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MMR ミスマッチリペア

MMR ミスマッチリペアとは

DNAミスマッチリペア(DNAミスマッチ修復修復)(DNA mismatch repair; dMMR)は、DNA複製組換えの際に生じる塩基の誤挿入欠失、誤挿入を認識して修復するシステムであり、ある種のDNA損傷も修復する。ミスマッチ修復は鎖特異的に行われる。

DNAミスマッチ修復(MMR)は、バクテリアからヒトまで保存されているいくつかのDNA修復経路の一つである。MMRの主な機能は、DNA合成時のDNAポリメラーゼのエラーの結果として現れる、塩基の挿入や欠失のミスマッチを解消することである。

MMR遺伝子体細胞または生殖細胞上の変化によってDNAミスマッチ修復(MMR)機能が失われると、ゲノム上に多数の突然変異が蓄積され、マイクロサテライト不安定性(MSI)と呼ばれる分子表現型が生じる。胃では、MSIは約15%から30%の症例で発生する。

マイクロサテライト不安定性とミスマッチ修復システム

マイクロサテライト不安定性(MSI)表現型は、DNAミスマッチ修復(MMR)システムの欠陥により、主に反復配列(マイクロサテライト)にゲノム全体で多数の変異が蓄積することを特徴とする。

MMRシステムには以下の7つのタンパクが少なくとも含まれている。MMRタンパクたちはそれぞれが特定のパートナーと結合して機能的なヘテロダイマーを形成し、DNA複製中に生じる塩基対のミスマッチや小さな塩基の挿入・欠失(1~4塩基対)を認識する。

  • h-MLH1
  • h-MLH3
  • h-MSH2
  • h-MSH3
  • h-MSH6
  • h-PMS1
  • h-PMS2

h-MLH1とh-MSH2は、MMR機構の必須の構成要素であり、5つの機能的なヘテロ二量体複合体を形成する

  • MutS複合体:①h-MSH2/h-MSH3(hMutSβ)または②h-MSH2/h-MSH6(hMutSα)ヘテロ二量体からなる
  • MutL複合体:③h-MLH1/h-PMS2(hMutLα)、④h-MLH1/h-PMS1(hMutLβ)または⑤h-MLH1/h-MLH3(hMutLγ)ヘテロ二量体からなる

1.DNAミスマッチ修復の開始

DNA MMRは、hMutS複合体がDNAに集合することで始まる。形成されるMutSヘテロ二量体の種類は、修正されるべきDNA変化の種類により決定される

  • 塩基のミスペアと小さな挿入・欠失ループの両方を修正:h-MSH2/h-MSH6ヘテロ二量体
  • 挿入・欠失ループを修復:h-MSH2/h-MSH3ヘテロ二量体

2.MutLヘテロ二量体のリクルートとミスマッチ部位の切断

MutS複合体によるDNA MMRの開始に続いて、MutLヘテロ二量体のリクルートが起こる

MutLタンパクは、ミスマッチ認識複合体を、増殖細胞核抗原(PCNA;proliferating cell nuclear antigen)、DNAポリメラーゼδおよびε、一本鎖DNA結合タンパク質、そしてDNAヘリカーゼなど、修復プロセスを完了するために必要な他の修復機構の下流エフェクターに接続する機能を持っている。

h-MLH1/PMS2は唯一がんの原因となることがわかっているMMR関連タンパクであるが、他の2つのhMutL複合体の役割については、あまりよくわかっていない。

In vitroの研究では、h-MLH1/h-MLH3ヘテロ二量体が、塩基のミスマッチペアや1塩基の挿入・欠失ループの修復に関与していることが示されたが、生体内での機能性については示されていない

MutLαは、DNAミスマッチ修復に必要なエンドヌクレアーゼ活性を持っている。MutLαのエンドヌクレアーゼ活性は、ヌクレアーゼの活性部位の一部であるC末端ドメインのDQHA(X)2E(X)4Eモチーフに依存している。このモチーフは、MutLαと相同性のあるDNAミスマッチ修復システム因子である細菌のMutLや真核生物のMutLγタンパク質の多くにも存在する。

DNAミスマッチリペア

図の説明
(A)DNAボリメラーゼ,とくにpol-δは]ここに示した鋳型鎖(青) 内のDNAの反復配列(たとえば,ある微小衛星配列)内で時々「どもるstutter」または1塩基を跳ばす。その結果、新規に合成された鎖 (緑)は反復配列の塩墓を1個過剰に獲得して長さを増すか,または1 塩呈を失う(上2段の像).同一の動態で,反復単位がTCの2ヌクレオチド区画や(下2段),より複雑な反復配列であるマイクロサテライト配列内でも類似の変化を起こすだろう.
(B)ミスマッチ 修復(MMR)タンパク群は,DNAポリメラーゼにより作られた誤り を認識して修復する機能を持つ.細菌Thamus aquaticsのMutSが,特定のヌクレオチド部位にミスマッチを導入したDNA 断片に結合しているのが可視化された.MutSがミスマッチ領域を探 査して,それを探し当てるとDNAの二重らせんを折り曲げて 安定に結合するので,白い錐体として見えている.
(C)真核細胞では,MMR装置のMutSとMutLという2つの要素が協調してミスマッチDNAを除去する.図Bで示したように,MutS (緑)がDNAのミスマッチを探索する.その後MutLがDNAの1本鎖 切断nickを探して直近に合成された鎖(赤)を同定する.直近に合成された鎖はメチル化の度合いが低いので(under-methylation)この鎖の同定に役立つかもしれない。その後MutLは,この検出されたミスマッチ部を含めて合成と逆向きに分解を誘導して,その後の修復合成を可能にし,適正にマッチしたDNA鎖を産生する.MutLが直近に合成されたDNA鎖を決定するのに一本鎖切断やメチル化以外の他の手だてを使うかどうかはよくわかっていない。
(D)好熱菌Thamus aquaticsのMMRタンパクMutSの機能がさらにより詳細にX線結晶解析により示されている。Thamus aquaticsのホモダイマー(相同二量体)タンパクがミスマッチを持つDNAらせん(赤)と複合体を形成している部分がここに示されている.サブユニットAの第Ⅰと第Ⅳドメインが濃胄色とオレンジ色で,-方サブユニットBの対応するドメインが淡胄と黄で示されている.矢印(黄)は第Ⅰサブユニットの39番残基のフェニルアラニンが二本鎖の一方の,塩墓対をなしていないチミジンと会合している.このタンパクのヒトホモログの欠陥は遺伝性非ポリポーシス大腸がんHNPCC(リンチ症候群)を誘起するのに重要な役を担う。(ワインバーグがんの生物学より引用)

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この記事の著者:仲田洋美医師
医籍登録番号 第371210号
日本内科学会 総合内科専門医 第7900号
日本臨床腫瘍学会 がん薬物療法専門医 第1000001号
臨床遺伝専門医制度委員会認定 臨床遺伝専門医 第755号

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

仲田洋美のプロフィールはこちら

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