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遺伝子発現の入門ガイド:セントラルドグマからプロファイリングまで、生物の形質がどのように決まるのかを5分で理解する

この記事では、遺伝子発現の基礎から応用までを簡潔に解説します。DNAからRNAへの転写、RNAからタンパク質への翻訳のプロセス、そして生物の形質を決定する流れについて、rhelixaの解説と共に、生物学や遺伝子工学の基礎をわかりやすく紹介します。高校生から研究者まで、幅広い読者に役立つ内容です。

序章:遺伝子発現とは

遺伝子発現は、遺伝子によって記録された情報が機能する形へと変換される過程を指します。このプロセスは主に、タンパク質を生成するための情報を持つRNA分子の転写、または他の機能を担うノンコーディングRNA分子の転写によって行われます。遺伝子発現を、RNA分子やタンパク質がいつ、どの場所で生成されるかを制御する「オン/オフスイッチ」と見なすことができますし、これらの産物がどれだけ生産されるかを決める「音量調節機能」と考えることもできます。この過程は厳密に管理されており、異なる環境や細胞の種類に応じて大きく変わります。多くの遺伝子によって生成されるRNAとタンパク質は、他の遺伝子の発現を調整する役割を持っています。遺伝子がどの場所で、いつ、どれだけ発現しているかは、遺伝子産物の機能や遺伝子に関連する特徴を調べることで評価することができます。

遺伝子発現が重要な理由は、特定のタンパク質が生成されるためには、その遺伝子が「オン」の状態になっている必要があるからです。ただし、遺伝子からタンパク質が生成されるまでには、一つ以上のステップが必要であり、このタンパク質の生成プロセスは、がんなどで変化する可能性のある遺伝子発現の経路における重要な段階です。

遺伝子発現の基本原理、セントラルドグマには、転写(DNAからRNAへの変換)と翻訳(RNAからタンパク質への変換)の2つの連続したステップが含まれます。転写は、遺伝子の「オン」と「オフ」を管理する重要な段階であり、その結果として、細胞の特性と状態がはっきりと示されます。

第1章 遺伝子発現の基礎

DNAとは何か

DNA(デオキシリボ核酸)は、生物の遺伝情報を担う分子であり、細胞の核に多く含まれています[19]。この分子は、2本のポリヌクレオチド鎖が互いに巻きついて二重らせんを形成しているポリマーであり[20]、その構造は、塩基、糖(デオキシリボース)、リン酸の3つの部分に分けられます[19]。生物に使われている塩基は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)、シトシン(C)の4種類があり、これらの塩基の並び方、すなわち塩基配列が遺伝情報を特徴づけています[19]。

DNAの主な機能は、遺伝情報を保持し、次の世代に受け渡すことです。塩基配列の違いによって、DNAを元に作られるタンパク質のアミノ酸配列が異なり、これによりタンパク質の物性や機能の差異が生じます[19]。また、DNAは細胞分裂によって一つの細胞が二つに増殖する際に正確にコピーされ、二つの細胞は同じ塩基配列のDNAを持ちます。これにより、生物は自分と同じものを作ることができる基本的な性質を持っています[19]。

DNAが遺伝情報を子孫に伝達する物質であることは、1944年にアメリカの研究者アベリーによって明らかにされました。その後、1953年にイギリスでワトソンとクリックの二人の研究者が、DNAが二重らせんの立体構造を取っていることを明らかにしました[19]。DNAの発見とその構造の解明は、遺伝学と分子生物学の発展に大きな影響を与えました。

遺伝子発現の流れ:セントラルドグマ

セントラルドグマは、遺伝情報がDNAからRNAへ、そしてタンパク質へと伝達される一方向のプロセスを示しています。この概念は、分子生物学の基本的な原理として、1958年にフランシス・クリックによって提唱されました。遺伝情報の流れは、「DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質」という順序で進行します[16]。

