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悪性黒色腫1感受性

疾患概要

Melanoma, malignant, somatic 体細胞性悪性黒色腫(体細胞性メラノーマ) 155600 3

悪性黒色腫は、メラノサイトと呼ばれる色素を産生する細胞のがんで、主に皮膚に発生します。しかし、眼、耳、消化管、レプトメニング(脳脊髄液を含む薄い膜)、口腔、および性器の粘膜など、体の他の部位にも発生することがあります。

悪性黒色腫はその成長速度や侵襲性によって特徴づけられ、他の皮膚がんと比較しても進行が早い傾向があります。初期段階では、小さな色素変化や新しいほくろのような外見を呈することがありますが、時間とともに成長し、色や形が変化することが一般的です。

治療は発見の時期やがんの進行度によって異なりますが、初期段階では外科的切除が一般的な治療法です。進行した悪性黒色腫の場合、免疫療法、標的治療、化学療法、放射線療法などの治療オプションがあります。悪性黒色腫の予防には、過度な日光曝露を避け、定期的な皮膚検査を行うことが重要です。

遺伝的不均一性

皮膚悪性黒色腫(メラノーマ)の感受性遺伝的に不均一で、複数の遺伝子座遺伝子の変異が関与しています。これまでに同定された主な遺伝子座や関連遺伝子には以下のものがあります。

CMM1:染色体1p36にマップされた家族性皮膚悪性黒色腫-1の感受性遺伝子座。
CMM2:染色体9p21上のCDKN2A遺伝子の変異に起因。
CMM3:染色体12q14上のCDK4遺伝子の変異に起因。
CMM4:染色体1p22にマップされた。
CMM5:染色体16q24上のMC1R遺伝子の変異に起因。
CMM6:染色体14q32上のXRCC3遺伝子の変異に起因。
CMM7:染色体20q11にマップされた。
CMM8:染色体3p13上のMITF遺伝子の変異に起因。
CMM9:染色体5p15上のTERT遺伝子の変異に起因。
CMM10:染色体7q31上のPOT1遺伝子の変異に起因。

また、悪性黒色腫にはBRAFSTK11PTEN、TRRAP、DCC、GRIN2A、ZNF831、BAP1RASA2などの遺伝子に体細胞突然変異が関与していることが知られています。特に、メラノーマの多く(40-60%)はBRAF遺伝子の活性化体細胞突然変異(特にV600E)を持っています。

これらの遺伝子の変異は、悪性黒色腫のリスクを高めるか、または既存の腫瘍の成長と進行に関与しています。これらの遺伝子は細胞の成長調節、DNA修復細胞周期制御などの重要な生物学的プロセスに関わっています。

臨床的特徴

家族性黒色腫に関する研究は、この病態の臨床的特徴と遺伝的背景をより深く理解するための重要な情報を提供しています。以下は、主な発見とその意義を要約したものです。

家族性黒色腫の臨床的特徴
顔色と眼の色:家族性黒色腫患者は、一般的に青白い肌色と青い目を持つことが多いとされます(Moschella、1961;Schoch、1963;Salamonら、1963)。
大きなほくろ:Lynchら(1978)は、大きなほくろが家族性黒色腫の特徴的な皮膚マーカーであると指摘しました。これらのほくろは数が多く、色や輪郭が不均一であることが多いです。

家族性黒色腫の遺伝的特徴
遺伝子変異:Tuckerら(2002)は、CDKN2AとCDK4遺伝子の変異が家族性黒色腫のリスクを高めることを発見しました。

病態の管理
診断と追跡:異形成性母斑の検査と写真撮影が家族性黒色腫の診断と管理に役立ちます。大部分の異形成性母斑は安定しており、黒色腫への進行は比較的稀です。

その他の関連症状
黒色腫関連網膜症:Alexanderら(2004年)は、黒色腫関連網膜症が転移性皮膚悪性黒色腫を有する人に起こりうる視覚障害の一形態であることを報告しました。

総合的な意義
家族性黒色腫の研究は、遺伝的リスクファクター、皮膚の変化、及び可能な転移性疾患(例えば、黒色腫関連網膜症)に関する重要な知見を提供します。
これらの発見は、家族性黒色腫の早期発見、効果的な監視戦略、および適切な治療法の開発に寄与する可能性があります。

