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Xq27.3-q28重複症候群は、X染色体長腕末端のXq27.3からq28領域の微小な重複によって発症する、極めて稀少なX連鎖性の神経発達障害および多臓器疾患です。男性患者さんでは低身長・性腺機能低下(小睾丸)・知的障害・特徴的な顔貌を中核症状とし、女性保因者では限定的ながら低身長や早発卵巣不全(POF)を呈する場合があります。
本症候群を理解するうえで最も重要なポイントは、重複領域にFMR1遺伝子(脆弱X症候群の原因遺伝子)が含まれている一方で、MECP2遺伝子は含まれていないという点です。FMR1の発現量が「過剰」になることで、機能喪失で起こる脆弱X症候群とは正反対の身体的特徴(過成長⇔低身長、巨大睾丸⇔小睾丸)が現れる――この対極的な関係性を、研究者は「コントルタイプ(相反的表現型)」と呼んでいます。
本記事では、2010年にRioらによって独立した症候群として確立された本疾患について、最新の分子遺伝学的知見と臨床データをもとに、原因・症状・診断・治療・予後・遺伝カウンセリング・出生前診断の各論点を、臨床遺伝専門医の視点から網羅的に解説します。
1. Xq27.3-q28重複症候群とは|疾患の基本情報
Xq27.3-q28重複症候群は、X染色体長腕の末端領域(Xq27.3〜q28)が部分的に重複(コピー数が2倍に増える)ことで発症する、極めて稀少なX連鎖性の症候群です。重複領域の大きさは報告例によって1Mb前後から8Mb以上までスペクトラムがあり、含まれる遺伝子の数や種類によって症状の重症度や臓器障害のパターンが大きく異なります。世界全体での報告例は限られており、有病率は100万人に1人未満と推定されている希少疾患です。
通常、男性のX染色体は1本しかなく、その上の遺伝子は1コピー分の量だけ発現しています。X染色体上の領域が「重複」すると、本来1コピーであるべき遺伝子が2コピー分発現してしまう状態(機能的ダイソミー)になります。この遺伝子量の過剰は、細胞内のタンパク質合成バランスを崩し、多臓器の発達に影響を与えます。
1.1 疾患の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 疾患名 | Xq27.3-q28重複症候群 |
| 英語表記 | Xq27.3-q28 duplication syndrome / Trisomy Xq27.3-q28 |
| 原因 | X染色体長腕(Xq27.3-q28領域)の間質性重複 |
| 頻度 | 100万人に1人未満(極めて稀少) |
| 遺伝形式 | X連鎖潜性(劣性)。母親が保因者である場合と、新生突然変異(de novo)の両方がある |
| 含まれる主な遺伝子 | FMR1、AFF2(FMR2)など。MECP2は含まれない |
| 国際分類 | Orphanet:ORPHA 261483、GTR(NIH):C3275521 |
1.2 男性と女性で症状の出方が大きく違う理由
本症候群はX連鎖潜性(劣性)の遺伝形式をとります。X染色体を1本しか持たない男性は、重複の影響を直接かつ完全に受けるため、重度の表現型を呈します。一方、X染色体を2本持つ女性保因者は、片方の正常なX染色体が補完的に働くため大半が無症候性ですが、一部の方では低身長や早発卵巣不全といった限定的な症状が現れることが報告されています(詳細は第6章参照)。
1.3 疾患認識の歴史|2010年Rioらによる症候群確立
独立した症候群としての臨床的・遺伝学的定義は、2010年にRioらの研究チームによって初めて確立されました。彼らは特異な表現型を示す家系の遺伝学的解析を通じて、本症候群が脆弱X症候群の原因として知られるFMR1遺伝子を含む約5.1メガベース(Mb)の重複に起因すること、そして脆弱X症候群とは正反対の症状を引き起こす「コントルタイプ(相反的表現型)」であることを明らかにしました。
その後、より広範な8.05 Mbの重複を示す36歳の男性症例なども報告され、重複領域のサイズや含有遺伝子の差異が臨床症状の重症度に与える影響が詳細に検討されるようになりました。現在では、染色体マイクロアレイ検査(CMA)の臨床導入により、原因不明の発達遅滞・低身長・性腺機能低下症として診断されていた症例の中から本症候群が同定されるケースが増えています。