● 転写
転写は、DNAの遺伝情報がRNAにコピーされる過程です。この過程は、RNAポリメラーゼと呼ばれる酵素によって制御されます。RNAポリメラーゼは、DNA上のプロモーター領域に結合して転写を開始し、終止信号で転写を終了します。真核生物では、転写されたプレ-mRNAはキャッピング、ポリアデニル化スプライシングを経て成熟したmRNAに加工されます[15]。

● 翻訳
翻訳は、mRNAの遺伝情報をもとにタンパク質が合成される過程です。この過程は、リボソームと呼ばれる細胞小器官によって制御されます。mRNAはリボソームに結合し、tRNA転移RNA)は特定のアミノ酸を運び、mRNA上のコドンに対応して結合します。tRNAによって運ばれたアミノ酸が連結され、ペプチド鎖が合成されます[15]。

● 例外と逆転写
セントラルドグマには例外も存在します。例えば、逆転写酵素を持つレトロウイルスは、RNAからDNAへと遺伝情報を逆転写することができます。この発見は、セントラルドグマの概念に修正を加えることになりました[15]。

セントラルドグマは、遺伝情報の一方通行性を示していますが、生物学の進歩により、この原則には例外があることが明らかになっています。それにもかかわらず、セントラルドグマは分子生物学における遺伝情報の流れを理解するための基本的な枠組みとして、今日でも重要な役割を果たしています[15][16]。

第2章 遺伝子からタンパク質へ

転写のプロセス

転写のプロセスは、DNAの遺伝情報をRNAに転写する生命の基本過程です。このプロセスは、遺伝子の発現とタンパク質の合成に直接関連しており、細胞の機能と生物の発達に不可欠な役割を果たします[2]。以下に、転写の主要なステップを詳細に説明します。

● 1. 転写の開始

転写の開始は、RNAポリメラーゼという酵素がDNAの特定の領域、すなわちプロモーターに結合することから始まります。プロモーターは、遺伝子の転写が開始される場所を指定するDNAの領域です。RNAポリメラーゼは、プロモーター領域に結合することで、DNAの二重螺旋構造を部分的に開き、転写が進む方向を決定します[2][7]。

● 2. RNAの合成

RNAポリメラーゼは、DNAの鋳型鎖(アンチセンス鎖)に沿って移動しながら、相補的なRNAヌクレオチドをDNA鋳型鎖に結合させ、RNA鎖を合成します。この過程で、DNAのアデニン(A)に対してはウラシル(U)が、チミン(T)に対してはアデニン(A)が、グアニン(G)に対してはシトシン(C)が、そしてシトシン(C)に対してはグアニン(G)が結合します[5][6]。

● 3. 転写の終結

RNAポリメラーゼが遺伝子の終端に達すると、転写は終了します。真核生物では、転写終結信号として機能するDNA領域が存在し、これによってRNAポリメラーゼと新しく合成されたRNA鎖がDNAから解離します[4]。

● 4. RNAの修飾

真核生物では、転写されたRNA(前駆体mRNA)は、核内でさらに修飾を受けます。この修飾には、5’キャッピング、3’のポリアデニル化、そしてスプライシングが含まれます。スプライシングでは、非コーディング領域であるイントロンが除去され、コーディング領域であるエクソンが結合されます。これにより、成熟したmRNAが生成され、核から細胞質へと移動し、タンパク質合成のためのリボソームに送られます[3][7]。

転写のプロセスは、遺伝情報がどのようにして機能的なタンパク質に変換されるかを理解するための基本的なトピックであり、生物の遺伝子発現を制御する基本的なメカニズムです[2]。

翻訳の過程

## タンパク質合成の翻訳の過程

タンパク質合成における翻訳の過程は、mRNAの塩基配列に基づいてアミノ酸を連結し、ポリペプチド鎖を形成するプロセスです。この過程は、リボソームという細胞小器官で行われ、mRNA、tRNA(トランスファーRNA)、およびリボソームRNA(rRNA)が重要な役割を果たします[2][4][5][6].

