遺伝性多発性骨軟骨腫(遺伝性多発性外骨腫症)NGS遺伝子検査パネル|ミネルバクリニック
遺伝性多発性骨軟骨腫とは
遺伝性多発性骨軟骨腫(Hereditary Multiple Osteochondromas: HMO)は、かつて遺伝性多発性外骨腫症(HME)と呼ばれていた遺伝性の骨疾患です。長管骨の骨幹端から外側に成長する、軟骨で覆われた骨の良性腫瘍(骨軟骨腫)が多発することを特徴とします。
本疾患は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、主にEXT1遺伝子とEXT2遺伝子の変異によって引き起こされます。骨軟骨腫は出生時には存在しませんが、ほぼすべての患者さんが12歳までに複数の骨軟骨腫を発症します。診断年齢の中央値は3歳です。
骨軟骨腫の発生により、骨の成長障害、骨変形、関節可動域の制限、低身長、若年からの変形性関節症、末梢神経への圧迫症状などが引き起こされます。骨軟骨腫は骨格の発達とともに徐々に骨化し、骨成熟とともに成長を停止します。悪性化(骨軟骨肉腫)のリスクは年齢とともに増加しますが、生涯を通じて1%未満と低い頻度です。
症状と病態
遺伝性多発性骨軟骨腫の主な症状は、多発性の骨軟骨腫とそれに伴う二次的な骨格変形です。骨軟骨腫の数、罹患する骨の数や部位、変形の程度は患者さんによって大きく異なり、同一家系内でも幅広いばらつきが認められます。
主要症状
- 多発性骨軟骨腫(複数の骨に良性腫瘍が発生)
- 骨の成長障害と骨変形
- 低身長(身長が予想より低くなる傾向があるが、多くは正常範囲内)
- 関節可動域の制限
- 前腕や下腿の彎曲変形
- 脚長差(左右の脚の長さの違い)
- 凹足などの足の変形
- 手の変形(中手骨の短縮による)
- 早期発症の変形性関節症
好発部位
骨軟骨腫は長管骨の骨幹端付近や扁平骨の表面から発生します。罹患頻度の高い骨は以下の通りです:
- 大腿骨:30%の患者で罹患
- 脛骨:20%の患者で罹患
- 橈骨および尺骨:13%の患者で罹患
- 腓骨:13%の患者で罹患
- 骨盤、肩甲骨、肋骨などの扁平骨
通常、骨は対称性に罹患します。骨軟骨腫は無茎性(広い基部で骨皮質に付着)または有茎性(茎を持つ)のいずれかの形態をとります。
圧迫による症状
骨軟骨腫による圧迫効果により、以下のような症状が二次的に発生することがあります:
- 末梢神経の圧迫:疼痛、感覚障害、運動障害
- 脊髄圧迫:頸部の骨軟骨腫による脊髄症
- 関節運動制限:関節近くの大きな骨軟骨腫による
- 筋肉・腱の刺激:疼痛や運動制限
- 血管の圧迫:血流障害(稀)
- 臓器圧迫:尿路や腸管の閉塞(稀)
進行と予後
骨軟骨腫は骨格の発達とともに成長し、徐々に骨化します。骨成熟に達すると成長を停止し、その後新しい骨軟骨腫が生じることはありません。臨床所見を有する患者の割合は、出生時は約5%ですが、12歳には96%に増加します。成人期までに75%の患者に臨床的に明らかな骨変形が認められます。
男性は女性よりも重症化する傾向があります。大多数の患者さんは活動的で健康的な生活を送っていますが、一部の患者では整形外科的な介入が必要となります。
悪性化のリスク
遺伝性多発性骨軟骨腫の最も重篤な合併症は、骨軟骨腫の肉腫化(特に軟骨肉腫)です。悪性化は年齢とともにリスクが増加しますが、生涯を通じて1%未満と低い頻度です。
悪性化が起こりやすい部位は、骨盤、肩甲骨、肋骨、脊椎などの軸骨格です。成人期に骨軟骨腫が急速に増大したり、疼痛が増強した場合は、悪性化が疑われるため、早期の評価が重要です。
遺伝形式と原因遺伝子
遺伝性多発性骨軟骨腫は常染色体優性(顕性)遺伝形式をとり、浸透率は約96%と推定されています。患者さんの約90%は両親のいずれかが罹患していますが、約10%は新生突然変異による発症です。
原因遺伝子
遺伝性多発性骨軟骨腫に関連する遺伝子は2つ知られています:
- EXT1遺伝子(8q24.11-q24.13):エクソストシン1をコードする遺伝子で、患者の56~78%で変異が検出されます。EXT1遺伝子変異を有する患者は、EXT2遺伝子変異を有する患者と比べて、骨軟骨腫の数が多く、罹患する骨の数も多い傾向があります。また、低身長を呈することが多く、疾患負荷が高いことが報告されています。
- EXT2遺伝子(11p12-p11):エクソストシン2をコードする遺伝子で、患者の21~44%で変異が検出されます。EXT2遺伝子変異を有する患者は、EXT1遺伝子変異を有する患者と比べて、骨軟骨腫の数が少なく、低身長の頻度も低い傾向があります。