これらの研究は、家族性黒色腫の複雑な性質を理解し、リスク評価や管理戦略を改善するための基盤を提供しています。

その他の特徴

悪性黒色腫とパーキンソン病(PD)のリスクに関する研究は、これらの病気間の関連性を示唆しています。以下にその内容を要約します。

悪性黒色腫と腫瘍特異的抗原:
Hawkinsら(1981年)とPellegrisら(1982年)の研究では、悪性黒色腫において腫瘍特異的抗原が見つかっています。

パーキンソン病のリスク増加:
Constantinescuら(2007年)とFerreiraら(2007年)の研究では、黒色腫患者におけるパーキンソン病のリスク増加が観察されています。これは色素代謝がPDの病因に関与している可能性を示唆しています。
Gaoら(2009年)の研究では、成人期早期の地毛の色が暗い人々のPDリスクが増加するとの関連が見出されました。髪の色とPDとの関連は、70歳以前の発症で特に強いと報告されています。
赤毛をもたらすMCR1遺伝子の特定のSNPとPDリスクの増加との間にも関連が認められました。

色素沈着とPDの関連:
Gaoらは、メラニンがドーパミンと同様にチロシンから合成されること、PDが黒質におけるニューロメラニンを含むニューロンの消失によって特徴づけられることに注目し、色素沈着とPD発症との関連を仮定しました。
Herrero Hernandez(2009年)も独自にこの関連を指摘しました。

これらの研究は、悪性黒色腫とパーキンソン病の発症リスクとの関連性を示唆し、色素代謝が神経退行性疾患のリスクに影響を与える可能性があることを示しています。これらの発見は、これらの疾患の診断と治療に新たな視点を提供する可能性があります。

マッピング

皮膚悪性黒色腫(CMM)および異形成母斑(DN)遺伝子座のマッピングに関する研究は、これらが連鎖していることを示しています。Baleらによる初期の研究では、CMMの遺伝子座が染色体1p36に位置することが示唆されました。Dracopoliらは、1pの遠位端にヘテロ接合性の消失が観察され、黒色腫の進行に重要な遺伝子座が存在することを示唆しました。

一方で、Cannon-Albrightらは、ユタ州の家系で1pとの連鎖の証拠を見つけることができませんでした。これは、CMMに関与する遺伝子座の異質性を示唆しています。Goldsteinらは、9p遺伝子座がCMM単独の症例で重要であると述べており、1p遺伝子座と9p遺伝子座が異なるタイプのCMM/DNに影響を与えている可能性があります。

Falchiらの研究では、母斑の数に関連する変異が9p21のCDKN2A遺伝子近くのMTAP遺伝子および22q13.1のPLA2G6遺伝子に存在することが示されました。これらの遺伝子座は、メラノーマリスクとも関連しています。

これらの研究結果は、CMMの遺伝的背景が複雑であり、複数の遺伝子座が関与していることを示しています。これは、CMMの病態メカニズムを理解し、治療法の開発に役立つ重要な情報です。

家族性黒色腫における遺伝的不均一性

Millikinら(1991年)とNancarrowら(1992年)の研究は、家族性黒色腫における遺伝的不均一性を示しています。これらの研究では、特定の染色体上の特定の遺伝子座と家族性黒色腫の関連性に関するさまざまな発見がなされました。

Millikinらの研究(1991年)
染色体6qのLOH:6q22-q23と6q24-q27に位置するMYB(189990)とESR(133430)遺伝子座において、6番染色体上のLOHが最も頻繁に観察されました。
Nancarrowらの研究(1992年)
1p上のマーカーとの連鎖の再検討:オーストラリアの7つの血統を用いて1p上のマーカーとの連鎖を除外しました。
遺伝的不均一性の示唆:全常染色体にまたがるマイクロサテライトマーカーを用いた連鎖解析で、家族性黒色腫における遺伝的不均一性が示唆されました。
除外マッピング:6番染色体、9cen、および10qterの領域は家族性黒色腫との関連から除外されませんでした。
Fungらの研究(2003年)
オンライン遺伝子座特異的バリアントデータベース:家族性黒色腫に関連する遺伝子のバリアント情報を提供しています。
これらの研究は、家族性黒色腫が複数の遺伝子によって影響を受ける可能性が高いことを示しています。特に、染色体6qのLOHや1pのマーカーとの関連性の除外は、家族性黒色腫の複雑な遺伝的背景を浮き彫りにしています。このような遺伝的不均一性は、家族性黒色腫の予防や治療戦略を考える上で重要な要素となります。また、オンラインで利用可能な遺伝子座特異的バリアントデータベースは、この疾患に関連する遺伝的変異の理解を深めるための有用なリソースとなっています。