● 翻訳の開始

翻訳は、mRNAにコードされた開始コドン(AUG)を特定のtRNA(Met-tRNA)が認識することから始まります。このtRNAはメチオニン(Met)というアミノ酸を運び、リボソームの小サブユニットに結合します。その後、リボソームの大サブユニットが結合し、翻訳の準備が整います[5].

● アミノ酸の連結

リボソームは、mRNA上を移動しながら、コドン(3つの塩基からなる単位)ごとに対応するアミノ酸を運ぶtRNAを引き寄せます。各tRNAはアンチコドンと呼ばれる3つの塩基を持ち、mRNAのコドンと相補的に結合します。リボソームの活性中心では、tRNAが運んできたアミノ酸がペプチド結合を介して連結され、ポリペプチド鎖が伸長していきます[2][5][6].

終止コドンと翻訳の終了

リボソームがmRNA上の終止コドン(UAA、UAG、UGA)に到達すると、翻訳は終了します。終止コドンはアミノ酸を指定せず、リボソームからポリペプチド鎖が解放される信号となります。リボソームはmRNAから解離し、新たに合成されたポリペプチドは折りたたまれて機能的なタンパク質へと成熟します[7].

● コドンとアミノ酸の対応

mRNAのコドンは、遺伝暗号表に基づいて特定のアミノ酸を指定します。64通りのコドンがあり、これらは20種類のアミノ酸に対応しています。一部のアミノ酸は複数のコドンによって指定されるため、遺伝暗号は冗長性を持っています[2][6].

● リボソームの構造と機能

リボソームは、rRNAとタンパク質から構成される複合体であり、小サブユニットと大サブユニットからなります。翻訳の過程で、これらのサブユニットはmRNA上を移動し、アミノ酸を連結させる役割を果たします。リボソームの活性部位は主にrRNAによって構成されており、ペプチド結合の形成を触媒します[4][6].

● 翻訳の普遍性

翻訳のメカニズムは、原核生物と真核生物で非常によく似ており、生命にとって重要な機構は生物種を超えて保存されています[4]. また、セントラルドグマによれば、生物の細胞内でタンパク質が合成される流れは「DNA→RNA→タンパク質」と一方向であり、基本的に全ての生物に共通しています[2].

翻訳の過程は、生物の遺伝情報が実際に機能的なタンパク質へと変換される場であり、生命現象を支える基本的なプロセスの一つです。

第3章 遺伝子発現の調節メカニズム

エピジェネティクス:ヒストンの修飾とDNAのメチル化

エピジェネティクスは、DNAの塩基配列に変化を加えることなく、遺伝子の活性や発現を制御する一連のメカニズムを指します。この分野は、遺伝子の「上に」あるいは「後に」位置する制御機構を研究することから、その名が付けられました。エピジェネティクスの主要なメカニズムには、ヒストンの修飾とDNAのメチル化が含まれます。これらのメカニズムは、細胞の分化、発生、疾患の発生、および環境因子による遺伝子発現の変化において重要な役割を果たします。

● ヒストンの修飾

ヒストンは、DNAが巻き付くタンパク質で、クロマチン構造の基本単位であるヌクレオソームを形成します。ヒストンのN末端領域には、アセチル化、メチル化、リン酸化ユビキチン化などの化学修飾が行われ、これらの修飾は染色体の高次構造を変化させ、遺伝子の転写をダイナミックに制御します[20]。一般的に、ヒストンアセチル化は転写活性化に関与し、ヒストンメチル化の効果は標的アミノ酸残基とその位置によって異なります。これらの修飾は、修飾を付加または除去する酵素群によって動的に制御されています[20]。

● DNAのメチル化

DNAメチル化は、主にシトシン塩基の5位の炭素にメチル基が付加される化学修飾で、特にCpG配列において頻繁に発生します。DNAメチル化は遺伝子のプロモーター領域において特に重要で、通常、遺伝子の発現を抑制する役割を果たします[1][6][7][18]。DNAメチル化は、細胞の分化、発生、および疾患の発生において重要な役割を果たし、環境因子によっても変化することがあります。

