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NIPTは陰性でしたが胎児ドックで軽度のNT肥厚と三尖弁逆流を指摘されました
ミネルバクリニックでNIPTを受けた患者さんからの質問:
一昨日に胎児ドッグという精密超音波検査を受けたところ、胎児の首のむくみ(95%タイル値を僅かに上回る水準)と三尖弁逆流を指摘され、これらと母体年齢等勘案すると21トリソミーの確率が1/39に上がると言われました。NIPTでは陰性でしたが心配になりました。
患者さん個人に返答するにもお返事の内容がボリュームありますので、折角ですからHPに記載して公開します。
妊娠中にNT肥厚を指摘された場合
以下の関連記事をご覧ください。
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NTとは|エコー写真で胎児の首の後ろにむくみがあるダウン症?
妊娠中に三尖弁逆流を指摘された場合
Q1.胎児の三尖弁逆流はトリソミーと関係するのか?
A.Yes
胎児の三尖弁逆流は、ある研究から染色体異数性との関係が指摘されています。
この研究の目的は、母体年齢、胎児核透明度(NT)の厚さ、胎児心拍数(FHR)、血清遊離β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)および妊娠関連血漿蛋白A(PAPP-A)の複合検査に三尖血流の評価を含めることにより、異数体妊娠の初回スクリーニングの成績を調査すること。
方法としては、複合検査によるスクリーニングを単胎妊娠で実施し、その中には染色体正常胎児または表現型正常児の出産をした19 614例(8倍体群)、21トリソミーの122例、18トリソミーの36例、13トリソミーの20例、ターナー症候群の8例が含まれた。すべての症例において、三尖弁逆流の有無を判定するために三尖弁の流れを評価した。この研究においては2つのスクリーニング戦略の成績を検討した:1つ目は、全患者を対象とした三尖弁流量の評価、2つ目は、全患者を対象とした複合検査を用いた第1段階のスクリーニング、そして第2段階では、第1段階後のリスクが51分の1から1000分の1の中間リスクであった患者のみを対象とした三尖弁流量の評価である。
結果としては、二倍体胎児(正常の染色体数)の0.9%、トリソミー21、18、13の胎児のそれぞれ55.7%、33.3%、30%、ターナー症候群の胎児の37.5%に三尖弁閉鎖不全が観察された。母体年齢、胎児NT、FHR、血清遊離β-hCGおよびPAPP-Aに基づくスクリーニング方針において、3%の固定偽陽性率に対する標準化検出率は、トリソミー21で91%、トリソミー18、トリソミー13およびターナー症候群で100%であった。すべての妊娠で三尖弁逆流を評価した場合、トリソミー21の検出率は96%に増加し、トリソミー18、トリソミー13、ターナー症候群の検出率はそれぞれ92%、100%、100%となる。同じ検出率は、全集団のわずか15%の三尖弁逆流を評価する必要がある2段階戦略でも達成され、偽陽性率は2.4%であった。
この研究では、三尖弁逆流の評価は、トリソミー21の初回スクリーニングの成績を改善すると結論付けています。
Q2.胎児の三尖弁逆流は異数性と先天性心疾患のスクリーニング手段として有用なのか?
A.No
三尖弁逆流という単独所見で異数性と先天性心疾患のスクリーニング手段としては不十分であるとされています。
背景:三尖弁逆流(TR)は胎児期によくみられる超音波所見である。正常胎児の7%にみられると報告されている。これは異数性、心臓および心臓外の欠陥と関連している可能性がある。
目的:本研究では、妊娠11+0週から13+6週におけるTRを有する胎児と有さない胎児の特徴を調べた。染色体異常の有病率、異数性の他のマーカー、胎児心臓異常、および心臓外異常。
方法:2009年から2012年の間に妊娠11-13+6週で超音波検査を受けた女性を対象とした。組み入れ基準は、妊娠転帰が判明している単胎妊娠で、頭殿長が45~84mmの患者とした。
結果:1075例の患者が組み入れ基準を満たし、その中にはTRを認めない胎児979例とTRを認めた胎児96例が含まれていた。診断された異数性は72例(6.7%)であった。孤立性TRは53例(5.2%)に認められた。TR(+)異数体胎児(n=40)の全例に、さらに超音波マーカーが存在した。心臓外の解剖学的所見は、TR陽性群(12.5%)でTR陰性群(1.6%)より高い異常頻度を示した。心臓の異常所見は、染色体の状態とは無関係にTR陽性群でより頻度が高く、TRを有する胎児の18.8%および正常な三尖弁逆流を有する胎児の1.9%に認められた。
結論:STRと他のマーカーとの組み合わせは、異数性の最強の予測因子である。単独パラメータとしてのTRは、すべての染色体異常および個々の染色体異常と先天性心疾患のスクリーニングツールとしては不十分である。
Q3.胎児三尖弁閉鎖不全症(TR)の有病率、超音波学的特徴、臨床経過、および意義とは?
A.妊娠第2期に観察される三尖弁逆流は、明らかな病理学的意義はありません。
目的:胎児三尖弁閉鎖不全症(TR)の有病率、超音波学的特徴、臨床経過、および意義を解析すること。
研究デザイン:本研究は前向き研究である。胎児が正常に発育し、心臓の解剖学的構造も正常な連続した単胎妊娠675例において、妊娠20~23週、26~29週、30~34週に連続超音波検査を実施した。胎児の三尖弁逆流は、その持続時間、ジェットの最大速度のピーク、およびその最大空間拡張に従って分類した。出生後の新生児に臨床検査と心エコー検査を行った。
結果:最初の検査(20~23週)において、32例の三尖弁逆流が同定された。三尖弁逆流の有病率は4.74%であった。三尖弁閉鎖不全症例の大部分(87.5%)は非収縮性で、最大速度は2m/sec以下(80〜130cm/secが84%、180〜200cm/secが16%)、空間的拡張はほとんどなかった(I型またはII型が87.5%)。この血行動態現象をその後数週間追跡したところ、すべての症例で29週頃には消失していた。
結論:妊娠第2期に観察される三尖弁逆流は、明らかな病理学的意義のない、一過性の機能的血行動態現象であると考えられる。
まとめ
以上、見てきたように、三尖弁逆流そのものは、あまり異数性のマーカーとしては強くないものです。
NIPTで陰性が確認されているのであれば、心配することはないと考えます。
この患者さんの場合は、当院のマルチNIPTカリオセブンというNIPTコースを受けていました。
13/18/21トリソミー以外の他の染色体異数性も、性染色体もチェックしていて、さらに700万塩基(7Mb)のサイズで全部の染色体の全領域の部分欠失・重複がないかスキャンする項目も入ってて、なおかつ9種類の微細欠失症候群も入っています。
このコースを受けていて陰性で、三尖弁逆流を指摘されても、全然心配することはないと思いますので、落ち着いてお過ごしください。
ミネルバクリニック院長 仲田洋美 拝
ミネルバクリニックでは、以下のNIPT検査(新型出生前診断)を提供しています。少子化の時代、より健康なお子さんを持ちたいという思いが高まるのは当然のことと考えています。そのため、当院では世界の先進的特許技術に支えられた高精度な検査を提供してくれる検査会社を遺伝専門医の目で選りすぐりご提供しています。オンライン診療+地元で採血、という形で全国からミネルバクリニックにお越しになることなく受けられます。
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