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なぜど染色体の数が異常になるとダウン症などの病気になるの?

染色体の数が通常よりも多いか少ない場合、それは染色体異常として知られており、この状態がダウン症などの特定の病気を引き起こすことがあります。ダウン症の場合、通常、人間の細胞は46本の染色体(23対)を持っていますが、ダウン症の人は21番染色体が3本あり、合計で47本の染色体を持っています。これをトリソミー21と言います。では、なぜ染色体の数が3本になると病気が発生するのでしょうか。その理由はいくつかあります。

1.遺伝子の過剰発現
染色体には遺伝子が含まれており、これらの遺伝子が体の様々な機能を制御しています。染色体の数が3本になると、その染色体上の遺伝子が過剰に存在することになります。ダウン症の場合、21番染色体上の遺伝子が通常よりも1セット多いため、これらの遺伝子が過剰に発現されることがあります。遺伝子の過剰発現は、体の様々な発達過程や機能に影響を及ぼし、ダウン症の特徴的な身体的特徴や認知発達の遅れなどの症状を引き起こす原因となります。

2.細胞の機能障害
染色体の異常は、細胞の正常な機能を乱すことがあります。細胞分裂DNA複製、修復プロセスに影響を及ぼし、細胞の機能障害を引き起こす可能性があります。これは、体の成長や発達、さらには正常な身体機能の維持に悪影響を及ぼすことがあります。

3.発達過程への影響
染色体の数が3本になることで、特定の遺伝子が過剰または不足すると、発達過程に影響を与えることがあります。例えば、ダウン症では、身体的特徴、心臓疾患、免疫系の問題、認知の遅れなど、さまざまな健康問題が発生する原因となります。

4.遺伝子間相互作用の変化
染色体の異常は、遺伝子間の相互作用のバランスを変化させることがあります。遺伝子は通常、他の遺伝子と相互作用しながら機能しますが、染色体の数が変わると、これらの相互作用が変化し、体の発達や機能に影響を与える新たなパターンが生じる可能性があります。

総じて、染色体の数が3本になるという染色体異常は、遺伝子の過剰発現や細胞の機能障害、発達過程への影響、遺伝子間相互作用の変化など、体に多大な影響を及ぼすことがあり、これがダウン症などの特定の病気を引き起こす原因となります。

遺伝子の過剰発現が疾患を引き起こすメカニズム

遺伝子の過剰発現が疾患を引き起こすメカニズムは、その遺伝子がコードするタンパク質やRNA分子の量が適切なバランスを超えて増加することによります。細胞内のさまざまな過程は、遺伝子がコードするタンパク質の量に厳密に依存しており、これらのタンパク質のバランスが崩れると細胞機能に異常が生じ、最終的には疾患の原因となります。遺伝子の過剰発現が疾患を引き起こす具体的なメカニズムには以下のようなものがあります。

1. 細胞の成長と分裂の異常
遺伝子の過剰発現が細胞周期の調節に関わるタンパク質を影響を及ぼすと、細胞の成長と分裂が異常になり、がんなどの疾患を引き起こす可能性があります。例えば、がん遺伝子(オンコジーン)の過剰発現は、細胞の無制限な増殖を促進します。

2. 代謝異常
特定の酵素や代謝に関わるタンパク質の過剰発現は、細胞内の代謝バランスを崩し、代謝異常を引き起こす可能性があります。これは、糖尿病や肥満などの代謝性疾患に関連していることがあります。

3. 細胞シグナリングの異常
細胞は、シグナル伝達経路を通じて外部のシグナルに応答しますが、シグナル伝達に関わる遺伝子の過剰発現は、これらの経路の異常活性化を引き起こすことがあります。これは、細胞の成長、分化、生存に関わる多くの疾患の根底にあるメカニズムです。

4. 細胞ストレスとアポトーシス
タンパク質の過剰生産は細胞にストレスを与え、適切に処理できない異常なタンパク質が蓄積することがあります。これは、細胞ストレス応答を引き起こし、最終的には細胞死(アポトーシス)につながる可能性があります。神経変性疾患など、細胞死が特徴的な疾患でこのメカニズムが見られます。

5. 免疫応答の異常
免疫系の調節に関わる遺伝子の過剰発現は、過剰な炎症反応や自己免疫疾患を引き起こす可能性があります。これは、免疫系が体自身の細胞や組織を攻撃することにより、様々な自己免疫疾患が生じる原因となります。

遺伝子の過剰発現が疾患を引き起こすメカニズムは、その遺伝子が関与する生物学的過程やタンパク質の機能に大きく依存します。このため、遺伝子の過剰発現を正確に理解し、治療戦略を開発するためには、疾患特異的なメカニズムの詳細な解析が必要です。

どうしてダウン症の人は同じように21番染色体のトリソミーを持っているのに重症度に幅があるの?

ダウン症の人が同じように21番染色体のトリソミーを持っていても、その症状の重症度に幅がある理由はいくつかあります。これらの違いは、遺伝的、環境的要因、および個々の生物学的多様性によって説明されることが多いです。以下は、ダウン症の重症度に影響を与える可能性がある要因です。

1. モザイク型トリソミー21
ダウン症には、全ての細胞が余分な21番染色体を持つ標準的なトリソミー21のほかに、モザイク型トリソミー21という形態があります。モザイク型では、体の一部の細胞のみが余分な染色体を持ち、他の細胞は通常の染色体数を持っています。モザイク型の場合、余分な染色体を持つ細胞の割合が少ないほど、症状が軽度になることがあります。

2. 遺伝的背景
個人の遺伝的背景も、ダウン症の症状の重症度に影響を与える可能性があります。特定の遺伝子や遺伝子群がダウン症の特定の症状に対して保護的または悪化させる役割を果たすことがあるため、個人によってこれらの遺伝子のバリエーションが異なると、症状の表れ方に幅が出ることがあります。

3. 環境要因とライフスタイル
出生前および出生後の環境要因、健康状態、教育、社会的サポートなども、ダウン症の個人の能力開発と症状の重症度に大きな影響を与えることがあります。栄養状態、身体活動、早期介入プログラムへのアクセスなど、ライフスタイルに関連する要因も重要です。

4. 関連する医療条件
ダウン症の人は心臓病、甲状腺機能低下症、聴覚障害など、さまざまな健康問題を抱えることがよくあります。これらの追加的な医療条件の有無や重症度は、全体としてのダウン症の症状の重症度に影響を与える可能性があります。

5. 個々の生物学的差異
最後に、人間の生物学的多様性自体が、同じ遺伝的条件を持つ人々の間で異なる症状の表れ方をもたらす原因となります。個人差は、細胞の基本的な機能から複雑な身体システムの動作に至るまで、生物学的過程の全域に及びます。

これらの要因の組み合わせが、ダウン症の人々の間で見られる症状の幅広いスペクトルを生み出します。したがって、ダウン症の人々は、症状の重症度や能力において、それぞれユニークであると言えます。

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プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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