これら2つの遺伝子の全コード領域に対するシークエンス解析と欠失解析を組み合わせて行うことで、患者の70~95%における変異を検出できます。一部の研究では、第19染色体上の第3の遺伝子座(EXT3)の存在が示唆されていますが、まだ確定していません。
遺伝子型と表現型の関連
EXT1遺伝子変異とEXT2遺伝子変異では、臨床的な重症度に違いがあることが報告されています:
- EXT1遺伝子変異を有する患者は、骨軟骨腫の数が多い
- EXT1遺伝子変異を有する患者は、罹患する骨の数が多い
- EXT1遺伝子変異を有する患者は、低身長を呈することが多い
- EXT1遺伝子変異を有する患者は、外科的治療を要する頻度が高い
ただし、これらの違いが認められない研究もあり、個人差や環境要因の影響も考慮する必要があります。
ミネルバクリニックの遺伝性多発性骨軟骨腫遺伝子パネル検査の特徴
「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」とは、現在遺伝性多発性骨軟骨腫の原因として報告されている2つの遺伝子(EXT1、EXT2)に異常があるかどうかを、一度に調べられる検査方法です。
従来の検査方法の場合、複数の関連遺伝子を調べるために、A遺伝子の検査をして異常がなければ次にB遺伝子を検査する、というように何度も検査する必要がありました。もちろん、検査のたびに高額な料金がかかります。
何度も検査することでかかる費用や手間は、患者さんにとって大きな負担になります。ミネルバクリニックではそうした不便を解消するために、遺伝性多発性骨軟骨腫に関連する2遺伝子を一度に調べられる「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」を採用しています。
一般的な遺伝子検査のメリットとデメリットについてはこちらのページをご覧ください。
1.費用がリーズナブル
一般的な医療機関で遺伝性多発性骨軟骨腫の遺伝子検査を行う場合、単一遺伝子ごとに数万円から数十万円の費用がかかることが多く、複数の遺伝子を調べる場合は非常に高額になります。
当院では、遺伝性多発性骨軟骨腫に関係するとされる2つの遺伝子を一度に調べられる「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」をリーズナブルに受けられます。(費用はページの一番下をご確認ください。)
2.結果が出るまでがはやい
一般的な医療機関で行える遺伝性多発性骨軟骨腫の遺伝子検査の場合、結果が出るまでには通常数週間から数ヶ月かかることがあります。また、単一遺伝子の検査で異常が見つからなかった場合、追加の遺伝子検査が必要になることもあります。
当院で行う「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」の場合、2つの遺伝子を、2~3週間程度で一度に調べることが可能です。
3.一気にまとめてできる
臨床症状から遺伝性多発性骨軟骨腫を疑って単一遺伝子検査を行っても、病的変異が見つからないことがあります。また、他の遺伝子に変異があるかどうかまでは分かりません。
当院で行う「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」ならば、臨床的に重要な2つの原因遺伝子を同時に検査できるという利点があります。
オプション
塩基配列 (料金に含まれる)
欠失・挿入 (料金に含まれる)
至急:結果が出るまでの期間が約7日短くなります。 33,000円
VUS除外 *VUS(variant of unknown significance)とは病的意義がよく分かっていない変異の事を指します。(無料)
検査内容
「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」では、遺伝性多発性骨軟骨腫に関係するとされる2種類の遺伝子(EXT1、EXT2)をまとめて検査します。
「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」は、遺伝性多発性骨軟骨腫の遺伝的原因をお持ちの方を見つける可能性を高められると同時に、現在および将来的に活用できる情報を提供します。
どんな人が受けたらいいの?
