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クラインフェルター症候群は男性にのみ発生する染色体異常疾患で、さまざまな症状が現れます。病気のことを知らずに、1人で悩んでしまう人も少なくありません。
しかし、治療法があり、症状を緩和できる病気です。まずはどのような病気か知っていきましょう。
本記事ではクラインフェルター症候群について、詳しく解説します。
クラインフェルター症候群とは?
クラインフェルター症候群とは、男性の性染色体異常疾患のひとつです。遺伝性疾患で、身体的な特徴や性腺機能不全、発育の遅れなどが現れます。
しかし、症状の強さには個人差が大きく、とくに思春期前の子どもには特徴が表れにくい傾向があります。成人してからも自覚症状がほとんどでないこともありますが、体が成熟したあとや、不妊症の検査をきっかけに発覚するケースも少なくありません。
クラインフェルター症候群は約1,000人に1人の割合で発生する病気で、罹患している患者数は日本国内だけでも6万人以上いる計算です。
しかし、前述したように気づかずに過ごす人も多いため、実際はもっと多くの患者がいる可能性があります。
クラインフェルター症候群の原因
クラインフェルター症候群は遺伝性の疾患です。遺伝性疾患と症状が現れるメカニズムについて解説します。
遺伝性の疾患
遺伝性疾患とは、染色体や遺伝子の変化が原因で発生する病気のことを指します。
クラインフェルター症候群は、染色体の数に異常がある「異数性」というものです。
同じ異数性の染色体異常は、クラインフェルター症候群のほかには、ダウン症候群やエドワーズ症候群などがあります。いずれも遺伝性の疾患です。
遺伝性という言葉のイメージから、「両親や血縁に病気の人がいると遺伝する」と思われがちですが、いずれの遺伝性疾患も“要因”を持っているだけで、発症しない人もいれば、突然変異的に発症する人もいます。
X染色体が1本以上多い
性別を決める染色体の組み合わせは、男性の場合だと「46,XY(46は染色体の数)」が正常です。しかし、クラインフェルター症候群の場合はX染色体が1本以上多くなります。
1本多い場合は「47,XXY」と表記され、これはクラインフェルター症候群で最も多い核型です。他にもX染色体が2本以上多いケースや、モザイク型などさまざまな核型があります。
後述するクラインフェルター症候群の症状は、X染色体が多いことで必要以上に遺伝子が働いて現れます。
なぜ余分なX染色体が働くのか、その原因まではまだ解明されていません。
クラインフェルター症候群の特徴・症状
クラインフェルター症候群は、外見・体の機能・発育の部分で特徴的な違いが現れます。
ただし症状の出方には個人差があるので、あくまでも一例としてお読みください。
外見に現れる症状
外見には以下のような特徴が現れます。
- ・身長が高く手足が長い
- ・睾丸や陰茎が小さい
- ・乳房の肥大(女性化乳房)
- ・なで肩や狭い肩幅
- ・腰や下半身が大きい
- ・体毛が少ない
この中でも、高身長や手足が長い特徴は多くのクラインフェルター症候群患者で見られます。
また、体毛の少なさはヒゲにも影響し、思春期を迎えてもヒゲが薄かったり、まばらであったりする症状もみられます。
体の機能に現れる症状
体の機能には以下のような症状が現れることがあります。
- ・不妊症
- ・筋肉量が少ない
- ・骨密度が低い
- ・尿道下裂
多くの症状は、精巣が小さいことで男性の性的発達を促すホルモン(テストステロン)が作られないことが原因で発生します。
中でも不妊症はクラインフェルター症候群の代表的な症状です。無精子症や高度乏精子症が発生することも多く、クラインフェルター症候群患者のほとんどは男性不妊に悩まされてしまいます。
しかし、勃起や射精は正常に起き、性欲減退がない場合は性生活に問題はありません。また、性同一障害とクラインフェルター症候群の関連もないとされています。
発育に現れる症状
発育面では以下の症状が現れることがあります。
- ・学習や言葉の遅れ
- ・運動能力の遅れ
- ・協調性・社会性の問題
- ・自己表現が苦手
学習や言語能力の遅れは、多くはないもののクラインフェルター症候群の患者にみられる症状です。