確認待ちの関連

Fernandezら(2008年)、Rafnarら(2009年)、およびBishopら(2009年)の研究は、メラノーマのリスクに関連する遺伝的要因を探究しています。以下にそれぞれの研究の要点をまとめます。

Fernandezら(2008年)の研究:
スペインの症例対照研究で、メラノーマ患者131人と対照者245人を対象に、色素沈着経路に属する6つの候補遺伝子の23SNPを解析しました。
唯一の明確な関連は、染色体5p13.3上のSLC45A2遺伝子のF374L変異(606202.0008)でした。

Rafnarら(2009年)の研究:
3万人以上のがん症例と4万5千人の対照者を対象に、CLPTM1L遺伝子のイントロンにあるSNP、rs401681とメラノーマおよび他の16のがん種との関連を検証しました。
rs401681がメラノーマに対する防御効果を持つ可能性を発見しました(OR = 0.88、p = 8.0×10^(-4))。

Bishopら(2009年)の研究:
皮膚黒色腫のリスクと関連する強い証拠を有する2つの遺伝子座を同定し、再現しました。
これらの遺伝子座はMC1R(155555)を含む16q24(rs258322の複合P = 2.54 x 10^(-27))およびTYR(606933)を含む11q14-q21(rs1393350のP = 2.41 x 10^(-14))でした。

これらの研究は、メラノーマの遺伝的素因の理解において重要であり、特定の遺伝的変異がメラノーマのリスクにどのように影響を与えるかを示しています。これらの知見は、メラノーマのリスク評価や予防戦略の開発に貢献する可能性があります。また、これらの研究はメラノーマの病態生理学のさらなる研究における基盤を築くことにも貢献しています。

遺伝

悪性黒色腫(Melanoma)は遺伝的要因を持つ可能性があり、いくつかの研究がその家族性傾向を指摘しています。

Cawley(1952)、Smithら(1966)、Andrews(1968)は、悪性黒色腫に関する研究を行いました。
KatzenellenbogenおよびSandbank(1966)は、悪性黒色腫の二卵性双生児ケースを記述しています。
Andersonら(1967)は、1血統3世代にわたり少なくとも15人に悪性黒色腫が発生した家系を報告しており、原発病変が多発し、発症年齢が早い傾向があると指摘しています。
LynchおよびKrush(1968)は、2代または3代にわたって悪性黒色腫が発生した2家系を報告しました。
Anderson(1971)は、106人が皮膚黒色腫を持つ36の血統を報告し、家族性症例が非家族性症例より生存率が高いと述べています。
Rhodesら(1985)は、先天性母斑細胞性母斑の有病率プロバンドの兄弟姉妹において一般集団の11倍であることを見出しました。
Greeneら(1983)の研究では、メラノーマの前駆病変である異形成母斑も常染色体優性遺伝すると示されました。
Pascoe(1987)とBaleとChakravarti(1987)は、異形成母斑の遺伝について議論しました。
Traupeら(1989)とHappleら(1982)は、形成異常母斑の遺伝に関して多遺伝子遺伝を支持する論拠を提供しました。
Kraemerら(1983)は、異形成性母斑の表現型に罹患した4人のケースを発見し、家族内の黒色腫患者の数が増えるほど黒色腫の発生リスクが高まることを報告しました。
これらの研究は、悪性黒色腫の家族性傾向や遺伝的要因に関する重要な情報を提供しています。悪性黒色腫のリスクを評価する際には、家族歴や遺伝的背景の考慮が重要であることが示されています。

治療・臨床管理

家族性異形成母斑症候群とメラノーマの臨床管理に関連する研究は、以下の主要な点を強調しています。

家族性異形成母斑症候群の予防遺伝学:
Greeneら(1985年)によると、家族性異形成母斑症候群は予防医学の実践に適した遺伝性疾患の一例です。

インターフェロンアルファ-2bの使用:
高リスク皮膚黒色腫治療にインターフェロンアルファ-2bが使用されていますが、多くの全身性副作用が伴います。
Hejnyら(2001年)は、高用量IFNアルファ-2b治療中の患者で網膜症のリスクが高まることを報告しました。

