C症候群とはどのような病気ですか?

CD96遺伝子のヘテロ接合性変異によって引き起こされる極めて稀な遺伝性疾患です。1969年にOpitzらによって初めて記載され、三角頭蓋(前頭縫合の早期癒合により頭が三角形に見える状態)を特徴とする多発性先天異常症候群です。OMIM番号211750に登録されており、有病率は推定80万〜100万人に1人という超希少疾患です。

Q2. C症候群の「C」はどういう意味ですか?

1969年にOpitzらが最初に記載した際、患者の姓の頭文字「C」から命名されたとされています。正式名称は「Opitz三角頭蓋症候群(Opitz trigonocephaly syndrome)」とも呼ばれます。「trigonocephaly(三角頭蓋)」とは前頭縫合の早期癒合により頭蓋が三角形に見える状態を指します。

Q3. C症候群の症状にはどのようなものがありますか?

主な症状は三角頭蓋、知的障害、筋緊張低下、関節拘縮、特徴的顔貌(上向き眼瞼裂・内眼角贅皮・小顎症など)です。先天性心疾患、多指症・合指症、皮膚弛緩、泌尿生殖器異常なども見られます。症状の程度は患者によって大きく異なります。

Q4. C症候群の原因は何ですか?

主な原因は染色体3q13.13に位置するCD96遺伝子のヘテロ接合性変異です。CD96は細胞接着と増殖に関わる重要な遺伝子で、胚発生期の前頭部・心血管系の発育に必須の役割を果たします。ただし遺伝的不均一性が高く、ASXL1・FOX P1など他の遺伝子変異が関与する場合もあります。

Q5. C症候群はどのように遺伝しますか?

多くは常染色体優性遺伝のパターンをとり、変異の多くは親から受け継いだものではなくde novo(新規)で発生します。一部には常染色体劣性遺伝や生殖細胞モザイクによる家族例も報告されています。再発リスクは約10%と見積もられますが、個々の家族の遺伝的背景によって異なります。

Q6. C症候群はどうやって診断しますか?

三角頭蓋・特徴的顔貌・知的障害・関節拘縮などの臨床所見をもとに疑います。確定診断には全エクソーム解析(WES)や特定遺伝子(CD96・ASXL1など)の変異解析が推奨されます。染色体検査やアレイCGHも診断に有用です。遺伝学的不均一性が高いため、包括的な遺伝学的評価が重要です。

Q7. C症候群の治療はありますか?

現時点では根治的治療法はなく、各症状に応じた対症療法が中心です。頭蓋形成術(三角頭蓋の矯正)、先天性心疾患の外科的治療、関節拘縮への理学療法・作業療法、言語療法、特殊教育など、多くの専門科が連携した多学際的アプローチが重要です。早期からの介入が生活の質の改善につながります。

Q8. C症候群の予後はどうですか?

約50%の患者が生後1年以内に死亡するとされていますが、軽症例では適切な管理により成人期まで生存できます。知的障害は大多数に認められますが、一部では正常知能も報告されています。早期診断と多学際的な包括的管理により、従来よりも良好な予後を示す症例が増加しています。

Q9. 次の妊娠でも同じ疾患が生じる可能性はありますか?

再発リスクは遺伝形式や両親の遺伝子状態によって異なります。多くのde novo変異例では再発リスクは低いとされますが、生殖細胞モザイクがある場合は最大約10%と見積もられることがあります。正確なリスク評価のために遺伝カウンセリングと両親の遺伝子検査が推奨されます。次子の出生前診断として羊水検査・絨毛検査などの選択肢もあります。

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遺伝性疾患の診断後の不安、次の妊娠への備え、出生前診断の選択肢。
臨床遺伝専門医が正確な情報と心の安全を最優先に、次の一手を一緒に整理します。

関連記事

参考文献

  • [1] OMIM entry 211750: C SYNDROME; Opitz trigonocephaly syndrome. [OMIM]
  • [2] Kaname T, Yanagi K, Chinen Y, et al. Mutations in CD96, a member of the immunoglobulin superfamily, cause a form of the C (Opitz trigonocephaly) syndrome. Am J Hum Genet. 2007;81(4):835-841. [PubMed]
  • [3] Urreizti R, Roca-Ayats N, Trepat J, et al. Screening of CD96 and ASXL1 in 11 patients with Opitz C or Bohring-Opitz syndromes. Am J Med Genet A. 2016;170A(1):24-31. [PubMed]
  • [4] Urreizti R, Cueto-Gonzalez AM, Franco-Valls H, et al. C syndrome – what do we know and what could the future hold? Expert Opin Orphan Drugs. 2019;7(3):123-137. [Taylor & Francis Online]
  • [5] National Organization for Rare Disorders (NORD). C Syndrome. Updated November 2023. [NORD]
  • [6] Orphanet. C syndrome (Opitz trigonocephaly syndrome). Updated November 2014. [Orphanet]

仲田洋美 医師(臨床遺伝専門医)

この記事の監修・執筆者:仲田 洋美

(臨床遺伝専門医/がん薬物療法専門医/総合内科専門医)

ミネルバクリニック院長。1995年に医師免許を取得後、 臨床遺伝学・内科学・腫瘍学を軸に診療を続けてきました。 のべ10万人以上のご家族の意思決定と向き合ってきた臨床遺伝専門医です。

出生前診断(NIPT・確定検査・遺伝カウンセリング)においては、 検査結果の数値そのものだけでなく、 「結果をどう受け止め、どう生きるか」までを医療の責任と捉え、 一貫した遺伝カウンセリングと医学的支援を行っています。

ハイティーンの時期にベルギーで過ごし、 日本人として異文化の中で生活した経験があります。 価値観や宗教観、医療への向き合い方が国や文化によって異なることを体感しました。 この経験は現在の診療においても、 「医学的に正しいこと」と「その人にとって受け止められること」の両立を考える姿勢の基盤となっています。

また、初めての妊娠・出産で一卵性双生児を妊娠し、 36週6日で一人を死産した経験があります。 その出来事は、妊娠・出産が女性の心身に与える影響の大きさ、 そして「トラウマ」となり得る体験の重みを深く考える契機となりました。 現在は、女性を妊娠・出産のトラウマから守る医療を使命の一つとし、 出生前診断や遺伝カウンセリングに取り組んでいます。

出生前診断は単なる検査ではなく、 家族の未来に関わる重要な意思決定です。 年齢や統計だけで判断するのではなく、 医学的根拠と心理的支援の両面から、 ご家族が後悔の少ない選択をできるよう伴走することを大切にしています。

日本人類遺伝学会認定 臨床遺伝専門医/日本内科学会認定 総合内科専門医/ 日本臨床腫瘍学会認定 がん薬物療法専門医。 2025年には APAC地域における出生前検査分野のリーダーとして国際的評価を受け、 複数の海外メディア・専門誌で特集掲載されました。

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