【遺伝性多発性骨軟骨腫の個人歴または家族歴のある方】に
「遺伝性多発性骨軟骨腫 NGSパネル検査」を受けることをおすすめします。
この検査は以下のような方に適しています:
・複数の骨軟骨腫がある方
・若年(特に12歳まで)で骨軟骨腫が認められる方
・骨の成長障害や骨変形がある方
・低身長(予想される身長より低い)の方
・前腕や下腿の彎曲変形がある方
・脚長差がある方
・凹足などの足の変形がある方
・早期発症の変形性関節症がある方
・手の変形(中手骨の短縮)がある方
・遺伝性多発性骨軟骨腫の家族歴がある方
・将来子どもを持つことを考えている保因者の方で、リスク評価を希望される方
このパネル検査は、血液、抽出DNA、頬粘膜スワブ、または唾液検体で実施可能です。モザイク現象の検出は目的としておらず、腫瘍組織での検査は適応外です。
検査で得られる患者さんの潜在的利益は?
遺伝子検査により原因が判明すると、遺伝性多発性骨軟骨腫の診断確定や、適切な治療・管理方針の決定に役立ちます。また、リスクが判明した場合には、適切な経過観察、外科的治療の計画、生活習慣の改善、定期的なモニタリングを行うことができます。
遺伝子検査により以下の利益が期待できます:
・適切な診断の確立または確認
・メタコンドロマトーシスなど類似疾患との鑑別
・適切な経過観察計画の立案
・外科的治療(骨軟骨腫切除、矯正骨切り術など)の適応判断
・悪性化(軟骨肉腫)のリスク評価と早期発見
・変形性関節症の早期発見と管理
・疾患の進行予測と長期的な管理計画の立案
・追加の関連症状のリスクの特定
・関連リソースやサポートへの患者の接続
・より個別化された治療と症状管理
・家族の危険因子に関する情報提供
・家族計画のためのオプション提供
・出生前・着床前診断の選択肢提供
患者さんで病原性変異が同定された場合、常染色体優性遺伝のため子どもが発症するリスクは50%です。家族を検査することでそのリスクを明らかにすることが重要です。
対象遺伝子
- 詳しくはこちら
-
EXT1, EXT2 ( 2遺伝子 )
各遺伝子の詳細:
・EXT1遺伝子(8q24.11-q24.13):
エクソストシン1(exostosin 1)をコードする遺伝子です。エクソストシン1は、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの合成に関与する糖転移酵素で、細胞外マトリックスの形成に重要な役割を果たします。EXT1遺伝子の変異は、患者の56~78%で検出され、遺伝性多発性骨軟骨腫の最も頻度の高い原因です。
EXT1遺伝子変異を有する患者は、EXT2遺伝子変異を有する患者と比べて、以下の特徴があります:
・骨軟骨腫の数が多い傾向
・罹患する骨の数が多い傾向
・低身長を呈することが多い
・外科的治療を要する頻度が高い
・全体的に疾患負荷が高い
・EXT2遺伝子(11p12-p11):
エクソストシン2(exostosin 2)をコードする遺伝子です。エクソストシン2もエクソストシン1と同様に、ヘパラン硫酸プロテオグリカンの合成に関与する糖転移酵素です。EXT1とEXT2は複合体を形成し、協働してヘパラン硫酸の重合を触媒します。EXT2遺伝子の変異は、患者の21~44%で検出されます。
EXT2遺伝子変異を有する患者は、EXT1遺伝子変異を有する患者と比べて、以下の特徴があります:
・骨軟骨腫の数が比較的少ない傾向
・罹患する骨の数が比較的少ない傾向
・低身長の頻度が低い傾向
・正常範囲内の身長を維持することが多い
・全体的に疾患負荷が比較的軽い
ただし、これらの遺伝子型と表現型の関連には個人差があり、すべての症例に当てはまるわけではありません。
カバレッジ
カバレッジとは、遺伝子検査においてDNA配列がどの程度正確に読み取られたかを示す指標です。「20x」は同じ部位を20回読み取ることを意味し、読み取り回数が多いほど検査の精度が高くなります。
≥99% at 20x(読み取り深度20回以上)
これは、検査対象遺伝子の99%以上の領域を、20回以上の高い精度で読み取ることができることを示しています。
検体
血液(EDTAチューブ4ml×2本、紫色キャップ)、抽出DNA(EBバッファー中3μg)、頬粘膜スワブ、唾液(要請により採取キット提供)
※唾液・口腔粘膜擦過組織・血液いずれもオンライン診療が可能です。