メラノーマ関連網膜症:
稀な疾患で、夜盲症や先天性定常夜盲症の特徴を示します。
Potterら(2002年)は、メラノーマ関連網膜症が抗トランスデューシン抗体と関連している可能性を示しました。

BRAF V600E変異に対する特異的阻害剤(PLX4032):
Flahertyら(2010年)は、PLX4032による治療がメラノーマの退縮をもたらしたことを報告しました。
Bollagら(2010年)はPLX4032の発見と構造誘導発見について述べています。

ベムラフェニブ(PLX4032)の第3相臨床試験:
Chapmanら(2011年)による研究は、ベムラフェニブがダカルバジンと比較してメラノーマの進行を遅らせることを示しました。

ベムラフェニブ耐性:
Thakurら(2013年)は、ベムラフェニブ耐性メラノーマが薬剤依存性を示すことを発見しました。

CTLA4遮断療法とエクソーム解析:
Snyderら(2014年)は、CTLA4遮断療法の反応性と抵抗性に関連する遺伝的基盤をエクソーム解析を通じて定義しました。

イピリムマブに対する反応性と腫瘍微小環境:
Van Allenら(2015年)は、イピリムマブに対する反応性と抵抗性の決定因子を同定するために詳細な統合的分子特性解析を実施しました。

CTLA4遮断のバクテロイデス依存効果:
Vetizouら(2015年)は、CTLA4遮断の抗腫瘍効果がバクテロイデス種に依存することを見出しました。

エクソソームPDL1と抗PD1療法:
Chenら(2018年)は、エクソソームPDL1が抗PD1療法の予測因子としての可能性を示しました。

これらの研究は、メラノーマの臨床管理における新たな治療法、バイオマーカー、および潜在的な副作用のリスクに関する重要な知見を提供しています。

病因

皮膚悪性黒色腫(メラノーマ)の発生と進行には、紫外線(UV)曝露の影響が重要な役割を果たしています。Gilchrestら(1999)によると、紫外線による皮膚へのダメージは、メラノーマだけでなく、基底細胞や扁平上皮癌などの一般的な皮膚がんのリスクも高めます。しかし、紫外線曝露のパターンがこれらの皮膚がんタイプによって異なることが指摘されています。

メラノーマは、断続的な紫外線曝露と強く関連しており、特に思春期に重度の日焼けを経験した人々のリスクが高いです。メラノーマは、断続的に日光にさらされる部位(例:男性の背中、女性の下腿)に多く発生します。

基底細胞がんや扁平上皮がんは、長期間の累積的な日光曝露と関連しており、日光に頻繁に曝される部位(例:顔、手、前腕)に多く発生します。

Noonanら(2001)の研究では、トランスジェニックマウスにおいて、生後初期の1回の紫外線照射が、メラノーマの発生を大幅に増加させることが示されました。これは、人間の子供時代の強い日光曝露がメラノーマリスクを高めることと一致しています。

Curtinら(2005)の研究では、メラノーマは紫外線曝露のパターンによって異なる遺伝的特徴を示すことが明らかになりました。紫外線曝露の程度が異なるグループ間で、DNAコピー数の変化と特定の遺伝子(BRAF、NRASなど)の変異頻度に違いがあることが観察されました。

Schattonら(2008)は、化学療法抵抗性メラノーマ開始細胞(MMIC)が、メラノーマの増殖に関与していることを示しました。これらの細胞は、メラノーマの進行と関連しており、腫瘍の成長を抑制するための標的となり得ます。

非肥満性糖尿病/重症複合免疫不全(NOD/SCID)マウスを用いた研究やその他の関連研究は、メラノーマを含むがんの病態生理と治療に関する重要な洞察を提供しています。以下は、これらの研究の主な発見とその意義を要約したものです。