2. Xq27.3-q28重複症候群の主な症状|多臓器への影響
本症候群は、内分泌・生殖器系、成長・代謝、神経発達、頭蓋顔面、骨格、呼吸器など多系統に影響します。乳児期または新生児期から症状が明らかになり始め、年齢の進行とともに臨床的重症度が変化していくのが特徴です。
2.1 主要症状の出現頻度(男性患者さん)
📊 Xq27.3-q28重複症候群(男性患者さん)における主要症状
2.2 内分泌・生殖器系|原発性性腺機能不全
本症候群の男性患者さんに共通する中核症状の一つが、原発性性腺機能不全(テストステロンの慢性的な欠乏)です。胎児期から続く精巣の発育不良により、思春期以降も顕著な特徴として残存します。
- 小睾丸:精巣サイズが小さく、成人期も思春期前のレベルにとどまる
- 停留精巣:精巣が陰嚢内まで降りていない状態
- 女性化乳房:テストステロン欠乏とエストロゲン優位による
- 異常に高い声:声変わりが起こらず、成人後も高い声が持続
- 体毛の希薄:髭・脇毛・陰毛の発育不良
2.3 成長・代謝|低身長と体幹部肥満
胎児期からの子宮内発育遅延(IUGR)に始まり、出生後も継続的な成長遅延が認められます。FMR1の過剰発現によるコントルタイプ効果(脆弱X症候群の「過成長」とは正反対)に加え、内分泌系の機能不全が成長ホルモン軸や代謝に二次的な影響を与えていると考えられています。成人期には低身長と体幹部優位の肥満が組み合わさった独特の体型を呈することが多く、骨成熟の遅れ(骨年齢の遅延)も認められます。
2.4 神経・発達・行動|軽度〜中等度の知的障害が中心
本症候群の知的障害は軽度から中等度にとどまるケースが多く、後述するMECP2重複症候群と比較すると相対的に穏やかな神経学的予後を示します。これは重複領域にMECP2遺伝子が含まれないことが大きな理由です。
- 全般的発達遅滞:運動・言語・認知のいずれの領域でも遅れが生じる
- 知的障害:軽度〜中等度が大半。重度になるケースは比較的少ない
- 筋緊張低下:新生児期から乳児期にかけて顕著で、哺乳不良や運動発達遅延の原因に
- ASD様行動:反復行動、視線回避、感覚鈍麻など。AFF2の過剰発現が寄与すると考えられている
- 性格特性:「社会的で愛想が良い」と表現されることが多く、コミュニケーション意欲は保たれる
2.5 頭蓋顔面の特徴|AFF2の関与が示唆される顔貌
本症候群には、複数の所見が組み合わさった特徴的な顔貌(gestalt)が認められます。AFF2など転写制御に関わる遺伝子の重複が顔貌形成に影響していると考えられており、臨床遺伝専門医が視覚的に診断のヒントを得る重要なサインとなります。
- 眼:奥まった目(deeply set eyes)
- 鼻:団子鼻・球状の鼻尖(bulbous nose)
- 口:薄い口唇(thin vermilion border)
- 骨格:末端過小(小さな手・短い足)、脊柱側弯症
2.6 呼吸器系の合併症
MECP2遺伝子の重複を含まないため、MECP2重複症候群でみられるような致命的で進行性の呼吸器感染症は通常起こりません。しかし筋緊張低下や免疫系の未熟さから、小児期に反復性の呼吸器感染症や睡眠時の無呼吸を起こすリスクがあります。年齢が上がるにつれて頻度は減っていきますが、乳幼児期は感染症への注意が必要です。
3. 原因と「コントルタイプ理論」|FMR1とAFF2の過剰発現
本症候群の根本的な病態は、X染色体長腕末端のXq27.3-q28領域に生じる間質性重複です。重複によって、領域内に含まれる遺伝子(FMR1、AFF2など)のコピー数が通常の2倍になり、発現量が過剰になることで、細胞内の転写ネットワークやタンパク質合成のバランスが大きく崩れます。
ある遺伝子の働きが「不足したとき」と「過剰になったとき」で、正反対の身体的特徴が現れる現象を指します。1964年にフランスのLejeuneらがダウン症候群(21トリソミー)の対極として小さな染色体の部分モノソミー症例を記述した際に初めて用いた歴史的概念で、その後1966年にReismanらによって「抗モンゴリズム(antimongolism)」として概念化されました。FMR1遺伝子量の不足と過剰によって生じる脆弱X症候群とXq27.3-q28重複症候群の関係は、現代におけるコントルタイプの代表例とされています。