● エピジェネティクスの重要性

エピジェネティクスは、遺伝子の発現を制御することによって、細胞のアイデンティティを維持し、多様な細胞タイプを生み出す基盤を提供します。また、エピジェネティクスの異常は、がんを含む多くの疾患の発生に関与しています。さらに、エピジェネティクスは、生活習慣や環境因子が遺伝子発現に与える影響を理解するための鍵となります。エピジェネティクスの研究は、新たな治療法の開発や疾患の予防戦略に貢献する可能性があります。

遺伝子発現の調節:エンハンサーとサイレンサー

## 遺伝子発現の調節:エンハンサーサイレンサー

遺伝子発現の調節は、生物の発達、分化、そして環境への適応において極めて重要な役割を果たします。この調節過程には、エンハンサーとサイレンサーという二つの主要なDNA配列が関与しています。これらの配列は、遺伝子の転写をそれぞれ活性化または抑制することによって、遺伝子発現のパターンを決定します。

● エンハンサー

エンハンサーは、遺伝子の転写量を増加させる作用を持つDNA領域です。エンハンサーはプロモーターからの距離や位置、方向に関係なく機能し、転写活性化因子が結合することでその作用を発揮します[5]。エンハンサーには通常、複数の転写活性化因子の結合部位が存在し、これらの因子の組み合わせによって遺伝子発現が調節されます。また、多くの遺伝子には複数のエンハンサーが存在し、細胞種特異的や発生段階特異的なエンハンサーによって遺伝子発現が制御されることもあります[3][5]。

● サイレンサー

サイレンサーは、遺伝子の転写を抑制するDNA領域であり、エンハンサーと対をなす役割を持ちます。サイレンサーは、結合する転写因子に基づいて、その機能を発揮します。サイレンサーに結合する転写因子は、転写の開始前複合体の形成を阻害したり、基本転写因子をリン酸化して転写開始を抑制することがあります[3][7]。サイレンサーは、遺伝子発現を下方制御することによって、細胞の特定の状態や発達段階での遺伝子の不活性化に寄与します。

● 転写調節のメカニズム

転写調節は、エンハンサーやサイレンサーに結合する転写因子、プロモーターに結合する基本転写因子、RNAポリメラーゼIIなどの複合体の相互作用によって行われます。エンハンサーとプロモーターが物理的に離れていても、DNAのループ化によって近接し、転写の活性化を促進することができます[5][6]。一方で、サイレンサーは転写因子を介して転写の抑制を行い、遺伝子発現の精密な制御を可能にします[7][8]。

● 研究の進展

近年の研究では、ChIP-chip法やChIP-Seq法などの技術革新により、エンハンサーやサイレンサーの網羅的な解析が進んでいます。これにより、遺伝子発現の調節機構の理解が深まり、生物学的な多様性や病理の解明に寄与しています[5]。

遺伝子発現の調節は、エンハンサーとサイレンサーの複雑な相互作用によって成り立っており、これらの要素がどのように機能するかを理解することは、生命科学の基礎研究だけでなく、遺伝子療法や疾病治療の分野においても重要な意味を持ちます。

第4章 遺伝子発現のプロファイリング

プロファイリングの意義

遺伝子発現プロファイリングは、複数のサンプル間で複数の遺伝子の発現レベルを網羅的に比較する研究手法です。この手法を用いることで、表現型の違いを分子生物学的に解明することが可能になります。遺伝子発現の差異は、特定の疾患表現型に対する潜在的なバイオマーカーの発見につながり、さらにバイオマーカーの検証を可能にします。遺伝子発現解析は、正常な生物学的プロセスおよび疾患プロセスにおける遺伝子発現の差異の役割、およびバイオマーカー署名の同定と検証において貴重な洞察を提供します[8]。

遺伝子発現プロファイリングの意義は、以下の点に集約されます:

– 表現型の違いの分子生物学的解明: 遺伝子発現プロファイリングにより、異なるサンプル間での遺伝子発現の差異を明らかにすることができます。これにより、特定の表現型や疾患状態に関連する遺伝子の活動を理解することが可能になります。
– バイオマーカーの発見と検証: 疾患の診断、予後の予測、治療応答のモニタリングに有用なバイオマーカーを発見し、その有効性を検証するために遺伝子発現プロファイリングが利用されます。
– 疾患プロセスの理解: 遺伝子発現プロファイリングは、疾患の発生と進行における遺伝子の役割を解明するために重要な手段です。これにより、新たな治療標的の同定や疾患のメカニズムの理解が深まります。
– 研究手法の多様性: qPCRマイクロアレイ、次世代シーケンシング(NGS)、デジタルPCRなど、遺伝子発現プロファイリングには複数の手法が存在します。これらの手法は、特定の研究目的やサンプルの種類に応じて選択され、研究の柔軟性と精度を高めます。

遺伝子発現プロファイリングは、基礎研究から臨床応用に至るまで、生命科学の多岐にわたる分野で重要な役割を果たしています。この手法により得られる洞察は、新しい治療法の開発、疾患の早期発見、個別化医療の実現に貢献しています[8]。

実験手法:リアルタイムPCRとシーケンシング

遺伝子発現のプロファイリングは、生物学的サンプル中の遺伝子の発現パターンを網羅的に解析する手法です。このプロセスは、特定の生物学的条件や疾患状態における遺伝子の活性化や抑制の理解に不可欠です。遺伝子発現プロファイリングには主に二つの実験手法が用いられます:リアルタイムPCRとシーケンシング(特にRNAシーケンシング、RNA-seq)です。

● リアルタイムPCR

リアルタイムPCR(定量PCR、qPCR)は、特定の遺伝子の発現量を高精度に定量化する手法です。この技術は、PCR反応の各サイクルで生成されるDNAの量をリアルタイムで測定することにより、特定の遺伝子のコピー数を定量化します。リアルタイムPCRは、少量のサンプルからも高い感度と特異性で遺伝子発現を測定できるため、遺伝子発現の定量分析に広く用いられています[1][2][4][5]。

リアルタイムPCRの実験手法には、主に以下のステップが含まれます[1][2]:
1. RNAの抽出:対象となる細胞や組織からRNAを抽出します。
2. cDNAの合成:逆転写酵素を用いて、抽出したRNAからcDNAを合成します。
3. PCR増幅と検出:特定のプライマーと蛍光プローブを用いてcDNAを増幅し、増幅されたDNAの量をリアルタイムで検出します。

● シーケンシング(RNA-seq)

RNAシーケンシング(RNA-seq)は、次世代シーケンシング技術を用いて、サンプル中の全RNAを網羅的に解析する手法です。この技術により、特定の条件下での遺伝子発現プロファイルを定量的に把握することができます。RNA-seqは、未知の遺伝子や代替スプライシングバリアントの同定、遺伝子発現の定量化、遺伝子間相互作用の解析など、遺伝子発現の網羅的な解析に適しています[15]。

RNA-seqの実験手法には、以下のステップが含まれます[15]:
1. RNAの抽出:対象となる細胞や組織からRNAを抽出します。
2. ライブラリーの構築:抽出したRNAからライブラリーを構築します。この過程で、RNAを断片化し、アダプターを付加します。
3. シーケンシング:次世代シーケンサーを用いてライブラリーをシーケンシングします。
4. データ解析:シーケンシングデータを解析し、遺伝子発現プロファイルを定量化します。

リアルタイムPCRとRNA-seqは、それぞれ異なる利点を持ちます。リアルタイムPCRは特定の遺伝子の発現を高精度に定量化できる一方で、RNA-seqは遺伝子発現の網羅的なプロファイリングと新規遺伝子の同定に優れています。これらの手法は、遺伝子発現の研究において相補的に使用されることが多く、研究の目的に応じて適切な手法を選択することが重要です。