NOD/SCIDマウスを用いたメラノーマの研究
Quintanaらの研究(2008年):より高度に免疫不全化したNOD/SCIDマウスを用いて、腫瘍原性メラノーマ細胞の検出率を数桁増加させることが可能であることを示しました。これにより、ヒトのがんにおいて腫瘍形成細胞が一般的である可能性が示唆されました。
SOX9の発現と黒色腫
Passeronらの研究(2009年):黒色腫のほとんどの検体でSOX9の発現が弱いかないことを発見しました。SOX9は、メラノーマ細胞の腫瘍形成性を抑制し、レチノイン酸に対する感受性を回復させる役割を果たすことが示されています。
macroH2Aと黒色腫の進行
Kapoorらの研究(2010年):macroH2A(mH2A)が悪性黒色腫の腫瘍進行を抑制することを報告しました。mH2Aの欠損は、腫瘍の増殖と転移を促進することが明らかにされました。
これらの研究は、黒色腫の病態生理に関する新たな知見を提供し、将来の治療戦略の開発に貢献する可能性があります。特に、SOX9の発現の変化やmacroH2Aの役割などは、新たな治療標的としての潜在性を示唆しています。また、NOD/SCIDマウスを用いた研究は、がんの腫瘍形成細胞の特性とその頻度に関する理解を深める上で重要です。これらの発見は、メラノーマの診断、治療、および予後評価において新たなアプローチを提供することが期待されます。

以下の研究は、メラノーマの発生と治療に関する複数の側面を探究しています。以下にそれぞれの研究の要点をまとめます。

Zaidiら(2011年)の研究:
マウスモデルを用いて、UVB照射後のメラノサイトの蛍光イメージングと単離を行い、免疫回避に関連する遺伝子を含むインターフェロン応答シグネチャーを特定しました。
UVB誘導リガンドによりリクルートされたマクロファージがIFN-γを産生し、メラノーマの成長を促進することがわかりました。
IFN-γ遮断により、メラノーマの成長促進が消失しました。

Ceolら(2011年)の研究:
ゼブラフィッシュメラノーマモデルを用いて、BRAF(V600E)と共にメラノーマを促進する能力を持つ遺伝子をテストしました。
SETDB1がメラノーマ形成を促進することを発見し、この遺伝子ががん遺伝子であることを立証しました。

Whiteら(2011年)の研究:
ゼブラフィッシュ胚を用いて、BRAF(V600E)活性化による神経堤細胞の転写開始事象を同定しました。
DHODH阻害剤(例えばレフルノマイド)が、神経堤の発生とメラノーマの増殖を抑制することを発見しました。

Straussmanら(2012年)の研究:
35種類の抗がん剤に対する45種類のがん細胞株の耐性に影響を及ぼす間質細胞をアッセイし、HGF分泌によるMET活性化がRAF阻害に対する耐性をもたらすことを発見しました。

Wilsonら(2012年)の研究:
HGFがBRAF阻害剤に対する耐性を付与することを発見し、RTKリガンドががん原性キナーゼに対する耐性に役割を果たす可能性があることを示しました。

Johannessenら(2013年)の研究:
RAF、MEK、ERK阻害剤で治療されたBRAF(V600E)メラノーマ細胞株において、抵抗性に関与する遺伝子を同定しました。
MAPK経路阻害剤とヒストンアセチル化酵素阻害剤を併用することで、メラノーマに対する抵抗性が克服される可能性が示されました。

Sunら(2014)の研究では、BRAF(V600E)陽性メラノーマ腫瘍の一部がBRAFまたはMEK阻害剤耐性を獲得し、EGFRの発現を増加させることが示されました。メラノーマにおけるSOX10の抑制は、TGF-βシグナルの活性化を引き起こし、EGFRおよびPDGFRBのアップレギュレーションをもたらし、耐性の原因となりました。EGFR発現やTGF-βへの曝露は、BRAF/MEK阻害剤の存在下で細胞増殖に有益であることが分かりました。EGFR陽性薬剤耐性メラノーマ患者の一部は、「薬剤休薬」後に感受性を回復する可能性があります。

Virosら(2014)の研究では、BRAF変異(V600E)マウスモデルを用いて、UVRがBRAF駆動性黒色腫の発生を促進することが示されました。UVRは、メラノサイトのクローン性拡大とメラノーマ負荷の増加を引き起こし、UVR駆動性黒色腫の発症を遅延させるためには部分的な保護しか提供しないサンスクリーンが有益であることが示されました。

Chibaら(2017)は、TERTプロモーター変異がテロメア維持をサポートしないことを示しました。TERTプロモーター変異はテロメアの短縮を防がず、腫瘍形成に寄与することが示唆されました。

Baldら(2014)の研究では、UV照射がメラノーマの転移性進展を促進することが報告されました。UV誘発好中球性炎症反応は血管新生を刺激し、メラノーマ細胞が内皮細胞に向かって移動する能力を促進しました。