ほとんどの検査は唾液・口腔粘膜擦過組織で実施できます。
血液検体の場合は、全国の提携医療機関で採血をお願いします。
オンライン診療(ビデオ通話での診療)で遺伝カウンセリングを行った後、検体を当院にお送りいただく流れとなります。
検体採取キットは検査料金をお支払いいただいた後にお送りいたします。ご自身で勝手に検体を採取しないでください。
検査の限界
- 詳しくはこちら
-
すべての配列決定技術には限界があります。この分析は次世代シーケンシング(NGS)により実施され、コード領域とスプライス接合部の検査を目的として設計されています。次世代シーケンシング技術と当院のバイオインフォマティクス分析により、偽遺伝子配列やその他の高度に相同な配列の寄与は大幅に減少しますが、これらは配列決定および欠失/重複分析の両方において病原性変異体対立遺伝子を同定するアッセイの技術的能力を時に妨げる可能性があります。
低品質スコアの変異確認および被覆標準を満たすためにサンガー配列決定が使用されます。注文された場合、欠失/重複分析は、1つの完全な遺伝子(頬粘膜スワブ検体および全血検体)および2つ以上の連続するエキソンサイズ(全血検体のみ)のゲノム領域の変化を同定できます。単一エキソンの欠失または重複が時に同定される場合がありますが、この検査では日常的に検出されません。同定された推定欠失または重複は、直交法(qPCRまたはMLPA)により確認されます。
この検査では、疾患を引き起こす可能性がある特定のタイプのゲノム変化は検出されません。これには、転座や逆位、反復伸長(例:三塩基またはヘキサ塩基)、ほとんどの調節領域(プロモーター領域)または深部イントロン領域(エキソンから20bp以上)の変化が含まれますが、これらに限定されません。この検査は体細胞モザイクまたは体細胞変異の検出を目的として設計または検証されていません。
※EXT1遺伝子とEXT2遺伝子の全コード領域に対するシークエンス解析と欠失解析を組み合わせて行うことで、患者の70~95%における変異を検出できます。つまり、約5~30%の遺伝性多発性骨軟骨腫症例では、既知の遺伝子に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。また、第3の遺伝子座(EXT3)の存在が示唆されていますが、まだ確定していないため、本検査には含まれていません。
結果が出るまでの期間
2~3週間
※至急オプションを利用すると、結果が出るまでの期間が約7日短くなります。
料金
税込み275,000円
遺伝カウンセリング料金は別途30分16,500円(税込)
よくあるご質問
- どのような症状があれば検査を受けるべきですか?
- 複数の骨軟骨腫(特に12歳までに発症)がある方、骨の成長障害や骨変形がある方、低身長の方、前腕や下腿の彎曲変形がある方におすすめします。また、家族に同様の症状がある場合も検査をご検討ください。遺伝性多発性骨軟骨腫の診断年齢の中央値は3歳で、ほとんどの患者さんが12歳までに診断されます。
- 検査はどのように行いますか?
- 血液採取(4ml×2本)または唾液・頬粘膜スワブで検査可能です。唾液や頬粘膜の場合はオンライン診療も可能で、遠方の方でもクリニックにお越しいただかずに検査を受けられます。
- 骨軟骨腫と外骨腫は違うものですか?
- 同じものを指す用語です。以前は「外骨腫(exostosis)」と呼ばれていましたが、世界保健機構(WHO)は「骨軟骨腫(osteochondroma)」という用語を採択しました。骨軟骨腫という言葉により、これらの病変が骨の過剰成長だけでなく骨化する軟骨の変化であることが示されるため、より正確な表現とされています。そのため、現在は「遺伝性多発性骨軟骨腫(HMO)」という病名が推奨されていますが、「遺伝性多発性外骨腫症(HME)」も同義語として使用されています。
- 家族も検査を受ける必要がありますか?
- 遺伝性多発性骨軟骨腫は常染色体優性遺伝のため、患者さんのお子さんが発症するリスクは50%です。ご家族の検査により、将来の家族計画に重要な情報を提供できます。ただし、浸透率は約96%であり、変異を受け継いだ場合でも約4%は症状が現れない可能性があります。
- 検査で異常が見つからなかった場合はどうなりますか?