第5章 遺伝子発現の応用

疾患研究での遺伝子発現

疾患研究における遺伝子発現解析は、疾患の発症メカニズムの理解、診断、治療法の開発において重要な役割を果たしています。遺伝子発現解析により、特定の疾患状態や治療応答に関連する遺伝子の活性化または抑制が明らかになり、疾患の分子的基盤の解明に寄与します。

● 遺伝子発現解析の手法

遺伝子発現解析には、主に次世代シーケンサー(NGS)を用いたRNAシーケンシング(RNA-seq)や、リアルタイム定量PCR(RT-qPCR)、マイクロアレイなどの技術が用いられます。RNA-seqは、細胞や組織中の遺伝子発現を網羅的かつ定量的に解析する手法であり、転写アイソフォーム、遺伝子融合、スプライスバリアントなどの詳細な情報を提供します[12]。RT-qPCRは、特定の遺伝子の発現量を高精度に定量化する手法であり、遺伝子発現の概要に関する入門ガイドとしても利用されます[15]。

● 疾患研究における応用

遺伝子発現解析は、疾患の発症メカニズムの解明、バイオマーカーの同定、新規治療標的の発見など、疾患研究の多岐にわたる分野で応用されています。例えば、精神・神経疾患研究では、死後脳の解析を行う際に空間的な位置情報を保ちながら遺伝子発現解析を行うことが望ましいとされています[17]。また、希少性疾患における遺伝子発現変異の包括的解析を目的とした遺伝子発現データベースの構築も進められています[19]。

● 疾患名と遺伝子名の関連

疾患名に用いられる遺伝子名は、国際的命名法のHGNCに従っています。疾患遺伝子一覧では、疾患名は原則として“Mendelian Inheritance in Man”に準拠し、遺伝子記号及び遺伝子名はHUGO Gene Nomenclature Committeeに準拠しています[20]。

● まとめ

遺伝子発現解析は、疾患研究において不可欠なツールであり、疾患の分子的メカニズムの理解、診断、治療法の開発に貢献しています。疾患特異的な遺伝子発現パターンの同定により、疾患の診断や治療に向けた新たなアプローチが可能となります。

遺伝子工学における遺伝子発現の操作

遺伝子工学における遺伝子発現の操作は、特定の遺伝子の機能を解析したり、特定のタンパク質を生産するために行われます。このプロセスは、遺伝子のクローニング、遺伝子の導入、そして遺伝子発現の調節という主要なステップを含みます。

● 遺伝子のクローニング

遺伝子のクローニングは、特定のDNA断片を選択し、それをベクターと呼ばれるDNA分子に組み込むプロセスです。このベクターは、宿主細胞内でのDNAの複製と維持を可能にします。クローニングの目的は、特定のDNA断片を大量に増幅し、その遺伝子の機能を研究するための材料を提供することです[19]。

● 遺伝子の導入

遺伝子の導入は、クローニングされた遺伝子を宿主細胞に入れるプロセスです。このステップでは、形質転換(トランスフォーメーション)や顕微注入(マイクロインジェクション)などの方法が用いられます。遺伝子導入技術を応用して作成された遺伝子導入動物(トランスジェニック動物)や遺伝子導入植物(トランスジェニック植物)は、遺伝子の機能解析やバイオテクノロジーにおける生産モデルとして重要です[18]。

● 遺伝子発現の調節

遺伝子発現の調節は、導入された遺伝子がどの程度、どのように発現するかを制御するプロセスです。プロモーターやエンハンサーといったDNA配列は、遺伝子発現の強さや特異性を決定します。遺伝子発現の調節により、研究者は特定の細胞型や発達段階での遺伝子の役割を解析したり、工業的に重要なタンパク質を効率的に生産することが可能になります[14]。