Luoら(2016)の研究では、PGC1-αがメラノーマの転移を抑制することが示されました。PGC1-αはID2の転写を増加させ、TCF4に結合して不活性化し、浸潤と転移に影響するインテグリンを含む転移関連遺伝子のダウンレギュレーションを引き起こしました。

これらの研究は、メラノーマの発生、進展、転移に関する重要な分子メカニズムと治療戦略の理解を深めるものです。

細胞遺伝学

Trentら(1983)の研究では、悪性黒色腫の5例中4例で6番染色体の長腕(6q15-q23領域)に欠失や転座を含む染色体変化が見られました。この領域にはMYB癌遺伝子がマップされています。Becherら(1983)も同様に、悪性黒色腫の細胞学的研究で6q(q11-q31)領域の構造異常が高頻度に見られることを報告しました。これらの発見は、特定のHLAハプロタイプと家族性悪性黒色腫との関係を強調するものです。

Pathakら(1983)、Balabanら(1984)、Reyら(1985)の研究でも、6番染色体の優先的な異常が報告されています。Hechtら(1989)は、悪性黒色腫患者の異形成母斑と正常皮膚で染色体再配列の増加を観察しましたが、リンパ球ではそのような変化は見られませんでした。

これらの研究は、悪性黒色腫の細胞遺伝学的特徴として6番染色体の特定領域の異常が重要であることを示しており、これが悪性黒色腫の発症および進展に関わっている可能性が示唆されています。

分子遺伝学

Zhangら(2006)は、卵巣癌、乳癌、黒色腫の検体でmiRNA遺伝子のDNAコピー数異常が高い割合で見られることを発見しました。これは、miRNA関連遺伝子DICER1、AGO2などのコピー数異常とも相関していました。これらの変化は癌の一部でのmiRNA遺伝子の調節異常に関与している可能性があります。

Palavalliら(2009)は、黒色腫の23%でMMP遺伝子ファミリーの変異を発見しました。特にMMP8遺伝子の変異は酵素活性を低下させており、野生型MMP8は黒色腫の進行を抑制する可能性があります。

Prickettら(2009)は、黒色腫患者の19%にERBB4遺伝子の変異を発見し、ERBB4阻害剤により細胞増殖が抑制されることを確認しました。

Pleasanceら(2010)は、悪性黒色腫のゲノムを解析し、紫外線被曝によるDNA損傷の影響を強調しました。また、DNA修復が転写領域に対して優先的に展開されていることを示しました。

Weiら(2011)は、黒色腫の25.2%でGRIN2A遺伝子の変異を発見し、グルタミン酸シグナル伝達経路が黒色腫の病因に関与している可能性を示唆しました。

Bergerら(2012)は、25個の転移性黒色腫のゲノムを解析し、PTENと相互作用するPREX2遺伝子が黒色腫の発生に関与することを発見しました。

Prickettら(2011)は、黒色腫の16.3%がGRM3遺伝子の変異に罹患していることを発見しました。

Nikolaevら(2012)は、7つの黒色腫細胞株でMAP2K1およびMAP2K2の変異を発見し、これらの変異がMEK阻害剤に対する耐性をもたらしていることを示しました。

これらの研究は、黒色腫の発症と進行において、様々な遺伝子変異が重要な役割を果たしていることを示しています。特にmiRNA、MMP遺伝子、ERBB4、GRIN2A、PREX2、GRM3、MAP2K1、MAP2K2などの遺伝子が黒色腫の発生および転移に関与している可能性があることが示されています。

Starkら(2012年)は、メラノーマ細胞株の24%において、MAPキナーゼキナーゼ(MAP3K)ファミリーのメンバーであるMAP3K5およびMAP3K9に変異が存在することを発見しました。これらの変異はキナーゼ活性に影響を及ぼす可能性があり、MAPキナーゼのリン酸化減少と化学療法抵抗性に関連していることが示唆されました。

Arafehら(2015年)は、RASA2がメラノーマの5%で変異していることを発見しました。これらの変異はRAS活性化とメラノーマ細胞の増殖および遊走を増加させ、患者の生存率の低下と関連していました。

Ablainら(2018年)は、粘膜黒色腫の37%でSPRED1遺伝子が不活性化されていることを発見し、SPRED1が特にKIT変異の文脈で腫瘍抑制因子として機能することを明らかにしました。