- 約5~30%の遺伝性多発性骨軟骨腫症例では、既知の遺伝子(EXT1、EXT2)に変異が見つかりません。検査で病原性変異が検出されなくても、疾患を完全に否定することはできません。臨床症状とX線所見に基づいた診断と管理が引き続き重要です。また、将来的に第3の遺伝子(EXT3)が同定される可能性があります。
- 保険は適用されますか?
- 当検査は自費診療となり、保険適用外です。費用は税込み275,000円、別途遺伝カウンセリング料金(30分16,500円)が必要です。
- 結果はどのように説明されますか?
- 検査結果は遺伝カウンセリングにて詳しくご説明いたします。結果の意味、今後の対応、ご家族への影響、治療・管理選択肢などについて、専門的な観点から分かりやすくお伝えします。
- 子どもや将来の妊娠への影響はありますか?
- 常染色体優性遺伝のため、患者さんの子どもが変異を受け継ぐ確率は50%です。変異を受け継いだ場合、約96%の確率で症状が現れます(浸透率96%)。検査結果により、出生前診断や着床前診断など、将来の家族計画についてもご相談いただけます。
- 遺伝性多発性骨軟骨腫の治療はどのように行われますか?
- 骨軟骨腫は臨床的な問題が生じない限り治療の必要はありません。疼痛、角ばった変形、脚長差、神経・腱の圧迫症状がある場合は外科的治療が行われます。具体的には、骨軟骨腫の切除、矯正骨切り術、尺骨延長術、骨端固定術、脚延長術などが行われます。成人期には悪性化の早期発見のため、骨軟骨腫のサイズを定期的にモニタリングすることが推奨されます。
- 悪性化(がん化)のリスクはどのくらいですか?
- 骨軟骨肉腫(特に軟骨肉腫)への悪性化のリスクは年齢とともに増加しますが、生涯を通じて1%未満と低い頻度です。ただし、特定の家系では悪性化率が6%に上ると報告されています。悪性化が起こりやすい部位は、骨盤、肩甲骨、肋骨、脊椎などの軸骨格です。成人期に骨軟骨腫が急速に増大したり、疼痛が増強した場合は、早期の評価が重要です。
- 予後はどうですか?
- 骨軟骨腫は骨格の発達とともに成長し、骨成熟に達すると成長を停止します。その後新しい骨軟骨腫が生じることはありません。大多数の患者さんは活動的で健康的な生活を送っています。成人期までに75%の患者さんに臨床的に明らかな骨変形が認められますが、多くの方は補助具や外科的治療により良好な生活の質を維持できます。生命予後は一般的に良好です。
- EXT1とEXT2の違いは何ですか?
- EXT1遺伝子変異は患者の56~78%で検出され、EXT2遺伝子変異は21~44%で検出されます。一般的に、EXT1遺伝子変異を有する患者は、EXT2遺伝子変異を有する患者と比べて、骨軟骨腫の数が多く、罹患する骨の数も多い傾向があります。また、低身長を呈することが多く、全体的に疾患負荷が高いことが報告されています。ただし、これらの違いには個人差があります。
- 他の医療機関での検査との違いは何ですか?
- 当院では臨床的に重要な2つの原因遺伝子(EXT1、EXT2)を一度に検査でき、従来の単一遺伝子検査と比べて費用・時間を短縮できます。また、臨床遺伝専門医が常駐しており、すべての患者さんに対して専門医が必ず診療と遺伝カウンセリングを行います。オンライン診療にも対応しており、全国どこからでも専門的な診療を受けることが可能です。
プロフィール
この記事の筆者:仲田洋美(医師)
ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、1995年に医師免許を取得して以来、のべ10万人以上のご家族を支え、「科学的根拠と温かなケア」を両立させる診療で信頼を得てきました。『医療は科学であると同時に、深い人間理解のアートである』という信念のもと、日本内科学会認定総合内科専門医、日本臨床腫瘍学会認定がん薬物療法専門医、日本人類遺伝学会認定臨床遺伝専門医としての専門性を活かし、科学的エビデンスを重視したうえで、患者様の不安に寄り添い、希望の灯をともす医療を目指しています。
仲田洋美のプロフィールはこちら