3.1 FMR1遺伝子|「過剰発現」が引き起こす真逆の表現型
FMR1遺伝子は、神経細胞のシナプス形成や可塑性に関与するRNA結合タンパク質(FMRP)をコードしており、正常な神経認知機能の発達に不可欠な役割を担っています。脆弱X症候群ではFMR1がメチル化によってサイレンシング(発現停止)され、過成長・巨大睾丸・長身・細長い顔貌といった特徴的な症状が現れます。
これに対してXq27.3-q28重複症候群では、FMR1遺伝子の構造自体は正常に保たれたまま、コピー数が倍加することで発現量が過剰になります。その結果、巨大睾丸に対して「小睾丸」、過成長に対して「低身長」と、脆弱X症候群とは正反対の身体的特徴が出現するのです。
FMR1遺伝子量の異常と「コントルタイプ」の関係
3.2 AFF2遺伝子|行動特性と顔貌への影響
重複領域に含まれるもう一つの重要な遺伝子がAFF2(FMR2)です。AFF2はRNAポリメラーゼIIの転写制御に関わる「スーパーエロンゲーション複合体様2(SEC like-2)」の構成要素として、広範な遺伝子発現を調節しています。
AFF2が完全に発現停止するとFRAXE型知的障害を引き起こし、近年の研究ではAFF2のミスセンス変異や重複が自閉症スペクトラム障害(ASD)の感受性を高めるリスクファクターであることも明らかになっています。本症候群の患者さんに見られるASD様の行動や特徴的な顔貌は、FMR1の過剰発現に加えてこのAFF2の機能的ダイソミーが寄与していると考えられています。
3.3 MECP2を含まないことの臨床的意義
本症候群を理解するうえで最も重要な鑑別点が、重複領域にMECP2遺伝子が含まれていないという事実です。
MECP2遺伝子の重複を伴う「MECP2重複症候群」は、進行性の重度な痙縮、致命的な反復性呼吸器感染症、極めて重篤な知的障害を引き起こし、生命予後も大きく異なります。本症候群はMECP2を含まないことで、神経学的・呼吸器学的予後が相対的に穏やかになります。出生前・出生後の確定診断では、染色体マイクロアレイ検査で重複範囲を正確に同定し、MECP2が含まれていないことを確認することが、予後評価と遺伝カウンセリングの出発点となります。
4. 診断方法と鑑別診断
確定診断には染色体マイクロアレイ検査(CMA)が不可欠です。本症候群は初期症状が非特異的なため、診断に至るまでに時間を要する「診断のオデッセイ」を経験される方が少なくありません。
4.1 出生後の確定診断|CMAが第一選択
原因不明の発達遅滞・知的障害・低身長・性腺機能低下症などで医療機関を受診した場合、まず血液検体を用いた染色体マイクロアレイ検査が行われます。CMAでXq27.3-q28領域の重複が同定されたら、続いてFISH法で重複の物理的位置や構造(直接的縦列重複か逆位を伴うか)を視覚的に確認し、必要に応じて全エクソーム解析(WES)でAFF2遺伝子内部の局所的な重複なども検討されます。
CMA(chromosomal microarray analysis)は、従来のGバンド法では検出できない数kb〜数Mb単位の微小な欠失や重複(コピー数変異:CNV)を網羅的に検出する検査です。本症候群のような微小重複の確定診断には欠かせない検査で、出生後は血液から、出生前は羊水検査・絨毛検査で得た胎児由来細胞から解析を行います。
4.2 検査方法ごとの違い
| 検査方法 | 特徴 | Xq27.3-q28重複の検出 |
|---|---|---|
| 染色体マイクロアレイ(CMA) | 確定診断のゴールドスタンダード | ◎ 重複範囲・含有遺伝子を正確に同定 |
| Gバンド法(核型分析) | 解像度は約5〜10Mb | ✕ 検出困難(微小重複は見逃される) |
| FISH法 | 特定領域の重複構造を視覚的に確認 | △ 補助的に使用 |
| 全エクソーム解析(WES) | 遺伝子内部の微小変異を解析 | △ AFF2内部の局所重複に有用 |
4.3 鑑別診断|似た症状を示す疾患
本症候群と臨床的に重なる、あるいは関連の深い疾患群は次のとおりです。鑑別はCMAでの重複範囲の正確な同定が鍵となります。
- MECP2重複症候群:最大の鑑別点。MECP2を含む場合は重度の痙縮・致命的な反復性呼吸器感染症・極めて重篤な知的障害が生じ、予後が大きく異なる