聞く力はあっても、話したり読んだりすることが苦手なケースが多いため、自己表現ができず、協調性や社会性に問題が出ることもあります。
そうした経験から内向的になることや、不安症になることもありますが、性格や年齢による影響もとても大きな部分です。
気をつけたい合併症
クラインフェルター症候群患者の半数ほどは、メタボリックシンドロームになるといわれています。そのため、2型糖尿病や高血圧、腎臓病や心臓疾患などにかかるリスクが高いです。
加えて、以下の病気も一般の男性よりもリスクが高いとされています。
- ・甲状腺機能低下症
- ・乳がん
- ・慢性肺疾患
- ・自己免疫疾患
もちろんすべてのクラインフェルター症候群患者が発症するわけではありません。過度に不安になる必要はありませんが、リスクが高いことを理解しておくことが大切です。
クラインフェルター症候群の治療法
クラインフェルター症候群に対する根治的な治療はなく、治療は発症している症状に対する対症療法となります。二次性徴が発来しないことに対しては、思春期から生涯にわたるテストステロン補充療法を行います。また、言語能力の遅延に対しては、小児期から言語療法を行います。
テストステロン補充療法
骨粗鬆症の予防効果や、筋肉量の増加などが期待でき、男性らしい身体つきへの成長をサポートします。また、メタボリックシンドロームの予防にもなるとされています。
飲み薬がありますが、肝臓への悪影響が懸念されているため、2〜4週間に一度筋肉注射を行って補充していきます。
健康保険適用の薬と、そうではない薬があります。
テストステロンの補充は思春期から生涯にわたり続けることが推奨されているものの、必ず受けなければならないものではなく、中断する方や最初から受けない方もいます。
言語療法(療育)
言語の遅延が見られる場合は、言語療法(療育)を行います。
日常生活に不自由がないよう、言語聴覚士によるに専門的なコミュニケーションのトレーニングを受けます。
クラインフェルター症候群の診断方法
子どものクラインフェルター症候群を診断する方法は、出生前・出生後どちらでも可能です。
出生前の診断方法
出生前にクラインフェルター症候群の診断をする場合は、妊娠初期に行う「確定的検査」が必要です。確定的検査では「絨毛検査」と「羊水検査」によって、染色体疾患の有無を確実に知ることができます。
検査の種類 | 検査内容 | 受けられる時期 |
---|---|---|
絨毛検査 | 胎盤の細胞を調べて染色体を確認する | 妊娠10週~13週ころ |
羊水検査 | 羊水から染色体を確認する | 妊娠15週以降 |
どちらの検査も、ダウン症候群の確定診断のために行われるものですが、この検査でクラインフェルター症候群が発見されることがあります。
母親の血液を使うコンバインド検査やクアトロ検査などでは、クラインフェルター症候群は診断できません。
出生後の診断方法
クラインフェルター症候群患者の多くは、思春期以降に発見されます。これは思春期を迎えた頃から、外見や体の機能に特徴が大きく表れることが原因です。
思春期前に、クラインフェルター症候群が見つかる割合は10%以下とされており、多くの人が他人との違いによって気づいています。
そのような場合の診断方法は、本人の血液検査です。血液検査によってDNA情報を解析し、染色体に異常が見つかればクラインフェルター症候群と診断されます。
【まとめ】クラインフェルター症候群(47,XXY)は性染色体異常疾患
クラインフェルター症候群は遺伝子疾患のひとつで、染色体の異常が原因でさまざまな症状が現れます。
出る症状や強さには個人差が大きく、多くの人は思春期の体の変化や、不妊相談などで発覚します。子どもの頃にわかるのはわずかです。
結婚してから発覚し、不妊に悩むご夫婦も少なくありません。しかし、現在はテストステロン補充療法を中心とした治療ができます。子どもを望む場合は、早めに医療機関へ相談するとよいでしょう。
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この記事の著者:仲田洋美(医師)
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