遺伝子工学におけるこれらの操作は、分子生物学の基礎研究から医薬品や農業製品の開発に至るまで、幅広い応用があります。遺伝子の正確な操作と発現の制御により、生命科学の理解を深め、新しい技術や治療法の開発に貢献しています。

参考文献とさらなる学び

推奨される参考文献

遺伝子発現に関する推奨される参考文献は以下の通りです。

1. 京都大学による研究で開発された新技術に関する文献。これは、哺乳類細胞における遺伝子発現の光と薬剤による制御について述べています[1]。

2. 遺伝子ネットワーク解析とその応用に関する文献。遺伝子発現制御の解明や遺伝子ネットワークの解析手法の開発について詳述しています[2]。

3. NCBI Gene Expression Omnibus (GEO)に関する情報。これは遺伝子発現情報のデータベースに関するもので、RNA-seqやマイクロアレイ実験で得られたデータが蓄積されていることを説明しています[3]。

4. 次世代シーケンスに関する参考文献。遺伝子発現量解析に関する研究論文が紹介されています[4]。

5. 遺伝情報発現制御機構の包括的な理解に関する文献。遺伝子発現の調節機構とその生命現象への影響について述べています[5]。

6. 遺伝子の運ぶ遺伝情報に関する文献。遺伝子発現メカニズムとその進化についての情報が含まれています[6]。

7. 日本生物物理学会による遺伝子発現に関する概要。遺伝子発現の基本的なプロセスとその科学的・社会的意義について説明しています[7]。

8. マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析に関する文献。遺伝子発現解析手法の開発についての情報が含まれています[8]。

9. 遺伝子発現解析の基準となるデータを検索できるウェブツールRefExに関する情報。遺伝子発現解析の基準データの検索と閲覧について説明しています[9]。

これらの文献は、遺伝子発現の基本、遺伝子発現制御、遺伝子発現解析手法、遺伝子発現データベースに関する研究や技術開発に関する重要な情報を提供しています。遺伝子発現に関する研究や学習を行う際には、これらの文献を参考にすることが推奨されます。

関連リソース:rhelixaの教育コンテンツ

株式会社Rhelixa(レリクサ)は、遺伝子発現に関する教育コンテンツを提供しています。遺伝子発現とは、遺伝子からタンパク質が作られる過程を指し、時と場合によって遺伝子ごとに異なります[6]。遺伝子発現の調節のためにRNAが存在し、細胞の最も基本的な目的である「それぞれの細胞の役目を行う」ために、各細胞は機能を持つタンパク質を作り出します。タンパク質を作るには、アミノ酸を正しい順番につないでいきます。その正しい順番の情報は、DNAの中の遺伝子の部分に塩基配列として表されています。この遺伝子の情報を元に目的のタンパク質を作るまでの過程を「遺伝子発現」と呼びます[6]。

遺伝子発現の過程は、DNAの中の目的の遺伝子の部分をコピーしてRNAというものを作る(転写と呼ぶ)、RNAが核から出る、核の外側でRNAの情報を元にしてタンパク質を組み立てる(翻訳と呼ぶ)というステップで行われます[6]。

Rhelixaのウェブサイトでは、遺伝子発現に関する基本的な知識を提供しており、遺伝子からタンパク質が作られることを「遺伝子発現」と定義し、遺伝子発現は時と場合によって遺伝子ごとに異なること、遺伝子発現の調節のためにRNAがあることを説明しています[6]。また、RNA-seq(RNA-sequencing)は、次世代シーケンサーを用いて、細胞や組織中の遺伝子発現を網羅的かつ定量的に解析する手法であることも紹介しています[17]。

このように、Rhelixaは遺伝子発現に関する教育コンテンツを通じて、遺伝子発現の基本的な概念や過程、解析手法についての情報を提供していることがわかります。

プロフィール

この記事の筆者:仲田洋美(医師)

ミネルバクリニック院長・仲田洋美は、日本内科学会内科専門医、日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医 、日本人類遺伝学会臨床遺伝専門医として従事し、患者様の心に寄り添った診療を心がけています。

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