- 脆弱X症候群(FXS):FMR1のサイレンシングが原因。神経発達遅滞は共通するが、身体所見が「コントルタイプ」として真逆(過成長⇔低身長、巨大睾丸⇔小睾丸)
- FRAXE型知的障害:AFF2のサイレンシングが原因。軽度知的障害やASD様症状が共通するが、本症候群に特有の内分泌障害(性腺機能不全)や低身長を伴わない
- コルネリア・デ・ランゲ症候群(CdLS):特徴的顔貌や四肢形成不全が類似する場合がある。CdLS遺伝子パネル検査が陰性の場合、AFF2を含むXq27.3-q28の微小重複を疑いCMAを行う
- その他のX連鎖知的障害:Xp11.23-p11.22重複症候群、Xq21欠失症候群など、X染色体上の他のCNVも鑑別の対象
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原因不明の発達遅滞・低身長・性腺機能低下症には染色体マイクロアレイ検査が有効です。
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5. 治療と長期管理|多職種チームでの包括的サポート
ゲノムの構造異常そのものを修復する根本的な治療法はまだ存在しません。治療は症状ごとの医学的介入(対症療法)と、各臓器の専門医が連携する多職種チームによる長期的なケアが中心となります。
5.1 内分泌療法|テストステロン補充療法
男性患者さんにおけるテストステロンの欠乏は、二次性徴の欠如だけでなく将来の骨格や代謝にも重大な影響を及ぼすため、テストステロン補充療法が治療の中核となります。小児期からの早期診断と内分泌専門医による介入が、思春期遅発に伴う心理社会的ストレスの軽減や、深刻な骨粗鬆症・骨折リスクの予防に不可欠です。
- 期待される効果:筋肉量・骨量の増大、エネルギーレベルの改善、女性化乳房の発症抑制
- 剤型の選択:注射剤・経皮吸収剤など。経口剤は肝毒性のリスクから歴史的に推奨されないが、近年は肝毒性を回避できるリンパ系吸収型の経口テストステロンも選択肢となる
- モニタリング:治療開始初年度は数回、その後は年1回の血液検査で血中テストステロン値と副作用を厳密にチェック
5.2 呼吸器・消化器・泌尿器系の管理
MECP2重複を含まないため致命的な呼吸器合併症は通常ありませんが、筋緊張低下に起因する複数の合併症への警戒が必要です。
- 呼吸器:反復性呼吸器感染症への迅速な抗生物質投与、睡眠時無呼吸へのCPAP導入、必要に応じて扁桃摘出術・アデノイド切除術
- 消化器:重度の便秘が横隔膜を圧迫し呼吸機能に悪影響を与えることがあるため、積極的な排便コントロール
- 泌尿器:鼠径ヘルニアの外科手術頻度が高い。膀胱尿管逆流症(VUR)による尿路感染症の反復にも注意
5.3 神経発達支援と療育
軽度〜中等度の知的障害およびASD様特性に対しては、乳幼児期からの早期療育が生活の質(QOL)を大きく向上させます。患者さんは一般的に「社会的で愛想が良い」性質を持つ一方、コミュニケーションの困難さからフラストレーションを抱えやすいため、個々の能力に応じた代替コミュニケーション手段の活用が有効です。
- 理学療法(PT):筋緊張低下の改善、運動発達のサポート、脊柱側弯症の進行予防
- 作業療法(OT):微細運動・日常生活動作(ADL)の習得
- 言語聴覚療法(ST):言語遅滞への訓練、代替的コミュニケーション(AAC)の導入
- 応用行動分析(ABA):発達小児科医や言語聴覚士による専門的アプローチ
- 多職種チーム:臨床遺伝科・内分泌科・小児科・小児神経科・耳鼻科・心理職・ソーシャルワーカーが連携
5.4 ライフステージ別の管理
| ライフステージ | 主な対応 |
|---|---|
| 新生児期・乳児期 | 筋緊張低下による哺乳支援、停留精巣の評価、呼吸器感染症への注意 |
| 幼児期(〜5歳) | 早期療育(PT・OT・ST)、発達評価、停留精巣の手術検討 |
| 学童期(6〜12歳) | 特別支援教育、行動面のサポート、骨格異常への対応 |
| 思春期 | テストステロン補充療法の開始検討、女性化乳房への対応、心理社会的支援 |
| 成人期 | テストステロン補充の継続、骨粗鬆症予防、代謝管理、就労・生活自立支援 |
6. 女性保因者と遺伝カウンセリング
本症候群はX連鎖潜性(劣性)遺伝のため、女性保因者は大半が無症候性です。しかし、すべての女性保因者が完全に無症状というわけではなく、一部の方には特有の限定的な表現型が現れることが明らかになっています。