Haywardら(2017年)は、メラノーマのサブタイプからの全ゲノム配列解析を報告し、皮膚黒色腫ではBRAF、CDKN2A、NRAS、TP53が変異していることを発見しました。尖圭黒色腫ではBRAF、NRAS、NF1、粘膜黒色腫ではSF3B1に変異があることが示されました。また、TERTプロモーターに影響を及ぼす変異が全サブタイプで最も頻度が高かったことも発見されました。これらの研究は、メラノーマの分子的特徴と異なるサブタイプ間の遺伝的変異に関する重要な洞察を提供しています。

遺伝的関連

Gudbjartssonらの2008年の研究は、皮膚悪性黒色腫のリスクと目の色の遺伝的関連性を明らかにしました。この研究では、特定の一塩基多型(SNP)rs1408799Cが目の色と関連し、同時に皮膚悪性黒色腫のリスクを増加させることが示されました。

研究のポイント
SNP rs1408799C:このSNPは目の色と関連しており、目の色が皮膚悪性黒色腫のリスク因子とされています。
オッズ比:オッズ比1.15は、このSNPを持つ個体が持たない個体と比較して、皮膚悪性黒色腫になるリスクが15%高いことを意味します。
統計的意義:p値が4.3×10^(-4)であることは、この関連が統計的に有意であることを示しています。
重要性
リスク因子の同定:特定の遺伝的マーカーが疾患のリスクを示すことは、リスク評価や予防戦略の開発に役立ちます。
疾患の遺伝的背景の理解:遺伝的要因が疾患の発症にどのように影響するかを理解することは、治療法の開発や疾患管理の改善に貢献します。
この研究は、皮膚悪性黒色腫のリスクと遺伝的要因との関連性に関する理解を深めるものであり、将来的な研究や臨床応用に対して重要な情報を提供しています。

動物モデル

Dankortら(2009)による研究は、ヒト黒色腫の発生と進行を模倣するための動物モデルを開発したことで注目されます。彼らは、Braf(V600E)遺伝子をメラノサイト特異的に条件付きで発現するマウスを作製しました。このマウスモデルでは、Braf(V600E)の発現だけでは良性のメラノサイト過形成を発症し、メラノーマへの進行は起こりませんでした。

しかし、Braf(V600E)の発現に加えてPten癌抑制遺伝子のサイレンシングを行うと、メラノーマが100%の浸透率で発生し、発症までの潜伏期間が短縮され、リンパ節や肺への転移が観察されました。さらに、このモデルでは、mTorc1やMek1/2の阻害剤によってメラノーマの発症が阻止されることが示されました。特に、両方の阻害剤を併用することで、既に発症したメラノーマが縮小する効果が見られました。

この研究は、ヒトの黒色腫を研究するための重要な動物モデルを提供し、黒色腫の治療における標的療法の可能性を示唆しています。また、薬剤の組み合わせ治療が、単一薬剤治療よりも効果的である可能性があることを示しています。

歴史

Norris(1820)による報告は、家族性皮膚悪性黒色腫(CMM)に関する最も古い文献の一つと考えられています。Norrisは、ある紳士とその家族が同様の病気で亡くなったと記述しており、家族内で体のあちこちにほくろが多く見られたことを詳細に記しています。彼は、彼の患者、患者の父親、兄弟たちに見られたほくろの存在と、病気の症状が似ていることから、この病気が遺伝性である可能性を指摘しています。

この報告は、家族性メラノーマの存在を示唆する重要な歴史的文献であり、現代医学における遺伝性がんの研究における重要な出発点となりました。Norrisの観察は、特定の家族におけるがんの発生パターンを通じて、がんの遺伝的傾向を認識する重要性を浮き彫りにしています。Hect(1989)による解説では、このような早期の報告が遺伝性がんの理解にどのように貢献したかについて詳細に説明されていると思われます。

疾患の別名

MELANOMA, CUTANEOUS MALIGNANT; CMM
MELANOMA, MALIGNANT
FAMILIAL ATYPICAL MOLE-MALIGNANT MELANOMA SYNDROME; FAMMM
MELANOMA, FAMILIAL; MLM
DYSPLASTIC NEVUS SYNDROME, HEREDITARY; DNS
B-K MOLE SYNDROME
皮膚悪性黒色腫; CMM
悪性黒色腫
家族性非定型ホクロ-悪性黒色腫症候群;FAMM
家族性黒色腫;MLM
異形成性母斑症候群、遺伝性;DNS
B-Kホクロ症候群

参考文献

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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