6.1 女性保因者の表現型|低身長と早発卵巣不全
女性保因者で臨床的に問題となる主な表現型は、低身長と早発卵巣不全(POF)/早発閉経です。これは、不妊や生殖計画に直接影響するため、ご家族の人生設計において重要な情報となります。Rioらの報告では、5人の女性保因者のうち3人が完全に偏ったX染色体不活性化を示していたにもかかわらず、早発卵巣不全や低身長を発症していました。
女性の初期胚発生において、2本のX染色体のうち1本は無作為にサイレンシング(不活性化)され、遺伝子発現のバランスを保ちます。異常な重複を持つX染色体を有する保因者では、細胞は生存競争の過程で正常なX染色体を優先的に利用し、異常なX染色体を高い確率で不活性化します(極端に偏った不活性化)。しかし不活性化が完了する前の極めて初期の胚発生段階で、FMR1やAFF2の過剰発現が組織発育にすでに影響を与えている可能性、あるいは一部の遺伝子が不活性化を逃れている可能性が指摘されています。
6.2 遺伝形式と再発リスク
| 状況 | 次子への再発リスク |
|---|---|
| 母親が保因者 | 男児で50%が発症、女児で50%が保因者 |
| 両親に重複なし(新生突然変異) | 原則として低い(1〜2%程度)※生殖腺モザイクの可能性は残る |
| 親が均衡型X染色体転座 | 転座の種類によりリスクが異なる(個別評価が必要) |
6.3 遺伝カウンセリングで伝えるべきポイント
本症候群のカウンセリングでは、男性患者さん本人の予後だけでなく、母親・姉妹・娘さんが保因者である可能性と、その方々への健康影響(POF・低身長)も含めて、家系全体を見据えた情報提供が求められます。遺伝カウンセリングでは以下のポイントを丁寧に共有していきます。
- 重複範囲と症状の関係:含まれる遺伝子(特にMECP2の有無)で予後が大きく変わる
- 表現型の多様性:軽症から重症まで幅広いスペクトラム
- 母親の検査:新生突然変異か遺伝かを判定し、家系内のリスクを評価
- 女性親族のフォロー:POFは妊娠計画に影響するため、保因者と判明した方には適切な時期に情報提供
- 支援体制:療育機関、社会福祉制度、家族会、英国Uniqueなどの患者支援団体
7. 出生前診断とミネルバクリニックのサポート体制
近年の高解像度超音波検査やNIPTの技術進歩により、出生前の胎児期にXq27.3-q28領域の微小重複が疑われるケースが増えています。確定診断は羊水検査・絨毛検査でCMAを行うことで可能ですが、出生前に見つけることが常にご家族の利益になるとは限らないため、検査前後の遺伝カウンセリングが不可欠です。
7.1 胎児期の超音波所見
ある大規模な産科センターの13,084例の出生前診断コホート研究では、Xq28遠位の微小重複(454〜558kb)を保有する3例の胎児がCMAによって特定されました。報告されている主な超音波所見は次のとおりです。
- 骨格異常:鼻骨低形成、四肢短縮、両側性内反足(クラブフット)
- 軟部組織・血流異常:項部透過像(NT)の増大、持続性右臍帯静脈、拡大した胆嚢
- スペクトラムの広さ:無症状に近いものから重度の骨格異常を伴うものまで多様
7.2 出生前検査の種類と検出能力
| 検査 | 位置づけ | Xq27.3-q28重複への対応 |
|---|---|---|
| NIPT(ターゲット型) | 特定の微小欠失をスクリーニング | 対象外(特定12箇所の微小欠失のみが対象のため) |
| NIPT(全染色体スクリーニング型) | スクリーニング検査 | ○ スクリーニング可能(5Mb以上の重複ならカバー) |
| 絨毛検査+CMA | 確定診断 | ◎ 妊娠初期に確定診断可能 |
| 羊水検査+CMA | 確定診断 | ◎ 微小重複も確定診断 |
7.3 ミネルバクリニックのNIPTプラン|Xq27.3-q28重複への対応
ミネルバクリニックでは、ご家族のニーズに応じて複数のNIPTプランをご用意しています。Xq27.3-q28重複症候群を対象としたスクリーニングを希望される場合、インペリアルプランが対応します。
ダイヤモンドプランはターゲット法による高精度検査で、特定12箇所の微小欠失(1p36、4p16、5p15、9p、22q11.2など)を高い陽性的中率で検出しますが、Xq27.3-q28はこの12箇所には含まれていません。一方インペリアルプランはWGS法とターゲット法のハイブリッドで、5Mb以上の全染色体微小欠失・重複を広範囲にスクリーニングするため、Xq27.3-q28重複症候群もカバー対象に含まれています。スクリーニング検査のため、陽性時は羊水検査・絨毛検査によるCMAでの確定診断が必要です。
7.4 出生前診断で見つかった場合の対応
出生前にXq27.3-q28重複が見つかった場合、本症候群は表現型の幅が広く、胎児期の所見だけでは将来の予後を正確に予測することが難しい場合があります。臨床遺伝専門医による遺伝カウンセリングで重複範囲・含まれる遺伝子(特にMECP2の有無)・表現型の幅・予後の不確実性を中立的に説明し、母親の検査で新生突然変異か遺伝かを判定、詳細超音波で関連所見を精査します。ご家族の不安や葛藤に寄り添い、決断を急がせない時間と環境を確保することが何より重要です。
⚖️ 倫理的なスタンス|検査は「常に利益」ではない
本症候群のように表現型の幅が大きく、予後予測が容易ではない疾患では、出生前に見つけたことが必ずしもご家族の利益になるとは限りません。「特定の検査を勧める」「安心を保証する」「不安をあおる」ような表現は適切ではないと私たちは考えています。検査を受けるかどうか、結果をどう受け止めるかは、十分な情報を得たうえでご家族自身が決めるべき事柄です。
7.5 ミネルバクリニックのサポート体制
ミネルバクリニックでは、臨床遺伝専門医の専門性を活かした診療体制を整えています。Xq27.3-q28重複症候群を含むX連鎖性微小重複症候群について、出生前検査から結果説明、確定検査、その後のフォローまで一貫してサポートいたします。
- 全染色体スクリーニング対応:インペリアルプランでは5Mb以上の全染色体微小欠失・重複を広くスクリーニング、Xq27.3-q28領域もカバー対象
- 確定検査も院内で実施:羊水検査・絨毛検査も院内で実施可能、転院の必要なし
- 臨床遺伝専門医が担当:臨床遺伝専門医が検査前後の遺伝カウンセリングを直接担当
- 互助会で費用面も安心:NIPT受検者全員に適用される互助会(8,000円)により、陽性時の羊水検査費用が全額補助
🧬 その他の染色体異常(トリソミー・部分モノソミー)について
各染色体の異数性や微小欠失・重複による特徴的な疾患、および予後については以下のリンクから詳細をご確認いただけます。
よくある質問(FAQ)
関連記事
参考文献
- Orphanet – Xq27.3q28 duplication syndrome (ORPHA:261483) [外部サイトへ]
- NIH Genetic Testing Registry (GTR) – Xq27.3q28 duplication syndrome (C3275521) [外部サイトへ]
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- Rio M et al. (Full text, PMC) [外部サイトへ]
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- Delobel B et al. Long time no see: the Type and Contre-type concept. PMC. [外部サイトへ]
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- Familial Xq27.1q28 duplication arising from a maternal interarm forward insertion of the X chromosome: a case report. Frontiers in Genetics. 2025 [外部サイトへ]
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- Unique – Rare Chromosome Disorder Support Group: Xq28 duplications [外部サイトへ]
- Chromosome Disorder Outreach – Xq28 duplication information [外部サイトへ]



